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市会報告

ひぐち英明 議員

06年2月23日(木)

ひぐち英明議員の代表質疑の大要と答弁 06年2月定例市会 本会議代表質問

左京区選出の樋口英明です。日本共産党市会議員団を代表して質問いたします。

学童保育に運営基準の策定を

 はじめに学童保育についてお聞きします。

市長は、昨年度策定した「新みやこ・子どもいきいきプラン」で2009年度までに児童館を130館まで整備するとしています。2006年度当初が104館ですから、一年に7館の整備が必要ですが、予算案を見ますと2006年度が3館の建設、その次の年度も3館の建設にとどまる可能性が大きいことがわかります。目標に対して、建設数があまりにも少なすぎます。前のいきいきプランでの120館目標が、掛け声だけだったのと同様に、今回の130館目標も実行がともなわない計画にするつもりなのでしょうか。

 学童保育の箇所数が少ないことも影響し、今ある学童に許容範囲をこえて子どもが集中し、まさに「すし詰め」状態で放課後を過ごしているところが少なくありません。ある学童では、建物が狭いために、宿題をしている子の横で、剣玉をする子がいる、コマを回す子がいる、相撲をとる子がいる、といった状況で、まさに騒然としています。職員さんにお聞きすると「土曜日は比較的子どもが少ないため、子どもが穏やかな表情をしている」と言われていました。土曜日のようにゆったりとした状況が日常的に確保されてこそ、児童福祉法にうたわれている「適切な遊び、および生活の場」と言えるのではないでしょうか。

2005年度までに待機児童をなくすという市長公約に責任を持つためにも、子どもの「すし詰め」状態を解消するためにも、児童館建設数を増やすべきです。市長の答弁を求めます。

〈浅野子育て支援政策監〉130館整備目標で既設施設の増築、併設もしている。18年は新設3カ所、設計3カ所で6カ所。109館まで達成し待機を継続していく。

 地域に学童保育をつくってほしいという保護者のみなさんの切実な要望を受け、学童分室での対応も始まっており、4月からは9つの分室になります。しかし、この分室は、正規職員の雇用でなく臨時職員での対応となっており、ここには安上がりの保育をすすめている本市の姿勢が特徴的にあらわれています。

 保護者が安心して学童保育に子どもをあずけることができるよう、条件の整備を行なっていこうと考えたら、施設の床面積や指導員の配置などについて、設置・運営基準を持つことが必要です。全国の自治体でもこうした基準づくりの取り組みが広がってきています。埼玉県や石川県で策定されているもの見ると、児童福祉法にもとづき、「家庭に変わる生活の場を確保」することや「児童の健全な育成を図ること」、「仕事と子育ての両立支援を図る」ことなどを目的とする、とされており、これらを達成するために、必要面積、職員配置、定員規模の基準などが定められています。

本市でも、このような設置・運営基準を設けるべきではないですか。また、こうした基準づくりを推進するために、保護者や指導員など、関係者が入った「検討委員会」を立ち上げるべきと考えますが、いかがですか。

〈子育て支援政策監〉児童数、生活圏を勘案した学童クラブ事業を備えた児童館を進め国基準を元に概ね60名の基準。児童館活動指針は11年に策定。17年にプラン策定にあわせ改定し運営している。必要に応じて活動指針の改定をおこなう。

子どもの安全について

 次に、子どもの安全の問題についてお聞きします。

 昨年末に広島、栃木、宇治、そして先日は滋賀でも子どもが犠牲になる事件が引き起こされ、私も同年代の子どもを持つ親として、なんともやりきれない気持ちでいっぱいです。ご家族のみなさんに心からのお悔やみを申し上げます。

京都府警の発表では、中学生以下の子どもに対する不審な「声かけ事案」の届け出件数が321件に及び、過去最高を大幅に更新しています。京都市内に限って言いますと2004年の119件から2005年は198件へと倍増の勢いです。

 こうした事件の背景には、国連からも指摘を受けている、世界でも異常な競争主義の教育があること、「勝ち組・負け組み」を当たり前とし、社会的弱者に対する攻撃に痛みを感じない風潮があることが指摘されており、根本的な解決の為には、これらの問題を改善することが必要です。

一方で、子どもを事件から守るために、地域ぐるみの真剣な取り組みが次々と始まっていることは重要です。

 ある学区では、PTAが中心となって地域のみなさんに子どもの登下校時間をお知らせし、その時間に合わせて「門掃き」や犬の散歩、井戸端会議をするといったことが意識して行なわれるようになりました。こうした「見守り活動」に協力していただいているみなさんはこの地域だけでも100人をこす規模になっています。大事な点は、割り当てや強制でなく、自発性や自主性に依拠した取り組みとなるよう工夫をされている点です。そうすることで、長続きもしますし、さらに、保護者や地域に、子どもたちを見守る自然な環境や気風が生まれ、子どもたち自身が「大切にされている」と、実感できる取り組みになっています。地域で始まっているこうしたさまざまな努力を、行政が最大限支援することが求められています。

