平成29(2017)年度 一般会計決算、国民健康保険事業、介護保険特別会計決算についての討論 - 市会報告|日本共産党 京都市会議員団

平成29(2017)年度 一般会計決算、国民健康保険事業、介護保険特別会計決算についての討論

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終了本会議討論
山本陽子議員
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(山本議員の討論は、1:29:04からです)

 日本共産党市会議員団は、報第2号一般会計決算、報第4号国民健康保険事業特別会計決算、報第5号介護保険特別会計決算について認定しないと表明していますので、議員団を代表してその理由を述べ討論します。

 認定しない第一の理由は、災害時体制の拠り所、行政対応の要である職員削減を推し進めている点です。
 今議会は、相次ぐ自然災害の教訓から、緊急時に「想定外」は通用しない、これまでの延長線上ではない災害対策が各会派から求められました。ところが、災害対応の最前線である区役所の職員体制は、京プランにもとづき3年で約400人も職員削減が行われてきています。その結果、人手が足りず罹災証明の発行が遅れる、避難所への市職員の配置ができないなど、災害対応が不十分な状況が生まれました。さらに、決算年度は大宮消防出張所が廃止され15人の職員が削減されました。木造住宅密集地を抱える地域であり、現に消防車の到着時間がこれまでより遅れる地域が発生したことは重大な問題です。
 また、災害時には災害ごみの収集・処理が大きな課題となりました。今回、所有者不明の災害ゴミについて収集する対応を取られました。ごみ収集の「民間委託をすすめても、災害時に直営に代わって収集をお願いする項目がある」とのことですが、直営だからこそ災害時に迅速に対応できます。
 今後、窓口業務の民間委託化、消防職員の削減、ごみ収集職員のさらなる民間委託化などの方針が示されていますが、昨今の災害が頻発する状況を考えれば、これらの職員削減計画は多くの問題があることは明らかです。計画は撤回をし、職員体制を強化すべきです。

 第二の理由は、国がこの6年間で合計1兆6千億円もの社会保障予算を削減してきたもとで、京都市が国の社会保障削減を擁護するにとどまらず、市独自の支援もその認識のもとで弱くなっている点です。
 この間、年金支給額の引下げ、70歳以上の医療費負担の引き上げ、介護保険外しや負担増、生活保護費の引き下げなどで、貧困と格差はさらに拡大しました。にもかかわらず、市長は市民の実状を顧みず「トータルとして社会福祉をどう維持していくか、持続可能なものにしていくかの議論をすべき」と、国の社会保障削減を正当化しました。
 介護保険事業では、京都市介護保険料基準額が制度開始当初の2958円から現在では6600円の2.2倍となり、2025年には8700円にもなると想定されています。利用料についても、2割3割へと引き上げが進み、介護保険の利用抑制が強まっています。負担が重くて医師が必要と指示した訪問看護が受けられない、1日も欠かせない独居高齢者の生活援助の回数を減らすのは死活問題であることなどを指摘し、だからこそ、市長は保険者として責任を果たす必要があると質しましたが、「そもそも制度があってこそ、その中で工夫をしていただく」と市民の命を守る制度の切り捨てを追認されました。また、本会議答弁で「繰り入れは法的に禁止されていない」と初めて認めましたが、「全国一律の制度であり繰り入れは、制度運営の根幹を揺るがしかねない」と強弁されました。しかし、年金から保険料を天引きしておきながら、必要な介護が受けられない実態が示すように、制度の根幹はすでに崩れています。負担が重くなっている保険料を引き下げる努力が必要です。
 国民健康保険事業では、30年度で2人世帯モデルの総所得200万円に対して、保険料は介護分と合わせて34万7120円であり限界に達しています。高すぎる保険料が生活を圧迫する状況です。決算年度は、国保会計で累積黒字54億円と報告されましたが、それならばさらなる保険料の引き下げをおこなっていくことが必要です。
 生活保護については、この10月から生活保護費の引下げが行われています。国の考え方は、低所得者の低い生活水準に合わせ、生活保護基準をさらに引き下げるものですが、セーフティーネットの基準となる生活水準は引き上げこそすべきであります。これに対し「3年間かけて段階的に引き下げられるもので一定の配慮がされ適切」「メリハリのきいた改正」と述べられましたが、貧困にあえぐ市民の実態とあまりにかけ離れた認識です。住民の命とくらしを守る自治体の本旨に立ち返ることを強く求めます。

 第三の理由は、財政が厳しいからと言って福祉関連経費には厳しい認識を示し、職員削減を進めながら、一方で莫大な予算がかかる北陸新幹線・リニア新幹線誘致や堀川地下バイパストンネル、不要不急の大型公共工事については前のめりである点です。
 北陸新幹線については、並行在来線存続問題、地域経済への影響、地元自治体の大きな財政負担、自然破壊等の問題を指摘してきましたが、これに何一つ答えられないまま「費用負担がどれだけかかるかわからないことを理由に進めないとすれば、あらゆる可能性を閉ざすことになる」と、無責任な認識を示されました。市民生活や京都市財政の現状をみれば、到底認められません。同様に、鴨川東岸線の拡幅工事は、疏水の断面を縮小する難工事で総額70億円かかるとされていますが、さらに予算がふくれあがることが危惧されます。不要不急の大型公共工事は中止すべきです。また、財源の確保という点では、史上空前の儲けをあげている大企業に、せめて中小企業並みの税の負担を求めることなど累進課税の強化を国に求めるべきです。

