日本共産党の井坂博文です。党市会議員団を代表して市長の政治姿勢および来年度予算案について質問します。
市長の公的責任を放棄する政治姿勢および来年度予算案について
門川市長が昨年2月、3期目の当選をして一年が過ぎました。市長は来年度予算案の基本姿勢について「133の市長公約すべてを盛り込んだ、はばたけ未来へ!京(みやこ)プラン・第2ステージの取組みを着実に前進させ、『暮らしに安心、豊かさ実感、未来に責任』のまちづくりを力強く推進する」と述べられました。はたして、京プラン実施計画によって「安心、豊かさ」が市民にもたらされ、未来に責任を持つ市政ができるのでしょうか。
予算案を貫いているのは、市税収入の落ち込みと地方交付税の削減による「財源不足」を理由にした、京プラン実施計画の「財政構造改革の推進」であります。
財政不足の背景には貧困と格差を拡大する「アベノミクス」の行き詰まりと破たんがあります。「国際競争力の強化」「世界で一番企業が活躍しやすい国」の掛け声のもと、日銀の異次元金融緩和や3年間で4兆円の企業減税によって、大企業は3年連続で史上最高の利益を上げる一方で、中小企業にはその恩恵は及んでおりません。労働者の実質賃金は4年間で年額19万円も減り、家計消費は実質15か月連続で対前年比マイナスとなっています。市税収入が落ち込むのは当然ではありませんか。
さらに、「地方創生」「成長戦略」の名のもとに、地方自治体に大型開発型公共事業と規制緩和を誘導し、「トップランナー方式」として公共施設の統廃合、公共サービスの民営化を押しつける一方、地方交付税の削減を続けています。
この流れに無批判に従い、率先しているのが京プラン実施計画ではありませんか。来年度予算案は京プランによる自ら作り出したツケを口実に、市民に「財政構造改革」を押しつけるものではありませんか。以下、具体的にお聞きします。
第一に、本市の進める新たな「京都壊し」に関してお聞きします。その背景には安倍政権のすすめる成長戦略に率先して応えて、自治体の役割を投げ捨ててきた京都市政の責任があります。
2015年の秋、国の地方創生総合戦略の京都版として「まち・ひと・しごと・こころ京都創成総合戦略」が策定され、人口減少対策を口実に「稼ぐ力」を優先した京都市政をめざして新たな規制緩和と再開発、公共施設の集約化と活用のための売却、行政サービスの削減を打ち出しました。これにかぶせるように、「京プラン・後期実施計画」が策定され、より踏み込んで「民間活力を徹底的に活かすための環境整備」として、「多様な民間投資を促すための柔軟な都市計画手法の活用」とか、「市有地・民有地の産業用地としての活用」を明記しました。さらに、公共施設を「経営資源」などと呼び、「施設の統廃合」によってつくりだされた土地、学校跡地や市営住宅跡地が企業の儲けのために、貸し付けや売却されることになりました。京都創生戦略と京プランによって、このように「大企業が自由に活躍し、稼ぐことができる」よう京都市が全面的に協力する方向が打ち出されたのです。
その一方で「京プラン・後期実施計画」では、「社会福祉関連経費、公営企業の繰り出し金を含む消費的経費のすべての予算について改革を徹底し、前期実施計画で見込んだ以上の財源を確保する」と明記しました。いっそうの市民サービス切り捨てと負担増、自治体の公的責任を放棄する宣言ではありませんか。
振り返れば、京都市は2007年に新景観政策を策定しました。それは新たな建築に対する規制とともに、30年から50年かけて既存不適格建築物の建て直しを念頭に置いてあるべき京都を想定したものでした。その新景観政策に対して、門川市長はこともあろうに、市民の財産を企業の儲けのために差し出し、自ら穴をあけてきたのであります。2011年から12年にかけて、高度地区の規制を適用除外する「地区計画」の手法で、岡崎地区と島津製作所の高さ規制を緩和しました。2015年1月、「エココンパクトな都市構造をめざした都市計画の見直し」(案)を提案して、鉄道駅周辺を対象に5つの重点地域を設定し、規制緩和を進め、外国資本や大企業が自由勝手に進出し、儲けることができる条件整備を行うことを可能にしました。パネルをご覧ください。それを具体化したのが「都市再生緊急整備地域」であり、2002年の12haから今は162haへと13・5倍に拡大し規制を緩和しました。
