日本共産党京都市会議員団は、公営企業各特別会計決算のうち、報第14号・水道事業特別会計、報第15号・公共下水道事業特別会計、及び報第17号・高速鉄道事業特別会計については認定し、また、報第16号・自動車運送事業特別会計については認定しないとの態度を明らかにしています。それぞれの理由を述べ、討論します。
決算特別委員会の議論では、地方公営企業法第3条に関わって、公営企業の「本来の目的」が「公共の福祉の増進」であることをあらためて当局答弁でも確認しました。この立場から、何より公共交通と上下水道の事業を通じて、住民の移動の権利を保障し、命の水を安価で安定供給することへの責任が求められることをまず指摘しておきます。
上下水道事業については、水道民営化やコンセッション方式の導入について「現段階では根幹業務は公営を堅持」との決意が述べられたこと、また、「京(みやこ)の水ビジョン」に基づく取組の中で、目標を上回る利益を確保し、企業債残高も削減しながら、鉛製給水管の解消に向けた助成制度の拡充や、老朽管更新のスピードアップ・耐震化等を計画的に進めていること、その財源を確保していることが認定の理由です。
老朽管更新についてはその大部分を占める支線補助線への国補助制度の拡充が不可欠であり、より一層の国への要望強化が必要です。また、命の水という観点から、水道料金への福祉減免制度創設を引き続き強く求めるとともに、給水停止は行わないことを求めます。
一方、改正水道法により、国と都道府県の主導で進められている「水道広域化」については、「自治体の自主性が奪われること」「水道事業から市民や議会が遠ざけられること」に加え、「そのねらいはコンセッション方式導入にあること」が、先行自治体での事例や内閣府の文書でも明らかとなっています。また、決算年度には料金関連業務が世界的な水大手企業・ヴェオリア・ジェネッツ等に委託されたことをはじめ、これまでから様々な業務で民間委託を拡大し、技術や経験が求められる水道職員を削減してきたことは問題です。来年度には、下水道管路管理センター西部支所について、災害対応も含めた「包括委託」が実施されようとしていることは、水道事業の根幹を揺るがしかねないものであります。上下水道局本庁舎移転についても、京都駅前の規制緩和・開発ラッシュの流れと一体であり、PFIにより進めようとしていることも問題です。水道事業は「公営を堅持」することをあらためて求めます。
地下鉄事業については、乗客増に取り組みながら、バリアフリー化の進展・強化、バス地下鉄の乗継割引率の拡充が図られたほか、烏丸線への可動式ホーム柵全駅設置に向けて取り組まれていること、国への補助制度改善について引き続き要望中であることなどが認定の理由です。
地下鉄は大規模な施設の建設・維持管理・更新を要する事業であり、国補助制度の抜本的拡充が不可欠です。引き続き、国への要望活動を強化することを求めます。ホーム柵全駅設置に向けて「烏丸線の車両更新で自動列車運転装置付きのものを発注した」こと、「今年度中に全駅設置に向け具体的計画をまとめる」こと、「近鉄との協議も進めている」ことは重要です。合わせて、千本北大路下がるライトハウスに通う方が多く利用される北大路駅は、国土交通省方針にある「駅周辺に目の不自由な人の関連施設が存在するなど、整備要望が多い駅」でもあり、先行して設置することが求められます。身体障害者の方からも「混雑時のホーム移動はこわい」との声が寄せられており、計画のテンポを引き上げ、一日も早くホーム柵の全駅設置が実現するよう重ねて求めるものです。
市バス事業については、バス待ち環境改善や乗継割引率の拡充、均一区間拡大への姿勢などについては評価するものですが、16年連続黒字でありながら日本一高い運賃が継続されていること、交通不便地域の対策については地域住民まかせで交通局としての主体的姿勢が極めて弱いこと、さらに、決算年度も運転手のみなさんに不安定な身分と低賃金を強いる若年嘱託制度や管理の受委託などが継続されていることが認定できない理由です。
若年嘱託制度については、地方公務員法改正に伴い来年度から廃止され、「正職員と変わりなく働くため一般職として採用する」ことは重要です。しかし、交通局運転手の給与表は2つあり、元々の企業職1表に加え、給与額が「標準的に言えば1表の82%」となる5表が2000年度から採用されており、5表で働く運転手は給料が少ない状況となっています。市民の命を乗せ走る市バス運転手の働き方が同一労働・同一賃金となっていないことは問題であり、公共交通の安全と市民の命を守るという点、そして運転手確保の点からも、給与表は1表に統一し、労働条件の改善を図ることを求めます。
また、管理の受委託について、民間事業者の撤退・直営化拡大で費用負担が増大することを「導入当初想定できなかった」との答弁がありましたが、これは民間委託路線の破たんと公共交通に責任を持つ京都市の見通しの甘さを浮き彫りにするものであります。そもそも、国の規制緩和により、運転士の給与を極限まで抑え続けてきた結果、全国的にも運転士不足が顕著となり、現在の状況を招いています。京都市は「任意の補助金を受け取らない」との態度に固執していますが、全国的には交通事業に対して一般会計からの繰入を行っており、国の補助金を求めることと合わせて一般会計からの繰入を行い、市民の足を守るべきことを求めます。
均一区間の一層の拡大、乗継の抜本的改善、交通不便地域への路線拡大、ダイヤの改善、民間バスへの支援など、市民の移動の権利を保障し、ライフラインとしての役割を一層発揮されるよう求めるものです。
最後に、上下水道局と交通局に共通するテーマとして、我が党は、運賃や料金・使用料に消費税を転嫁・上乗せすべきでないと求めてきましたので、この問題についても触れておきます。
消費税10%への増税は格差と貧困を広げ、消費をさらに冷え込ませ、市民生活に重大な負担を押しつけるものです。ライフラインそのものである市バス・地下鉄・水道事業で、消費税増税を料金に転嫁することは絶対に避けるべきです。以前の当局答弁でも確認したように、京都市が消費者に消費税を転嫁・上乗せする法的根拠もありません。
国に対して「増税撤回」を求めること、「公営企業への消費税適用除外」を求めること、「市独自でも市民への転嫁を行わない」ことが、市民生活の防波堤としての自治体の役割であることを指摘して、討論とします。