 また、学校関係者や地域のみなさん、保護者、そして子どもも一緒になって、通学路や公園、遊び場などの総点検を行い、危険な箇所については緊急に改善する必要があります。

 本市でも、「地域の安心安全ネットワーク事業」で、モデル地域での「安全マップ」づくりと地域への普及がすすめられていますが、この取り組みを早急に全学区に広げることが必要と考えますが、いかがですか。

 登下校の問題では、学校からの帰り道だけでなく、学童保育の行き帰りの際の安全も、保護者にとっては切実な課題です。京都市は、学童保育からの帰り道に職員が同行するよう指示を出しましたが、3月までの対応ということになっており、あまりにも不十分です。また、職員の補充がされたわけでもないため、同行できる範囲も極めて限定的です。子どもの安全の確保の為には、職員体制を強化することと、財政的な措置を図ることが必要であることを指摘しておきます。

〈星川副市長〉17年度は「事例集」「暮らしの救急箱」も活用し25学区で地域の特性いかしとりくんでいる。18年は計70学区で、さらに全学区でとりくめるようにする。「見守り隊」「安全マップ」づくりなどにとりくむ。

アスベスト対策について

 次にアスベストの対策についてお聞きします。

 先日、石綿健康被害救済法が成立しました。一定の前進面はあるものの、国の行政責任と関係企業の加害責任をあいまいにしているため、被害者への救済内容が極めて不十分になっています。国と企業の責任を明らかにし、被害者に対し、労災なみの補償をすることや飛散防止などの総合的な対策を図るよう、あらためて国に求める必要があります。また、市民の安心・安全を守る立場から、本市としてあらゆる手立てをつくすことが求められていますし、まずは、市民のみなさんが的確な対応ができるよう、本市におけるアスベストの使用実態や、アスベスト含有材への対応の仕方など、行政の持っている情報を積極的に公開するよう、強く求めます。

 国は、50年前もからアスベストが有害という認識を持っていながら、規制はヨーロッパなどから比べても大きく遅れました。国内ではこれまでに1,000万トン以上のアスベストが使用され、9割は建材製品に使われたと言われています。建設の現場では、吹き付けアスベストなど飛散しやすい建材はもちろんのこと、石綿スレート板など、アスベストが固定化された成形板であっても、加工や解体が行なわれるため、粉じんとして飛散しています。建設従事者であれば、直接アスベスト製品を扱う職種でなくても、アスベストを吸い込んでいる可能性が高いといえます。私が話をお聞きした左官屋さんも「アスベストが舞う中で仕事をした後は、家に帰ってからも体中がちくちくしたことを覚えている」と言われており、健康被害を心配されていました。

 全京都建築労働組合が現在行いつつあるアスベスト検診では、レントゲン検査の後、検診受診者全体の13%の方がCTスキャンの2次検査を受けるよう言われているという事です。市内の建設従事者数が5万1千人ほどであることを考えれば、レントゲン検査だけでなく、CTスキャンを受ける必要がある方が数千人規模にのぼることが予測されます。本市の場合、レントゲン検査は無料で受けられることになっていますが、CTスキャンを受けるさいには、本人への負担が重くのしかかってしまいます。本来、国の責任で、これらの検診は行なわれるべきでありますから、国へ要望することを求めるとともに、本市としても独自の対策をとる必要があります。

 市民の健康を守る立場で、希望するすべての人にCTスキャン等の二次検診も無料検診に含めて行なうべきと考えますが、いかがですか。また、事業所が従業員の健康を確保するために、検診を行なおうと思っても、長引く不況のもとでは、検診費用を捻出することは大きな負担となり、実施したくてもできないところが多いというのが実態です。こうした事業所などに対して検診費用の助成を行なう必要があると考えますがいかがですか。

〈松井副市長〉17年9月から関連業者対象に無料検査を実施。精密検査が必要な人には医療機関を紹介している。市立病院は12月からアスベスト専門外来を設置した。事業所検診は事業者実施が義務づけられており助成する考えはない。

 公共施設のアスベスト対策は進められつつありますが、民間の建物の対策も急がれます。

阪神大震災では、倒壊した建物の解体作業が飛散対策を全くとられないまま行なわれ、大気中から高濃度のアスベストが検出されました。その濃度は、アスベストを採掘していた採石現場周辺とほぼ同じであり、その周りを一般の住民が何の防御もなしに行き来していたことが報告されています。

