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市会報告

玉本なるみ 議員

11年5月30日(月)

国民健康保険事業特別会計補正予算に対する賛成討論 11年5月定例市会 閉会本会議討論

 日本共産党市会議員団を代表して、議第85号国民健康保険事業特別会計補正予算に対する討論を行います。平成22年度の不足額を繰上げ充用する補正などは必要なものであり賛成します。しかし、現在、市民の暮らしや営業の実態が厳しい状況にある中で、国民健康保険料の負担や医療費負担の重さが、大切な命さえも脅かす事態となっています。京都市が市民の命を守る立場で、役割を発揮する必要があります。以下、委員会質議の中で明らかになった事業の運営にあたって改善点について述べます。

 第一に、高すぎる国民健康保険料は加入者の負担能力を超えており、直ちに保険料の引き下げを行う必要があるということです。

 平成22年度は単年度で12億6800万円の黒字見込みとなっています。予算の説明の際は、「単年度の収支均衡をとるため」と5億3200万円の保険料の値上げが行われましたので、黒字になるのであれば、保険料を引き下げるのは当然です。市民の負担が限界に来ていることも承知の上で値上げを強行し、3年連続で単年度収支の黒字分は、37億4400万円になります。黒字分を赤字の穴埋めにするのではなく、今、優先すべきは、保険料引き下げで市民の暮らしを応援することです。実際、保険料を値上げしても、保険料収入は増えていません。所得が下がっており、負担能力を超えている状況は明らかで、その上での値上げは市民を苦しめるだけです。

 元より、国保の財政を厳しくしているのは、市民が保険料を滞納しているからではありません。国が国保収入に占める国庫支出金を58%から、25%まで減らしてきたことが最大の原因です。京都市も「政府の財政措置を強く求める」と答弁されていますが、さらに要望を強められることを求めます。我が党議員団も力を尽くしてまいります。

 第二に、一般医療費の低下の背景に一部負担金の厳しさを見る必要があるということです。医療を受けたくても、医療費負担ができずに、治療をあきらめたり、受診を手控え、重症化したり、手遅れになる事例が後を絶ちません。こういった状況の中で、一部負担金の減額免除制度の利用実績は上って当然なのに、実際は下がっています。しかも、昨年度からは、国が新たな基準を設け、適応範囲が増えているにも係わらず総数が減っていることに目を向ける必要があります。国基準の適応は、入院のみの対象ですが、京都市基準と大きく違う点は、滞納があっても適応していることです。京都市の問題は、通院も入院も対象としながら、原則保険料の滞納があれば、適応外としていることです。一部負担金の減額が必要な方は、保険料の納入も困難になってきている方が多いと考えられます。京都市も保険料の滞納の有無ではなく、暮らしの実態に応じて必要な医療が受けられるように救済すべきです。生活保護に移行している方もおられると思いますが、しっかりと後追いをして、数字としても把握していくことが必要があります。そして、利用実績が上らない原因には、周知の問題もあります。国保ガイドや京都市のホームページでは、たった3行の説明で、対象になるかどうかもわからない不親切なものです。しかも、利用実績が他都市比較で、少なくないことを理由に、周知の必要性を認識していないことは重大です。見るべきは市民の暮らしの実態であるのに、他都市との比較数字をみて判断をするやり方は、本来あるべき福祉の心を忘れており、市民の命を守る自治体の姿とは言えません。制度の充実と周知の対策を早急に求めます。

 第三に、徴収率向上の名で行われている容赦のない財産差し押さえの問題です。平成21年度の生命保険の差し押さえの中に、学資保険が24件含まれていることが明らかになりました。国会でも、学資保険の差し押さえについては、質疑され、菅首相は「胸の痛む思いがする」と答弁しましたが、本会議の答弁では、資格証明書の発行も、学資保険の差し押さえもやむを得ないと答弁されました。ここまで、福祉の心を捨てないとできないほどの徴収率向上のやり方は明らかに間違っています。子どもの高校や大学進学のためにこつこつと掛けてきた学資保険を差し押さえれば、子どもの進学の夢さえ奪うことにつながります。学資保険の差し押さえは解除し、新たな差し押さえはやめるよう求めます。

 最後に、命の綱である国民健康保険証を取り上げて、発行している資格証明書の件数が平成23年3月現在で、4,682件と増えていますが、命の綱を行政から断ち切るようなやり方もやめるべきです。命の砦である国民健康保険を守るのは京都市の役割であり、その役割をしっかりと発揮されるよう強く求めて、賛成討論といたします。