この「都市再生緊急整備地域」とは、民間事業者が行政に代わって都市計画を提案できるようにして、それを迅速に進められるよう行政が支援するという、都市計画を民間業者の手に委ねる手法であり、これに加えてさらに、「高度利用地区」を指定し、容積率を100%加算ができるようにしました。
本市が策定した新景観政策に自ら穴をあけて、まちづくりの理念すら投げ捨て、「賑わい」と「儲け」を追求し、京都壊しを進める新たな段階に踏み込んでいるという事実を市長はお認めになりますか。これでどうして「未来に責任」と言えるのですか。お答えください。
(市長)まちづくりは100年の計を立て、今と未来を見据えることが重要だ。例えば、景観政策の推進で、京都のまちは美しさを増し、国内外からの評価が高まっている。「未来に責任を持つ」とは、市会での議論の下、政策実行力をもってすすめることであり、「京都壊し」などの当を得ない批判を繰り返すことではない。予算案も、厳しい財政状況の下、市民、民間事業者などの参画と全庁的な連携により、効率的なものとなった。経済対策、人口減少など課題は山積しているが、「くらしに安心、豊かさ実感、未来に責任」の市政を進める。
宿泊施設拡充・誘致方針」は撤回し、違法民泊は厳しく規制を
第二に、新たな京都壊しにつながる「宿泊施設拡充・誘致方針」と民泊に関してお聞きします。
いま、京都市内では違法民泊対策が不十分なうえに、無秩序なホテル建設のラッシュとなっています。旅館業法にもとづく年度別のホテル・簡易宿所の許可軒数は2016年度619軒(11月末現在)で、許可総数1645軒のうち4割弱を占め、10・11月だけで166軒にも及んでいます。さらに、開業もラッシュ状態です。建設ニュースによりますと、開業予定のホテルは2016年13軒・1545室、2017年~19年にかけて50軒以上・約7000室に上る予定で京都駅周辺は駅がホテルに囲まれる状態になります。これに、違法「民泊」が数千規模で加わります。
下京区のある地域では、狭い路地に入ったところにある8軒のうち4軒が民泊として利用され、残り4戸は独居老人が住んでいるといいます。夜中にキャリーバックを引く音が絶えず、間違えてインターホンを押され、住民の一人は「このままではここに住み続けられない」とまで言っておられます。このような事態は市内全域に広がり、「空き家がきれいになったと思ったら民泊だった」「何の説明もなく民泊が出現した」と住民の怒りの声は枚挙にいとまがありません。
その結果、「トラベル&レジャー」誌の評価は1位から6位に落ち込み、本市の観光総合調査では日本人の京都観光の満足度は88・9%と90%を初めて割りました。「このままでは京都が京都でなくなる」これが京都に住む人たちの切実な思いではありませんか。
本市は観光政策で「住んでよし、訪れてよし」を基本に据えていますが、ホテルの建設ラッシュや違法民泊が京都に「住んでよし、訪れてよし」をもたらしているのですか、今後そうなると考えているのですか、市長の認識を伺います。
今やるべきことは、「宿泊施設拡充・誘致方針」を撤回し、一定時期に増大する可能性のある観光客に対しては、京都市内にある既存の旅館への支援を強め、他の自治体とも連携して、市内集中型をやめるよう求めるものであります。
そこで民泊対策についてお聞きします。本市は「違法な民泊は告発して取り締まる」と言いますが、子ども若者はぐくみ局設置に伴う局の再編成により、担当課を市内で一か所に集約しようとしています。とんでもありません。現在の体制でも民泊の全容を把握もできず、指導もできていないのに、これでどうして違法民泊を取り締まることができるのでしょうか。
職員体制を抜本的に拡充して、民泊の把握と指導を強め、違法民泊を厳しく規制し、フロント(帳場)の常設と従業員の常駐を義務付け、「京町家」のゲストハウスの一棟貸しについても同様の義務を課すように強く求めるものです。
さらに、国の掲げる民泊新法の実態が判明してきました。「住宅宿泊事業法」の名で旅館業法とは別の法体系をつくり、営業に行政の許可を得る必要がなくなり、管理者が地元自治体に届け出するだけ。あくまで「住宅」という位置づけになり、住居専用地域でも営業が可能になるといわれています。さらに、海外の仲介業者への指導が及ばなくなるのではありませんか。「違法民泊」を「合法民泊」にする許しがたい規制緩和であります。このような規制緩和を進める民泊新法に対する市長の認識を伺います。
