本市会に北陸新幹線京都延伸計画への不同意の決議を求める請願について、わが会派は不採択に反対し、採択すべきと考えておりますので、理由を述べます。
本請願者の請願趣旨は全くもって妥当なものであります。なぜなら、第一に、本延伸計画が環境に及ぼし得る影響について何らまともな検討・検証が行われていないからです。
熱海市の土砂災害で大問題になった建設残土についてはどうでしょうか。京都府の環境影響評価委員会によると、8割がトンネル区間であるこの計画で発生する建設残土は880万立米。240人以下の規模の小学校のグラウンドにこの残土を積み上げたら富士山ほどの高さになるような量になると言われています。住民団体が鉄道運輸機構に質問状を出されたら、驚くべきことに「残土処分計画はない」との回答であったとのことであります。どこに残土を捨てるというのでしょうか。本市の山々の谷筋に捨てれば、重大な事態を招きかねません。
気候危機のもとゲリラ豪雨災害が相次ぐなかで、自然に手を加えて巨大なトンネルを掘り進めることの影響は計り知れません。ヒ素などの重金属が環境に放出される問題、水盆と呼ばれる豊富な地下水・水循環に与える大きな影響、東京都調布市で発生した大深度工事による地上での陥没事故など、まさに課題山積です。
鉄道運輸機構任せ、あとは野となれ山となれという市長の姿勢は重大です。市民の命や安全にかかわる問題を何ら検討することなく突き進む計画にものをいうのは本市会の責務ではありませんか。
第二は、費用負担について、請願者の危惧は当を得ているからです。
まず、延伸を進める根拠法である全国新幹線鉄道整備法の規定について述べます。同法では、費用負担について「当該新幹線鉄道の建設により利益を受けるものに対し、負担金の一部を負担させる」と規定しています。利益を受けるから負担金が発生する。すなわち、負担金が発生しないということは利益がないということであって、いうまでもなく、京都駅に接続させる計画である以上、京都市に負担が発生するわけであります。ましてや、都道府県に費用負担がなくなるというようなことはあるのでしょうか。市長は京都府と一緒に費用負担の実質ゼロ、極小化を国に求めておられますが、費用負担が消えてなくなるかのような話は全くのミスリードだと言わなければなりません。
先例である金沢敦賀間の福井県の負担は、駅設置市の負担金も含めて1700億円の負担総額となっています。与党プロジェクトチームは再来年にも着工を目指していますが、再来年とは、私どもが撤回を求めている本市の行財政改革計画の集中改革期間の真っただ中であります。請願審査にあたって、財政破綻という一方で矛盾していると質しましたが、行財政改革計画との関係においても「北陸新幹線についても対応をはかっていくべきもの」、「国家プロジェクトに対して協力することは自治体の責務だ」とまで当局は述べられました。市長、わが亡き後に洪水よ来たれとはこのことではありませんか。こうしたことの繰り返しが、自治体の債務増大の要因であることは明らかです。
行財政改革計画のパブリックコメントでも、北陸新幹線延伸について、意見は269件、その内3件しか賛成はありませんでした。市民の意見に耳を傾けるべきです。
新たな国土軸、東海・東南海・南海地震により影響を受ける東海道新幹線の代替機能などと、災害時対応が言われていますが、本市でこの夏発生した豪雨の災害復旧すら「お金がない」と財政難を理由にままならない状況で何を言っておられるのでしょうか。活断層を横切る延伸計画の安全性はどう担保されているのでしょうか。
また、このコロナ感染症のもとでライフスタイルをかえようという時代にあって、新たな国土軸・大量輸送鉄道が莫大な費用負担と環境負荷を加えてまで、社会に要請されていることなのでしょうか。また、日々の暮らしに必要な、JR西日本の既存路線の本数減など論外です。
財政破綻を叫びながら、福祉や住民サービスは削る一方で、財政上巨額の費用負担を強いる北陸新幹線延伸計画に同意できないと、議会が責任ある決議をと求める請願趣旨は全くもって妥当であります。
よって、本請願は採択すべきであることを重ねてのべて討論とします。