河合ようこ 議員
10年3月19日(金)
民間保育園プール制に関する意見書についての討論 10年2月定例市会 閉会本会議討論
今回のプール制の見直しには大きな問題点があり、4月から実施すれば、保育園関係者のみなさんと、何よりも子どもたちに重大な影響を及ぼすことになります。
第一に問題なのはプール制の仕組みを大きく変えてしまう見直しであるにもかかわらず、保育園連盟をはじめとした保育関係者に十分な説明がされておらず、合意もとれていないということです。京都市が議会や保育園連盟に見直し案を提案したのは2月10日でした。保育園連盟からは「プール制でなくなる」「職員の昇給ストップせざるをえない」「具体的にどうなるのかわからない」という不安の声や「子どもへのしわ寄せ」を心配する声が出されていますし、保育士や保護者からもプール制見直しに反対の声や拙速な実施はしないでほしいという要望が出されています。現在、実施運営主体である保育園連盟において協議されているところですが、結論が出されたという状況には至っていません。市長は「サービスの第一線である現場の目線で」といわれています。そうであるなら、京都市がやるべきことは、4月実施ありきでなく、まずは保育園連盟はもとより、職員、保護者などすべての保育関係者にていねいな説明を行い、意見をきくことです。
第二に問題なのは、京都の保育を支えてきた民間保育園の「統一給与表」を壊し、『プール制』の根幹を崩してしまうものだということです。全園統一の給与表は、市内のどの保育園で働いても経験に応じて同じ給与が保障され、昇給していくしくみで、職員が安定して働き続けることを保障してきました。見直しが実施されれば、職員の給与は、ただでさえ低い「国基準の給与」をベースにすることになります。これでは経験を積んだ保育士・調理師さんが多い保育園では、減額になる保育園がでてきます。経験をつんだ職員さんは、十分とは言えない保育財政の元でも、求められる保育ニーズに応え、子どもや保護者、若い保育士、京都の保育を支える役割を果たしてきた方たちです。子どもの発達保障に加え、保護者の相談対応などが求められる今日、その役割はさらに大きくなっています。今回の見直しによりベテランの職員の処遇はもとより職員の給与引き下げが懸念され、ベテラン職員も若い職員も働き続ける意欲や先の見通しを奪われてしまいます。職員が働き続けられず、保育を積み上げられなくなれば、保育の質の後退を招くことになります。同時に、保育園間での職員の給与に格差がつくられることになり、これは京都の子どもたちの保育に格差を生むことであり「プール制」の根幹を崩す重大な問題です。
京都市保育園連盟40周年の記念誌には、プール制発足当時のことについて、まとめられています。ここには保育の単価制が、経験者の定着難、低賃金職員の増加等を来たし、職員資質の低下もやむを得なくする」という状況を解消するために、また「各園でのやりくりという名の曖昧さをなくすためにプールという方法がよいと考え」た。そして、不十分さは残しつつも「給与体系と定期昇給を確保するため会員は全力を挙げ、苦しみを共にし、楽しみを共にしたいと決意した」これがプール制の原点だと述べられています。市が提案している「プール制」見直しは、この原点をも崩し、民間保育園関係者のこれまでの思いや努力を踏みにじるものです。
第三の問題は、ポイント制の導入です。そもそも保育は入所してきた子どもや保護者の実態にあわせて行うものです。ポイント制には「特例保育の割合はどれだけか」「障害児を何人受けるか」「アレルギー児がどれだけいるのか」などが加算ポイントの項目になっていますが、これらはどれも保育園が努力して増やせるものではありません。地域や保育園の規模なども全く考慮しないものです。さらに、ポイント制の加算項目には定員外入所児童の数や、1,2歳の子どもの受入数などが盛り込まれています。京都市は、定員外入所の上限25%も撤廃し、定員外の受け入れをさらに増やす方針であり、これは今以上の詰め込みをすすめるものです。「こどもの保育環境の後退を招く」「こどもが商品にされているみたいだ」と言う声もあがっています。ポイント制が子どもを育てる「保育」になじまないことは、保育園連盟からも声が寄せられており、議会与党会派からも問題があると指摘されています。ポイント制は見直すべきです。
以上のような問題がある制度の実施を認めることはできません。民間保育園プール制・新制度については、関係者とともに十分な検討を行うことが最低限求められています。日本共産党議員団は、関係者からの意見を十分に聞き、4月からの実施を見送ることを強く求めるものです。
以上、私の討論と致します。