日本共産党市会議員団は、公営企業各特別会計決算のうち、報第17号水道事業会計、報第18号下水道事業会計、報第20号高速鉄道事業会計については認定し、報第19号市バス事業会計決算については認定しないとの態度を明らかにしています。それぞれその理由を述べ、討論します。
公営企業ですから、まず何よりも一般会計以上に数字にこだわり、費用や収益、資産等々の動向を振り返るべきことは言うまでもありません。同時に、狭義の決算数字による赤字黒字等との結果だけでなく、公共交通や上下水道事業の展開を通じて、住民の移動の権利や命の水の提供、快適な水環境・生活環境の整備等、暮らしと福祉がどう守られこれらの権利がどう拡大されたのか、地方公営企業法第三条で言うところの「その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない」との視点からの総括が必要であることもまた言うまでもありません。
まず第一に、市バス事業決算を認定できない理由は、折角の黒字が利用者市民に還元されず日本一高い運賃が継続されていることであります。若年嘱託制度や管理の受委託が継続されていることも認定できない理由です。
バスを走らせる為には、運行管理や整備などとともに、何といっても運転手の存在が不可欠であります。きょうも明日も将来も、安心して運転業務に携わって頂くことが安全運転の前提であり条件であります。若年嘱託制度や管理の受委託は、運転手に不安や低賃金、劣悪な労働条件を押しつけるものであり、ひいてはバスの利用者市民の安全にもかかわる問題であります。嘱託は、定年後の元気な方の再任用に限るなど例外とすべきであります。また委託先には、安心できる賃金労働条件を保障しうる委託契約料とそれが労働者に及ぶ担保が必要であります。少なくとも、賃金労働条件の実態について、委託元として現状を把握し、その改善を求めうるような受委託契約とすべきであります。
また、今年度の話ですが、一日乗車券の値上げについても賛成できません。
一方、均一区間の拡大やバス待ち環境の改善、路線の拡充や増発、IC活用による乗り継ぎの改善などの努力も、今後、一層の改善が求められるとはいえ、評価するものです。均一区間の一層の拡大、乗り継ぎの抜本的改善、交通困難地域に対する公営公共交通による路線の普及拡大など、市民の足としての役割を一層発揮されるよう求めるものです。長野県の御嶽山の麓の木曽町(まち)では、商工業や福祉・医療など町の諸施策諸行政の土台に公共交通がしっかりと位置付けられています。これは、色々な申請や手続きをするにも、まず町役場に行くことから始めなければなりませんから、その為の交通・移動手段が前提になるという、誰でも納得のできる話であります。衣食住と言えば生活必需品の基本中の基本ですが、最近は、衣食住バス、衣食住交通という言葉も生まれています。独立採算の交通事業という狭義の経営に留まらず、広く市民の暮らしをトータルに守る、その一部署として、暮らしの土台として市民の足を守る、そういう役割をオール京都市の中で分担している、そういう観点と認識、役割を一層発揮されるよう求めるものであります。歩くまち京都と言うなら、京都の交通の在り方の総合的な展望の中で、では交通局はどういう役割を果たすのか、との広い視点からの事業展開と交通政策立案を求めるものであります。高齢者の外出と社会参加の機会拡大を目指す敬老乗車証についても、現行制度を守る為、交通局の立場からなし得ることがないかどうか、その可能性を研究されるべきであります。
第二に高速鉄道事業ですが、経営努力とともに、政府への要望にも取り組まれており、また道半ばとはいえ利用者への安全対策にも前進が見られます。元々、大規模な施設の建設・維持管理・更新を要する事業でありますから、国補助制度の抜本的拡充が不可欠であります。引き続き、対国への要望活動を強化し、ホーム転落防止柵の全駅設置や点字ブロックの改善、また私も段々年をとってきましたがベンチの増設等を求めるものであります。
第三に上下水道事業については、予算に沿って、また中長期的にも、今年度までとされている「京の水ビジョン」と「中期経営プラン」に沿って、おおむね順調に取り組まれていることが認定の理由です。地下水等利用専用水道について、負担の公平性の確保を目的として水道施設維持負担金制度が創設されましたが、これは賛成できます。地域水道と特定環境保全公共下水道の統合に際し、料金・使用料とともに、水の安定的供給及び下水道整備についても、既存上下水道と平等の水準が確保されるよう、公平性と維持管理体制の強化が求められます。鉛管取り替え事業の道路部分の完了とともに、住宅部分の補助制度についても一層の拡充を求めます。老朽管の更新については国補助制度の拡充が不可欠であり、各自治体の自主的な料金・使用料の違いによって補助に差をつける取扱の撤廃を求めることも含め、一層強力な対政府要望運動の強化が必要です。大局的には、中長期的に水需要の減少傾向の一方で、老朽管の更新や浸水・災害対策の強化などが必要とされていますが、水ビジョンと中期プランの総括及び次期経営ビジョンの策定についても、需要の変化に応じた供給のバランスをはかるなど数字上の一層の精査、及び「公共の福祉の増進」との位置付けと視点を踏まえられるよう求めます。この観点から、市民の生活の現状からいって、福祉減免制度の創設を引き続き強く求めるものであります。
最後に、上下水道局と交通局に共通するテーマとして、私は、運賃や料金・使用料に消費税を転嫁上乗せすべきでないと求めてきましたので、この問題についても触れておきます。局別質疑や市長総括質疑において、消費税は、税務署の資料によっても、「課税売上げ高×税率-課税仕入高×税率」によって計算されるもので、消費者に転嫁上乗せする消費税法上の根拠はないという、判例も引用した私の質問に対し、理事者や管理者からも「根拠はない」とのご答弁でありました。一方で、転嫁してはいけないと謳われている訳でもないので、政府が、消費者が払うと一面的な解釈を振りまいているだけの話であります。
理事者の答弁では、第一に転嫁せずに局の持ち出しということになれば、企業債の発行などいずれ市民に負担をかぶって頂かなければならない、第二に国からも転嫁上乗せとの通達が来ているとのことでありました。しかし、いずれどうするかは別の問題ですし、また国の通達には従う義務はありません。転嫁をやめるよう強く求めるものであります。同時に、医療の一部負担金や住民票の発行などは社会政策上の観点から非課税とされています。ならば、前述の如く衣食住交通水道という命にもかかわる生活必需品の分野では、非課税とするよう、国にも強く求めるべきであります。10%への増税や、運賃・水道料金等への転嫁は絶対に避けるべきです。増税しないよう国に強く声を挙げること、転嫁は最早根拠がないと確認できた以上、キッパリやめるべきことを強く求め、討論とします。