とがし豊 議員
11年5月27日(金)
とがし豊議員の代表質問 11年5月定例市会 本会議代表質問
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安全最優先の原子力行政への転換を国に求めよ
はじめに、今回の原発事故をうけ、国の原子力行政への市長の認識をお聞きします。
福島第一原発の警戒区域や計画的避難区域から着の身着のまま逃げてこられた方々がこの京都市内にも多くおられます。南相馬市から避難してこられた方からお話をお聞きしますと、当初は、真実を知らされぬまま、役場から「ともかく危険だ」といわれながらの避難だったそうです。そうした中、原発からとんでもなく大きな爆発音が聞こえ、ただならぬ事態が起こったのだと認識されたそうです。「本来であれば、今の季節だったら、飯館村の山にのぼってたらの芽をとって食べているころ。夏になれば歩いて20分で海にも行けた。本当にいいところ」「いつになったら帰れるのか」と故郷への思いを切々と語っておられました。
被災者の方から「原発事故の被害者は自分達で最後にしてほしい」といわれた言葉が耳から離れません。国は、この原発事故被害者の皆さんの思いに正面から応えるべきであります。
同時に、京都市のすぐ近く福井県・若狭湾には14基の原子力発電所が集中しているのですから、京都市としても国や電力会社に対して安全対策を強く求めなければなりません。
福井県の原発14基のうち建設から30年以上たつ原発が8基もあり、そのうち2基は40年以上もたつ老朽原発です。高速増殖炉もんじゅは、ウランよりも毒性の強いプルトニウムを燃料とし、水の代わりにナトリウムを冷却材に使うため、いざというときに水による冷却もできません。しかも、このすぐ下に活断層が存在し、重大事故ともなれば、京都市や琵琶湖が汚染されることになります。高速増殖炉もんじゅの開発は中止すること、プルトニウムの入った燃料を一般原子炉で燃やす危険極まりない「プルサーマル」運転はただちにやめるべきです。
政府は、浜岡原発以外は安全として現在停止中の原発の運転再開を認めていますが、とんでもありません。福井県知事は「国が示した緊急安全対策は津波対策に偏っている。地震の揺れの影響が検証されていない」とし、京都府知事も同様に、停止中の4基について運転再開を認めていません。運転再開を拒否する福井県知事・京都府知事と同様の認識にたつべきと考えますが、市長の認識はいかがですか。
東京電力は、福島第一原発が地震の揺れによって重大な損傷をうけていた可能性を今になってようやく認めました。また、関西電力は、これまで若狭湾を津波が襲ったという文献記録はないと説明してきましたが、実は、津波被害があったことを記す2つの文献を30年前にはすでに把握しながらも、その事実を隠していたことが昨日報道されました。国と電力会社に対して、地震・津波被害などの想定の見直しも含め、安全性についての総点検を求め、安全性が確認されない原発についてはただちに運転停止させるように求めることが必要と考えますが、いかがですか。
期限を区切って原発ゼロを実現する目標を掲げ、原発の段階的な廃炉と自然エネルギーへの急速な転換をすすめることが必要と考えますが、市長の認識はいかがかですか。
(由木副市長)原発の運転再開は、立地県の理解を得ることが基本。京都府知事・市町村長会議で、安全性の向上や情報提供の徹底、防災計画を抜本的に改正することなど、原子力災害対策のための体制をゼロベースで見直すよう、国や関電に緊急アピールした。
原発事故をふまえた防災計画の具体的な見直しを
次に、原発事故を受けた防災計画の見直しについてお聞きします。
今回の事故をうけて、この京都市においても、原発事故に対応できる防災計画への見直しが必要です。アメリカでは、原発で重大な事故が起これば、放射性物質が大気とともに雲のように流れ、強い放射線によって人体に直接危害をおよぼすとして、16km圏内は速やかに避難すべき地域とし、避難経路まで決まっています。80km圏内は水源地や食料の汚染で体内に放射能が入ってくる危険があるため、飲食物などの摂取制限区域としています。この16km圏にしても、80km圏にしても機械的な距離で線引きするのではなく、風向きなどの気象条件、地理的な条件、そして行政区の境界、地域の事情などを考慮して、区域が指定されています。
