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市会報告

かとう広太郎 議員

04年11月16日(火)

木造住宅耐震改修助成、住宅改修助成条例について提案説明 04年11月定例市会 本会議提案説明

 日本共産党京都市会議員団は「京都市木造住宅耐震改修工事費助成条例」と「京都市住宅改修工事費助成条例」の二つの条例案を、「市民の生活環境の改善」「市民の生命と財産の保全」「木造住宅の街・京都の維持・保存」そして、「地域経済の活性化に寄与する」ことを目的として、二十名の議員連名で提案しておりますので、私が代表してその趣旨説明をいたします。条例案の詳細な内容は、お手許に配布させていただいております。

木造住宅耐震改修工事費助成条例案について

 まず、木造住宅耐震改修工事費助成条例案であります。

 先日の新潟県中越地震でも、十一月十五日現在、四十人の方が亡くなられ、二千九百人近くの方が負傷されました。建物の全半壊は三千九百棟を越え、一部損壊は一万九千棟を越えています。

 1995年の阪神・淡路の大震災では、神戸市内の死者の八十四%は建物の倒壊・家具の転倒などによると言われ、その内の九十二%は地震発生後十五分以内に亡くなられたと分析がされています。

 国の中央防災会議は、「東南海地震が三十年以内に発生する可能性は、四十%から五十%」「京都に於いても内陸の活断層による地震が起こりやすい活動期に入った」と注意を促しています。

 京都市第三次地震被害想定による花折断層を震源とする被害想定は家屋の全壊が十一万七千八百棟、半壊四十四万三千棟の家屋が被害を受ける事、家屋被災による死者数は三万三千人から五万四千人と予測し、負傷者は十六万三千人に及ぶと人的被害を想定しています。

 

 歴史都市京都は木造建築の多い街で、京都市内の木造住宅は十五万四千戸あり、その内四万四千戸が戦前に建てられた住宅です。最初に耐震基準が導入されて、建築基準法が改正された昭和五十六年六月以前に建築着工された、いわゆる「既存不適格」の住宅は約10万戸と言われていますから、地震に弱い危険な住宅で多くの市民が生活しているのが京都市の実態です。

 京都市は今年度から、「京都市耐震改修促進助成事業」を実施していますが、市民の利用はどうでしょうか。新聞は、「京都市の耐震改修補助制度、新潟県中越地震で不安増すも申請いまだなし」と報道しており、その対策は急務です。

 京都市の助成制度は「改修費用の十五.四%を国と市の折半」となっていて、「1平方メートル当たり三万二千六百円かつ一件当たり六十万円を上限」としていますから、60万円の補助を受けられる工事は四百万円以上の工事を行い、三百四十万円は自己負担が出来る人ということになります。

 条例案の一つ目の特徴は、第二条にあります。

 京都市は対象住宅の耐震診断の結果、総合評点が〇.七以下の「倒壊の危険がある」とされた住宅だけに助成を限定し、その上、京都市防災都市づくり計画で、「危険性の高い地区」に指定された、学区全体が対象となっていない一部の町を含む一〇七学区の約四千ヘクタールと限定しているため、「倒壊の危険がある」と診断されても、この指定区域外の住宅は助成を受けられないという問題があります。第二条第一項では、地域を限定しないで、耐震診断の結果、総合評点が一.〇未満の「やや危険です」の住宅まで対象にしました。このように「やや危険です」「倒壊の危険がある」との住宅も全て対象とすることで、区別することなく市民の財産・生命を守る自治体の本来の役割を果たすとの立場からの改善の提案です。

 第二点目は、第四条と第五条です。

 第四条は、三十万円以上の耐震改修工事を対象とし、申請者は所有者及び居住を予定している方、また借家の方は所有者の同意を前提に交付対象とし、第五条では、その人の世帯の前年度所得税額に応じて十分の九から三分の一の四段階の助成率を設け、助成額の上限を百万円としています。横浜市は平成十一年度から助成制度を始め、いまでは上限を四百五十万円で助成措置を実施していますが、この四段階の助成率は横浜市の制度から学んだものです。

 助成額を百万円に押さえたのは、全国的に耐震補強工事に実績がある「日本木造住宅耐震補強事業者協同組合」が、組合員が工事を行った約四千四百件の工事高の平均が約百十三万円である事や、診断に係わった設計士や研究者が「百万円から百五十万円あれば可能」と述べている事を参考にしています。

