くらた共子 議員
11年5月27日(金)
くらた共子議員の代表質問 11年5月定例市会 本会議代表質問
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原発事故を想定した地域防災計画への見直しを
上京区選出のくらた共子です。まず初めに、3月11日に起こった東日本大震災の犠牲となられた多くの方々、被災地関係者のすべての皆さんに心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。わが党は、大震災の発生直後より被災者救援の活動を行い、節々で政府に一連の要請と提起を行ってきました。日本国民が立場の違いをこえて力を合わせ、国の総力をあげてこの大災害を乗り越える時です。先の一斉地方選挙では、いのち、くらしを守る市政をどうつくるかという問題とともに、東日本大震災からの復興と震災に強いまちづくりをどうすすめるかが、大きな争点となりました。日本共産党は原子力発電所の危険性を一貫して唱えてきた政党として、ただちに全ての原子力発電所の総点検と安全対策をとること、原発ゼロのプログラムを策定し将来に向けて自然エネルギー政策への計画的な転換を求めるものです。その為にも住民に最も身近な自治体が、住民の福祉の向上を図る使命を発揮することが極めて重要です。それでは、私からはまず始めに京都市の防災計画の見直しについて市長にお聞きします。
東日本大震災を受けて、京都市も広域な被害を想定した防災計画への見直しが必要です。私は5月13日の京都市防災会議を傍聴させて頂きました。専門委員の立命館大学教授、歴史都市防災研究センター長の土岐憲三氏は、これからの地震防災について「そこまでするのかと言ってはいけない。災害の防止と軽減を考えるときには、想定外の事態が起きた時の備えが無ければならない」と発言されました。市長はこの発言をどう受け止められますか、お答えください。市長は「原発事故により琵琶湖の水がどういう影響を受けるかも含め総点検する」と述べられていますが、市民の不安に応える決意はありますか、市民のいのちを守るためには原発事故を想定した地域防災計画に見直すべきです。その際に「原発の安全神話は崩壊した」との認識が問われますがいかがですか、お答えください。
(市長)防災対策の総点検について、想定外の事態を念頭において検証するよう指示した。原発対策については、国・府の見直し内容もふまえ、専門委員による検討を行い、必要な対策を進めていく。琵琶湖からの水道水について放射能測定を毎日実施しているが、滋賀県との連携の在り方も含め専門委員による検討を進める。
災害に強い都市基盤整備について
次に災害に強い都市基盤整備についてお聞きします。まず防災対策は、「自分の命は自分で守る」という「自助」を「共助」「公助」と組み合わせてすすめるとされていますが、災害に強いまちづくりの責任は行政にあります。
そこで、一つめの宅地開発についてです。党議員団は先月に仙台市を見舞い、党仙台市会議員団とともに被災地の視察を行ってきました。私は仙台市内2ヵ所の盛り土宅地の被害現場をみて参りましたが、どの家屋も形こそ留めているものの、地すべり被害により住むことのできない廃屋の町となっています。盛り土部分は地盤が弱いうえに、元の地盤との境に地下水が流れ、滑り易くなることがあるからです。国土交通省は同様の危険がある大規模造成地は全国に1千ヵ所以上あると見積もっています。2006年に宅地造成等規制法が改正され、自治体は地滑りの恐れがある既存の造成地を「防災区域」に指定することができるようになりました。これにより危険な宅地の所有者は、国と自治体の補助を得て、補強のためのくい打ちや地下水を抜くパイプの設置など、地盤改良に努めるよう求められています。わが党はこれまでにも盛り土や液状化対策の必要性を指摘し対策を求めてきました。ところが、全国で防災区域に指定された場所はゼロです。京都市も阪神・淡路大震災の教訓を基に宅地対策の計画を掲げながらこの16年間、調査も行なわれていません。早急な取り組みが必要です。京都市で危険な宅地がどの程度あるのか調査し、結果を公表することを求めますがいかがですか、お答えください。また、地盤の液状化を想定するマップはありますが、対策がありません。国の基準の見直しと改良への予算措置を求めるべきですがいかがですか、お答えください。
