日本共産党市議団は、議第13号から16号、水道事業・公共下水道事業、自動車運送事業・高速鉄道事業の各2022年度特別会計予算、及び議第194号「高速鉄道事業経営健全化計画の策定」の各議案に、いずれも反対しておりますので、以下、その理由を述べ、討論します。
まず、市バス地下鉄予算についてですが、予算の概要説明書の中で「経営ビジョン改定版案を踏まえた経営健全化策を実施」と引用され、そのビジョン改定版には、「市バス8%程度、地下鉄7%程度の運賃改定を見込む、早期実施を目指す」と書かれています。同時に、このビジョンでは「市バス・地下鉄を安定的に維持していくため」に、「一般会計からの任意の財政支援を受けない運営の継続」という目標が掲げられています。交通局から言えば「支援を受けない」という言い方でも、予算やビジョンの提案は市長ですから、要するにここで書かれているのは、「市長は支援しない」ということに他なりません。自分は支援しないから、市民の皆さん支援してね、つまり運賃値上げガマンしてねと。そんな話が通用しますか。運賃値上げ方針は勿論それだけで反対の理由ですが、わざわざ支援しないなどと、なぜ敢えて目標に掲げなければならないのか。支援しないプラス値上げとあれば、ますます賛成するわけにはいきません。
次に上下各水道事業特別会計ですが、ここでも「経営ビジョン京の水ビジョン」で「各種経費の削減等経営努力による経営基盤強化が必須、更にこれらの取組を行ってもなお事業運営が困難となる場合、料金・使用料改定についての検討が必要」と書かれています。同時に、一般会計から下水道事業への出資金を今年度から5年間休止するとされています。これは、既に市の「行財政改革計画」にも謳われ、しかも、水道局の予算概要文書自身にも、わざわざ「一般会計の危機的な財政状況を踏まえ」と書かれています。
結局、交通局も水道局も、夫々の言い方や改定の時期には少々の違いがあるとはいえ、一般会計からの繰入はしない、だからもうすぐ市民の皆さん、値上げしますよ、ということに他なりません。
しかしそもそも、支援受けない、支援しない、出資金休止でやっていけるのでしょうか。やっていけると言われるのなら、市民にも支援を求めない、市民負担を増やさないでやっていけますか。繰入要らない等と言えば、畢竟、際限のない経費節減と、やがては値上げ・市民負担増に至らない訳にはいきません。すでに経費節減も限界にきています。はたして、案の定、値上げ方針が提起されています。支援しない等との目標の設定や繰入休止等を撤回し、勿論、値上げ方針も撤回し、今日の公営企業の経営の現状や問題点、困難の打開の方向等について、根本から検討し直すべきであります。
周知の通り公営企業法では、企業の経済性とともに、その本来の目的である公共の福祉増進と謳われています。これは第一に、その企業を経営するのが、自治法でいう住民の福祉増進を本旨とするところの自治体であるということ、第二に、その上更に公営企業法でもこのように謳われているのは、独立採算制とはいっても、一般の私企業とは同じではないという意味が含まれているということです。市民の足を守る、命の水を供給する、市民生活に不可欠な事業だ。そこにこそ本来の目的がある。然るに、歴代政府は、経済性イコール独立採算だ、だから運賃や料金で賄うんだ、だけで賄うんだという方式を押しつけてきた。本市においても、この「本来の目的」との言葉が意図的にかどうか、最近省略されることが多くなっています。これは経済性と公共性の矛盾というより、むしろ、土台から無理な話ではないでしょうか。資金の自己調達ができない、株式の発行ができないのに会社と同じ運営方式が押しつけられてきた。企業債発行に頼らざるをえないから、利子負担もついて回る、経営に伴う収入だけで賄おうとすれば、必然的に市民負担に行き着かない訳にいかない。