 地震のような特殊な状況でなくても、町工場などでアスベストの吹き付けが露出している場合は、事態は深刻です。石綿障害予防規則で、吹き付けられたアスベストの管理と除去・封じ込め・囲い込み等の措置が義務付けられていますが、中小業者は対応できないというのが実態です。

 先日お話をお聞きした方は、4人の職人さんを抱える事業主さんで、35坪ほどの工場は20年ほど前、本市の指導にもとづき防音対策が行われ、四方の壁全面にアスベストが吹き付けてありました。露出したアスベストの中で長年仕事をされてきたそうです。除去にかかる費用は800万円ほどで、さらに、その工事中に20日ほど事業所を閉鎖することになるので、「とてもそんなお金は出ない」と言われていました。

 こうした中小業者に対して、理事者は融資制度で対応すると言われていましたが、今年度のアスベスト対策での融資実績はわずか1件であります。たとえ低利であったとしても、中小業者が新たな借り入れをすることは難しい実態を示しています。またマンションなどの共同住宅でも、アスベスト対策に頭を悩ませています。

 東京都港区では、2005年度からアスベスト対策として、共同住宅と事業所の除去工事に対して上限200万円で費用の2分の1を助成する制度をすでにつくっていますし、検査費用に関しても助成制度をつくっています。国がアスベスト除去費用への助成制度をつくろうとしている今、本市でも、除去や検査への助成制度をつくるべきと考えますが、いかがですか。

〈毛利副市長〉中小企業者の除去工事は国の融資制度が創設された。「市環境保全資金融資制度」を設けておりすでに融資をした相談もある。この制度の活用を検討していく。

中小企業振興基本条例の制定で地域経済の活性化を

 次に地域経済の振興策についてお聞きします。

 市長は予算説明の冒頭で「京都を取り巻く景気動向も上向きとなり、…明るい兆しが見えてきている」などと言われましたが、市民のみなさんの実感とはあまりにもかけ離れています。

ある建設関係の職人さんは、「12月10日から1月いっぱいまで仕事がなかった。本当に寂しい正月だった。」と言われていました。1月に京都市が発表した「中小企業経営実態調査」を見ても、昨年末の景況感は前年同期と比べて「下降している」と答えている中小企業が、相変わらず多数を占めています。これが京都経済の実態であります。

 京都では、規模が19人以下の事業所が全体に占める割合は92%と、政令指定都市中トップであり、中でも4人以下の事業所は65%を占めています。京都はまさに零細企業のまちであります。本市が製造業を対象に行なった「ものづくり産業調査」でも現状がリアルに報告されています。少し紹介しますと、過去3年間、設備投資を行なっていない事業所が76%を占め、今後の事業継承でも「事業継承したいが後継者がいない」「事業継承は未定」と答えた企業が52%、そのうち「廃業する」と答えた企業も54%にのぼり、報告書にも「この数は市内製造業者数の4 分の1 を超える深刻な値である」と書かれています。中小企業の実態が調査からうきぼりになり、問題点を指摘しているにもかかわらず、いまだに具体的な施策がつくられていないところに大きな問題があります。

 京都の企業の圧倒的多数が中小企業というだけでなく、物の調達や雇用を地域内で行って商品やサービスをつくり出し、それを地域内で販売するという、地域内循環型の経済活動をしているのが中小企業ですから、ここを元気にしてこそ、地域経済の活性化が図れます。

 埼玉県は、中小企業振興基本条例の中で行政の認識を明らかにし、「景気が低迷する状況の中、中小企業は極めて厳しい経営環境にあり、経営の安定と活力の回復を図るために効果的な支援を行う必要がある」と述べています。そして、条例制定の目的は、中小企業の健全な発展によって、埼玉県経済の活性化を図ること、としています。

 同様の条例が、東京墨田区、大阪八尾市など、全国136の自治体でつくられていますが、中小零細企業のまちである京都でこそ、「中小企業振興基本条例」の制定が、求められていると考えますが、いかがですか。

〈市長〉「ものづくり産業調査」により販路拡大促進、「京都ものづくり企業縁結びプロジェクト」を創設した。7ヶ月で350社、100件の取り引き先を紹介。11月の受注商談会で135社が参加。成果上げている。条例を制定するまでもなく中小企業振興に万全を期す。

 わが党議員団で視察した東京都日野市には「中小企業振興基本条例」と同様の趣旨の「小規模事業者育成条例」があり、この条例の具体化の一つとして「公共施設小規模修繕等委託制度」を持っています。

