トップ > 市会報告 > 2010年 > 10年9月定例市会 >

市会報告

西村よしみ 議員

10年10月28日(木)

2009年度公営企業等決算についての討論 10年9月定例市会 閉会本会議討論

 

 日本共産党京都市会議員団は、報第21号病院事業特別会計決算および報第24号京都市自動車運送事業特別会計決算については「認定せず」、その他の決算議案6件については「認定する」との態度を表明しています。私は、議員団を代表しその理由を述べるとともに、いくつかの問題点を指摘するものであります。 

 はじめに、報第21号、京都市立病院特別会計決算です。

 認定しない第一の理由は、「病院改革プラン」を実施する初年度として、法人の定款策定、京都市立病院条例の廃止など、独立行政法人化に向けて突き進んだものだからであります。

 総務省の「自治体病院改革ガイドライン」は、自治体病院について2013年度までに地方独立行政法人化、民間移譲、指定管理者、公営企業法全部適用など4類型への移行を求めてきたもので、社会保障費毎年2200億円削減方針のもとで策定され、これを自治体に押しつけたものであります。国の「自治体病院改革ガイドライン」は、自治体病院としての公益性追求より、効率性最優先の公立病院をめざしているものです。へき地医療や住民に必要な医療を担う公的医療機関の役割を投げ捨てさせるものであり、自治体病院の閉鎖や病床削減に拍車をかけています。

 独立行政法人化で市会との関係は、2011年度から一般会計からの運営交付金として議論することとなり、公営企業会計における審議は事実上最後のものでした。したがって、初年度の中期計画案については、しっかり議論すべきでした。市立病院は新型インフルエンザなど感染症対策の中軸を担い政策医療において重要な役割を果たしてきたのですが、独立行政法人化はその公的役割を否定しかねません。市立病院の運営交付金を削減しないといわれても何の担保にもならないのであります。

 先行して独立行政法人化している国立病院などでは、運営交付金が削減されており、政策医療の後退になる危険性は否定できません。

 現在ある減免制度を継続することや、医療のチームワークを崩す職員の成果主義賃金の導入はすべきではないことを強く求めておきます。

 認定できない第2の理由は、京北病院の常勤医師が減り、病床数を減らすなど住民の期待を裏切っていることです。京北病院については、医師確保が困難であったことから患者数が減少し赤字が続いています。

 2008年に4名いた常勤医師は今年2名となり、4月には婦人科が休診してしまいました。整形外科は開いていますが入院はゼロになり、外来も減少しました。常勤内科医を来年度一名増やすとの答弁がありましたが、求められている常勤整形外科医の確保がいまだに出来ておらず、農林業の従事における事故の対応などに応えていません。

 さらに、亜急性病棟の6床開設で、病院スペースの確保のため、大切な一般病床を2床閉鎖していたことも判りました。このことを見ても京北病院は、医療体制の後退を招いています。

 患者が減少しているのは、医師体制が後退したことにあります。したがって常勤医師を合併当初の体制に早急にもどすべきです。

 加えて、看護師も厳しい労働環境にあります。2007年2月に労働基準監督署から看護師の当直勤務について指導がされたことについて、その後改善したと答弁がありました。当直を含む32時間の連続勤務は24時間となりましたが、月6回の当直は変わらず、病棟からの兼任で補充する勤務体制であります。常勤の看護師を早急に増やし働く環境を改善することを求めます。

 市立病院の院内保育所については、病院長をセンター長とする運営センター方式から民間委託にして、事業者の募集選考に入っています。しかも委託費が現行の6割というのは大問題です。院内保育所職員の給与は市内の民間保育園と同じ基準で支給されたもので決して高いものではありません。給与水準が適正に確保されたもとで、保育の水準も適正に保たれているのです。職員を全員解雇して委託先で継続雇用した場合、加算金を補助するとしていますが、職員は民間委託化で働くことに不安を持ち、保護者も不安です。すでに民間委託化された、他の自治体病院の院内保育所では正規職員が減らされ非正規化がすすみ保育水準が後退しています。医師、看護師など職員が安心して働ける保育所づくりのため、保育所職員の継続雇用と必要な予算措置をすべきです。

