○1番(井上けんじ君) 京都市議会から選出いただいております井上けんじでございます。
認定第2号、2020年度特別会計決算について、質問をさせていただきます。
前年度の決算について振り返ってみるときに改めて思うのは、まさにコロナ禍の真っただ中の年度であったということであります。
では、そのコロナが被保険者の命と健康にどのように影響したのか。感染された被保険者がどれくらいいらっしゃるのか。その後、どういう状態で過ごされておられるのか。検査やワクチン接種の現状や推移はどうか。そして、こういったことが決算数値にどう表れているのか、表れていないのか。また逆に、決算の数字から見て、コロナの影響がどのように表われているのか、どのように読み取れるのか。そこからどういう総括が可能か。数字上の決算にとどまらず、いかに被保険者の命と健康を守ってきたか等々との観点から見た分析が明らかにされ、深められるべきだと考えます。
本広域連合の性格と限界はよく分かりますし、先ほど来、このテーマについては議論もありましたから、ダブらない範囲で結構ですので、可能な範囲で、まずこの点について、概括的・総括的に御答弁を願いたいと思います。
その上で、今回保険給付費についてですけれども、先ほど来、84億、2.4%などの御報告もございました。決算の参考資料の16ページによりますと、歳出は主に保険給付費でこれこれと。前年度と比較して91億7,796万円の大幅な減少となっているが、これは新型コロナウイルス感染症の影響による受診動向の変化等により保険給付費が減少したことによるものであると、このように書かれています。
また、主要施策の成果説明書の8ページによりますと、やはりこの減少の問題につきましで、「これは主に、新型コロナウイルス感染症の拡大による受診控えを要因として患者及び医療費が減少したことによるものです」と書かれています。受診の動向とその要因については、分析されておるとおりであります。
この点について、私の本年2月の議会での一般質問に対し、連合長は、昨年の末現在で、給付実績が2.9%、約60億円減少しておる、医療を必要とされておられる方が受診を控えられる実態がないか懸念されると、このように答弁をいただいております。その懸念が今回の成果説明書では受診控えとされていますから、だとすれば、受診を控えなくてもいいようにするためにはどうすればいいか。受診控えの健康への影響はどうか。安心して必要な診察や治療を受けていただくためには何が求められ、どういう改善が求められておるのか。どういう方向が今後の課題になるのか。2番目に、この点について見解をお聞かせいただきたいと思います。
本来病気を治す場所である医療機関に対し、通院すれば逆にその感染のリスクが高くなるなどと思ってしまう現実こそが、我が国の医療提供体制の不十分さを象徴していると思います。本府の場合、京都市乙訓医療圏はともかくといたしましても、医師やベッドなどの不足や偏在が以前から全府的に指摘をされてきました。丹後医療圏では通院に1時間以上もかかる場合や場所もあると言われ、また、中丹地域でも医師少数スポットと言われる場所があるとお聞きをいたしております。
府内4病院を名指しで統廃合の対象とした厚労省の方針は、いまだ正式には撤回されていませんし、政府が全国のベッドを減らす法律を通したのは、ついこの5月のことでありました。そして、今また入院制限、自宅療養の押しつけが大問題になっておるところであります。
もっと予防的な検査を面的に拡大をして、陽性者の早期発見と保護、早期治療、そして一般疾病の患者も安心して通院できる体制が必要です。医師、看護師の増員と医療機関への支援が必要です。医療機関へのアクセスを地理的・地域的にということだけでなくて、それとともに、安心して通院できる保障と仕組みと体制が必要です。受診を控えなくてもいいように、ましてその控えたことが重症化へとならないように、安心して受診していただける環境づくりに向けて、保険者として一層の改善が求められておると考えます。
残念ながら今回の決算では、受診控え以外の点についてほとんど何も明らかになっていません。私の読み方が浅いかもしれません。被保険者の実態やコロナの影響など、レセプトの分析はいかがでしょうか。もっともレセプトだけでは受診控えや医療提供不足のためにアクセスできないといった実態は明らかになりません。アクセスできなければ、病気になっても、患者にはなれません。この点で独自の調査や分析が要ると思います。
2月の議会での私と連合長の質疑応答における一つの論点は、医療提供体制の問題でありました。保険者である限り、保険事故に対して保険給付をしなければならない。その場合、給付の義務を果たすためには医療提供体制の裏づけがなければならず、その資任は保険者にあるのではないかと質問させていただきましたが、連合長は、おおむねそれは京都府の役割、あるいは国の役割であるとのことでありました。