 収入の少ない市民が、改修をしたくても、京都市の今の制度では百十万円程の工事の事例でも、本人の負担は九十三万円を必要とします。私達の提案なら十一万円程度の負担で済み、安心を手に入れることができます。このような市民にこそ、支援が必要ではないでしょうか。

 国は「〇.七以下を補助対象という限定していない。木造住宅密集地の地域とは限定していない。その点は自治体の裁量だ」と答えています。

 また、すでに実施をしている仙台市や静岡市も総合評点が一.〇未満の住宅を対象とし、住宅密集地域の指定をせずに助成をしています。

 家屋の倒壊はその家の財産、生命を奪うだけでなく火災を発生させたり、道をふさぐ事ともなり避難を困難にし、また消火活動の妨げともなってしまいます。耐震補強の工事は単なる個人だけの問題ではなく「公共性」を持つ問題としてとらえた、取り組みにしなければないません。

 阪神・淡路大震災で倒壊して道をふさいだりした約十万棟の倒壊家屋の撤去費用に国は、約一兆三千億円を使い、一棟当たり一千三百万円を使ったとの報告もあります。

 後始末で多額の税金を使うのでなく、事前に少額の支出で被害を少なく食い止める。この事が大切ではないでしょうか。

「耐震補強をすれば安心で得をする」「公的財源の投入によって、住民の被害をはるかに少なくする」ために、思い切った施策を打つ必要との立場から提案に至ったものであります。

京都市住宅改修工事費助成条例案について

 次に、「京都市住宅改修工事費助成条例案」についてであります。

 この様な助成制度は、本年三月現在で、全国で一都一府十県の五十七自治体で実施されており、京都府下では加悦町、大江町、木津町、福知山市で現在実施されています。

 市民のリフォーム・住環境の改善要望は強いものがありますが、景気の低迷により財布のひもも固く、工事に踏み切れないとの声も聞きます。長引く不況・公共工事の削減・受注競争の激化などで、中小建設業者の営業も厳しく、特に小規模事業者や建築職人の実態は深刻なものがあります。

 この様な状況のもとで、助成制度を実施した自治体では小規模な建設業者や建築職人の仕事確保にもなって、地域経済の活性化にも寄与していることが明らかになっています。この二年間実施された京田辺市では、年間百二十二件の助成を行い、その完成工事高は二億千三百四十万円と、二十倍の直接的な経済効果を産み出し、その他にも電気・家具など住宅関連投資の波及効果も報告されています。

 東京都板橋区が二十九倍、武蔵村山市が三十倍、滋賀県の長浜市四十四倍の報告もあり、実施自治体の大部分で二十倍以上の経済効果を上げています。

 第二条では、改修工事を行う事業者を「市内に事務所や事業所を有する小規模企業者」として、地元中小業者の仕事起こしにつなげ、第三条では、個人所有の住宅だけでなく、分譲マンションでの個人専有部分や近々居住しようとする人や借家人も交付対象者として、広く市民が利用できるようにしています。第四条では、三十万円以上の改修工事を助成の対象とし、助成額は改修工事に要する費用の百分の十五相当額、助成の上限を三十万円として、住居改善・改修をすすめる呼び水的な役割を果たすことを目的としています。

 十五%の助成をしている府下の加悦町は、〇三年度一千万円の予算を計上しましたが、この額は京都市では十億円の予算に相当するものです。加悦町の決算額は千九十一万円で、総工事金額は十八倍の一億九千六百七十万円にもなっています。住環境の改善や防災対策に対する自治体からの支援強化は、市民の要望に合致するものではないでしょうか。

 これまで、「個人資産への助成はいかがなものか」としてきた、国や京都市の考えはどんどん崩れています。今年の異常なまでの台風や地震災害を通して「被災者生活再建支援法」を改正して、住宅本体の再建や改善に補助を求める全国知事会の改正要望が出されています。また、鳥取県が自宅を再建する世帯に無条件で最高三百万円を補助した「住宅復興補助金制度」は、その後多くの自治体、そして京都府でも実施されようとしています。

 国会で国は、「地域経済の活性化に於ける自治体の役割は一層重要。自治体自らが主体的に取組みを行うことは極めて重要」とも答えています。それだけに、市民生活の改善・向上、財産と生命を守るためにも、又、地域経済を活性化させる上でも、ぜひ同僚議員の積極的な議論と賛同を願って、私の提案説明を終わります。ありがとうございました。