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市会報告

ひぐち英明 議員

09年6月22日(月)

ひぐち英明議員の質問と答弁大要 09年6月臨時市会 本会議代表質問

 日本共産党の樋口英明です。今議会に提案された議案に対して、日本共産党を代表して質問をいたします。

 約15兆円にのぼる国の21年度補正予算が5月29日に成立しました。1mつくるのに1億円もかかるという東京外かく環状道路などの、巨大事業や、9割以上が大企業の減税となる、研究開発減税の拡充などが盛り込まれる一方、社会保障関係への補正はわずかな増加にとどまり、内容も子育て手当てに見られるようにわずか1回限りといったものが並びます。さらに、多くの国民が批判の声をあげている社会保障費2,200億円の削減方針をはじめ、後期高齢者医療制度や障害者自立支援法、介護保険法の抜本的な見直しなどは行われていません。これらに加えて、今回の国の補正予算の財源のつけ払いを消費税の増税でまかなうという方向が示されています。

 自治体の役割は「住民の福祉の増進を図る」ことであります。現在でも景気の低迷が続き、市民の暮らしは厳しさを増しているのですから、地方自治体に、今求められているのは、「住民の福祉の増進を図る」という、この本来の役割を大いに発揮することであります。今回の国の補正予算は、全体としては評価できないものではありますが、地域活性化・経済危機対策臨時交付金など、不十分ながらも雇用やくらしの対策に活用できる予算も含まれています。そうした予算を自治体が有効に活用することは当然の責任でありますし、さらにそれにとどまらず、市民のくらしと中小零細業者の支援など、地域経済の活性化のために、総力を挙げることが本市に緊急に求められています。

 現在、本市の経済状況はどうなっているでしょうか。昨年来の経済危機に加え、新型インフルエンザの発生で、観光関連産業を中心に経営がさらに大きく悪化しているというのが現状です。こうした中小業者の実態と、そこで働く市民のみなさんのくらしの実態を市長はどのように認識されているのでしょうか。また、これだけ経済が大変なときだからこそ、今回の補正予算を組むに当たっては、徹底的に中小業者の仕事と市民のくらしを支援するという立場に立つべきと考えますがいかがですか。まず、この2点についてお答えください。

(門川市長)本市の中小企業を取り巻く経営環境は依然として厳しく、さらに、新型インフルエンザの風評被害により、観光産業を中心に極めて深刻な影響を受けている。雇用情勢の改善など本格的な景気の好転には、国や地方自治体、関係各界が一丸となった、さらなる努力が必要であり、なお時間を要するものと認識している。

 京都中小企業家同友会が新型インフルエンザの影響について会員企業に対して緊急のアンケート調査を行っています。その報告によると、売り上げが減った企業が25%、その内20%以上の大幅減となった企業が3割を占めるという深刻な事態です。実情についての記述欄には、タクシー事業者が「修学旅行のキャンセル74校、6千万円の損失。延期、復活の見通し20%程度」と答えています。旅館経営者は「5月から6月で18校、36日間のキャンセルで7千5百万円ダウン。年間売り上げは、25%減の見込み」としているなど、大変な状況です。私が話をお聞きした卵の中卸業者さんは、「5月のゴールデンウイーク以降は、観光客がもともと減る時期。修学旅行で何とかもっていたのに、その修学旅行が軒並みキャンセル。例年の半分の売り上げしかなかった。先が見えなければ、融資を受ける気にもならない。」と言われていました。本市が公表した数字では、修学旅行のキャンセルだけでも14万3千人にのぼるとされています。ところがこれは大手旅行代理店4社からの聞き取りということです。こうした団体からの聞き取りだけで本当に現場のリアルな実態がわかるのでしょうか。5月29日、経済産業省と中小企業庁の部課長7人が東京大田区に入り、直接、町工場の経営者から経営実態や景気の動向などについて聞き取りを行っています。国でさえも、職員が直接現場に入っているのですから、市民に一番近い自治体である京都市が業界団体からの聞き取りにとどまるのでなく、職員が直接現場に入り、中小業者の仕事と市民のくらしの実態をつかむべきではありませんか。お答えください。