(市長)観光による交流人口増大は、経済活力と、市民生活の豊かさを牽引する。宿泊施設の拡充・誘致で安定雇用や伝統産業振興、地域活性化、市民の豊かさにつなげる。旅館は全国を上回る稼働率だが、日本文化を五感で感じる施設として、旅行プランの開発促進や従業員の語学研修、施設の改修支援などを図る。違法民泊は、通報等を基に延べ1848回現地調査し、取組を強めている。来年度の衛生部門集約化で、民泊等の専門部署の設置、市内中心部に重点的に対応、無許可営業調査の委託により、効率的・機動的体制で万全を期す。専門部署は、地域ごとの担当配置、区役所等と連携、独自ルールの徹底、京都らしい良質な宿泊環境確保に取組む。民泊新法は、地域の実情に応じた柔軟かつ必要な運用ができるよう、大臣等に強力に要請を行い、他の自治体と国へ訴えている。
市民の声に耳を貸さない市政運営をあらためよ
美術館を京セラのPR等に使用するネーミングライツは撤回を
第三に、市民の声に耳を貸さない市政運営、企業の儲けのために市民の財産を差し出す京都市美術館のネーミングライツについてお聞きします。
京都市は2月1日に、多くの市民や美術関係者の反対、議会の批判の声を押し切って、美術館の命名権を京セラに50億円で売却する契約を締結しました。契約書の中には、京セラの名前を付ける範囲を本館、大展示室、中庭、新館、スロープ広場、そして、日本庭園にまですべての施設を対象にし、かつ「企業活動を情報発信するスペース」を提供し、京セラが展覧会やレセプション等のために美術館を使用し、「展覧会を鑑賞する機会を設ける」としています。さらに、京都賞のための会場使用など様々な特権を与えるものとなっています。まさに、京セラの企業活動のPR、施設の優先利用のために市民の財産である美術館を売り渡すものではありませんか。いかがですか。
また、今回の契約は本市のネーミングライツ実施要綱から見ても重大な疑義があります。
美術館のネーミングライツをめぐる市民の反発や議会の批判を受けて、先日、ネーミングライツ事業実施要綱の改正案が示されました。改正案では「基本的な考え方」として「京都の歴史性やまちの品位・品格を考慮し、市民の理解が得られるように努める」と規定し、ネーミングライツの対象外とする施設を「市役所、区役所などの庁舎、学校、病院、市営住宅」「二条城」のほか、「市民生活に混乱を招く恐れがあるもの、公平性や中立性を損なうとの誤解を受けるおそれがあるもの」などと規定しています。では、これらの規定に照らして庁舎や学校、病院などがダメで、美術館がなぜ構わないのですか。どうして美術館に企業名を付けることが「京都の歴史性やまちの品性・品格を考慮し、市民の理解が得られる」のですか。また、「市民生活に混乱を招き、公平性や中立性を損なうものではない」となぜ言えるのですか。まったく説得力がありません。市長の答弁を求めます。問題点山積みの京セラとのネーミングライツ契約は、撤回するよう強く求めておきます。
(藤田副市長)ネーミングライツは、歴史性や市民の愛着を大切にし、民間との協働による財源確保、市民負担軽減、着実に事業を進めるために導入したもの。高い評価を得ているロームシアター京都に続き、京セラ株式会社との50億円にも上る契約締結で、ようやく財源の目途が立ち、事業が前進したことは、大きな成果。多くの市民から賛同をいただいた。ネーミングライツは、施設の通称を命名する権利だが、市庁舎や学校等は文化・スポーツ施設等とは性格が異なるため、制度の対象としない。美術品の収集や貸出し等では、「京都市美術館」を使用する。情報発信スペースの提供等は、制度の趣旨に則って行うもので問題はない。再整備完了後も、本市が運営に責任を持つのは当然であり、公平性や中立性を損なうことは断じてない。
北区の大宮交通公園は現状を確保し、北消防署移転計画は代替地の再検討を
あわせて市民の声に耳を貸さない、北区の大宮交通公園への北消防署移転計画についてお聞きします。
大規模な地震災害が全国各地で相次ぎ、高齢世帯が増加する中で、防災と災害救助・救急・救命に大きな役割を果たすために、老朽化した北消防署が整備拡充されることは必要であり、焦眉の課題であります。
