北山ただお 議員
10年12月10日(金)
次期京都市基本計画案に対する反対討論 10年11月定例市会 閉会本会議討論
京都市会ホームページ > インターネット議会中継 上で、録画がご覧いただけます。(約1年間)
只今上程されました「議第298号京都市基本計画の策定について」は、日本共産党市会議員団は「反対する」との態度を表明していますので、私は議員団を代表してその趣旨を申し上げます。
我が党議員団は、京都市が中長期計画を策定することそのものに反対するものではありません。70人の審議委員の方や若手研究家の方など多くの関係者の皆さんが、京都市の将来あるべき姿や市民生活についての論議をかさねてこられましたことは貴重な体験でありました。2001年に策定された第一期基本計画をしっかり総括して、現在の市民がおかれている実態をきちんと確認し、市民生活の安定と安心・安全の社会をめざす地方自治体のあるべき姿を確立することが基本計画策定の本来の姿でありましょう。しかし、審議会などでは、1年以上の期間をかけて審議がされ、市民アンケート調査やパブリックコメントの実施、市政に関係する144団体や関係行政機関の意見聴取などされてこられたのですが、それを市議会でわずか4回の「審査特別委員会」で議会としての結論を求めるには無理があります。このことは審議に参加した委員一同の率直な気持ちではないかと私は思っています。
第一の問題点は、現基本計画の到達点と総括があまりにも市民生活とかけ離れていることです。市長は基本構想の5つの課題に関して、入洛観光客5千万人達成と都心部の人口増などをあげて「全体として相当達成されている」と述べられています。また、現基本計画の40の指標の達成状況をあげて「着実に進んでいる」とし、「本市では失われた10年ではない」「福祉が前進した10年、トップクラス」との認識を示されました。しかし、高すぎる国民健康保険料による滞納世帯の増加、保険証の取り上げ、差し押さえの増加、急増する生活保護世帯、ワーキングプアや自殺者の増加など、どこが福祉が前進したと言えるでしょうか。市民生活は国追随の行財政改革の繰り返しによって負担増とサービス切り捨ての10年でした。そしてこの10年ほど福祉と教育が後退させられたことはないというのが、市民の率直な感想ではないでしょうか。反省のない態度は許せません。
第二の問題点は、現状の厳しい市民生活についての認識が弱く、その上、今度は単なる「行政計画」ではなく、市民と行政が共に汗を流して協働する「共汗型計画」として、地方自治体の本来の役割を放棄して更なる市民負担を押しつける内容になっているからです。11月1日開催の審議会で、ある委員の方はこう発言されています。「市民は納税で市政に関わっており、これ以上汗をかけないとの、厳しいご意見がパブコメでも寄せられている。この計画は、市民の共感を得ることに対し、楽観的に見える」と発言され、尾池会長も「汗をかいて税金を納めてきたのにこれ以上汗をかけないという意見は、私も印象に残っている」と述べられています。
現に、322名、692件にのぼる市民からのご意見に対して、「・・・と記載している」「ご意見の趣旨に合致している」「具体的に施策を展開する際に検討すべきと考えます」などとまともに応えていない項目が多いのが特徴です。毎年の市民生活実感調査でも「双方向性」「市民参加」「事業の協働」に関して、「そうは思えない」との拒否的回答が多く、市民には共汗を受け止める気持ちになれないのです。市長は「徹底した市民参加」「徹底した職員参加」と何回も強調されましたが、市長はそう思っていても市民の側から見れば、上からの目線の言葉でしかないという事になるのではないでしょうか。
第三の問題点は、事業や施策の優先順位の判断基準がなく、ムダな事業と施策の具体的明記がありません。今最も優先すべきは厳しい市民の暮らしをどう打開していくかであり、ムダな事業や不要不急の事業は見直しを行って廃止や先送りにすべきですが、「実施計画の中で判断する」と答弁されました。実施計画は、「予算でも一部明らかにするが、全体は秋口になる」とのことですから先送りと云って過言ではありません。