(産業観光局長)本市職員は、基礎自治体の職員として、住民と最も近い存在であり、日頃から、中小企業をはじめとする現地現場に積極的に出向き、生の声を肌で感じながら、その実態をしっかりと把握し、業務に取り組んでいる。

 次に、融資制度について2点お聞きします。今回の補正予算では、中小企業融資制度の預託金として200億円の補正が提案されています。また、6月には「新型インフルエンザ緊急融資」が創設され、対象要件の緩和や据え置き期間の延長などが盛り込まれたことは評価できるものであります。その上で今求められているのは、旅行客の相次ぐキャンセルにより、この6月を乗り切れるかどうか、という業者が出てきていることへの対応です。金融機関や保証協会の対応が従来どおり、となってしまうと、金融機関に申し込んだものの、何週間も待たされる、などといったケースが生まれかねません。直貸し制度を創設するくらいの思い切った仕組みをつくるべきではないでしょうか。少なくとも、既存の融資制度を利用する際には、融資にいたるまでの決定が、これまで以上に迅速に行なわれるよう、特別な体制を組むことと、金融機関への指導を行なうべきと考えますがいかがですか。

(産業観光局長)融資制度は、迅速かつ適切な実行が重要であることから、6月5日、他都市に先駆けて「新型インフルエンザ緊急融資」を創設した。
 この緊急融資では、本市制度の中で最も低利となる1.7%の短期資金、国の指定するいわゆるセーフティーネット保証業種の方が利用可能である長期緊急資金、それ以外の業種の方が利用可能である長期一般資金を設けた。長期緊急資金は、本市によるセーフティーネット保証認定が必要となるが、認定業務については、受付から3日以内に認定書が発行できるよう、業務体制を強化するとともに、円滑かつ速やかな運用を図るため取扱金融機関や信用保証協会に対して協力要請を行ってきた。

 2点目は、利子及び保証料についてですが、融資制度の改善という点では、利子や保証料に対しての補てんを行なうことでより利用しやすい制度とすることができます。宇治市では、利子補給で2%、保証料で半額の補てんをしています。城陽市でも同様の独自融資制度を持っている上に、京都府の融資制度に対しても、保証料の全額補てんの仕組みを持っています。他にも、久御山町、向日市、長岡京市、福知山市、京丹後市など京都府内でも数多くの自治体で同様の制度を持っています。京都市と同じ観光都市である奈良市では、今回の新型インフルエンザによる経済の落ち込みで資金繰りに苦しむ業者への緊急対応として、2%の利子補給の制度を創設することになりました。京都市でもこうした制度の創設を緊急に行なうべきと考えますがいかがですか。

(産業観光局長)利子及び保証料については、利用される方からすればご負担が少ないに越したことはないが、本来これらは、融資を利用される方が負担すべき性質のものであると考えている。
 本市の融資制度は、20年度に、件数で前年度の1.7倍となる約1万6千件、金額で前年度の3倍となる3500億円もの利用をいただいている。これに対する利子、保証料を補填するには多額の財政負担を伴うこととなる。中小企業の皆様を支援していくため、今後とも制度融資を積極的に運用し、その健全な経営に寄与すべく万全を期していく。

 次に、「融資を使いたくても使えない、そこまでの余裕はない」との悲鳴の声をあげている業者への支援についてお聞きします。あるタクシー会社から話をお聞きしたところ、「リーマンショックのときは18%の減。今回のインフルエンザの影響は25%の減。30数年の営業で最悪の事態。融資の1年据え置きだけでは間に合わない。直接補てんなどの措置をとってほしい。」と言われていました。また、新型インフルエンザによる休校措置で学校給食関連の業者の損失も大きなものとなっています。ある業者の方は、「学校が休校になり、そこへの食材納入が突然キャンセルになったため、その食材は廃棄せざるを得なかった」と述べています。今回のインフルエンザによる影響は大変大きく、損失補てんをして欲しいという声はさまざまに出されていますが、せめて、学校の休校のように、行政の指示による措置によって生じた損失は、行政の責任で補てんする必要があると考えますが、いかがですか。また、その他のケースでも、損失の補てんも含めた対応を検討するよう求めます。

