「中国、韓国で日本企業が安心して活動することができるための対処を求める意見書」について、日本共産党は反対の態度を表明しておりますので、その理由を述べます。
意見書案では、日本企業が安心して中国や韓国で経済活動ができるように、「一切の戦後補償が終結していることを強く主張する」ことを求めていますが、政府は本来、二度とふたたび侵略戦争を繰り返さないという立場で、戦後補償問題に誠実にのぞむべきです。
1965年に締結された日韓請求権協定では、協定第三条第一項において、協定の解釈および実施に関する両国間の紛争がある場合には、「まずは外交上の経路を通じて解決するものとする」としています。従軍慰安婦問題などは被害者の告発により1990年代以降に政治問題化しており、補償問題を「解決済み」とする日本政府の主張は成り立ちません。一つ一つ慎重な対応が必要です。
日中共同声明では「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」とうたっております。ただ、国際法において、個人の補償請求権の問題は国家間で解決することがこれまで通例となってきたことは確かですが、国家間の協定ですべて問題が包摂されない事態や協定の成立時には予想もしていない問題が明らかになることもあります。いったん協定が結ばれたらそれで終わりとは言い切れません。
1968年に国連で採択された「戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用条約」により、人道に対する罪には時効がないことが、国際法上は明確になっております。
国連人権規約では、人権尊重が国の国際法上の義務とされ、国家とは別に個人が人権侵害に対して国連に告発できるとしています。
最高裁判所は、2007年4月27日、日中戦争の遂行中に生じた中国人労働者の強制連行および強制労働に係る安全配慮義務違反などを理由とする損害賠償請求について、個人の請求権を否定して訴えを棄却しましたが、同じ判決において、日本企業側に「被害の救済に向けた努力をすることが期待される」との意見をつけました。「被害者の精神的・肉体的苦痛が極めて大きかった」こと、過酷な「勤務条件で中国人労働者らを強制労働に従事させて相応の利益を受け」かつ「保証金を取得している」ことを理由としています。
日本企業がより安全に海外で活動するために日本政府がすべきことは、戦後補償問題の早期解決を冷静な話し合いで解決するとともに、憲法9条に掲げる平和的外交的な手段でもって世界から紛争やその背景となる貧困を解決することに力を尽くすことです。
以上で討論を終わります。