日本共産党市会議員団は、予算特別委員会に付託された議第102号「美術館再整備工事請負契約の変更」には反対し、「議第74号一般会計補正予算」について賛成しています。私は党議員団を代表し、その理由を述べ、討論を行います。
議第74号一般会計補正予算に賛成するその第一の理由は、市民の切実な願いであった就学援助制度の改善が含まれているからです。
今回、新入学児童生徒学用品費の入学前支給にかかる経費として1億円が計上されました。従前からわが党は小学校や中学校の入学準備にあてるための入学学用品費について、その支給が実際には入学に間に合わず、入学後となっていることの改善を求めてきました。この間、6月支給であった状況が4月に前倒しされましたが、それでも、入学には間に合わないという課題は残ったままになっていました。
子どもの貧困が社会問題となり、京都市においても「子どもの生活状況調査」がとりくまれ、他都市同様に深刻な子どもたちの実態が浮き彫りになりました。行政をあげて、必要な手立てを講じていくべきであることは言うまでもなく、就学援助制度の充実や改善は社会の要請です。
今回、京都市が入学前の3月に支給することを決断したことは、こうしたことにこたえるものであり、評価するものです。本市の調査に示された切実な実態を行政施策に反映させて最大限の対策を行うよう求めておきます。
加えて、今回の就学援助制度の新入学児童生徒学用品費・入学前支給についても課題が残されています。返還金が生じる可能性があるということです。
党議員団は先行実施している東京都の八王子市を視察しましたが、返還金を生じさせない考え方はきわめて明瞭でした。小学校であれ、中学校であれ、入学前の準備にかかる費用なのだから、入学前時点での所得認定で判断して支給する。即ち、八王子市の就学援助支給要綱では、児童生徒の規定を「次年度に就学を予定している児童を含む」と明記しています。
本市でも、そのように対応をすれば、いったん支給した入学学用品費の返還は必要なくなり、多くの方に安心して申し込んでもらえるのではないでしょうか。今後、改善を図られることを求めておきます。
賛成する第二の理由は、介護基盤の整備助成として定期巡回臨時対応型訪問介護・看護事業所の開設準備助成、また、安井児童館の移転整備費が計上されていることです。
介護基盤の整備は要介護高齢者の在宅生活を支えるものであり、重要であります。介護職員の給料保障など処遇改善と並行して進めることを求めておきます。
児童館の移転整備費については、学区内で生徒数が増加する傾向にあるなかで、児童数の増加を見込んだ上での再整備を進めるものであり、必要です。
同時に、補正予算には以下の問題点があることを指摘します。
まず、明治150年京都奇跡のプロジェクトについてです。
「明治期の京都の先人が成し遂げた・・足跡を・・学び、未来にいかす」とのことですが、先人がどのような社会体制のもとで足跡を残したのか、このことを、十分踏まえる必要があるのではないでしょうか。
そもそも、明治時代は大日本帝国憲法のもと、天皇絶対の専制政治の体制がつくりあげられた時代です。戦後、日本国憲法の成立で主権在民が確立しましたが、主権がどこにあるのかという、前提としている社会体制が全く今と異なるわけです。
そして、目をむけなければならないのは、明治以降、日本は、殖産興業と徴兵制からなる富国強兵政策のもと、侵略戦争へと大きく進んでいった、という事実であります。
今年は、地方自治法施行70周年に当たります。同時に施行された日本国憲法のもと、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三原則に加えて、地方自治が打ち立てられたことにこそ学ぶべきではないでしょうか。
また、マイナンバーカード等への旧姓併記に係るシステム改修として予算2800万円、債務負担行為として1億800万円が計上されています。
そもそも、マイナンバー制度について情報漏えいの危険性や、社会保障費削減を進めるという手段として具体化がすすめられているということの問題を、わが党は述べてきました。現に京都市においても、市・府民税の「特別徴収税額 決定通知書」においてもマイナンバーが漏えいする事態が発生しています。この制度そのものを見直すべきことを指摘しておきます。
宿泊税導入に係るシステム改修費についても1億2700万円、債務負担行為1億8400万円も計上されています。
新税創設という重大な内容であるにもかかわらず、課税捕捉や、目的税としての整合性、累進課税への逆行など、本質的な問題での課題が山積しています。導入方針を撤回して、検討しなおすべきであることを、申し添えておきます。
次に、議第102号「京都市美術館整備工事請負契約の変更」について述べます。わが党は本請負契約の変更に反対の態度を表明しています。補正予算の中にも債務負担行為の設定が含まれていますが、そもそも、老朽化した美術館の再整備そのものは必要であることは言うまでもありません。しかしながら、今年2月議会に提案された当初契約は、額100億円という工事規模そのものが身の丈に合っていないこと、事契約額の約半分50億円をネーミングライツ契約により確保し、その見返りにその企業の宣伝及び、イベントなどに便宜を図るというものであり、議員団は反対しました。本来京都市民全体のものである公的施設の性格が弱められている、その懸念はいまだに払しょくされておりません。
一方で、今回の契約変更は、当初契約の根拠となった公共工事設計労務単価がその後の賃金および材料価格の変動に伴い、当初の請負金額が不適当になったために変更するものであり、これは、当然の対応であります。
国交省は今年8月に都道府県の担当者と建設業団体長あてに通知文を出し、「請負契約を適正な額の請負代金で締結し・・従事する者の賃金その他の労働環境が改善されるように配慮しなければならない」と強調しています。この通知文書と「公共工事の品質確保の促進に関する法律」に基づいて、賃金改定をともなう契約変更が行われた際には、現場労働者の賃金に適正に反映され、そのことをしっかりと見届けることが必要であることを指摘します。
さらに、そのためにも本市の公契約基本条例に賃金条項を盛り込むことが急務であることを申し添えておきます。
以上で討論を終わります。