そうであるならば、京都府におきまして、医療圏ごとに医者やベッドの必要数確保など、その裏づけを一層整備していただきますように、必要な連携や調整をぜひ図っていただきたい。京都府や各市町村との情報交換や連携も深めていただきまして、被保険者の命と健康を守るための取組のさらなる発展・強化を強く求めるものであります。京都府などとの連携、その他今後の総括的な方向性について、御見解をお示しいただきたいと思います。
以上、積極的な御答弁を期待して質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○副広域連合長(渡辺 隆君) 井上議員の御質問にお答えします。
まず、新型コロナウイルス感染症に係ります被保険者への影響についてでございます。
新型コロナウイルス感染症につきましては、感染症法や特別措置法などで位置づけられておりまして、その予防や感染防止の観点から、感染状況などの情報は国や都道府県などで適切に収集、把握され、対策が講じられているものと考えております。
広域連合におきましては、被保険者の感染状況などが提供される仕組みやルールはございませんで、あくまで公表されている情報を収集しているところでございます。決算数値などへの直接的な影響について分析することは、なかなか困難ではないかというふうに考えておるところでございます。
そのような中で、全国的な状況ではございますけれども、府においても、先ほど御紹介がありましたように、医療給付費が前年比2.5%減少しており、新型コロナウイルス感染症による受診控えが少なからず影響しているものと考えてございます。また、毎年市町村に実施をお願いしております被保険者に対する健診につきましても、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして、集団検診を中止する市町村が発生するなどによりまして、検診の受診者が前年度に比べ3,800人程度減少したところでございまして、市町村が実施します健康啓発、教育事業などにおきましても、事業の中止、規模の縮小など、影響が生じておるところでございます。
受診控えに対する対応についてでございますけれども、これは新型コロナウイルス感染症に対する感染予防の観点からの行動であるというふうに考えられますけれども、保険者が効果的な対策を講じるというのはなかなか難しいんじゃないかというふうに考えておりまして、国によるコロナワクチンの普及などの感染症対策が、さらに推進されることが重要であるというふうに考えてございます。
また、医療提供体制の問題でございますけれども、これは2月にも答弁させていただきましたけれども、負担が増大している医療機関などに対します体制の整備、維持などの必要な対策ですとか必要な財政支援を講じるよう、全国広域連合協議会を通じまして国に要望しておるところでございます。
府や市町との連拶を密にして、感染予防をはじめとする感染症対策を講じていくべきとの御意見であったかというふうに思いますけれども、新型コロナウイルス感染症については、その特殊性もございまして、法で役割が明確にされております。情報提供などにおいても、個人情報としての制約というのがある中で、広域連合が直接的に参加していくというのはなかなか難しいというふうに思っております。
広域連合としまして、今和2年度から実施しております一体的実施推進事業などの被保険者に対する保健事業の分野では、これまでから府や市町村と連携を取りながら実施してきておりまして、被保険者への個別訪問などによる保健指導や通いの場を活用して、重症化予防や健康状況不明者の状況把握などの取組を進めております。令和2年度におきましては、ハイリスクアプローチとして700名程度の方に対して対応をしてきているというような状況もございます。コロナ禍の中にありまして、このような事業の中で、被保険者の方に対しましてどのようなことができるのか、府や市町村と共に検討・工夫していきたいというふうに考えてございます。
いずれにしましても、後期高齢者の皆さんが必要なときに必要な医療サービスが受けられますよう、今後とも京都府、市町村と連携を十分図りながら取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
○1番(井上けんじ君) 御答弁、どうも本当にありがとうございました。
