2019年12月13日本会議にて、「仁和寺周辺地域の景観及び住民の生活環境の保全について」との請願を不採択としたことについて、日本共産党京都市会議員団を代表し、山本陽子議員が反対討論を行いました。討論の内容は次の通りです。
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請願657号仁和寺周辺地域の景観及び住民の生活環境の保全について、不採択に反対し討論を行います。本請願は、第一に仁和寺門前に計画中のホテル建設について、京都市上質宿泊施設誘致制度に基づく特例措置を実施しないことを求めています。
第一種住居地域の用途規制で原則3000㎡まで可能とされている宿泊施設について、およそ倍近い延床面積5800㎡、72室もあるホテル建設をすすめようとする内容について、請願者の「住環境、生活環境が次世代にも受け継」ぐことができなくなるとの懸念は当然です。
まずは住環境についてです。周辺には保育所が4か所、小中学校も近く、仁和寺の北には、府立ろう学校、福王子の手前にはうたの・ひこばえ児童館、障害のある子たちの放課後クラブ、就労支援事業所ひこばえの併設された施設など、特別の配慮が必要な施設に囲まれています。通学、散歩、送迎で子ども、保護者、保育士などが頻繁に通行する地域に大きなホテルが建つことに対する安全上の不安も大変理解できるものです。また、24時間営業のホテルが建つことによる、夜間照明・車や観光客による騒音の不安もあります。
仁和寺に行くためには東西の5差路を通過する必要がありますが、特に東の一条通りの5差路は点滅信号になっており、車両・歩行者いずれにも注意が必要な道路になっています。JRバス市バスは、今でも観光シーズンには渋滞・満員で20分から40分以上遅れることもしばしばで乗れないことが多い中、さらに混雑が増すことへの不安、安全上の心配もあります。
請願者が求めていることの二つ目は、世界文化遺産仁和寺のバッファゾーンにふさわしい自然環境や風情、景観を守ることです。
景観については、世界文化遺産に登録されている仁和寺門前の東西および南北の視点場からの眺望は近隣住民だけでなく、世界から訪れる人たちの宝ともいえるほど美しいものです。ここに大きなホテルが建てば、前方の双ヶ岡は門前を20mも西に行くとホテルによって完全に隠れるでしょう。西山連峰も同様です。壁のように立ちはだかるホテルは仁和寺前には似合いません。
自然環境については、地下1階建て、そしてホテル建設を前提とした地下700mの温泉掘削計画もあるということですが、当該地は平安京造成のころから地下水脈が豊かな湿地であり、地下水脈を広範囲に断ち切る、あるいは深く掘ることによる周辺地域への影響や災害のリスクはないのでしょうか。不安は募るばかりです。
このような中で、京都市が大規模ホテルを積極的に誘致することは認められません。
京都市は、4902筆の署名の重みを「しっかり受け止める」と言いながら、請願者が「地域の混乱を招いている、心理的圧迫を与えている」と述べました。問われているのは京都市の責任なのに、地域を愛する市民に責任を転嫁することがあってはなりません。ましてや、仁和寺地域を愛する市民を分断させるような手法は、絶対に許されないことを強く指摘しておきます。
市長は「市民の安全安心、地域文化の継承を重要視しない施設はお断り」と宣言され、また「京都は観光のためにつくられたまちではない」とも言われました。そうならば、仁和寺門前の住居専用地域が広がる静かな地域に、門前の風景を大きく変える、大規模なホテル建設は行わないようにすべきです。
本請願に賛同する署名4902筆が3か月の間に瞬く間に集まり、京都市に届けられています。仁和寺地域を愛する多くの皆さんの願いに答えていただきますよう、賛同を求め討論といたします。