この地図をご覧ください。この濃い緑の部分が京都市です。原発からの距離を見ると、京都市は、アメリカの基準でいう80km圏内にすっぽり入ることになります。国の基準の見直しが進まない中、京都府では、緊急時計画区域を20km圏に拡大し、放射能観測地点を10ヵ所増やし、一定の放射線量を超えた場合に避難指示を出すとの暫定基準を示しました。しかし、その20km圏の外である京都市においても、風向き・風速・地理的な条件などを考えれば、対応が必要なことは明らかです。
1991年には、関西電力美浜原発でおこった事故の際に、京都市議会において「原発から近距離にある京都市も含めて防災体制を確立」すべきという意見書が可決されています。国の防災基本計画の見直しや京都府の防災計画の策定を待つのではなく、京都市全域も原発事故対策の対象地域に含めるように国や京都府に対して強く求めるべきです。
(消防局長)原子力防災対策は重要と認識している。対象地域の拡大は、国の防災指針の見直し、府の地域防災計画の改定で対応すべき。
現在の京都市の防災計画は、研究施設などでの放射能漏れ事故を想定した対応が記されているだけであり、福島第一原発で生じたような事態にはまったく対応できません。市長は4月20日の記者会見で「原発における放射能の問題について、京都市域にはあまり大きな影響はない」と話されていましたが、そうした甘い想定こそが「安全神話」そのものではないでしょうか。そこで私は、京都市においても原子力発電所の重大事故に備えた防災計画の見直しを4点にわたって求めるものです。
第一に、今回の原発事故を踏まえ、改めて電力会社に対して申し入れ、原発に異常や事故が発生した際にはただちに京都市に対しても情報提供がされるようにすべきです。今回の事故の場合、東京電力は事故直後には炉心溶融を認める会見を行いながらも、翌日から炉心溶融を隠蔽する情報操作に近いことを行っていました。
3月14日に水素爆発を起こした3号機の原子炉建屋について、その前日から高い放射線量のデータを把握していたにもかかわらず公表していませんでした。こうした情報の隠蔽をゆるさず提供させる仕組みがどうしても必要です。
第二に、放射線量のモニタリング体制の確保です。現在、京都市は琵琶湖疏水の取水池で水のモニタリングや食品の検査をしているだけです。大気の観測は京都市の南端・伏見区の京都府施設に文部科学省が設置しているものしかありません。南北に長い京都市全域の状況をつかんでいるとは到底いえません。京都市が独自に放射線量のモニタリング体制を市内の隅々に確保し、市民への情報提供を行うべきです。
第三に、琵琶湖の水が汚染された場合への備えが必要です。飲料水・生活用水対策、疏水以外の水源からの水の調達可能量の把握とともに、地下水を大規模にくみ上げる能力を有する企業との協定に積極的にとりくむべきです。
第四に、大規模避難への備えが必要です。今回の震災では、20大都市協定など全国の自治体との相互協定・ネットワークが有効に働く中で、京都市は仙台市などへ迅速で系統的な救援物資や要員の派遣を行い、現地で歓迎されました。あらかじめの手順に沿って札幌市が幹事都市として、全国政令市のうごきを取りまとめ、支援を効果的に行いました。原発事故を想定し、大規模避難対策なども含め、現在ある20大都市協定などの自治体間の協定を強化・発展させるべきと考えますが、いかがですか。
(市長)防災対策の総点検の結論をふまえて、地域防災計画を見直す。①原発に異常があった場合は、府を通じて情報が提供されることになっている。②府が7箇所(市内1箇所)で常時監視を行い、インターネットで公開している。③浄水処理方法の検討、災害用備蓄飲料水の製造、伏見酒造組合との水供給の覚え書き、災害協力井戸の登録を行っている。④20大都市協定で原発事故も含んでいるが、大規模避難については全国市長会と連携し、より広域的連携に向け取り組む。
京都市の地球温暖化対策の抜本的な見直しを
次に、京都市の地球温暖化対策の抜本的な見直しについてお聞きします。