広域連合がなかなか、限界を持っているといいますか、そもそも性格からいって詳細な把握がなかなか困難だという面も十分に私も理解はできるところでありますけれども、一方で、春も言いましたけれども、この2月議会でも言いましたけれども、特別地方公共団体といえども、住民の福祉増進を図ることを基本とすることについては、普通団体と何ら変わるところがないと。その名のとおり医療に限定するとしても、その医療の範囲の中で被保険者とその御家族の命と健康を守ると。連合長も副連合長も、必要なときに必要な医療が受けられるようにとおっしゃっていただきました。ならば、その裏づけといいますか、担保といいますか、その確立・確保のために、引き続いて独自的に御努力いただくとともに、広域連合協議会を通じて、あるいは京都府や各市町村との連携を一層密にしていただきまして御尽力いただきますようにと重ねて求めまして、第2質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【請願趣旨説明】
○1番(井上けんじ君) 紹介議員の立場から、本議会に提出されております2本の請願について、それぞれその趣旨を紹介させていただきます。
最初に、一部負担金の一部2割への引上げ中止を求める請願についてであります。
具体的な実施は来年の参議院選挙後とされておりますが、まず、このこと自体が選挙への影響を避けたいという、誠に与党の党利党略的な発想です。首相は、大きな影響はないとは言いながら、実は国民に負担を押しつけるとの認識があるからでしょう。もちろん、だからといって、請願者も私も、お分かりのように早く具体化すべきという立場でないことは明らかであります。当然であります。
そこで第1に、その具体的な実施の時期の決定を政令に委ねることが、まず国会軽視と言うべきだと思いますが、問題は実施時期の決定だけにとどまらないことであります。今回は.年収200万円以上と示された上での議論でしたが、今後は所得基準の線引きも併せて政令に委ねられ、国会の議論抜きに、政府の言わばさじ加減一つで基準が下げられ、2割対象者が拡大されるという懸念がついて回ります。
第2に、何よりも被保険者の命と健康に関わる大問題だという点であります。厚生労働省は、負担増による受診行動の変化で医療給付費が配慮措置終了後、年間1,050億円も減少すると試算をしています。受診行動の変化とは、受診抑制、受診控えのことにほかなりません。
窓口一部負担金は、一般の買物のように、買う前にその価格が分かった上で買うかどうかを決めるというものではなくて、買ってから、受診してから、後でその価格が分かるという仕組みですから、どうしても受診をためらうことになってしまいます。早期発見、早期治療に逆行し、かえって重症化したりすると、結局医療費も一部負担金も負担が大きくなるという財政や費用の問題とともに、むしろ、何よりも命と健康に関わる大問題となってきます。このことは既に参議院の附帯決議でも、必要な受診が抑制されることにより、疾病の早期発見が妨げられ、重症化につながることがないようにと言われておるとおりであります。配慮措置、措置経過措置といっても、一時しのぎの弥縫策にすぎません。
第3に、政府はしきりに現役世代の負担軽減を強調していますが、国会の議論や厚労省の資料によりますと、現役世代の負担軽減は1人年僅か350円。現在22歳の人が74歳まで支払う保険料の軽減額は平均計約2万円にしかすぎない一方で、75歳以降は毎年平均3万4,000円の負担増になり、またこれは高齢の家族の生計を支えておる現役世代の負担にも及ぶものであります。
片や事業主の保険料負担は300億円減少、国、自治体の公費負担は980億円も減るということでありますから、問題の本質は現役世代の負担軽減云々の話ではなくて、大企業や、特に公費負担の減額にこそあると言うべきでありましょう。
後期高齢保険には現役世代からの支援金が投入されておるとよく言われますけれども、一般的な保険原理からいえば、給付の有無や程度が被保険者によってそれぞれ様々なのは当たり前でありまして、そこをならしてリスクを分散させるのが保険の役割なのに、リスクの高い人たちばかりを独自に集めた保険ということになれば、これは保険としてなかなか成り立ちにくいことは明らかであります。はなから無理があることが分かり切っておる。
本制度発足以前のとおり、年齢にかかわらず同一の保険の被保険者同士であれば、同じ保険の同じ被保険者同士のリスク分散ですから、健康で給付を受けない被保険者がおられたとしても、この人の、この方の保険料を支援金などとは言わないことは当たり前の話であります。強制保険であり、また社会保障としての社会保険ですから、国や自治体が責任を持つのは当たり前であり、現役世代云々の根拠は既に崩れています。公費を減らすために、公の費用を減らすために、その口実として世代間の対立をあおっておるだけの話だと私は思います。