(教育長)台風による休校等、教育委員会の判断により学校給食を中止した場合は、これまでから給食関係業者等に影響が出ないよう補填しており、今回の総合支援学校4校も含めた影響額約80万円についても、これまで同様に措置する。

 次に、中小業者の仕事を増やすための施策についてお聞きします。観光産業はすそ野の広い分野でありますが、同様に大きなすそ野の広がりを持つのが建設産業です。この分野への支援は、京都の経済に大きな波及効果をもたらすことになります。

 本市は、2月の補正予算で国の補正を活用して65戸の市営住宅の空き家改修を進めることにしました。今回の補正予算にも舗装道の補修や、区役所の改修工事などが含まれています。しかし、他の施設、例えば、学校の校舎でも、雨漏りしている屋根、動かなくなっている窓、壊れているトイレなどがたくさん残されていますし、ほかにも改修工事が待たれている市の施設はたくさんあります。今こそ、こうした市の所有する施設の改修工事、つまり生活密着型の公共事業をさらに拡充し、その仕事を地元業者に発注するべきではないでしょうか。国は公共事業の前倒し発注を過去最高水準ということで、上半期に8割以上という目標を持って進めていますし、京都府では、上半期で87%の契約を目標値にかかげています。京都市も公共事業、その中でも特に、生活密着型の公共事業を、過去最高水準となる目標値を定めて前倒し発注するべきではないでしょうか。また、改修工事や小修繕の事業規模そのものを拡大するべきではないでしょうか。お答え下さい。

(行財政局財政担当局長)今回の補正予算においても、既存施設の機能向上と施設を大切に長く使うという観点、また、地元中小企業者の皆様の受注機会の拡大を目指すという観点から、国の地域活性化・経済危機対策臨時交付金等を活用して、22年度以降に実施予定の市民利用施設等のバリアフリー化や延命化などの改修工事等を前倒しして行うため約30億円計上している。市営住宅の空家改修や舗装道補修などについても、既に順次事業に着手しており、今後とも、できる限り公共工事の前倒し発注等に努めていく。

 こうした工事を地元の中小業者が受注しやすく出来るしくみも必要です。入札参加業者でなくても、小修繕などの工事を受注できる制度として、小規模修繕希望者登録制度を全国各地の自治体が採用しています。新潟市やさいたま市も制度を採用していますが、ホームページで事業者名を閲覧することも出来るようになっています。こうした制度を京都市でも取り入れるべきと考えますがいかがですか。

(行財政局財政担当局長)小規模修繕希望者登録制度については、建設業の許可や建設業法に基づく経営事項審査を受けていない小規模事業者であっても、小規模修繕の受注の機会を確保できるよう、平成11年度から、登録制度を設け、現在68の事業者に登録をいただいている。今後とも、事業者にとってよりわかりやすい制度運用となるよう工夫していく。公共工事の発注に当たっては、引き続き、地域経済のより一層の活性化を図るため、市内中小事業者への発注を基本とし、その健全な育成に努めていく。

 さらに、市の所有する施設だけでなく、市民のみなさんの住宅の改修工事が増えることは、本市の経済に大きな影響を与えます。例えば、住宅改修助成制度や耐震改修助成制度は多くの市民の「安心して暮したい」と願う気持ちにこたえるだけでなく、地域の経済の活性化にも有効な施策です。福知山市の場合、市民が住宅のリフォームをした際に10万円を上限に10%の補助をする制度を持っていましたが、市の1億4,859万円の予算に対して、行われた工事は25億9,620万円。つまり、17.4倍の経済効果が生じたことがわかります。同様の制度を持つ自治体の状況を見ても、だいたい20倍の経済効果が生まれています。そこで市長にお聞きしたいのは、こうした制度が、大きな経済効果を持つと考えるかどうか、まずはこの点ついてお答え下さい。

