日本共産党京都市会議員団は「学校教育におけるデジタルトランスフォーメーションを適切に進めるための意見書」(案)について反対の態度を表明していますので、理由をのべ討論します。
党議員団は、教育におけるICTの活用について、使い方によっては有効なものとなることを否定するものではありません。しかし、今子ども達に必要なのは、人と人との関わりの中で育まれる公教育の意義の発揮であり、一刻も早い少人数学級の実現こそ求められています。すなわち、子ども達は、行事や実技の教科だけではなく、個別学習・グループ学習・全体学習を通じて友達と意見交換をする中で、深い学びへと導かれていきます。集団的な学びにこそ公教育の意義があります。先生が子ども達に目配りして適切な学習が進められるように、少人数学級の早期実現が必要です。
しかし、2021年度の文部科学省予算は、少人数学級実現のための予算が含まれているものの、教職員の給与等にかかる支出については前年度比で58億円減となっています。これに対して、GIGAスクール構想の充実などICT化のための予算の充実は263億円と多く盛り込まれています。意見書(案)では「ICT支援員」の充実のための予算の検討を求めていますが、そもそも教員や支援員の充実、少人数学級の早期実現が先決事項であり、そのための予算こそ増やすべきです。
また、ICTや先端技術を使い、一人一人の子どものデータを分析して、それぞれの子どもに「最適化」された学習内容を提供しようとする「個別最適化された学び」は、結局は、教育の孤立化、画一化につながる恐れがあります。さらにICTはあくまで道具であり、その活用のために教員の負担が増すのは本末転倒で、教員の自立性・専門性が尊重される必要があります。
そもそも、経済産業省の「『未来の教室』とEdTech研究会」の提言や、文部科学省の「Society5.0に向けた人材育成」の提起は、生産性の向上に役立つための人材を育成するという経済界の要求によるものですが、「人格の完成を目指す」という教育本来の目的から外れる上、「個人の情報の管理」と言いながら民間業者の儲けのために学習データを利活用させることは個人情報保護の観点からも重大な問題があります。
最後に、大阪市では緊急事態宣言下で、準備が不十分なまま市立小中学校でオンラインの授業がすすめられ、現場の混乱や、保護者の不満を生じさせました。教育のICT導入は混乱の中で、性急に進めるべきことではありません。ICTの活用には健康被害の可能性も指摘され、また経済的な教育格差を是正する措置も求められており、課題は山積しています。いかなる時にも子どもに寄り添い向き合える学校教育へと、少人数学級の早期実現に注力すべき時であるということを、改めて申し述べ討論とします。