二つめに耐震強化についてお聞きします。東日本大震災はマグニチュード9.0という過去最大級の災害です。京都市の第3次地震被害想定は、最も発震時の規模が大きいと想定される花折断層の内陸型地震最大マグニチュード7.5を想定したものとなっています。この被害想定の早急な点検と合わせて、避難場所となる公共施設や民間保育園などの特定建築物、一般住宅の耐震化を抜本的に進めることが必要です。災害時に防災活動の拠点となるなど市民生活の安心・安全を支える公共建築物の耐震化を急ぐべきですが、いかがですか、また、市役所の耐震化の遅れも深刻です。計画を前倒しして耐震化率を引き上げるよう求めますが、いかがですか。お答えください。同時に庁舎や病院、学校、体育館などの特定建築物の耐震化率は、平成19年時点で70.3%です。平成27年末には目標の90%を達成するとなっていますが、これでは安心できません。現在、悉皆調査が行われていますが、急がなければならない事を指摘しておきます。
(都市計画局長)盛土宅地の安全性確保に関する他都市の取り組みについて情報収集中。具体的な調査・公表のあり方を検討していく。宅地の液状化について、国の動向を注視しつつ、対応を検討していく。
防災拠点となる公共建築物の耐震化は目標の90%を超えており、学校は100%。学校以外の公共施設の耐震化を進める。
(行財政局長)本庁舎の耐震補強の工法等の調査検討に着手した。「市庁舎整備基本計画」の来年度中の策定をめざす。
三つめに住宅リフォームについてです。わが党は震災で倒壊した家屋で命を失うことのないよう、一戸建住宅の耐震化工事の簡易改修を提案し、実施されてきました。ところが使い勝手が悪く利用実績が少ない現状です。使いやすい制度への改善が必要です。私は震災から市民の命を守るために「住宅リフォーム助成制度」の創設を求めます。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合がこの間、請け負った耐震改修の費用は1件あたり約120万円から150万円かかっています。関係者からも「行政の助成がもっと必要だ。バリアフリーなどのリフォームと合わせて耐震改修すると費用や手間も省ける」とお聞きします。市長はこうした意見を真摯に受け止め、住宅の耐震改修をすすめる助成制度の抜本的強化と合わせ、住宅リフォーム助成制度の創設を決断すべきです。いかがですか、ハッキリとお答えください。また、福岡市や北九州市では行政と民間が連携して耐震推進協議会をつくり一般住宅の耐震化をすすめています。京都市も市民向けの講座をこまめに開くなどして、住宅の耐震化の必要性を積極的に知らせる努力が求められますがいかがですか、お答えください。
(由木副市長)耐震改修助成制度について、市長から一歩踏み込んだ制度の拡充を図るよう指示された。関係事業者とのネットワークを構築し、耐震化の必要性の周知など、耐震改修促進の取り組みを強化する。厳しい財政状況の下、リフォームにまで助成制度を広げることは困難である。
消防力を強化し、災害に強いまちづくりを
次に、京都市の消防力についてお聞きします。今度の震災からも大規模災害から市民のいのちを守るうえで、消防体制の充実は極めて重要です。ところが、財政改革有識者会議は「消防職員の削減」を提言していますがとんでもありません。京都市の消防職員数は今でも国の基準で100%に達していません。私は削減ではなく増員こそ必要と考えます。災害に強いまちをつくるには、消防をはじめ公務に携わる職員集団の力の発揮が不可欠です。震災後の懸命な救援活動を行っておられる仙台市でも、「やらなければならないことは分かっているが、人手がなく歯がゆい思いをしている」と率直な思いをお聞きしています。市長は消防職員の削減方針を撤回し、市民生活に責任を持つ体制をつくることを求めますがいかがですか、お答えください。
(由木副市長)大規模災害時には広域的な連携協力体制の下、対応することが基本。本市の消防職員数は他の指定都市より多い。「市民の防災力」の存在や古い木造住宅の多い都市特性、厳しい財政状況などをふまえ、総合的な視点で検討していく。
大震災の京都経済への影響を調査し、万全の対策を
次に、地域経済の問題についてお聞きします。東日本大震災は、不況からの脱出の見通しが持てない京都経済に追い打ちをかけています。4月28日に発表された「東日本大震災に伴う京都企業への影響等に関する官民合同調査」の結果によると、災害発生から1ヵ月後の時点で9割を越える企業等が、影響を受けているか又は今後の影響を懸念すると表明しました。行政等に期待する支援については、融資による運転資金確保や販路開拓等を求める声が多数を占めています。建設業界では、震災発生後1ヵ月が経過した時点で、約85%の建設業者が資材の入手が困難で、81%の建設業者は資材価格の高騰があると表明しています。私がお聞きした中には「東北地方の工場でつくられていた台所、風呂、トイレなど水周り関連商品が入らない。