しかし、京都市が昨年夏に移転先として、大宮交通公園の一部を予定していると突然発表したことは地域住民と利用者の頭越しであり、強い不信感と批判の声が上がっています。
(パネルを示し)大宮交通公園は、このように市内唯一の交通公園であり、敷地内には信号や交差点、標識、横断歩道などとともにゴーカートのコースもあり、親子で楽しみながら交通ルールを学ぶ貴重な公園です。また、公園内には史跡御土居もあり、桜の季節には花見、緑も豊かで地域住民の憩いの場として大切にされてきた「市民の宝」であります。同時に、京都市が指定する広域避難場所、地域の防災拠点であります。
「大宮交通公園がどうなるのか」と、不安を持った住民のみなさんが「大宮交通公園をよくする会」をつくり、アンケート調査を行ったところ、市内全域から短期間に700人を越える返信があり、「子どもの遊び場を奪わないでほしい」「赤ちゃんからお年寄りまで楽しめる公園を残してほしい」「老朽化した施設や遊び道具を直してほしい」などの切実な声とともに、「消防署移転に反対」が74%、「別の最適地を探すべき」が72%との声が寄せられています。市長は、この声をどのように受け止められますか。
先月、本市は、交通事情の変化、自転車や高齢者による交通事故の増加、施設の老朽化が課題であり、北消防署移転を機に公園の再整備をするとして、「交通公園の在り方を検討する」ために、都市緑化審議会に検討を諮問しました。しかし、公園内に消防署移転を前提にした公園再整備の検討は、市民の思いに反します。「交通公園の位置づけは維持する方針」と言いますが、機能を縮小しての「維持」では、市民は全く納得できません。大宮交通公園は老朽器具や施設の改善をおこない、子どもや高齢者・市民の公園として現状の規模で再整備し、地域の防災拠点としての役割を果たすべきであります。
そもそも、移転計画の青写真どころか、北消防署移転候補地の検討経過すら、市民や地域住民には、まったく示されていません。なぜ、大宮交通公園を選んだのか、移転候補地に関する検討の経過すべてを市民に公開し、市民の反対の声に応えて代替地を検討すべきではありませんか。
住民参加も住民合意もない、移転計画の撤回を強く求めるものであります。
(小笠原副市長)北消防署は現在地での建て替えが困難。10箇所以上の移転候補地から、人口・世帯数が増加している北区北部地域の大宮交通公園約21000㎡の15%弱に移転する。地域団体役員、自主防災会研修会や総合防災訓練参加者等550名超に、公園への一部移転を説明した。地元役員から庁舎整備の前に地域住民への説明を行い、地元合意を得て整備を進めるようご意見もいただいた。住民のご理解は大変大事だ。整備に際し、改めて地域住民に説明を行い、合意を得ながら、御土居や緑地の保全を考慮し、市民の安心と安全の向上、より身近な公園と感じられるよう、公園と一体となった消防署整備を目指す。
北陸新幹線、バイパストンネルなどムダな大型公共事業計画は見直しを
第四に、市長が進めようとしている大型公共事業計画についてお聞きします。
昨年12月に、与党プロジェクトチームは北陸新幹線敦賀以西の延伸ルートを「小浜~京都駅ルート」に決定しました。このルートは、京都府のど真ん中を通り、大規模な橋梁工事や長いトンネル工事が予想され、建設コストがかさみ、環境も大きく破壊されることは明らかです。この計画が実行されれば、京都市内のいたる所で地下工事が施され、京都駅には大地下深度の駅がつくられることになります。さらに、JR湖西線が並行在来線としてJRから切り離される可能性が出てきます。3セクの運営になれば、運賃は上がる、乗り継ぎが増える、特急電車はなくなる。地元にとって良いことは一つもありません。
昨年の9月市会市長総括質疑で、私の質問に副市長は、「北陸新幹線は経済効果がある。並行在来線、地元負担の課題もある。地元負担はないとは言えないが、それが決まらないと誘致できないというのはふさわしくない」と答弁をされましたが、ここまで来ても、そういう無責任な誘致運動を進めるのですか。
延伸計画の撤回を国とJRに求め、本市の誘致方針と予算も撤回するよう強く求めるものです。
