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市会報告

山本正志 議員

04年10月 8日(金)

「郵政事業の民営化に反対する意見書」の提案理由説明と討論 04年9月定例市会 閉会本会議討論

 私は日本共産党議員団を代表して、今回提案しております「郵政事業の民営化に反対する意見書」の提案理由の説明と、自民・公明・民主みやこみらいの会派から提出されております「意見書」にたいする反対討論を行います。

 小泉内閣が9月10日決定した「郵政民営化基本方針」をみますと、

  • 持ち株会社の下、窓口網、郵便事業、郵便貯金、郵便保険の四つの会社を独立させる。
  • 郵貯、保険は新規契約分から国家保証を廃止し、民間金融機関と同等にする。
  • 窓口網会社の地域分割の是非は検討する。
  • 全国一律サービスの形態や義務づけについて検討する。
  • 民営化と共に、職員は国家公務員の身分から離れる。などとされております。

 現在の郵政事業は明治以来の国営による運営が継続され、住民生活を支える上で欠かすことができない公共基盤となっておりますが、これを民営化して民間業者にまかせることになれば、必然的に全国均一料金並びに全国同一サービスが損なわれ、料金格差の増大とサービス低下、住民への利便性が損なわれることが危惧されているのであります。

 国民は郵政事業の民営化を求めているのでしょうか。時事通信社が今年3月実施した世論調査によると、郵政民営化に対する慎重論が3/4で、「早急に民営化すべきだ」は12・6%にすぎません。電話調査によると、小泉内閣に求める政策では「年金・福祉」(40・3%)が一位で、テレビ東京が七月末に全国で実施した郵政民営化問題はわずか1・8%で関心も希薄です。

 世論調査でも、国民から郵政民営化を求める声がさっぱり聞こえてこないにもかかわらず、小泉内閣の進める郵政民営化に対して推進の立場から応援団の役割を果たしているのが、銀行業界であり、保健業界であり、最大の外圧を加えているのがアメリカの業界であります。

 全国銀行協会(会長は三井住友銀行頭取)ほか民間金融六団体は、9月2日に「郵貯の民営化を考える民間金融機関の会」で決議文を採択。民営化の流れを歓迎するとともに「『簡易で確実な少額貯蓄手段の提供』を国営の郵便貯金が行う意義はもはやなく、廃止することが望ましい」として、(1)規模の縮小(2)政府出資下の貸出業務の禁止(3)郵政事業の機能別完全分離・独立を要求しました。経済同友会も金融界と同様の意見書を提出しました。

 アメリカの生命保険協議会は8月12日、「新しく機能別にできる組織は財政的に独立した存在であるべきだ」と、露骨な内政干渉を含む声明を発表し、簡保の解体を求めました。

 民営化推進論者は「国民の資産である郵便貯金と簡易保険の積立金の運用に問題がある」として、民間銀行や証券会社のように「経済活性化のために株式投資などへの運用を主張しますが、これまで国民の資産であるこうした資金は「財政投融資」として大蔵省資金運用部によって国債の購入、公団や地方自治体への貸付けが行われてきました。その中にはまったく返済能力のない国鉄清算事業団への貸付け(約15兆円)や国有林野事業累積債務(約3兆円)がありますが、責任は政府・大蔵省にあります。

 こうした背景を持つ郵政民営化が強行されますと結果として、都市部での特定郵便局の淘汰がすすみ、農村部でも、郵便局・農協以外に金融機関がなく、民間保険にいたっては全国的に支店のある自治体は過半数に満たない状況のなかで、地域の住民生活に欠かすことができない存在である郵便局の廃止がすすむことは明らかです。

 また民営化の結果として赤字事業の切り捨てが懸念されていますが、現行制度の第三種郵便物、第四種郵便物の廃止問題があります。第三種郵便物は、国民文化の普及・向上のために郵政公社の認可を受けた毎月三回以上発行する新聞や、心身障害者団体の定期刊行物を割安な料金で取り扱う郵便制度であり、第四種郵便物は、教育学術や福祉向上のため特に低料金とされた郵便物で、通信教育、盲人用点字・盲人用録音物、農産種苗、学術刊行物ですが、全国一律・国営一括事業であるからこそこうした公益的な事業が継続されてきたのであります。民営化の元で非営利・公益的事業は存続の保証もありません。

 以上の理由から日本共産党議員団は明確に郵政事業の民営化に反対する立場の意見書採択を提案いたします。

 自民・公明・民主みやこみらいの会派から提出されております「意見書」では、「拙速な分割・民営化議論を進めないこと」「国民にわかりやすく示すこと」などの記述が盛り込まれていますが、明確な「民営化反対」との立場が書きこまれていないのはなぜでしょうか。国会の議論をみても自民党の中にも多様な意見があるようですが、「民営化推進」の立場をとっているのが民主党であります。たとえば「郵便貯金が多すぎる。民間銀行があるのだから、郵便局が貯金を集めることを縮小していくことが第一歩だ。簡易保険も、民間でできることは民間でやる。民業を圧迫してもらっちゃ困る」と昨年10月の衆院予算委員会で発言したのは民主党の枝野政調会長でした。こうした民営化推進と同じ土台で政府に対して意見書を提出することは市民の期待にも、現場で郵政事業を支えている関係者の皆さんの声にも答えることにはなりません。

 以上、日本共産党の立場を表明し、討論といたします。