 次に、報第24号自動車事業会計決算を認定しない理由を述べます。 認定できない第1は、市バスの管理の受委託化を続け、限りなく民営化に道を開くものだからです。市バスを運行する民間運転手は多くが低賃金で働いています。また、市バスには他都市にはない異常な5年間「若年嘱託運転手」の制度があります。運転手は、「経済性」「効率性」のもとで厳しい環境で働いていますが、安心した処遇のもとで市バスを安全に運行することに責任を持つことが京都市の役割であります。したがって、運転手の労働賃金・労働時間、健康管理などは民間任せではなく京都市が責任を果たすこと、「若年嘱託職員制度」は廃止すべきことを求めるものです。

 第2の理由は、市バスの市民サービスの向上や必要とされる公共交通の不便地域などへの対策が不十分であります。「決算審査意見」では自動車運送事業において、マイカーから公共交通機関への取り組みと連携した事業の具体化が指摘されていることは重要です。

 質疑で、循環バスや路線充実などの意見については従来の答弁に終始しました。「コミュニティバス」の具体化を求める市民要求に対しては、「採算性が合わない」と冷たく、「他の事業主体が生まれる可能性がある」と他人事のような答弁です。これでは交通の便利なまちにしてほしい、サービスは公平に、という市民・利用者の願いに応えることになりません。

 バス待ち環境整備や市バス走行環境改善に資するパークアンドライド施策について拡充の答弁がありました。交通局は市民要望にこたえ、公共交通ネットワークを充実するためにも、さらに積極的な役割をはたすことを求めるものです。

 次に、報第25号、高速鉄道事業特別会計決算についてです。

 京都市においては、地下鉄は市民の足を守る必要不可欠な交通機関でありますが、建設費の増大と国の補助制度の劣悪さで巨額の赤字を抱え市財政を圧迫しています。加えて、国において運営費については独自の補助制度がなく、安全対策における補助制度も確立されていないのが実態であります。その苦しい京都市の財政状況のなか、財政健全化法の新たな基準でリストラがすすんでいます。

 質疑で副市長から、この基準のもとで策定した地下鉄「健全化計画」により、2013年度までに運賃値上げをすることを改めて表明されました。さらに5万人乗客増が達成できない場合はもう一度値上げをするとしています。他の政令市と比較しても高い初乗り運賃が更に値上げされることになり市民生活をかえりみないものです。運賃値上げは、有識者会議でも乗客離れの恐れが指摘されています。地下鉄の経営健全化にあたっては、国の支援を最大限に求め、運賃値上げではなくサービスの向上やバリアフリー化の対策など、乗客増による経営改善こそ基本であります。とりわけ、烏丸線への転落防止柵の設置は、大量輸送機関としての安全性や利便性の向上にむけ、早急に実現することが求められます。設置を困難にしているのは総額132億円のうち11億円しか措置されない国の補助制度にあります。理事者は「補助制度拡大を重要課題として要望していく」と答弁されました。引き続き取り組みを強く求めるものです。

 次に、報第22号ないし第23号、上下水道特別会計決算ほか残余の案件については認定します。近年水需要が減少傾向にあるなかで、市民の命を守る安心・安全な水を確保しながら、上下水道施設の耐震化対策、環境対策への努力がなされています。鉛製給水管の取り替えは、計画を持って進められています。しかし、「取替え助成制度」の利用者数が少ない状況にありますので、市民的啓発をいっそう強化して、鉛管の取り替え及び助成額上限の引き上げなど制度拡充を促進することを求めるものであります。

 さらに最低基本料金に達しない世帯が37%もいる実態からみて基本水量の引き下げをおこない、市民生活支援に資するべきであることを求めておきます。

 東京、大阪、横浜、名古屋、広島など政令6都市では、生活保護世帯や福祉施設へ福祉減免制度があります。社会的貧困化が進む中、市民相談体制の充実や上下水道料金の福祉減免制度創設を早急に実現すべきであります。また、貧困世帯への給水停止はやめるべきです。

 最後に、決算議会においては、市民の生活基盤である公営企業の役割の重要性が改めて問われました。独立採算制を押し付ける国に対して京都市は、市民の命と暮らしを守るため、公的責任をしっかりと発揮するための対策を強く求めて、私の討論といたします。