ベニヤ板、針金もない」と資材不足で工事が中断する事による経済損失を懸念する声がありました。また西陣産業の関係者からは、「伝統工芸品の市場である東北地方の被災により50%を占めていた売上高が激減する」など不安の声があります。ある撥水加工業者は「東北地方が市場の30%を占めていた」と影響の大きさを訴えておられます。また、これ以外にも「売掛金の回収ができない。取引先が被災し行方もわからない。委託した商品の回収ができない」など直接的な被害により、秋以降の手形決済ができなくなる事態が懸念されます。さらにネクタイの製造に係わる方々からは、「メーカーが電力供給問題でクールビズが進む事を見越して、夏物ネクタイの製造を見合わせる動きもある」との声が寄せられました。また、震災に次ぐ原発事故の影響は観光客の激減、宿泊や飲食店の予約キャンセルへと被害を拡大させています。外国人旅行客が利用するホテル近辺のレストラン経営者からは、「回復の目途がたつような対策を急いでもらいたい」と悲鳴が上がっています。わが党はこれまでに、実態把握と手形の延期措置や貸付対応を柔軟に行うよう金融機関に要請することなどを求めてきました。中小企業団体、関係者の皆さんの切実な要望は、体力の弱い企業が生き残り頑張れるような、血の通った融資です。京都市は「経営診断のもと、きめ細かく融資相談に応じている」としてきましたが、不況と貸し渋りの二重の痛みに苦しむ中小企業の皆さんは「自己破産や、融資条件の変更を理由に保証が受けられない」「信用保証協会はもっと、中小企業の現状を理解する努力をしてもらいたい」と切実な訴えをされています。これまでの制度枠を使い果たした事業者にとっては、融資条件の一層の緩和が必要です。
そこで市長にお聞きします。東日本の大震災の影響から中小企業や業者の営業を守るために全力を尽くすべきです。2年となっている緊急融資の据え置き期間を拡大すること、利子補給や保証料補給を実施し、債務返済と経営計画を立てている企業への保証渋り、貸し渋りが起きないように徹底することを求めますがいかがですか、お答えください。とりわけ体力の乏しい小規模事業者が息をつけるように、固定費への補助を決断すべきですがいかがですか、あわせてお答えください。
今回、不景気な中で重要な市場を喪失した西陣産業については、京都経済全体に及ぼす影響からも特別な対策が必要です。創業56年の金筬の製造業者が廃業の通知を出されました。お聞きしますと、「災害以前の問題だ。取引先も廃業し原材料が入らない。残った企業も同じ事。一企業の力ではどうする事もできない」と仰っています。私は行政が産地の構造的な問題の解決も含め対策の方針を持たなければならないと求めてきましたが、今こそ大きく踏み出す時です。西陣織工業組合の第7次西陣産地振興対策ビジョンに、地元の出機、賃織職人、関連業者等が求めてこられた、職人の育成と織機、部品、道具類の確保など生産基盤安定に向けたシステムの構築が明記されました。しかし、問題はこれまでのビジョンの総括がなされていないことです。このビジョンの策定には京都市も参画していますが、震災の影響も考慮した対策が必要です。従来のやり方では産地崩壊に歯止めをかけることにもなりません。市長に求めます。現場の声を活かし具体的で効果的な対策を打つ事が必要です。産地の総意を集める機関を早急に設置すべきです。いかがですか。あわせて思い切った予算の措置を求めますがいかがですか、お答えください。
(市長)震災に対応した融資制度の創設により、中小企業の経営支援に万全を期す。保証渋り、貸し渋りがないよう、信用保証協会や金融機関等に要請する。
緊急融資の据置期間の延長は後年度負担につながりかねず、利子・保証料・固定費は個々の事業者が負担すべきもの。
西陣織工業組合等との十分な連携が不可欠。緊密に情報を共有しながら必要な支援を行う。販路拡大事業等を積極的に展開し、和装産業振興を図っていく。
続いて国の復興財源の問題について触れますが、これだけの厳しい環境下にある京都の中小企業、業者や家計を圧迫する消費税増税などとんでもありません。被災地復興の為の財源をつくる為にまずやるべきは、法人税減税と証券優遇税制の延長を止めることです。さらに不要不急の公共事業、グアムの米軍基地建設費を含む米軍への「思いやり予算」や高速道路無料化の中止、原子力発電所の建設・推進経費を削除すれば、年間5兆円程度の財源ができます。そして今こそ244兆円にのぼる大企業の内部留保金を活用し、従来の国債とは別枠で、「震災復興国債」を発行し大企業に引き受けるよう要請することこそ政治の責任です。政治家も今こそ政党助成金を返上すべきではないでしょうか。そもそも消費税の増税は、今もなお困難を極めている被災地の方々に最も過酷な税金です。市長は、今度こそ国に対してこんなに筋の通らない消費税の増税は止めるべきだとはっきりと意見すべきではありませんか、いかがですか。
