日本共産党京都市会議員団は、すでに、報第5号一般会計歳入歳出決算、報第7号国民健康保険特別会計、報第23号水道事業特別会計及び報第25号自動車運送事業特別会計決算など7件については「認定せず」、報第20号基金特別会計、報第24号公共下水道事業特別会計及び報第26号高速鉄道事業特別会計など17件については「認定および賛成」との態度を表明しております。以下、通告した議案について討論を行います。
まず、一般会計歳入歳出決算等について、「認定しない」理由を詳しく述べます。
安倍政権は、全国の都市に対し、域外の需要を地域に呼び込む「名物」づくりと「戦略産業」で村おこしをせよと迫りながら、その疲弊する地域経済に消費税増税で冷や水を浴びせ、その上、それらの「都市」そのものも「集約化」と「都市機能の集約化」をもとめるという地域破壊のローカルアベノミクスを押し付けようとしています。京都市はこれに追随し、区役所機能の縮小を伴う市税事務所の集約化、出張所の相次ぐ廃止、京北の学校統合など進めておりますが、その先には地域コミュニティの衰退しかありません。リニア新幹線構想は東京への一極集中と地方都市衰退を加速するものであり、その採算の見通しの甘さから巨額の国税投入の恐れすらあり、実現不可能な京都ルート誘致でこの計画推進を後押しする市長の姿勢は二重三重に問題であります。安倍政権の地方破壊と真っ向から対決し、中小零細業者と消費者たる労働者の暮らしをしっかりとささえ、福祉の増進でまちづくりをすすめていく真の地方自治体の姿を打ち出すことが求められています。その視点から、当該年度の決算には以下4点にわたり重大な問題があることを指摘するものです。
第1に、京都経済を危機に陥れている消費税増税等に対し「国が判断すること」と国いいなりになっており、地域経済を守る姿勢が欠落している点であります。
市長は京都経済が「ゆるやかな回復傾向」にあると答弁されました。確かに大企業は空前の利益をあげ内部留保をたっぷりと蓄えておりますが、圧倒的多くの市民の状況はどうでしょうか。日銀「生活意識調査」でも暮らし向きに「ゆとりがなくなってきた」と答えた人が今年3月の38.1%から9月には48.5%に増加し、「家計調査」では、収入の一番低い階層で今年5~8月期の実収入が前年同期比マイナス5.9%、消費支出が同マイナス8.5%と大きく落ち込んでいることが報告をされ、京都市の実態はより深刻であるというのが私たちの実感であります。
決算年度に実施された「商業集積地の魅力向上にむけた商業環境基礎調査」をうけ作成された「京まちなか活性化にむけた提案」の中でも、御池・河原町・四条・烏丸を中心とする都心部において、関西・京都市内で大型店の開業が相次ぐ中で、2007年に4129億円あった売り上げが2012年には2802億円へと3割も落ち込むという深刻な事態が報告されています。消費税増税と大店立地法が地域経済を破壊しつつあります。今こそ、大店立地法を自治体の需給調整を認めるものへと抜本改正すること、消費増税の中止のために市長が先頭にたって行動すべきであることを指摘しておきます。
また、京都市の経済対策にも問題があるといわざるを得ません。とりわけ、京都市が「国内需要は人口減少のもとで縮小の可能性」と国内需要にみきりをつけ、外国の需要の取り込みや多国籍企業による対日投資の「呼び込み」に、京都の活路を見出そうとしている点も重大であります。京都市は国内需要産業を「下支え」と位置付けていますが、国内需要産業こそが京都の経済活動の「主役」であって、この活性化なくして京都経済の活性化はあり得ません。この10年間、京都市内において市民所得が増え続けているのになぜ政令市一の落ち込みなのか。市民所得は企業所得と雇用者報酬等で構成されますが、この10年間、企業所得は倍増しているのに、雇用者報酬は12.5%も落ち込み、それが地域での消費の停滞の大きな背景となっているからです。これは、不安定雇用の割合が政府・財界により拡大されてきた結果であり、この抜本的な構造問題に取り組まなければ、京都経済活性化はあり得ません。中小企業振興基本条例や公契約条例の制定による労働者の賃金底上げ、発注単価の引き上げなど、こうした地道な取り組みこそ、京都経済立て直し、国内需要拡大へとつながります。名古屋市の調査によれば、敬老乗車証はその維持に投入される税金の3倍の経済波及効果をもたらすとのことであり、地域循環型の経済対策の立場からも、京都市も敬老乗車証制度の基本を堅持すべきであります。地域内経済循環を意識した一つ一つの政策の積み重ねこそが、京都の地域経済活性化とコミュニティ活性化の底力となるという点から市の施策の総点検を求めます。
