加藤あい 議員
10年3月19日(金)
2010年度公営企業特別会計予算案、経営健全化計画案に対する討論 10年2月定例市会 閉会本会議討論
この議会に提案されました交通事業健全化計画は国の健全化法により強制されて提出されました。財政健全化法は「地方自治体での財政悪化の早期是正」をかかげていますが、実態は「資金不足比率20%未満」という全国一律基準を定めて、これ以上の場合は強制的に「健全化計画」を策定させ、いっそうの合理化と料金値上げを押し付けるものであります。更に、総務省はこの計画に基づいて地方自治体に「勧告」することができると、自治体主権を脅かすこともできるという時代逆行のものです。
そもそも、この財政健全化法は旧政権の下でつくられたものです。今や総務大臣は「三位一体改革が地方をぼろぼろにした」と言い、「今までの政権がやってきた集中改革プランあるいは地方公共団体健全化法について総括する」と述べ、国会で地方行財政法や地方財政健全化法そのものを見直す動きがでてきています。市長総括質疑で副市長は「健全化法は改革の追い風になった」と答弁されました。しかし、企業債の延長と新たな借金が認められただけで、地下鉄に関する補助制度そのものはなんら改善されておりません。だからこそ理事者は「施設更新に対する補助制度がなく、国にお願いしている」と答弁され、地下鉄建設や運営、安全対策に対する補助制度の改善がない限りは一都市ではできない旨の発言を繰り返されてきたのです。わが党は、地方自治体に負担を押し付ける「健全化法」は廃止すべきであり、市長は新政権に対してきっぱり「反対」を主張することを求めるものです。
地下鉄の計画では、4年以内に運賃の値上げ、更には、5万人乗客増の目標が達成できなければ再度の値上げと2度までも値上げがおり込まれています。「最低限必要な改定にとどめることをめざした」とされていますが、市民生活がこんなに厳しいときに理解が得られるはずがありません。計画の最初から運賃値上げという市民負担を盛り込んで、乗客が増えなければ又値上げでは市民の納得は得られません。初乗り運賃については、地下鉄は220円ですが、JRは120円、阪急は150円で今でも割高感があります。さらに、運賃が上がれば乗客離れは必至です。赤字で値上げ、乗客が増えず又値上げというこれまでの悪循環に陥ってしまうことになりませんか。運賃の値上げ計画は撤回すべきです。
自動車運送事業については、市バス民営化に道を開く管理の受委託の継続や若年嘱託制度は問題です。効率化は長時間・低賃金の労働へと質を落とし、直営と民間を分ける営業所の再編も示されていますが、新たな回送バスをうむものであり、サービスの後退につながります。民間委託に偏る方針をやめ、管理の受委託と若年嘱託制度は撤回することを求めます。
質疑では全庁あげての公共交通優先のまちづくりが大きな議論になりました。市民の移動の権利を守る「権利としての交通権」を局として位置づけ、交通不便地域の解消や循環バスの実現、自動車の総量規制などに積極的に取り組むことが求められています。生活支援路線の補助金を縮減し地下鉄会計に回すということが提案されていますが、これは、負担をバス事業会計に押し付けるものです。財政支援をしっかり行なって、利用者の声に積極的にこたえることこそ必要です。
上下水道事業については、鉛製給水管の取替の事業規模を1万2000件に拡大するなど積極的な取組については評価できます。市民の安心を守る立場から宅地部分の取替えの助成制度についても積極的な取組を求めます。助成額上限5万円の引き上げなど制度充実を図ることが必要です。
工事の入札については、公契約条例のない本市でも低入札が相次いでいます。入札価格が適正かどうかは「厳格に審査している」とのことでしたが、質疑の中で管理・監督体制上の課題も明らかになりました。適切な施行管理がはかられる体制とするよう求めます。
また、厳しい経済雇用情勢の下、水道料金の福祉減免制度の創設などすべての市民に命の水を供給するという観点からの取組みを行なうことについても検討すべきです。
そもそも、公営企業の果たす役割は市民生活の向上であり、その事業内容は市民生活に密着したものです。ですから、あくまでも公的にやられるべきものであります。独立採算制をつよめる方向ではなく、地下鉄事業をはじめ国の補助制度を抜本的に改善させることや「市民の足を守る」公営交通としての積極的な取組みを行なうことなど市民の立場に立った方向での事業進捗を強く求めて、討論を終わります。