だからこそ、独立採算制と言われながら一方でいろいろな例外措置が、制度としてある訳であります。経費負担区分もそうですし、補助、出資、貸付、その他の方法等、任意の措置も、法律で謳われています。実際、一般会計からの繰出や、国からの支出も現実に行われてきています。標準的な公営企業の解説書でも、「法律や通知等により、一定の繰入金を受けることを前提とした独立採算制です。...住民生活に...欠くことのできない重要なサービスを提供する役割を果たしており、将来に渡ってサービスの提供を安定的に継続することが求められているからです」と書かれています。
従って今日、経済性の強調拡大、公共性の縮小で市民負担増への道か、それとも本来の目的である公共的性格を強めていくのか、この点こそが問われていると思います。国における経済性強調の動きへの根本的な批判と、国の財政的責任役割の発揮を求めていく視点が求められている。そういう時に、支援要らない、しない、出資金休止というのは、国の動きに追随同調し、公共性の後退、結局、経費節減、職員へのしわ寄せと委託の拡大、市民負担増へ行き着くしかありません。市民の足を守り、清浄にして豊富低廉な水の供給を図って市民生活を守る、ここにこそ市長と交通局・水道局の使命がある。「支援」と言うより本来の目的に沿った公的な責任と役割と言うべきだと思います。
当面、独立採算の例外の拡大、経費負担原則の緩和、出資・貸付・負担金・補助金等の拡大、低利の政府系金融の復活と活用・償還期間と耐用年数の改善・長期化・借換等企業債と償還の改善、利子補給、自治体の繰入への交付税措置拡大等々、運用と制度の改善を求め、脇を固めて理詰めでの対国への戦略を練る必要があります。他の自治体へも呼びかけて各自治体が団結することも必要だと考えます。
企業とは言いながら市民生活に不可欠な事業であること、特定の市民だけでなくあまねく全市民対象の事業であること、右肩上がりの時代ではなくなっている背景など、そもそも論から言っても今日の特徴から言っても、独立採算だけでは最早対応しきれないことについては、これまでの予算委員会等でも指摘してきた通りであります。利用促進、需要拡大、収入増への努力は当然ですが、同時に、公営企業の制度的矛盾や問題点の追求、国の財政的責任・役割を求める方向等を明らかにすることが必要だと考えます。独立採算制への批判的観点から出発しないと、結局は経費節減のあれこれの議論に終始し、値上げの迷路へ迷い込むだけではないでしょうか。
そこで最後に、国と一般会計に、夫々の財政的責任と役割の発揮を求めるにあたり、財政の問題についても触れておきたいと思います。国においては、大企業や富裕層への行き過ぎた減税をやめること、専守防衛を超えた攻撃的軍備拡大や、リニア・北陸新幹線等大型事業を見直すこと、政党助成金を廃止すること、等々税金の集め方・使い方を改めれば財源は十分に可能です。大企業の内部留保400数十兆円の活用も可能です。ちなみにこのお金を仮に全国の市町村に人口で按分すると、本市にはザッと5兆円、一般会計5年分の額となるぐらい、その規模は膨大です。本市においても「財政危機」が強調されていますが、これまでの我党の諸提案や指摘の他、例えば富裕層の市民税を以前の税率に戻せば大幅税収増が得られるという提案に対しても、検討すらしないという一事をもってしても、本当に財政危機なのか、本気で危機打開したいという気持ちがあるのかと疑うに十分であります。
バス・地下鉄各種企画乗車券の値上げ、路線ダイヤの縮小やバス待ち環境改善の抑制等、上下水道局での委託の拡大や広域化、本庁舎移転の財政やPFI手法、そもそも移転自体への疑問も拭いきれませんが、それぞれ賛成できない理由であります。
運賃や水道料使用料の値上げは、選択肢の一つとか避けられないとか、経費削減の最大限の努力の後とか最後の手段、慎重に、云々ではなく、値上げは絶対に避けるという大目標を立てた上で、以上述べました方向での議論を深め実践していく必要があると、重ねて強調し、討論とします。