日本共産党京都市会議員団は、報第2号2019年度一般会計決算および報第4号2019年度京都市国民健康保険特別会計決算について反対の態度を明らかにしておりますので、その理由を述べます。
反対する理由は、第一に、消費税増税で景気が落ち込む中で新型コロナがさらに市民の暮らしと営業を追い込んでいるときに、市民にさらなる負担を押し付ける方針を示した点です。消費税増税分を施設の使用料や料金に転嫁したことで、市民負担は10月からの半年間だけでも8億3千万円増やされました。新型コロナにより市民の暮らしと営業は一層深刻になっています。中小零細事業者からは「持続化給付金はもらったけどももう資金は底をつき、このままでは年末を乗り切れない」、医療機関からは「コロナ対策と受診抑制で経営破綻の危機に直面している」と悲痛な声が寄せられており、更なる手厚い支援策が必要です。年度末に設置を決めた「行財政審議会」を軸に、市長は敬老乗車証制度、学童う歯事業、民間保育園への補助金、国民健康保険会計への繰り出し金など「市独自の福祉施策の見直しに着手」と削減方針を示していますが、これではますます市民生活の疲弊を招くことになります。福祉の後退などあってはなりません。
第二に、市職員の削減や民間委託など行政の公的責任を後退させている点です。公衆衛生や医療・福祉など、ケアに手厚い社会の構築の必要性が明らかになる中で、国や本市の施策の不十分さが、より一層鮮明になっています。
保健所体制をめぐっては、決算年度の2月から新型コロナ感染症拡大に伴い保健師などコロナ対策に当たる職員の超過勤務が恒常化し、応援体制を組んでも8月は最大228時間、平均で131時間の超過勤務、派遣会社の人員を組み入れても9月も100時間を超える超勤となり、深刻な事態に陥っています。従来からの保健所業務の拡大と今後の新たな感染症対策など地域の医師会等との日常的な連携強化・リスクの分散も考慮すれば、正規の職員体制の抜本的拡充と各行政区への保健所の再配置が必要です。
証明書郵送申請業務や介護認定・給付業務の集約化・民間委託の推進、市税業務の集約化により職員削減がすすめられました。今年発生した災害では、職員リストラの影響で、避難所に配置すべき市職員を配置できない区役所が生まれるなど、中規模の災害対応さえもまともにできない状況です。年間720時間を超える超勤をおこなった職員は48人。京都市美術館職員の超過勤務をめぐっては市長に対し人事委員会初の是正勧告まで行われました。市長が自慢する職員削減路線は破綻しており、直ちに増員による打開を求めます。
学校の在り方をめぐり、教育委員会は少人数学級への国の裏付け予算が拡大したにもかかわらず、小学校3年生まで35人以下学級を拡充しなかった点は納得いきません。感染予防対策の観点や丁寧な学びとケアを保障するために少人数学級への機運が高まっていますが、本市としても最大限の努力をしつつ、国へも抜本的な制度改善と財政支援を求める声を上げるべきです。
市営保育所の廃止と民間保育園への移管を推進されましたが、保育の公的責任を後退させるものであり認められません。民間保育園の保育士の処遇を抜本的に引きあげること、介護や障害者福祉などの担い手への手厚い支援は、新型コロナ禍において一層必要になっています。
第3に、「財政危機」を強調する一方で、不要不急の大型公共事業を聖域化している点です。鴨川東岸線や北陸新幹線や堀川地下バイパストンネル計画について推進の姿勢を改めていません。行財政審議会において京都市自身が、京都市財政の厳しさの要因として、事業費が2倍になった地下鉄東西線などの「大規模投資」を指摘しながらも、そのことへの反省が全く見られません。地下鉄以外でも、市内高速道路2路線の建設につぎ込んだ税金は総額約670億円に上りましたが、新十条通は高速道路としては破綻しました。鴨川東岸線第3工区事業は総額70億円が投じられようとしています。こうした大型事業は聖域なく見直すべきです。
第4は、新景観政策の高さ規制などの緩和や宿泊施設拡充・誘致方針が、地価高騰や住宅地への宿泊施設乱立を招き、若い世代の人口流出を加速させ、京都のまちの「持続可能なまちづくり」を困難にしているからです。京都市が次々と宿泊事業を許可する下でも、粘り強い地域住民の説得により事業者が宿泊事業を断念したところでは、マンションや住戸に転換されることで、あらたな定住者が入るケースが少なくない規模で生まれています。立地規制強化こそ、今必要です。
第5に、気候危機を宣言しているにもかかわらず、その危機感にふさわしい行動がなされていない点です。2020年に25%削減、2030年に40%削減という現状の目標達成の観点から考えても、太陽光パネルの普及はこの一年で従来よりも、より多くの量を推進すべきでしたが、その伸びは鈍化し、補助金の執行も半分にとどまりました。車を呼び込んだり、莫大な電力を消費するなど、地球温暖化対策に逆行するという点からも、堀川地下バイパストンネル計画、リニア中央新幹線・北陸新幹線の京都延伸などの推進方針は撤回すべきです。
国民健康保険特別会計については、高すぎる国民健康保険料は負担の限界に達しており、値下げの努力が必要です。コロナ禍において、すべての被保険者に正規の保険証の交付を求めるとともに、学資保険までも差し押さえの対象にすることはやめることを求めます。
最後に、今後の財政運営について申し上げます。市長は、2019年度の決算の現状として「三位一体改革以降の地方交付税などの大幅な削減により、一般財源収入はピーク時から224億円減少した状況」と説明しておきながら、一方で、「三位一体改革の理念は正しかった」などと答弁し、国の方針を肯定しました。新型コロナの影響により88%の地方自治体が財政悪化を見込んでおり、国の地方切り捨て政策そのものの抜本的な転換なしに、地方財政危機の展望は開けません。今、市長がすべきことは、国に追随して京都市独自の福祉施策を削減することではなく、他都市や市民と一丸となって国に対して声をあげることであります。
なお、大型汎用コンピュータ整備に関しては、しっかりとした検証を求めます。同時に、国がすすめる自治体システム標準化の狙いは公的業務の産業化や自治体の圏域化にありますから、批判的な検証が必要であることを指摘して討論とします。