私は、地球温暖化対策条例が大幅に改定された昨年9月の本会議において、京都市の地球温暖化対策にあたっては原子力発電所に依存するのではなく、再生可能エネルギーの割合を大幅に引き上げて達成すべきものと求めました。ところが、地球環境政策監は原子力発電について、「安全の確保と国民の信頼獲得を大前提として、引き続き利用を図っていくべきもの」と答弁されました。今回の原発事故によって、それらの大前提は根底から崩れたのですから、京都市として、原発依存の方針を撤回し、自然エネルギーを飛躍的に普及する立場に転換すべきです。
私達が、電気代と一緒に毎月200円から300円近く支払い続けている電源開発促進税の税収は、1年間で3500億円。ほとんどが原子力発電の推進に使われ、自然エネルギーの開発にはお金がまわってきませんでした。例えば、このお金を太陽光発電の普及のために使うなどすれば、10年間で、関西電力の保有する11基の原発の年間総発電量の8割の発電能力を確保することができます。
京都市内には、すでに12基もの「おひさま発電所」が存在しています。市民の出資や寄付によって成り立っています。自然エネルギーをグループや団体で発電しようというこうした取り組みへの支援制度を充実させれば、飛躍的な自然エネルギーの拡大が可能ではないでしょうか。政府がおこなった再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査では、京都市内の河川においても小水力発電の有力な候補地が多数しめされています。現在、桂川では小水力発電によって渡月橋が照らされています。琵琶湖疏水を活用した蹴上水力発電所は114年前に建設されましたが、今なお年1850万キロワットアワーの電力を発電し5千世帯以上に電力を供給しつづけています。95年前に建設された夷川発電所は500世帯分以上の電力を供給しつづけています。今こそ、先人に学び、京都市において徹底的に自然エネルギーの導入をはかるべきです。大規模な風車を必要としない小風力発電、木質バイオマスも京都に多く存在するエネルギーとして注目されています。この京都において、家庭単位・地域単位の規模の発電所が多数生まれるような状況を生み出すような思い切った誘導策を京都市として打ち出すべきです。いかがですか。
原発をかかえる電力会社は、この期に及んで、原子力発電は二酸化炭素を出さないから環境にやさしい、もっとも安い発電方法と大宣伝を続けていますが、果たして実際はどうでしょうか。あの広島・長崎の原爆投下では、核爆発に伴って生み出された大量の「死の灰」が被爆者の皆さんを苦しめてきました。原子力発電所においても、それと同じ「死の灰」が大量に生み出し続けられています。青森県六ヶ所村には、全国から大量の放射性廃棄物が運びこまれ、長崎型原子爆弾5千発分にも相当する量のプルトニウムが、行き先もなく保管されています。プルトニウムは半減期2万4千年といわれ、もっとも毒性の強い放射性物質です。原子力発電は、将来の世代に放射性廃棄物の管理と経済的負担を押し付け、事故を起こす危険もあり、割に合わない発電方法といわざるを得ません。原発依存からの脱却を決断すべき時がきています。
(地球環境政策監)関西で、原発は基幹エネルギー。ただちに代替できないが、化石燃料、鉱物資源からより低リスクの太陽光などの再生可能エネルギーへの転換は必要。
市施設への太陽光発電の導入、一般住宅への設置やエコリフォーム融資をすすめる。産学公の連携による先進技術や国の資金も活用し、地域における再生可能エネルギーの活用をめざして検討する。
受け入れ被災者に親身に相談に乗る体制を
次に、被災者の受け入れ体制の強化についてお聞きします。
この間、党市議団では、京都市内に避難してこられている皆さんのところに訪問し要望を聞くなどの活動をしてまいりました。ある方は、ハローワークにかよったり、新聞広告を見たりして就職活動に取り組まれていました。「就職活動していても、いつまで働けますかと聞かれるのがつらい」といいます。できることなら一刻も早く福島に帰りたいが、しかし、原子力発電所の事故が収束し安全になるまでは帰ることが許されない。帰ることができればそこには生活の基盤もある。そんな悩みをかかえながら、見通しが立たない中で就職活動をされています。現在、保健センターの保健師さんによる家庭訪問や、各区役所・支所ごとに、「被災者登録制度」の案内などをされているとのことですが、緊急の体制で臨んでいるため、継続的に対応する上で課題となっています。情報の窓口を設置するにとどまらず、本格的な体制を確保し、避難してこられた皆さんのところに、情報や権限を有する京都市職員が直接足を運び、顔を合わせながら相談にのり、相手にあわせて情報を提供する姿勢に転換すべきです。いかがですか。