2017年の厚労省の資料によりますと、医療費全体約43兆円の負担割合は、国25%、国民は保険料28%と窓口負担12%を合わせて40%にもなるとあるドクターが書いていらっしゃいます。老人医療について言えば、もともと1980年代当時、国庫負担割合が45%、今日の後期高齢者医療に占める割合は2020年度で33%にまで低下しています。社会保障としての社会保険であり、そもそも保険料を払っておるのでありますから、一部負担金は軽減を目指すのが当然です。実際、先進諸国では既に無料または軽減の方向です。
非正規を増やして労働者を社会保険から排除することによって、特に大企業の事業主負担が大幅に減っておることが社会保険財源に大きな穴を空けています。したがって、大企業と、また特に国の負担割合を増やすこと、元に戻すことこそが求められておると思います。
第4に、今年の政府の骨太方針や財政制度審議会などでは、今回の2割引上げをいまだ道半ばなどと言って、今後の一層の負担増や制度改悪を示唆しておる問題であります。3割負担の対象者の拡大、収入所得だけでなく、資産も要件としていくなどとうたわれています。介護保険についても、2割、3割の対象拡大で利用料の引上げを今後検討されています。この8月から既に介護保険では施設の補足給付が見直され、大幅負担増になっています。
今回の2割化は、今後の一層の負担増へ続く階段の一歩にすぎません。消費税増税、年金受給額引下げ、介護保険料値上げ等々に加え、今般、新型コロナウイルスの影響で高齢者と国民全体の収入減と負担増が続き、コロナ封じ込めの積極的な戦略抜きの自粛要請ばかりで、暮らしや仕事、老後の生活が全く大変な現状に置かれています。
そんな中で今回の2割への引上げが、全国的に370万人、本府広域連合においても7万9,000人、20.8%もの被保険者に及びます。本広域連合では、保険料軽減対象者は65.5%、所得100万円未満が81.6%、200万円未満が実に94%を占めておられるという現状でありますから、今回の引上げは誠に暮らしと命にとって影響甚大と言うべきであります。
次に、傷病手当金と保険料減免制度のそれぞれの改善を求める請願についてであります。
傷病手当金がこの間、2度にわたり期間が延長されたことは歓迎したいと思います。しかし、その対象の範囲については、本来は新型コロナウイルス感染症に限らず、一般の傷病とする、疾病とする、狭義の、狭い意味での被用者に限らず、限定せず、事業主等も含む制度とするとすべきだと思います。もともと後期高齢者医療保険は職域保険か地域保険かといえば、確かに地域保険であるとは思いますけれども、その被保険者には労働者も含まれ、自営業者や無職の人たちとも区別なく、一律の強制加入の保険でありますから、百歩譲って、少なくとも労働者、被保険者にとっては職域保険と同様の傷病全般が、文字どおり傷病手当の対象とされるべきであります。
その上で、今般のコロナ禍の下でコロナの感染に限ったとしても、労務に服することができない、そのために収入が得られないとの要件は何も被用者、労働者に限ったことではなく、事業主等でも全く同じであると、本請願はこの点の改善を求めておられます。ましてフリーランスなどと呼ばれる働き方、働かされ方の人たちは、外見は独立自営業者と見えて、実際は労働者あるいは労働者的性格を色濃く備えておられる例が多く、ぜひ対象に含めるべきだと考えます。
なお、これまでの支給実績は、前年度、今年度いずれも京都市となっておりますが、他の市町村でも、せっかくの期間を延長していただいておるわけですから、より一層の広報、制度紹介に努めていただきますように、この点は要望しておきたいと思います。
保険料減免制度の前の年との要件は、コロナの影響が1年近くであった段階での設定で、今日のように、もはや1年半以上にも及べば、本請願が指摘されておられるとおり、改善が当然だと思います。比較対象とする前の年自体が既にコロナの被害により減収となり、それが今日まで続いておるわけですから、これは言わば低止まりで、対前年比10分の3の要件を満たさないことになってしまいます。連合長におかれまして、早急な改善をぜひ求めたいと思います。
以上、これら2本の請願はいずれも、第1に、国において中止あるいは改善されたいということと、第2に、本府、本広域連合として措置されたいとの二重の意味を含んでいます。後者について言えば、本年6月1日の参議院厚生労働委員会で田村厚生労働大臣が、窓口負担増の自治体独自の軽減策については、地方自治の精神に鑑みるとできると、このように答弁をされておられます。本請願が採択されれば、本広域連合として独自に措置するか、もしくは各市町村、構成団体に応分の負担を求めて協議されるか、何らかの対応を求めることになるでしょう。
第1のほうの国に対応を求める問題については、意見書として議長において描置していただく扱いになるかと思います。先輩、同僚各位の御賛同を求めまして、請願書の紹介とさせていただきます。どうもありがとうございました。