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市会報告

岩橋ちよみ 議員

05年10月13日(木)

伝統産業活性化推進条例についての賛成討論 05年9月定例市会 閉会本会議討論

 日本共産党市会議員団は、議第205号京都市伝統産業活性化推進条例の制定について、賛成の態度を明らかにしています。以下その理由といくつかの課題について討論を行います。

 条例については、業界、関係者からも要望され、日本共産党市会議員団も99年に「京都市の伝統・郷土産業の振興、事業者の営業と暮らしをまもるための提案」をおこない、条例の制定を求めてきました。今回の条例制定については、本市が伝統産業振興の立場を示したという点で、一歩前進と考えるものです。要は、この条例制定が、真に伝統産業の振興につながるものになるかどうか、今後の推進計画や具体的なとりくみ、施策が問われ、そのための本市のかまえや裏づけがカギとなります。関係者の大きな期待に応えるものとなるよう、積極的な取り組みを求めます。

 その上で、いくつか指摘します。

 伝統的工芸品は、一定の地域で、伝統的な技術、技法を用いて製造され、住民の生活の中ではぐくまれ、受け継がれてきました。ものづくりの技がその価値を高め、産業の振興、国民生活に豊かさと潤いを与え、文化をつくってきました。検討委員会の提言でも、京都市における、伝統産業の活性化は、文化の拠点、ものづくりの拠点、まちの担い手、経済の担い手の四つの意義があり、京都の特別な役割発揮を求めています。ところが、ご存知のように、伝統産業の集積する京都の実態は、深刻なものがあります。検討委員会の提言でも、本市の伝統産業の現状について、売り上げの低迷、後継者問題、原材料・用具確保難、海外生産の増加と指摘しています。例えば、代表的な伝統産業である和装、西陣では、帯の出荷量は、ピーク時828万本あつたものが、04年度は78万本、9・4%におちこんでいます。材料や道具の作り手がいなくなる、西陣織の新しい織機の出荷はなく、修理のみになって、生計をたてることもままならず、廃業へおいこまれる。漆塗りのハケの毛がなくなりつくれない、屏風を削るカンナをつくる職人がいなくなるなど、5年10年したら、技も職人もいなくなってしまうのではないかと、危機的な事態に関係者の心配があります。こんな中で、ものづくりの技をもつ職人さんは必死でがんばっておられます。生活保護以下の低い工賃で働き、「ものづくりに専念したい、他のことを考えずに暮らしていける程度のことを行政が支援してほしい」と、ものづくりで安心して生活できる環境づくりは、伝統産業の存続がかかった、緊急の課題です。

 国は伝統的工芸品産業の振興に関する法律、伝産法を制定し、基本指針を定め、関係事業者に後継者の確保や育成、技術・技法の継承、原材料の確保や従事者の福利厚生に至るまでの振興計画を作ることを定めていますが、この計画さえ作ることができない程事態は深刻になっています。この法に基づく国や自治体のとりくみの遅れが、事態をより深刻にしてきたのではないでしょうか。例えば、海外生産による輸入の増大で深刻な事態に、生産者のみなさんが「セイフティーネット」の発動をもとめてきましたが、国はなかなか腰を上げず、国民の声におされてやっと一部実施したところです。又、国の中小企業予算は、わずか1730億円で、米軍への思いやり予算に満たないもので、大企業への手厚い補助金や開発支援に比べても微々たるものでしかありません。その上、大型店などの進出は野放しで、地元商店は、シャッターどおりといわれる深刻な事態となっているのです。このような国の姿勢が、伝統産業、地場産業を困難にしてしまった最大の原因です。関係者は、技術者の保護、育成、希少部品の確保、新商品の開発や、海外生産、生産履歴トレーサビリティなど問題解決へ独自のとりくみを始めています。条例づくりを機に、業界のあと追いでなく、道具づくりを含めて職人さんをしっかり位置づけ、賃金の改善も含め労働環境の改善で、ものづくりが継承できる環境づくりや、関係機関への働きかけなど、現状を打開し、伝統産業を振興させるため、本市が積極的な役割を果たすことを求めます。

 又、今後、審議会をつくり、具体的な推進計画を策定するとしていますが、何よりも、行政自らが現場にはいり、様々な業種の実態をつかむ調査を行い、計画に生かすこと、伝産法で示されている、振興計画を具体化するものになるよう、進行管理も含め、本市がしっかりと責任を果たすよう、求めておきます。審議会は、学識者や業界の代表にとどまらず、消費者や技をもつ職人さんなどより多くの市民や関係者の声を生かすものにすべきです。

 最後に、財政措置についてです。条例に財政措置が明記されたことは、振興にむけた本市の決意を示すものとして重要です。しかし、本市の伝統産業予算は、その位置づけや役割からいって非常に不十分なものです。国の緊急雇用対策事業が始まる前の、99年度3億2220万円が、05年では1億7638万円と半減、減り続けています。条例づくりに終わることなく、振興への決意を具体的な施策や取組みで実らせることは、財政的な裏づけがあってこそ可能です。予算を抜本的に増やすことを求めます。

 本市は、中小企業、伝統地場産業が集積する、歴史と文化のまちです。検討委員会の提言では、京都は特別な役割をもつ都市であり、それを支えてきた産業の一つが、伝統産業であると述べています。本市には、伝統産業を振興させる特別の役割があります。条例制定を一歩に、市民や関係者の実態や意見をふまえ、真に振興につながるものとなるように、実態をつかむ努力調査を行政自ら行い、実効ある推進計画、具体的な施策にむけて、更に努力されることを求め討論とします。