(由木副市長)受け入れ直後から区役所職員が避難者の方と直接お会いし、市の支援策や行政サービスを知らせている。社協などとも連携して日常的な相談に応じるなど、きめ細かく温かみのある対応に心がけている。
左京区役所・福祉事務所・保健センターの移転問題
次に、左京区役所の旧庁舎の有効活用についてお聞きします。
左京区役所・福祉事務所が5月6日から、保健センターが5月9日から新庁舎へと移転しました。この移転をめぐっては、「吉田の庁舎に支所機能を含む公的な施設を残してほしい」という大変切実な要望が市長の元にも届いているのではないでしょうか。移転元である吉田地域の皆さんのみならず、それよりも南に位置する錦林・新洞学区の皆さん、「文化施設を要望する会」の皆さんなどが、それぞれに署名運動に取り組まれ、その数は1万人を超えています。住民の皆さんに対し、京都市は、旧庁舎は「差し迫った活用計画がないので売却する」と回答されましたが、これだけの住民の要望があるのに、なぜ売却されるのですか。京都市の耐震診断によれば、旧館側の1・2階部分の壁を増やせば、まだまだ使えるとのことです。改めて同じような建物をつくるとなれば何十億円ものお金が必要になるのですから、将来の世代の利益を考えれば、残して有効活用すべきです。市長は「吉田の庁舎は売却せずに、支所機能を含む公的な施設を残してほしい」という署名に寄せられた住民の願いをどのように受け止められていますか。旧庁舎に支所的な機能を残すべきです。いかがですか。
旧庁舎については、安全な管理を進める上でも人を配置するとともに、その使用を住民に認めるべきではないでしょうか。移転から3週間たちますが、旧庁舎に間違ってお越しになる方は、後を絶ちません。6月には国民健康保険料値上げの通知が市民のもとに届く中、多くの方が旧庁舎にお越しになる可能性があります。必要な相談に乗れる体制を確保し応対されるべきです。強く要望します。
(星川副市長)旧庁舎は売却し、まちづくりや地域活性化へ有効に活用することが大事。大学のまちであり、吉田は京都大学の拠点。京都大学に活用して頂きたい。協議・調整している。
新庁舎への足を確保し、現在のところ、旧庁舎に支所機能を残すことは考えていない。
京都会館再整備は市民合意で
最後に、京都会館再整備についてお聞きします。京都会館の第一ホール部分を全面的に建て替えて、高さを30メートルに引き上げることを含む京都会館再整備の基本計画案が今議会に示されました。市民意見募集が行われた1月の時点では、当局の内部では、すでに「改修」ではなく「建て替え」を行う案が固まっていたにもかかわらず、市民にはこの事実が伏せられたまま意見募集が行われていました。
一方、ロームにだけは、第一ホールの全面「建て替え」を前提にした図面を提供し、命名権売却の交渉を行っていたことが明らかになりました。実は、京都市はもともと、現状の高さを守った上で、市民やプロモーターから出されている多様な要望にこたえる案を3150万円もの費用をかけて、1年前に作成していました。その案は、なぜか闇に葬られ、議会にも市民にも公表しないまま、突如として全く別の「建て替え」案が浮上してきたのです。
京都会館の再整備をめぐっては様々な意見があり、簡単な事業ではありません。それだけに、市民の文化活動をめぐる要望にこたえること、岡崎地域のシンボル的な存在である京都会館の近代建築としての値打ちをどう守るのか、高さ規制など京都市の新景観政策との整合性をどう確保するのかなど、市民や専門家と真剣に話し合い、一緒に合意を形成しながらすすめるべきではありませんか、いかがですか。以上で質問を終わります。
(細見副市長)「京都会館再整備基本計画案」は、これまでの取り組みやロームとの命名権の基本合意をふまえた、最適な案である。市民に丁寧に説明し、専門家の意見をしっかり聞いて、現在の建物の価値の継承、高さも含めて国の「都市景観100選」に選ばれた岡崎の景観にふさわしい建物となるよう再整備をすすめる。