 第四の理由は、子ども一人一人の育ちを支えるため、求められている子育て支援の底上げに対応していない点です。
 子育て支援については、少子化対策としての意義もあるところですが、少子化を克服していくためには、子育てを家庭の責任に狭めず、どの家庭に生まれても成長・発達・教育が保障される支援が必要です。この観点から、子どもの医療費助成制度の拡充は中学校卒業まで所得制限なしですべての子どもが無料とすべきです。
 障害児保育については対象児童の87%が5:1の保育士加配となっており、他の政令市では3:1が最低基準であることからも、加配の引き上げが是非とも必要です。障害児保育の加配は保育士にとっても、子どもにとっても環境改善となりうるものであり、ひきつづき充実を求めます。
 学童クラブ事業については7年連続待機児童ゼロを表明されていますが、40か所以上で登録児童が100人150人を超えるところもあるなど大規模化が進み、現場は子どもの安全確保に四苦八苦されています。これに対し副市長は「法の基準を守っている。」「安心安全に過ごせる環境づくりを進めている」との答弁ですが、現場を見て、子ども達が健やかにのびのび過ごす環境を保障すべきです。
 さらに、全員制の中学校給食の願いについては、背を向けたままです。京都府内26市町村のうち24市町村が全員制の中学校給食に進む状況ですが、京都市は家庭弁当の教育的効果に固執され、子育て世帯への支援また食育の考え方が旧態依然であり、その認識ではすべての子どもに届く支援となりません。改めて中学校給食の在り方について再検討し、温かい全員制の中学校給食を実施すべきです。
 決算年度は教育現場において勤務把握が変更され、出退勤時間の記入に改められた結果、超過勤務時間が80時間を超えている方が、それまでの3.5倍という実態があらわになりました。超勤の実態は深刻です。教職員の過労死を生じさせないためにも、子ども一人一人に向き合えるような教育環境をつくるためにも、少人数学級のさらなる拡充をすすめるべきです。
 また、決算年度は子ども若者はぐくみ局創設1年目でもありました。高すぎる学費やブラックバイト対策など若者の課題に対応するため、はぐくみ局が中心的な役割を担うべきです。他局との連携頼み、職員の兼任では全く不十分です。市のブラックバイト相談窓口相談件数は9件、これでは市長が言っている「ブラックバイト根絶」とは程遠いものです。また府の制度として作られ、市が周知している「就労・奨学金一体型支援事業」はわずか155万円の交付です。学生を支援するための京都市独自の給付制奨学金制度の創設が必要です。切れ目のない支援を掲げるはぐくみ局の若者対策についてさらなる強化を求めます。
 
 第五の理由は、文化で稼ぐことに力点を置き、文化財保護の役割を後退させてきた点、また観光で稼ぐことに邁進し、住民の住環境を守る姿勢が極めて弱い点です。
 文化施策ついては決算年度の重要施策の第一にかかげられていますが、「文化財の保全と活用」については、2008年と2018年予算を比べると、文化財保護事業費は9億円から6億円に3億円も減少しています。美術館再整備については美術関係者の意見を聞かず、稼ぐための整備を推進しています。重要なのは、文化芸術に市民が参加しやすい条件を保障し、文化財を未来に引き継ぐことです。文化を次世代に継承する趣旨からも、全国でも稀な子どものための、こども文化会館を守り、その機能の充実を図っていくべきです。
 また、今議会では観光客増加による公共交通や住環境への悪影響を、各会派が指摘しました。市バスの混雑、簡易宿所の激増など住環境への影響は「オーバーツーリズム」「観光公害」とも評される事態になっています。市内中心部で宅地が高騰し若い世代が住みにくくなっていることは本市も認めたものの、観光客の総量を適正規模にしていく意思は示されませんでした。地域との調和を図るなら、宿泊施設を許可する際には、条例や要綱が定める「説明会」を義務化し、「協定書」の履行にも行政指導を及ぼすべきです。騒音は現に住民の健康に害を与えており、防音・防火・耐震など踏み込んだ規制をすべきです。現に起こっている住民の実害を軽視すれば京都は「住みたくない町」になってしまうことを、重く受け止めるべきです。

 最後に、安倍首相が今国会で自民党改憲案の提出を表明している下で、地方自治を守る立場から、改憲発議を認めないよう発信すべきであると市長に求めましたが、市長はいっさい答弁にたたず、副市長からは「国民を中心に国民全体で議論が深められればよい」と憲法改正を後押しするような答弁がされました。今、憲法9条を変えて、災害の復旧に頑張る自衛隊員の皆さんを戦場に送り出す安倍政権の狙いに加担をするようなことはあってはなりません。地方自治体が国の横暴を抑制する、その役割を果たすべきです。

 今議会では、市長自らが「よってたつ立場が違う」とか「批判のための批判としか聞こえない」など、議論を封殺するかのような答弁が目立ちました。地方自治は二元代表制であり、議会では暮らしの実態や、市民の声を背景に様々な議論が行われます。地方自治の本旨である住民自治の主旨からしても、市長はこうした議論を尊重し、真摯な姿勢で臨まれるべきです。このことを申し述べて討論とします。

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