第2は、消費税8%増税の実施と前後して、市民生活のあらゆる場面にかかわる公共料金を値上げしたこと、市民負担軽減の努力を怠ったこと、何より福祉増進の自治体の使命から逆行する福祉切り捨ての「京プラン」を全面実施した点です。
市長は、保育料値上げ、母子家庭医療費支給事業の所得制限の引き下げ、スポーツ・文化施設など計13種類23か所の施設で最大25%の値上げ、市営墓地使用料値上げなど、「ゆりかごから墓場」まで、総額約15億円に及ぶ値上げ・負担増を強行しました。「市民に必要最小限度のご負担をお願いしている」にすぎないと市長はいいますが、消費税8%増税と相まって市民生活に重大な打撃を与え、京都経済落ち込みの要因となっております。国民健康保険会計は単年度収支で6年連続の黒字となり、当初説明してきた収支均衡という目標からすれば負担軽減の措置をとるべきと求めましたが、値下げに踏み切りませんでした。ごみ有料指定袋制で毎年約13億円の収益をあげながら、全国でごみ減量の成果をあげつつある「ごみ袋値下げ」にも背を向けています。南部クリーンセンター第2工場建て替えにあたり、ごみ焼却炉煙突に展望台を設置するために4億円もの浪費はやめ、ごみ袋の値下げこそ決断すべきです。
第3は、強引な「職員削減」が市民生活に大変なきしみをもたらし、京都市の災害対応能力にも重大な支障をもたらしつつある点です。
市長は職員削減を誇りますが、その結果、医療・福祉・保育の最前線から市職員が次々と引き上げたことで、現場は混乱し、住民の皆さんに大変な負担と不安をもたらしています。市立看護短期大学・洛西ふれあいの里・健康増進センターの診療所を廃止したのに続き、リハビリセンター附属病院の来年3月廃止も進められようとしています。市営保育所2か所の廃止・民間への移管、母子寡婦貸付金回収業務の外部への委託、中央斎場の受付業務の委託など、自治体の仕事を民間に明け渡す動きも加速されました。市営保育所の廃止はその後の検証すらも行わぬまま、かつ、これまでの経過を全く飛び越えて、今年8月には新たに6か所の廃止・民営化方針案が打ち出されました。これまで、民間と京都市がそれぞれの支えあって築いてきた京都の保育の質そのものに危機をもたらしています。市営保育所存続を願う1万4千筆の署名の重みをしっかりと受け止めるべきです。
昨年の台風18号被害では、民間委託となっていた小栗栖排水機場の体制不備とそれらをバックアップする京都市の職員体制のもろさから、ポンプが一時停止したまま長期に放置され、600件以上の浸水被害を引き起こしました。その後の被害者への賠償の対応も、職員体制の薄さから派遣社員に頼らざるを得ず、そのことで被害者に長期にわたる苦痛を与え続けています。
11月から実施される区役所課税部門の大規模再編・人減らしは、区長会議で検討された懸念は払しょくされたとは到底言えず、市民サービス後退、最悪の場合には権利侵害の事態が生まれかねません。区役所から、11月には市民税課、来年5月には固定資産税課の職員、合計320人が市税事務所一か所に集約化されます。市民が区役所に殺到する繁忙期だけ一部の職員を区役所に戻して臨時窓口をつくり対応し、市税事務所では派遣社員で穴埋めしてマニュアルによる電話対応で住民の相談を対応するとしています。区役所で突っ込んだ税の相談ができないばかりか、たらいまわしされた先の市税事務所においてもまともに対応してもらえないという事態になりかねません。先ほど紹介した小栗栖排水機場の問題で、最初に現場への駆け付けた市職員は、職務上地理に精通していた固定資産税課の職員でしたが、こうした防災時の機動性が区役所から失われることも重大であります。
