○くらた共子議員 京都市のくらた共子です。まず、7月18日に発生した京都アニメーション第1スタジオにおける火災についてです。
多くの方々が犠牲となった本事件は痛恨の極みであります。ここにお亡くなりになられた方々を悼み、ご家族や関係者に心からお見舞いを申し上げます。
事件の真相はいまだ不明でありますが、二度と繰り返されることがあってはなりません。この件に関して、関西広域連合として、国への緊急要請が行われました。国におかれて、早急な対応がとられるよう求めるものです。
では、質問に移ります。
私は、自治体のあり方について2点伺います。
まず1点、自治体戦略2040構想における公共サービスの産業化についてです。
自治体戦略2040構想は、自治体が担っている公務労働の成長産業化を図る狙いがあります。そのターゲットは2015年3月11日の経済財政諮問会議に示された文書に、歳出規模も大きく、かつ国民生活にも深くかかわる社会保障サービス、地方行政サービス分野であるとしています。京都市の例では、現在、介護保険の認定・給付業務の集約・民間化が問題となっております。介護保険の要介護認定と保険給付事務は介護保険制度の根幹業務であり、制度の実施主体である市町村が制度の根幹を民間企業に明け渡すことは、この制度に対する責任を放棄することになるのではないかと考えます。既に、認定業務を民間委託した先行都市では、制度の安全性が担保できない弊害も指摘されております。
現在、国の自治体戦略2040構想に公共私によるくらしの維持が掲げられたことを受け、第32次地方制度調査会において、公共私のベストミックスについて議論されていますが、このように、個人情報を扱い、かつそのことが生命の尊厳に直結する事務を市場化することは、住民の福祉の向上を図る自治体の使命に反する重大性があると考えます。
よって、このような国の動きに広域連合として反対の意を示すべきではないでしょうか。また、さまざまな連携を進めている広域連合として、公共私の役割分担についてどのように考えているか、連合長のお考えを伺います。
次に、2点目はインバウンド観光政策についてです。
国の観光立国論のもと、広域観光の振興が喧伝されてきました。しかし、大規模に外国人観光客を誘致しても、これまで地域経済の循環につながってきた国内観光客数が減少することなどで住民生活は潤っていません。さらに、これも京都市の例ですが、京都市では外国人観光客数の急増により、市バスの混雑や住環境への悪影響、管理者不在の民泊や簡易宿所の宿泊客による夜間の騒音などが原因で、何と既存の旅館の顧客離れも起こっております。さらに、市内中心部へのホテル建設ラッシュが地価の高騰を招き、子育て世代が市外へ流出する問題も生じております。
また、市内中心部では、路地奥から次々と家主不在の簡易宿所が設置されて、住民の暮らしの共有スペースである路地の安全性が守れない、管理者不在の簡易宿所で火災が発生しても、管理者の到着は住民を通して通報を受けた40分後、事業主の到着は事の発生から1時間10分後であります。宿泊者や近隣住民の安全性が守れない、このような重大な実態があることを指摘をしてまいりました。
このような状況のもと、京都市内住宅密集地においては、一過性の観光公害というレベルを超えて、まちそのものが壊れていく状況に大きな危機感が広がっております。
今や、観光公害、オーバーツーリズムという言葉が報道されない日はありません。世界的には観光地の総量規制が主流となっております。質のよい観光産業を実現するには、外国人観光客誘致一辺倒から脱却し、地域それぞれの産業の活性化と人々・住民の暮らしの安定を図ることこそ、最も必要と考えますが、いかがでしょうか。
まず、この2点お答えください。
○議長(菅谷寛志) 井戸連合長。
○広域連合長(井戸敏三) ご指摘の自治体戦略2040構想研究会の報告によりますと、2040年には団塊ジュニア世代も高齢者になる、そういう状況を踏まえて、子育て・教育とか、医療・介護とか、インフラ・公共交通とか、空間管理・防災、労働力、産業テクノロジーという、それぞれの分野での担い手の不足問題や、それに伴います経営悪化などの課題が発生するのではないかと指摘をされています。
そのこれらの課題に対応していくためには、自治体行政も基本的な転換が必要になってくるのではないか。まず、AIとか、ロボティクス等を使いこなすスマート自治体への転換が必要だ。2つに、自治体が新しい公共私相互間の協力関係をつくっていくことが必要なのではないか。これらによって、公共私によるくらしの維持等が提言されていると考えています。
経済界や連携団体など、さまざまな主体との連携・協働を推進していく必要があるということなのではないかと思っています。
関西広域連合としては、市町村行政のフルセット主義からの脱却などの記述に対しましては、さまざまな意見があることは承知しておりますけれども、この提言全体として、公共団体としての取り組む課題が示されて、整理されたものと考えられますので、一概に異を唱えることはいかがかと思っております。
