井坂博文 議員
09年12月10日(木)
「補助金等の交付等に関する条例の制定」に対する修正案の提案説明 09年11月定例市会 閉会本会議討論
今市会に提案されております議第158号「補助金等の交付等に関する条例案」は補助金の申請から交付、実績報告とその審査に至る事務手続きを国の「補助金適正化法」をモデルに策定するというものですが、日本共産党市会議員団は、国の法律にない「補助金の存続と廃止に対する市長の権限」を規定した第7条には問題点が多くあり、その部分を削除するとの修正案を提案しておりますので、議員団を代表してその提案説明を行います。
今回の条例案の制定目的として「過去の同和補助金や昨年の京都市保育園連盟への補助金交付における不適切な執行などを教訓にして、今後の補助金等の交付の申請、決定等に関する事項および予算の執行に関する基本的事項を定め、交付の決定の適正化、および公正性、透明性を確保するために条例を制定する」と説明されております。
本市において条例の対象になる補助金は、約500件138億円にのぼります。公金を活用しての補助金である限り、補助金の適正化、公正性、透明性を確保することは必要なことであります。
そこで、第7条の問題点を指摘します。
まず、第7条では「市長等が認めた場合に、補助金の新設、充実、統合、廃止、の措置を講じる」と規定していますが、措置を講じる前提の「社会情勢の変化、その他の諸般の状況に対応して」とは具体的に何を想定するのでしょうか。審議の中では「市民ニーズの変化、事業目的の達成、費用対効果、市財政の状況、受ける団体の財政状況など」を考慮して判断するとの答弁がありましたが、問題はそれを誰がどういう基準で判断するのか、ということです。「市長等が認めた場合」というだけで、明確な基準もなく、利害関係のない第三者や審議会などの意見を聞くことなく、市長の独断や局の都合で決められることになるのではありませんか。審議のなかで「一律な基準はない、第一次的には所管局で判断する」「500件の補助金を全部チェックするのは無理なので審議会などは想定していない」との答弁がありましたが、裏を返せば「恣意的な基準で、行政の都合だけで、第三者の意見も聞かずに判断する」ことを認めることになるのではありませんか。
こういう心配があるから、条例案骨子におけるパブリックコメントでは「社会経済情勢等の変化に的確に対応して補助金の見直しをはかる」という記述に対して「補助金削減を前提としないように」「市民サービスや人材育成に関する事業は長期的なスパンで考えてほしい」「見直しは市民の福祉を考えてやるべき。市長の独断で打ち切られないか心配」「見直す場合は審議会を設置して意見を聞くように」など補助金の削減や廃止を危惧する声が多数を寄せられたのではありませんか。
審議のなかでこれらの意見に対して「削減や廃止を前提にした見直しではない」との答弁がありましたが、これまでの行財政改革で「見直し」された補助金はことごとく削減や廃止されてきたではありませんか。まったく今の説明では説得力がありません。
そもそも、第7条の規定がなくとも、他の条文を活用すれば条例の制定目的に十分対応できます。第10条・11条では「補助金交付にあたって事業の目的および内容が適正であるか否かを調査し」「交付の目的を達成するために必要があるかどうか認める」とあり、補助金交付が適正かどうかをチェックする仕組みは十分にあります。また第4条では「その後の事情の変更により必要性が生じたときは、交付決定の全部もしくは一部を取り消す」と事情の変更で決定の変更ができることを認めています。さらに、第19条では「実績報告書類の審査や現地調査を行い、事業実績が交付決定に適合するか否か調査し、交付額を決定する」と額の変更や廃止ができるようにしています。したがって第7条をわざわざ規定する必要はまったくありません。
また、第7条の規定には「補助金の有効性、効率性を検証する」とありますが、パブコメの市民意見にあるように、科学技術支援や文化行事振興など多用な事業を短期間の有効性とか効率性という基準で切り捨てていいのでしょうか。国の行政刷新会議の事業仕分けでも科学技術やスポーツ育成や文化振興の予算削減に反対の声があがっているではありませんか。財政効率性だけで補助金を削減することは、科学や文化、スポーツの発展の抑制になります。
最後に、第7条を規定する最大の目的は、市財政の財源不足対策のために市長の判断でいつでも補助金の減額・廃止ができるようにすることにあることは明らかであります。これまでも市長の判断で、本市の財政非常事態宣言の際には5年間、サンセット方式で補助金が半額されました。また、昨年の京都未来まちづくりプランでは補助金一律カットが行われてきました。それを今度は議会の賛成と条例によるお墨付きを与えようとするものに他なりません。議会が本条例を無修正で可決するならば、市民生活や市民団体の活動に欠かせない補助金の削減や廃止に手を貸したとのそしりを免れない、ということを厳しく指摘しておきます。
以上、第7条を削除する理由を申し上げ、同僚議員の賛同を求めまして、提案説明といたします。