(財政担当局長)復興の財源対策は、国民生活や経済に与える影響などをふまえ、国会等で十分な議論が行われるべきもの。
高すぎる国保料の引き下げ、国保証取り上げ中止を
次に、国民健康保険制度の問題についてです。今年度の国民健康保険料は最高7万円の値上げです。この6月に保険料通知が郵送されます。「これ以上の値上げには耐えられない」という市民の切実な声に背を向けつづける市長の責任は極めて重大です。京都市は保険料の徴収率向上を至上命題として保険料滞納世帯の子どもたちの学資保険まで差し押さえています。およそ自治体のあるべき姿から遠ざかっていると指摘せざるを得ません。京都市は2009年度だけでも24件の差し押さえを行い、金額は1031万円にも及んでいます。このことは、子どもたちの進路に重大な影響を与えるもので断じて認められません。大阪市長は「小額の学資保険を苦しい家計の中から、子どものために営々と積み立てている場合には留保する」と取り扱いの変更を表明しました。教育委員会の理事者は「学資保険の差し押さえは大変痛ましいこと。そうなる前に何かできる事はなかったのかと思う」と子どもに心を寄せる思いを表明されましたが、この思いこそが行政に求められる姿勢です。生活保護においても裁判の判決を受け、学資保険については収入と認定しない措置がとられています。市長にお聞きします。平成22年度の国保会計の決算見込みは単年度で約12億円の黒字となっています。この黒字分を市民に還元すべきです。今年度の国保料の値上げを中止し、高すぎる国保料を引き下げるべきです。いかがですか、お答えください。また、子どもたちの将来を摘み取るような学資保険の差し押さえに、市長は胸が痛まないのですか。直ちに差し押さえの中止をすべきですが、いかがですかお答えください。
国民健康保険制度の根本問題は自公政権下で国庫負担率が減らされてきたことにあり、民主党政権も一層の改悪をねらっています。市長はこうした国の動きに連動し、保険料滞納世帯に対する制裁措置を行ってきました。しかしこのままでは、大量の保険料滞納者を生み、制裁措置を続けるならば医者にかかれない病人を増やすことになりかねません。京都市は「市民の命を守るために制度を維持しなければならない」と述べてきましたが、制度のために自治体があるのではありません。今、困っている市民が安心して暮らせるように努力することこそ京都市の仕事ではありませんか。あらためて求めます。保険料滞納者への「資格証明書」の発行は止めて、市民が安心して医者にかかれるようにすべきです。いかがですか、お答えください。
(保健福祉局長)国保会計は67億円もの巨額の累積赤字を抱えており、保険料引き下げを実施できる状況にはない。
納付意思を示さず、特別な理由もない滞納者に対し、法令に基づき、差し押さえや資格証明書の発行を行うことは負担の公平性の観点からやむを得ない。
子どもの医療費助成制度の拡充を
最後に、子どもの医療費助成についてお聞きします。今年の予算議会で、副市長は「府と前向きに検討をすすめる」「平成24年度以降に拡充する」と答えられました。子育て世代の切実な願いに一時も早く応えて頂きたいと思います。厳しい経済状況のもとで、その影響は子育て世代に重くのしかかっています。親の経済的理由により、子どもたちが必要な医療を受けられないというような事があってはなりません。また、子どもたちを安心して医者にかかれる条件を整備することは、子どもを育てる若いお母さんやお父さんの大きな精神的支えにもなります。少子化に歯止めをかけるためにも、積極的に取り組むべきです。ぜひ、子どもの医療費助成制度の拡充を決断されますよう強く求めますがいかがですか、お答えください。以上で私の第一質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。
(星川副市長)制度の拡充について、府と制度のあり方について協議中。厳しい財政状況の中で、様々なハードルはあるが、引き続き、前向きな検討を進めていきたい。財源措置について、引き続き国に強く要望していく。
第二質問
なぜ、子どもの学資保険の差し押さえを止めると言えないのでしょうか。子どもの希望を奪うような市政で、どうして市民のくらしが守れるのでしょうか。改めて、根本にある高すぎる国民健康保険料の引き下げを求めるものです。このことを厳しく指摘し、私の質問を終わります。