さらに、市内高速道路三路線について伺います。市長は市民の反対運動によって、「廃止の手続きに入る」と言明しながら、手続きに入るどころか、目先を変えて「十条油小路~堀川五条」間にバイパストンネルの建設という計画を国に要望しています。まったく同じではありませんか。往生際が悪すぎます。高速道路はダメだが、バイパスなら、なぜいいのですか。もともとの高速道路であれば、1200億円というとんでもない事業費です。市長は、同じ過ちを繰り返すつもりですか。市長は、繰り返し「財源不足」を口にしておられますが、「お金がない」と言うのであれば、ムダな大型公共事業計画を見直すべきではありませんか。今後、東京オリンピックに向けて建築ラッシュがますます集中し、建設資材単価や人件費の高騰による事業費の増加は明らかであります。これでどうして、「未来に責任のまちづくりを力強く推進」と言えるのですか。お答えください。ここまでの答弁を求めます。
(市長)北陸新幹線は、首都圏と北陸、近畿を結ぶ新たな国土軸形成に重要なプロジェクトだ。京都駅への接続で、京都のみならず、日本全体の発展に貢献する。東京一極集中是正で、東京・金沢間開業により北陸圏の人的、経済的交流が、近畿圏から首都圏へと移動しつつあることを多くの関係者が危惧されており、私も同感だ。大阪までの一日も早い整備、京都の発展のため、完全24時間運用の関西国際空港への延伸へ、府、経済界等とも連携し国へ要望する。堀川通のJR交差部付近は、慢性的な渋滞がある。京都高速道路のあり方を議論する専門委員会から、高速道路の3路線は廃止するが、交通課題解決のため、南北のボトルネックの解消を進めるべきとのご意見をいただいた。国直轄事業によるバイパストンネルなどの渋滞解消の調査を国に要望した。厳しい財政状況の下でも、未来の京都の発展への先行投資など、真に必要な事業については国の支援を得つつ、しっかりと進める。
原発再稼働容認をやめよ。原子力災害対策の理念と姿勢をただす
原発再稼働に反対を表明し、自主避難者の住宅は無償提供の継続を
次に、原発再稼働と本市の原子力災害対策についてお聞きします。
東京電力福島第1原発の事故から間もなく6年になろうとしているのに、事故原因の究明が尽くされず、事故収束の見通しも立たず、避難者は避難生活を余儀なくされています。
東京電力が1月末に実施した福島第1原発2号機の原子炉格納容器内のカメラ調査において、調査場所の放射線量が、最大で毎時約650シーベルトに上るという、とんでもない推計結果を明らかにしました。人が近づくと数十秒で死に至るほどの驚くべき高い放射線量であります。
また、1月20日には関電高浜原発で工事用の大型クレーンが倒れ、原子炉補助建屋と燃料取り扱い建屋の外壁の一部が損傷する事故が起きました。メーカーや関電は「暴風警報に気がつかなかった」とか、「想定を超える風速だった」と言いますが、強風にもかかわらずクレーンのアームを畳まないという危機管理対応のずさんさは明らかです。今回は建屋の損傷事故で済みましたが、一歩間違えば放射性物質の大量流出につながる大事故になったではありませんか。
これらの事態を見ても、市長は「規制委員会の安全基準を満たせば再稼働はやむを得ない」というのですか。市民の安全を最優先するならば、再稼働に反対の立場を表明するよう強く求めますが、いかがですか。
また、福島原発事故から自主避難されてきた方の住宅無償提供制度が、今年3月末で打ち切りとなります。昨年の11月市会において、全会派一致で採択された意見書にあるように、国の制度として継続するよう国と東電に求めるとともに、本市として有償による住宅の提供ではなく、無償提供を継続するよう強く求めます。いかがですか。
(危機管理監) 本市は、平成24年3月の市会決議を重く受け止め、「原子力発電に依存しない持続可能なエネルギー社会」の実現を目指し、中長期的には「脱原発依存」を強く主張し続けている。やむを得ず原発を再稼働する場合には、その必要性を明らかにし、世界最高水準とされる新規制基準を厳格に適用して、万全の安全性を確保するとともに、分かりやすく住民に説明し理解を得るよう国に求めている。自主避難者を含む東日本大震災の避難者の市営住宅の無償提供は、国の方針や福島県の意向を踏まえ、避難指示区域の世帯を除き、更なる無償期間の延長はしないとしたが、本市は避難者への戸別訪問で意向を確認し、現在の住戸に住み続けることを希望する方は、順次、所得に応じた低廉な家賃で正式に入居していただく。