これは、日野市の公共施設の50万円以下の修繕工事を、市に登録した小規模事業者に発注するという制度で、同様の制度はさいたま市や広島市などの政令市も含め、全国289の自治体に広まっています。

 本市では、各担当部署の判断で随意契約が行える100万円以下の小規模修繕工事が、都市計画局だけ見ても億単位の額であり、各局のものを全てあわせると、相当な金額になります。この小規模修繕工事を、他の自治体のように、積極的に地元の小規模事業者へと発注する仕組みをつくるべきではないでしょうか。

 京都市にも入札の項目の中に「小修繕」というものがあり、建設業の許可と経営審査を必要としない特例がもうけてありますが、ここに申し込まれた業者に積極的に仕事を発注するということになっていません。また、あくまでも入札の一項目ということなので、小規模の事業者にとっては、敷居が高くなってしまい、登録業者数もごくわずかです。

 申し込みの方法を、入札の制度の一項目ではなく、他の自治体のように、独立した登録制度にし、手続きの簡便化を図ること、また、登録された業者に仕事を積極的に発注することが必要です。小規模事業者を応援する施策の一つとして取り入れるべきと考えますがいかがですか。

〈理財局長〉H18年から登録有効期間を2年から4年間に延長し申請書類を無料化している。公共事業は市内中小事業者発注を基本に育成していく。

除雪・凍結防止対策の充実を

 次に、除雪と凍結防止対策についてお聞きします。

 この冬は、例年になく雪が多くなっており、全国的にも大変な事態となっています。雪下ろしなどでの事故も相次ぎ、なくなられた方は134人にのぼると報道されています。こうした犠牲者の多くは高齢者ですが、左京北部でも、市民のみなさんが同じような状況の中で毎日を過ごされています。12月から降り積もった雪が、1m50cm~60cmにまでなり、別所、花背、広河原、久多、百井の地域はすっぽりと雪に覆われました。どの地域も高齢化が進み、65歳以上の方の割合は40%をこえ、雪かきをできない世帯が増えてきています。

 今年になってから、私も雪かきのボランティアに参加をしたのですが、その時に地元の方にお話をお聞きすると「90年以上この地域で暮らしているけれど、12月からこれほど雪が降ったのは初めてだ」と言われていました。この方も、一人暮らしをされていて、まちなかに住む家族の方が、週末になったら帰ってきてはいましたが、それでも、雪かきを十分に行なうまでは手が回っていませんでした。家によっては、道路から玄関までの雪かきもできず、幅わずか50センチほどの道が、10m・20mとつけられているようなところもあります。屋根に積もった雪が軒下に落ちてきて、家の周囲に雪の壁ができてしまい、この雪と軒が接してしまうと今度は雪が落ちなくなり、家が雪で押しつぶされてしまう危険も出てきます。市民の命にかかわるような事態となっており、行政の支援が必要ではないでしょうか。

 京都府内でも、宮津市では高齢者や障害者世帯などを対象にした、屋根の雪下ろしなどの費用の助成が実施されており、同様の制度は、福知山や綾部でも実施されています。こうした制度を、本市でもつくる必要があると考えますが、いかがですか。

〈保健福祉局長〉左京区社協、左京医師会のネットワークいかし「スノーバスターズ」のボランティア活動がある。今年は2回になった。地域活動をとおして対応していくことが望ましい。

 また、道路の凍結防止対策も切実な課題です。地元自治会から出されている要望事項にも、毎年載せられていますが、この冬は特に、凍結している区間が長いこともあり、対策が急がれます。花背峠を通勤で毎日通われている方は慣れた道とはいえ、「朝晩は特にアイスバーン状態でつるつるなので本当に恐い」と話されていました。花背山の家と山村都市交流の森の利用者も、冬の時期だけで3万人に及んでおり、地元のみなさんと外から訪れるみなさんが、安心して安全に道路を通行するためにも、除雪とともに凍結防止対策の強化が必要です。

 京北では、委託された業者の方が車に凍結防止剤を散布する機械を積み、朝の通勤時間前に道路の凍結防止の作業を行なっています。交通量などを考慮する必要はありますが、同じ対策を、左京や他の道路凍結地域でも取るべきと考えますが、いかがですか。

 市民の命と安全を守るために、十分な対策をとるよう求めまして、私の質問を終わります。

〈建設局長〉京北は特別地域指定で国の補助事業である。花背峠は土木事務所職員、バス事業者により散布を実施。今月半ばから自治会の協力で試験的に機械散布している。今後も効果的対策を検討していく。