第4は、住民と一緒になってまちづくりをすすめるという住民自治の観点が欠落している点です。
建築審査会は、市長に対し「自ら建築する建物において新景観政策の理念を優先すべき」と京都会館建て替え問題について異例の苦言を呈しました。市民や事業者に厳しい景観規制を課しておきながら、自らは特定企業と密室協議で高さ規制緩和への動くやり方は反省すべきです。そして、左京区役所駐車場跡地売却を巡っては、住民どころか区長すらも蚊帳の外において、売却をすすめるという市有財産活用についての京都市の指針の問題点が明らかになりました。資産売却一辺倒ではなく、もっと長期を見通した財産有効活用を住民と一緒に考えるべきであります。
なお、この決算年度において、わが党が繰り返し求めてきた焼却灰溶融施設の契約解除をようやく京都市が受け入れて、住友重機械工業に通告をしたことにより、当初予算に組み込まれていた焼却灰溶融施設関連27億円が年度途中で減額をされ、毎年20億円もの負担を強いられるはずだったものを未然に抑止できたことも指摘しておきます。
次に、水道事業について、認定しない理由を述べます。昨年10月に老朽管の更新することを口実にして9.3%、総額9億6100万円の料金値上げが強行されました。わが党は、安倍政権による増税や社会保障制度の解体などにより、市民生活と零細な京都経済に多大な負担が押し付けられており、市民には到底値上げなど受け入れられないこと、新たに資産維持費を値上げの根拠にするなど市民に理解は得られないことを挙げて値上げに反対しました。老朽管更新に対する国補助制度の拡充こそ市長が率先して努力すべきであることを求めたのであります。市民の方から「水道代が高くなって困っている」「お風呂の回数を減らしている」など悲鳴の声が届いています。そのうえ、今年4月から消費税増税に対応した値上げが強行され、一層負担が増大しています。今回の審議で、このような市民生活の実態を調査しているかと尋ねても「していない」とのことでした。わが党は「水道など公営企業については消費税を適用除外にすべき」と求めましたが、これについても「国の基幹税であること、適用除外についても公平性から見てもしない」とにべもない答弁でした。水道の老朽管の早期更新で「いのちの水」を確保することは当然ですが、国補助制度の改善もされず、繰入金の拡充もないまま市民に負担を押し付けることは反対です。よって認定できません。
次に、市バス事業の決算を認定しない理由を述べます。市バス運転手等の若年嘱託制度は採用から4年間も非正規雇用のままという極めて非人間的な制度であります。他都市では名古屋市以外には見られない特殊な制度であり、早急な労働条件改善を求めましたが、理事者は「技術の見極めに4年は必要」と態度を変えようとしていません。更に、「管理の受委託」制度について、わが党は「人件費抑制のための制度であること、民間乗務員の労働条件の把握がされていないこと」を指摘して、制度をやめることを求めてきたのであります。市バスは、3月22日から35年ぶりに車両の増車や走行キロの拡大、バス待ち環境の充実など「新運転計画」により積極的な方向に転じていることは良いのですが、労働条件の後退や事実上民営化に進む経営については認められませんので認定できません。
次に、認定を表明している企業会計2件について申し述べます。
まず、公共下水道事業についてです。昨年の台風18号はじめ豪雨災害の頻度が高まる中、雨に強いまちづくりが求められており、下水道の役割が重要になっていることを質疑の中でも指摘をしたところです。10年確立対応を進めていくこと、雨水浸透桝の普及強化についても積極的な答弁がありました。理事者は、国に対して国補助制度の改善についても強く求めると表明しており、認定するものです。
最後に、地下鉄事業についてです。地下鉄事業については認定するものでありますが、国の補助制度の抜本的な拡充なしには事業の進展が危ぶまれます。市民生活に密着した事業でありますから、市長を先頭にした積極的な努力を求めるものです。以上で討論を終わります。