原子力防災対策は、安定ヨウ素剤事前配布など、いのちを守る理念と姿勢を
さて私は、2月3日、党議員団の調査で同僚議員と兵庫県篠山市の原子力災害対策と全住民を対象にした安定ヨウ素剤配布の取り組みを視察してきました。
篠山市では、平成24年、原子力災害対策計画(避難計画)の作成を目指して、検討委員会を立ち上げました。しかし、県が計画を作成していないため、警察、消防、自衛隊の動きが盛り込めないために避難計画の作成ができず、代わりに市長と市民に対する提言をまとめました。提言の基本的考え方は、憲法13条と25条に規定された人格権(生命や身体、自由や名誉など個人が生活を営む中で、他者から保護されなければならない権利)を守る精神に則り、書かれています。
そして、福井県や他県にある原発から放射性物質が大量に放出される事態を想定し、いかに市民を被曝から守るのか、住民のために何が必要なのか検討を進めまたそうです。
そこで、原子力災害が起きた時の一番大事な対処は、原子力規制委員会の提唱する5キロ圏内から優先的に避難する「段階的避難」ではなく、30キロ圏外に位置する篠山市においても、「みんながとっとと逃げる」早期避難することを最優先するとしています。
そのうえで、検討委員会は原子力災害対策マニュアルの作成および緊急対策として、放射線被曝防護の観点から、全住民を対象にした安定ヨウ素剤の備蓄と事前配布方針をまとめ、27年6月に市長に提言書を提出しました。
市長は、この提言書を受けて直ちに具体化を図り、27年度補正予算を組み、安定ヨウ素剤の事前配布に向けて広報紙の発行とともに、各自治会の会議とすべての小中学校のPTA会議での出前講座に市職員を派遣し、原子力防災学習会を行いました。事前配布には医師や薬剤師などの専門家を配置し、市職員も徹底した研修を行い臨みました。28年度も体制を充実させて臨み、配布実績は二年間合計で全人口の29%、その中で3歳以上13歳未満の子どもでは73%と子どもを持つ世代の関心の高さが示されています。なお、周辺都市から篠山市に勤務している人や観光客への対応として、市役所に備蓄してあるとのことです。さらに、提言の内容をわかりやすく書いた原子力災害対策マニュアルも今年度中に完成させ、全世帯に配布するとのことです。
視察のなかで当職員の方は、国がどういう指針であっても、県が避難計画を持っていなくても、住民のいのちと安全を守るためにやっている。市長も市長任期中は安定ヨウ素剤配布を続けると言っている」とおっしゃっておられました。自治体の長の姿勢、職員の姿勢に感銘を受けました。そこでお聞きします。篠山市の原子力被害対策と篠山市長の理念と職員の姿勢を、市長はどう受け止められますか。
(危機管理監) 本市ではUPZ内の地域で迅速な情報伝達、避難、除染、安定ヨウ素剤の配布等を行う原子力防災訓練を実施しており、今後も安定ヨウ素剤に限らず、万が一の原子力災害から市民を守るための防災対策の充実にしっかりと取り組む。
「ヒバクシャ国際署名」の取り組み実施を
次に、核兵器廃絶のための国際条約の締結を求める「ヒバクシャ国際署名」の取り組みについてお聞きします。
今年は「核兵器のない世界」に向けた歴史的な年になろうとしています。国連総会が昨年末に113か国の圧倒的多数の賛成で核兵器禁止・廃絶のための国際条約の交渉を今年の3月と6~7月に行うことを決議しました。
これまでも大量破壊兵器である生物兵器、化学兵器は、国連で使用を非難する決議が採択され、条約がつくられ使用が禁止され廃絶されてきた歴史があります。今度は最も残虐な大量破壊兵器である核兵器を禁止し、廃絶する条例をつくる時です。
核保有国など核兵器固執勢力が交渉を拒否しても、禁止条約で核兵器に「悪の烙印」を押せば、「必要な兵器だ」という核抑止力論を正当化することはできなくなります。ここまで核兵器固執勢力を追い込んだのは、世界の世論と運動であり、とりわけ日本の被爆者を先頭にした運動でした。
この被爆者が初めて呼びかけたのが、「ヒバクシャ国際署名」です。世界で数億の署名を目標にしています。この署名は門川市長が参加する「平和市長会議」も賛同し、署名を呼びかけています。その中で門川市長も署名にサインされました。被爆者の二世として心から歓迎します。
