日本共産党は、地方財政の充実・強化を求める意見書案に反対でありますから、私はその理由を明らかにし、討論します。
一般的に言えば、地方財政の充実強化を求めるのは、自治体関係者・地域住民にとってはごく当たり前のことであります。しかしこの意見書案には、その趣旨や立場が曖昧で賛成し難い部分が少なからず含まれています。
前文で、まず①「職員数の削減により‥人材確保が急務」等等のことですが、我党は職員削減には一貫して反対してきました。誰が削減してきたのか、主語抜きの、しかも既定の事実のような言い方には賛成できません。
②また「国の経済財政諮問会議においては」云々とのことですが、この諮問会議では、軍事費の拡大や大企業への行き過ぎた減税等を前提にした上で、どう財政の辻褄を合わせるかを議論されていますから、批判的観点抜きの表現は、やはり賛成はできません。
③更に「自治体の努力を的確に見積もり」というのも、今、政府が、自治体のリストラの進捗によって交付税を匙加減しようとしている等の動向について、あまりにも思慮不足といわなければなりません。自治体リストラの努力をもっと評価せよということになってしまいます。賛成できないのは当然であります。既に2013年10月には、当時の議員全員で「地方の固有財源である交付税を国の政策誘導手段として用いることは避けること」との意見書を採択しています。これからいっても後退です。
④加えて本意見書案の最後の項目には「臨時財政対策債について」「抜本的に見直しを」とのことですが、これも、すでに臨時財政対策債は廃止を求めるのが、本市も含め地方団体の一致した要求になっていることからいっても、抽象的な「見直し」では要求水準から言って後退です。この点についても、先ほど紹介した1年半前の意見書で、既に「臨時財政対策債発行によることなく」と明確に謳っている通りであります。
全体として、三位一体の財政改革以来、或いはもっと古い時代から、地方財政のあり方については、国庫負担金・補助金のあり方とともに、税源委譲と交付税増額とが焦点になってきました。税源委譲だけでは、中小企業の多い京都では課税ベースが小さく、財源保障と財源調整としての交付税の役割も重視すべきだと私は言い続けてきました。特に政府に対し、全国の自治体が一致して団結し得る要望の設定という観点から言えば、交付税の必要額確保が焦眉の課題ではないかと呼びかけてきました。残念ながら、本意見書案は、こういう論点には全く言及せず、最後に突然、臨時財政対策債が、しかも前述の通り非常に中途半端な形で出てくるだけで、極めて抽象的一般的に財源の充実をと言っているだけなのであります。
しかしながら、もっと賛成できない決定的な理由は次の二点であります。
第一は「法人実効税率の見直し、何々の廃止など、各種税制の廃止・減税を検討する際には‥」と、法人税の減税を前提としていることであります。その場合、自治体に悪影響が及ばないようにといくら言ってみたところで、法人税を減税すれば法人市民税法人税割も減るのは当たり前であります。そもそも今日の我が国の財政について考える場合、大企業への行き過ぎた減税が、税収減の最大の要因となっています。減税を肯定する意見書には絶対に賛成できません。課税ベースの縮小、低い税率、そして受取配当金益金不算入制度、税額控除、等等、至れり尽くせりの出血大サービスとなっています。莫大な利益にふさわしい応能負担を求めることが焦眉の課題になっています。もう少し身近な事例から言っても、地方交付税の原資を増やす立場から私たちは法定率の引き上げを求めていますが、法人税収入の33.1%とはいっても、これ自身も34%から減らされたわけですがそれはともかく、政府が大企業の税金を下げれば下げるほど、その法人税収自体が減っていくばかりであります。より直接的に、法人税減税は、交付税原資の縮小に直結するのであります。
第二は、「まち・ひと・しごと創生事業費」を「経常的に必要な経費に」とのことですが、そもそも、まち・ひと・しごと創生事業とは、たとえその為の経費の一部が、中には市民生活向けに活かせる部分があったとしても、地方創成そのものの本質は、国家戦略特区や都市再生整備地域の指定等と一体に、規制緩和や税制の優遇など、企業が一番活動しやすい自治体づくりをめざすものであります。コンパクトシティの名の元に、まちの集約化、特に周辺部の切り捨てにも繫がりかねない都市とその周辺の再編をめざすものと言われています。意欲的な提案など市民の自主的な取り組みを強調するのはいいとしても、それをもって公的な責任と役割を一層後退させようとする動きも見え隠れしています。昨年9月に首相が石破担当大臣を任命した際、道州制の検討も指示したとも伝えられています。これが本命ではないでしょうか。そもそも人口減対策というのなら、労働者派遣法改悪など不安定雇用拡大政策を直ちにやめ青年の正規雇用拡大が必要です。東京一極集中の是正というなら、例えば大店法の商業調整復活、立地法の改正等が必要です。問題の多いまち・ひと・しごと創生に対し、無批判的にお金だけよこせというのは、木を見て森を見ない、本質に迫らないだけでなく、むしろこれを肯定し、応援するものになってしまいます。到底賛成できません。
以上、反対の理由を申し述べ、討論とします。