日本共産党市会議員団は、報第2号2年度一般会計歳入歳出決算・報第4号2年度国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算・報第5号2年度介護保険事業特別会計歳入歳出決算に反対の態度を表明していますので、その理由を述べ、討論します。
決算に反対する第一の理由は、市民のくらしが厳しさを増す中、不要不急の事業を見直さず、市民の命とくらし、生業を応援するコロナ対策を何よりも優先しなかったからです。
決算年度は、新型コロナウィルスの感染が急激に拡大し、市民生活や中小企業、女性や子どもなど弱い立場の人たちのくらしを直撃した年度です。いつ感染拡大が収束するのかが見通せず、不安が広がりました。そんな時こそ不要不急の事業を思い切って凍結してでもコロナ対策をすべきでした。ところが市長は全く逆の市政を進めました。なんと市民新聞やメディアも使い、「500億円足らない。」「財政が破綻する」と市民を脅しました。そして、「次の世代に負担を負わせるわけにはいかない」「応益負担が必要」と福祉切り捨てにまい進しました。その一方で芸大移転や市庁舎整備などの見直しは全く行わないだけでなく、行財政改革計画を推し進め、京都市の財政を破綻させかねない膨大な負担の可能性がある北陸新幹線延伸計画などの大型工事は推進する立場ですから、全く認めるわけにはいきません。
第二には新型コロナへの対策です。共産党市会議員団は20回にわたるコロナ関連の提案や申し入れを行ってきました。とりわけPCR検査の拡充では、いつでもどこでも何度でも検査ができるように体制を整え、無症状者を早急に保護し、感染拡大を抑えるべきことを含め一貫して求めてきましたが、拡充の方針は示されませんでした。濃厚接触者の特定を含め、積極的疫学調査やきめ細かな感染対策の指導等、地域に根差した感染対策の重要性が明らかになったにも関わらず、保健所体制の集約化による悪影響や問題についての検証をしないのは問題です。その結果、現場では朝の3時4時までの時間外労働が常態化し、月100時間を超える職員が190人も出ました。保健所職員だけでなくあらゆる部署で過労死ラインを超え、職員の健康が守れない状態にまで追い詰めました。こうしたもとで、市民に対しては対応が遅れ、自宅で命を落とされる等、深刻な事態が生じました。日常から地域に根差した医療福祉との連携を強化してこそ、パンデミックから市民の命を守ることになります。公衆衛生行政の見直しを強く求めます。
反対理由の第三は財政危機キャンペーンを繰り広げたことです。決算年度後半は「毎年500億円足らないキャンペーン」を繰り広げましたが、我が党は決算議会の議論の中でまだ検討段階の2800億円の財源不足で危機をあおる姿勢を質しました。結局、急に出てきた財源危機キャンペーンはその規模については根拠に乏しいことが明らかになりました。そして、行財政改革計画に対する市民意見募集の結果については、9000通を超える市民意見を真摯に受け止め、行財政改革計画は見直すべきことを指摘しておきます。
第四には市民には財源不足を叫び、負担増を押し付けながら、大企業に対しては負担を求めない姿勢です。個人市民税については課税標準額700万円以上の税率を三位一体改革前の10%に戻せば45億円の財源が生まれる事。法人市民税は資本金3億円以上の大企業の法人税割を多くの他の政令市同様の8.4%に引き上げれば決算年度で3億6千万円、その前年は4億5千万円の増収になっていることを指摘し、共産党市会議員団は、コロナ禍でも利益を上げている大企業にこそ社会貢献を求めるべきと提案してきましたが、「検討する必要性」は認めつつも具体策はありません。日本の富裕層の資産は6兆円から24兆円に4倍化する一方で、労働者の実質賃金は23万円も減っています。収入の多い人に税負担を求めることは当たり前ではないでしょうか。また、国の地方財源を削減する姿勢を明らかにし、国に対して改善を強く求めるべきです。
第五の理由は地方自治体の第一の役割である住民の福祉の向上を投げ捨てたことです。財政難キャンペーンのもと、国の言いなりで「自己責任」「応益負担」を押し付け、福祉や教育まで「応益負担」を押し付けています。市長は「これまで行政が行ってきた施策を税金でする時代は終わった」と新自由主義を市民に押し付け、目先の利益のみで市民サービスを切り捨ててきました。市民税の独自減免制度の廃止は実施されれば、多くの市民のくらしが成り立たなくなる危険があります。また、今議会に提案されている敬老乗車証制度の改悪や児童館学童保育所の利用料の大幅値上げは、住民福祉の向上や子育て支援にまで応益負担を求めるもので決して許されるものではありません。子育てに冷たい京都市に子育て世代が住みたいと思うのでしょうか。見直すべきです。また、これからの日本を背負う若者支援について申し上げます。京都市は大学のまち、若者が多い街と言いながら、その支援策はあまりにも貧弱です。高すぎる学費負担の軽減や返済不要の奨学金制度を国に求めるとともに、京都市独自の奨学金制度の創設と学生生活への直接支援を強く求めます。
また、今年度の補正予算で「京都市中小企業等再起支援補助金、応援金」が創設されましたが、「幅広い事業者への支援」「京都の事業者を守る」と言う答弁があったものの不十分なものとなっています。持続化給付金や家賃支援給付金の再給付など、すでに要望されているものを実現させるためにも、国への更なる要望を行うべきです。また、他の自治体でも様々な施策への踏み出しを行っているわけですから、補助金の範囲での給付にとどまらない新たな中小企業や小規模事業者への支援策が必要だという事を強く求めておきます。
国民健康保険特別会計については、コロナ禍において保険料の値下げは今こそ必要です。しかし、保険料の値下げはされず、保険料減免や傷病手当については国施策以上のものはなく、市独自施策はありませんでした。コロナ特例減免は決算年度については大変喜ばれましたが、今年度については昨年度を基準にするため、改善策が必要です。
介護保険特別会計については、認定・給付業務の集約化・民間移管が行われ、調査内容についての丁寧な聞き取りができなくなり、的確に判定される努力が後退したことについての反省が必要です。市民サービスへの改善を求めます。
最後に、「国家プロジェクト」として京都市が推進の立場を示している北陸新幹線延伸計画について申し上げます。2兆1千億円と言われている工事費がどこまで膨らむかわかりません。8割が地下トンネルと言われ、搬出される土砂量は880万㎥にもなります。大量の土砂をどこに持っていくのか処理方法は未定です。さらに2001年4月の閣議決定では「施工時に大量の土砂を掘削した場地上への影響を及ぼす可能性がある」と注意喚起をしています。また、琵琶湖に匹敵する地下水への対応は不可能です。集中改革期間中の2年後に着工と言われていますが、市民の福祉を切り捨ててまで進める必要はありません。堀川・油小路地下バイパストンネル計画、鴨東線第3工区を含め無駄な大型事業は中止すべきことを強く求めておきます。
以上の点から、住民の命くらしを守る市政に転換し新自由主義からの脱却が必要だという立場を表明し、決算に対する反対討論とします。