この署名行動を成功させるためにも、市の広報媒体での署名の呼びかけ、市の施設で署名用紙を置いて署名を呼びかけるなど目に見えた取組を強く求めますが、いかがですか。
(総合企画局長)本市では、平和を都市の理念としている。ヒバクシャ国際署名は、被爆者が自ら始められた尊い活動だ。市長も趣旨に共感され、ご要請も受け、署名に至った。市民、団体の活動は、自主的だからこそ、人々の心を打ち、共感の輪が広がる。主体的な活動が基本だ。本市は、平和首長会議への連携や本市独自の事業等を通じ、世界恒久平和の実現を目指す。
憲法と地方自治法の堅持、違憲立法の共謀罪への態度について
さて、安倍首相は施政方針演説で、「憲法審査会で具体的な議論を深めよう」と改憲へ前のめりに、「新しい国づくりのために憲法改正が必要」だとおっしゃいました。しかし、憲法のどこが問題で、どう変えるのかは具体的に示していません。自民党改憲草案は憲法9条2項を削除して国防軍を設置し、「公益及び公の秩序」の名で基本的人権の大幅な制約を可能にするなど、「憲法によって権力を縛る」という、本来の立憲主義を全面的に否定するものです。
変えるべきは憲法ではなく、安保法制の強行にみられるような憲法をないがしろにする今の政治ではありませんか。憲法と地方自治法の堅持は地方自治の基本です。憲法擁護に対する市長の決意を伺います。
そして、今国会に提出されようとしている共謀罪法案です。政府は名前を「テロ等準備罪」と替えてごまかそうとしていますが、共謀すなわち相談、計画しただけで犯罪に問えるという本質は何ら変わっていません。
市長は、共謀罪が「罪刑法定主義」という刑法の大原則に反し、憲法第19条が「侵してはならない」とする国民の思想や内心を処罰の対象にする違憲立法という認識がありますか。
共謀罪はモノ言えぬ監視社会をつくる、現代版の治安維持法と言わざるをえません。日本の民主主義がかかっています。市長として法案提出を断念するよう国に声を上げることを強く求めます。
今年一月に開催した日本共産党第27回党大会には、民進党・安住代表代行、自由党・小沢代表、社民党・吉田党首、参院沖縄の風・糸数参議院議員が日本共産党の95年の歴史の中で初めて他党の来賓として出席され、野党共闘を進める立場であいさつをされました。安倍政権の主要政策の一つ一つは大半が世論調査でも国民の多数が反対しているものばかりであります。多くの国民に、安倍政権に代わる強力な選択肢・受け皿を示し、野党と国民が「大義の旗」を掲げ、「本気の共闘」を進めれば安倍政治を変えることは十分可能であります。そのために全力を上げることを表明し、私の第一質問といたします。
(岡田副市長)日本国憲法の三大原則の主権在民、基本的人権の尊重、平和主義は、遵守されるべき基本的な理念、原則である。社会情勢が大きく変化してきた中、こうした原則を大切にしつつ、憲法について国民が関心を高め、しっかりと議論がされることは意義のあることと考えている。憲法とテロ等準備罪との関わりについては、国家、国民の基本に関わる事項として、国権の最高機関である国会において議論されるとともに、国民への十分な説明責任を果たしていただくことが必要であると認識している。
第二質問
答弁をいただきました。新たな京都壊しの指摘とムダな公共事業を見直すように求めましたが、否定をされました。また、アベノミクスの破たんを直視せず、あい変わらず「成長」や「総活躍」のかけ声に踊らされ、「文化力で日本を元気にする」「全国を牽引する」とか言いますが、足が地につかない施策やイベントをいくら並べても市民生活は元気にならないし、真の成長は実現できません。それこそ、当を得ないものであります。重心を下におろした市政運営を強く求めます。
大宮交通公園について、なぜ、北消防署の移転先を大宮交通公園にしたのか、明確な答弁はありませんでした。問答無用とばかりに、「必要な移転だから我慢して受け入れる」では、住民合意などできるはずがありません。
今日は、新たな京都壊しと市民の声に耳を貸さない市政運営について質問をしました。引き続き、設置される予算委員会で同僚議員とともに審議していくことを表明して質問を終わります。