人口減少の中で、少子高齢化が急速に進んでいきます。そのために、多様化する地域課題に適切に対応していかねばなりません。そのような意味で、公共私の役割分担は必要と考えられます。そのような意味で、住民にとって最もよい住民本位の役割分担を基本として、これからも検討していかねばならないのではないか、こういうふうに受けとめていきたいと思っているものでございます。
○議長(菅谷寛志) 西脇委員。
○広域観光・文化・スポーツ振興担当委員(西脇隆俊) インバウンド観光政策についてでございます。
我が国全体の人口減少が進む中、地域経済の持続的な発展を実現するためには、交流人口の拡大を図ることが重要であり、その中心的役割を果たすのが観光であります。
観光産業は極めて裾野の広い産業であり、地域経済への波及効果が高いことから、好調なインバウンドによる経済効果を関西全体に行き渡らせていくことが重要と考えております。
観光の振興とまちづくりをバランスよく進めていくためには、住んでよし訪れてよしという考え方のもと、観光客のニーズと地域住民の生活を調和させることが不可欠と考えております。まちづくりにつきましては、産業や福祉、医療、交通、防災、教育などが、総合的に必要であり、関西広域連合の構成府県市がそれぞれの実情に応じて取り組んでおられることと思いますので、その中で観光の振興を図ることが必要と考えております。
構成府県市では、外国人観光客の増加に向けて、大変努力されている自治体が多く、このような状況を踏まえますと、関西広域連合の役割は関西への外国人観光客を増加させると同時に、大阪、京都に集中しております外国人観光客に関西全域を周遊してもらうことだと考えており、一般財団法人関西観光本部を中心に、行政や経済界、関西各地のDMO等と連携を図りながら、関西各地の魅力の海外への発信や、外国人観光客が移動しやすい環境の整備などをオール関西で取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(菅谷寛志) くらた共子議員。
○くらた共子議員 ご答弁ありがとうございました。
再質問をさせていただきたいと思います。
まず、自治体のあり方についてですけれども、国のこうした動きについて、日本弁護士連合会なども意見書提示をしておられますが、やはり連合長がこれまでの答弁の中でも繰り返しおっしゃったように、やはり関西広域連合としての役割も圏域の活性化と住民の暮らしが豊かになるため、このことを目指すということです。この立場に立つのでありましたら、やはり地方行政体制のあり方というのは、地方自治体の本旨である団体自治と住民自治及び基本的人権の保障の観点、このことをやはり踏み外すことなく、どうするのかという検証が私は重要だというふうに考えております。そういった意味で、各自治体が、その自治体の裁量において、しかし、自治体の役割を、やはりその使命は住民の福祉の向上ということが第一でありますから、この立場において、今のこの動きについてどのような判断をするのか、このことについても広域的な観点で、関西広域連合としての私はこれは自治体の集合体という捉え方をした際に、やはり意見を持つということは大事だというふうに思います。
それから、インバウンド観光についてですけれども、先日、京都市では、例えば最も外国人観光客が訪れる観光地として、皆さんもご存じかと思いますが、伏見稲荷というのがございます。ところが、この近辺で、もともとあった旅館は、30あったものが今8、もう一桁でございます。そこでお聞きをした、一端は先ほど述べたわけですけれども、実際の、伏見稲荷といえば信仰文化であります。じゃあ、その信仰文化のその価値がどう継承されるのか。ところが、実際はこのお祈りをする、皆さんもお宮さんに行かれたら鈴を鳴らすと思うんですが、その鈴は既に取り外されております。たくさんの外国人観光客によって、何回も毀損されるわけですね。ですから、信仰文化を本来継承する場でありますが、そういった信仰文化の継承の体をなしていない。これが今の観光の実態ということを1つ知っていただきたいというふうに思うわけです。
本来あるべき観光は何か、他地域へ行って、そこにしかない歴史性や文化性、そのことを感じ取る、そしてその地域の方々とよりよい交流を図る、こういうことではないかというふうに考えるところです。そして、何よりも、地域の住民の安全と安心、そしてそのなりわいであるとか、その地域ならではの産業が、やはり発展する、生き生きとする、こうしたことにこそ、私は大切な観光産業、質の良い産業をつくっていく、大変大事な私は役割があるというふうに考えているところです。ですから、周遊観光、分散化、そのこと自体を全く否定する気はございません。ただ、しかし、そのときに何が必要なのか、今起こって困っている事象については、しっかりとやはりストップをかけていく、こうしたコントロールが求められるということを申し述べて、時間となりましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。