京都市宿泊税条例の制定に対する反対討論 - 市会報告|日本共産党 京都市会議員団

京都市宿泊税条例の制定に対する反対討論

写真
終了本会議討論
加藤 あい議員
 日本共産党京都市会議員団は議第76号京都市宿泊税条例の制定について、反対しています。私は、議員団を代表して、その理由を述べ、討論を行います。
 今市会において、市長から提案された宿泊税について、多くの会派のみなさんから、多岐にわたる議論が行われました。その中心的な内容は、「課税の捕捉の可否」、「法定外目的税の使い道のあり方」、「税率のあり方」など、何れもが、新税を創設するうえで棚上げにすることができない、根幹にかかわる重大問題でありました。
 市長は施行日が来年10月だからそれまでに「万全を期す」と述べましたが、何ら、問題は解決していません。このまま条例を制定してよいとは、到底判断することはできません。

 以下、党議員団が今回提案された宿泊税に反対する理由を述べます。
 第一は、違法「民泊」を含め、すべての課税対象を捕捉できる根拠が示されていないからです。
そもそも、違法「民泊」に対する課税は、現行の固定資産税でも極めて不十分です。昨年度からの違法「民泊」への課税は、京都市民泊実態調査で違法と思われる施設数が1847件であるにもかかわらず、適正課税されたのは57件、違法民泊実態調査の違法「民泊」を母数にすれば、わずか3%にとどまっています。市長は宿泊税の課税捕捉については違法「民泊」根絶の体制強化と一体に万全を期すとしていますが、その形はいまだ見えてきていません。そもそも違法「民泊」の全体像すらつかめていない状況で、どうやって課税するというのでしょうか。税を徴収するところと、しないところをつくる、課税対象の捕捉漏れが大量に発生するというのは、税制度として最もしてはならないことではありませんか。極めて不公平な状況をうみ出し、税制をゆがめることは、認められません。

 第二は、税本来のあり方である累進制に逆行しており、中小・零細宿泊事業者への影響を十分調査・検討していないからです。
 宿泊税額は、宿泊料が5万円以上は1000円、2万円以上5万円未満は500円となっていますが、2万円未満は一律200円とされています。宿泊料金が2万円未満でも200円、2000円でも200円ということになります。その負担率たるや、それぞれ1%と10%となります。「薄く広く負担いただく」と言いますが、宿泊料金が高いほど税率が下がる、これが適正と言えるのでしょうか。加えて、消費税のように、中小零細の安価な宿泊事業者が宿泊者に転嫁できずに、事業者が身銭を切るという事態が発生する可能性も否定できません。「厳しい価格競争のもとで宿泊料金に上乗せできない事態が発生しないのか」と繰り返し質しましたが、中小零細の宿泊事業者にどういう影響が及ぶのかの調査検討については、結局、具体的な答弁がありませんでした。どのような価格帯の分布で、低廉な料金設定である宿泊施設にどのような影響が及ぶのかすら、把握・検討しないで、新税を創設するなどあり得ません。

 第三は、目的税と言いながら、使い道が無限定で、整合性がないからです。
 市長は、宿泊税で得た約46億円の財源を、文化芸術やおもてなしの振興と担い手育成、観光客受け入れ環境整備、町家保存などにあてるとしていますが、あまりに無限定ではありませんか。目的税だけれども使途が曖昧、この不整合を認めるわけにはいきません。事実上一般財源と何ら変わることのない使途で、結局、家庭ごみの有料指定袋制による有料化財源と同様に財源確保策でしかなくなるのではないでしょうか。

 第四は、本市の観光政策の抜本的見直しが求められているからです。
 市長は「インバウンドの中でさまざま課題、混雑が起きている」として市民の税金ではなく、観光客に負担してもらうと述べました。しかし、そもそも、問わなければならないのは、どうして、その混雑や課題が発生しているのかということではないでしょうか。
 昨年、10月に京都市は「宿泊施設拡充・誘致方針」を発表しましたが、その内容とは、2020年東京オリンピック・パラリンピックを節に、外国人観光客誘致目標440万人以上、新たに6,000室の宿泊施設誘致というものです。まさに、数を追い求める観光政策が国の進める観光立国と一体にすすめられているのではないでしょいうか。
 今年1月から7月の約半年だけでも、ホテル・旅館の新築用途変更は、市域全体で約200件にも及びます。
 民泊についても、「多くの方が民泊について、京都はこのままではだめだという認識は一致している」と答弁で当局がおっしゃったとおりの状況が、まさに、違法民泊を一つの焦点として問題が噴出していることは、論を待ちません。その上、今年の9月にも世界最大のオンライン会社と連携協定を締結して、更に外国人観光客の誘致拡大、宿泊者数・宿泊日数の増加を進める、まだ、もっと呼び込むことを進めています。過大な観光客の目標を持ちどんどん呼び込む、プロモーションをどんどん展開する、この道を、まだ京都市は進むのでしょうか。
 2011年以降の調査開始以来ずっと90%以上を維持してきた日本人観光客の満足度が2年連続9割を切る、すでに低下する事態となっています。このままでは、京都の魅力そのものが失われてしまいます。現在の状況も、宿泊施設の乱立で町内会が形骸化する、土地が異常に高騰するなど、住民が住み続けられない状況が広がっています。宿泊施設を誘致した結果、オリンピックが終わった後の京都市にはいったい何が残るのでしょうか。
 違法民泊や観光政策をめぐり、今、京都市で起きている事態に対し根本的解決を進める手立てを講じることなく目をつぶり、それを口実に財源を確保しようというなら、そのあとに残る京都のまちは、市民にとって、住んでよしの京都ではなくなるのではないでしょうか。
 宿泊施設拡充誘致方針、観光政策を見直し、市民が住みたい、住んでよかったと実感できるまちをつくる、そして、そのことを通じて、訪れる方にも魅力を感じられる京都へ、市政を転換することこそ必要であることを指摘し、討論とします。

議会開催年月別目次

開催議会別目次

ページの先頭へ