例えば、計画に明記されていない市内高速道路の未着工3路線について、やるともやらないとも言わず「必要な道路と認識する」とか「実施計画を策定する中で判断する」と先送りの態度です。市内高速道路は、車を都心部に呼び込むもので、「歩くまち京都戦略」からも逸脱し、低炭素社会の実現という最も基本的な課題から見ても逆行するものであります。しかも総建設費が2900億円といわれ、市財政を破綻に追い込みかねないものですから、きっぱりと中止すべきです。更に、大量の二酸化炭素を排出させる施設でもある焼却灰溶融施設は安全性の確認もなく、基準の42倍にもなるダイオキシンを発生させ、試運転のメドも立っていません。さらに年間維持管理に16億円もの費用がかかるものですから、稼働を中止するのは当然ではないでしょうか。今回の審議で、施設は耐用年数を超えて改修しても、30年後には使用するか廃止するか検討することが明らかになりました。東部山間埋立地を「かけがえのない処分地」というのであれば、ごみ減量化に向け、市民と一緒になって真剣な取り組みを行うことこそ喫緊の課題であります。
待ったなしの市民生活に応える姿勢がありません。これはなぜなのでしょう。我が党委員が再三質したように、今の市民生活の困難な状態がしっかり把握されていないからであります。雇用問題がこれほど深刻になっていますが、「ミスマッチ」「就職成功率が低い」などと述べるだけで、現在の若者を使い捨てにしてきた企業責任や、劣悪な最低賃金制度、社会保障制度の破壊、など本質に触れる議論がありません。市民の目線というなら、貧困、雇用、失業、自殺、倒産廃業、虐待、などの深刻な現状をもっとほりさげる事が必要であります。
第四の問題点は、「都市経営の理念」として「参加と協働で地域主権時代を切り拓く」と、地域主権を掲げ、国民主権や住民自治の後退、市民生活を犠牲にする補完性の原理を貫くものになっていることです。審議の中で、理事者は「民主党の地域主権は、国が補完的役割を果たすもの」と述べられていますが、市民の暮らしは自己責任に基づくことを基本として犠牲をかぶせることになるのです。市長総括の朝の報道で、民主党政権は地方交付税の別枠加算1・5兆円を来年度予算で廃止する方向が報道されました。市長は「とんでもない話。財務相は何を考えているのか、今後の財政計画に大きな影響があり、強く申し入れる」と気色ばんで見せましたが、国の「地域主権」の看板の本質を感じられたでしょうか。
第五の問題点は、個別施策の中に記述すべきことがないこと、さらに市会の認識と違う点があることです。
第1は、職員不祥事の根絶に関する記述がありません。市長は「1年で根絶する」と大見得を切りましたが、未だに続いており、引き続く重要課題であり、根絶は市民に対する信頼を取り戻す最大の課題であります。なぜ「不祥事のない京都にする」と言えないのか、まだ続くとあきらめているのか、「コンプライアンスの徹底」では市民は納得できません。
第2は、財源不足への対策についてです。根本的な対策は市民生活を押し上げて、担税力を高めること、税源の涵養をはかること、であります。そのためにも中小企業支援を強化し、仕事おこしや国保料の引き下げ、保育の充実などの生活支援を行うことが求められます。理事者答弁でも、「中小企業を元気にし、利益を上げ、税金を納めてもらうことが市民サービスの向上につながる」と認識を示されたではありませんか。我が党は、住宅リフォーム助成制度の創設を提案して仕事おこしと雇用の安定を確保するよう求めています。 具体化を強く求めるものです。
第3は、反核・平和の記述がないことです。21世紀は平和の世紀と期待され、核保有国米国でも「核兵器のない世界」が叫ばれ、核兵器廃絶は世界的に前進しています。京都市議会は1983年に「非核平和都市宣言」を採択し、京都市は今年、平和市長会議にも参加することになりました。副市長は、「平和は重要な課題、あらゆる施策の前提」と答弁されましたが、それなら率先して京都市基本計画に堂々と明記すべきではありませんか。そうしてこそ世界都市となる資格を見いだすことができるのです。
第4は、地球温暖化防止対策に関して、京都議定書の延長に日本政府が反対していることに抗議もせず、削減目標は掲げましたが肝心の具体的な計画が示されていないことであります。
こうした問題点を持つ基本計画を、短時日の議会審議で、しかも数値目標は不明のまま、議会が行政の計画実行に事実上の「白紙委任」をすることに我が党は反対であります。
真に、市民生活に責任を持つ基本計画とするならば、各分野での現状と課題をもっと掘り下げて市民の皆さんともっと時間をかけて議論すべきではないでしょうか。以上を申し上げて反対討論と致します。
ご静聴ありがとうございました。