(都市計画局長)住宅改修助成については、一定の経済効果を持つことは認識している。

 現在、本市は耐震改修助成制度を持っていますが、昨年度の実績は、3つの制度を合わせて24件となっています。少しずつ制度の改善がされ、件数がわずかに増えてはいますが、総体としては大変少ない件数にとどまっています。原因は周知不足などもあると考えられますが、やはり、制度そのものをもっと使いやすいものに改善することが求められています。特に、家全体を耐震化するのではなく、部分的な補強をするという簡易な耐震改修工事への助成制度を使いやすいものとすることで、多くの市民の利用促進につながります。本市の持っている、「高齢者等の木造住宅簡易耐震改修等助成事業」の年齢制限を撤廃し、助成率や助成額を引き上げるなどの改善を行なうべきと考えますがいかがですか。また、耐震改修に限らない、住宅改修助成制度の創設も、緊急の経済対策として創設すべきと考えますがいかがですか。お答えください。

(都市計画局長)耐震改修助成制度の拡充を図り、実績件数についても着実に伸びている。平成21年度当初予算においても、大幅な増額を行った。簡易耐震改修助成制度については、高齢者など地震時にすぐに避難できない方の応急的な安全を確保するという趣旨で、昨年6月に創設。実績が少ない状況だが、耐震改修に取り組んでいただけるよう情報発信を行っているところ。今後は更なる市民への啓発が必要であり、市民の意識の向上にもしっかりと取り組み、引き続き利用しやすい制度となるよう検討していく。一般的な住宅改修を対象とした助成制度については、公益性の点、また、本市の厳しい財政状況から、大変困難。

 次に雇用対策事業についてお聞きします。今回も緊急雇用創出事業ということでさまざまな事業が提案され、実雇用人数も310人ということになっています。これらは短期雇用が原則ですから、失業者の対策としては一定評価出来るものではありますが、今切実に求められているのは、長期雇用につながる仕事です。短期雇用だけでなく、スキルアップをすることなどで、常用雇用につなげる対策を強めることが求められていると考えますがいかがですか。

(細見副市長)現在、求職者に当面の就業機会を提供するとともに、将来的な雇用の場を創出することを目指す、農業や林業の担い手を育成する事業などに取り組んでいる。「京都未来を担う人づくり推進事業」は、全国初の試みとして、人を財産としてとらえ、育成し、就業につなげるこれまでに例のない画期的な取り組みである。この事業は、産学公が核となり、国や様々な機関・団体などが参画したオール京都体制の下、就業への意識改革、大学の人財養成講座と企業の実践研修を組み合わせた人財育成プログラムの中で開発するとともに、就業機会に恵まれない若者と人材が不足する京都府内企業との雇用におけるミスマッチの解消を図り、企業ニーズを踏まえた即戦力となる人材を育成する全国初の事業。

 また、これらの問題は、そもそも国の雇用破壊政策によって、派遣労働者や非正規社員が増えたこと、大企業が率先して違法な非正規切りを行ってきたことなどにその根本的な原因があります。非正規切りの大多数は、契約途中での解雇、偽装請負、期間制限違反、違法「クーリング」、業務偽装、細切れ契約の反復など、現行法すら無視した違法行為です。少なくとも、これ以上の新たな失業者を生まないために、大企業に現行法を遵守させるための緊急の指導を行うよう国に求めるべきと考えますがいかがですか。また、労働者派遣法を抜本的に改善し、「正社員が当たり前」という社会とするよう国に求めるべきと考えますがいかがですか。

(細見副市長)労働法制の遵守については、監督指導権限を持つ京都労働局が、大量整理解雇を行う企業に対する指導など、積極的な取り組みを実施しているが、4月16日には、国に対し、労働関係法令の遵守の徹底や法令に基づく指導監督の強化が図られるよう要請したところ。
 労働者派遣法については、労働者派遣契約の中途解除に伴う派遣労働者の解雇、雇止め等に適切に対処するため、いわゆる派遣元・派遣先指針などが既に改正されている。また、現在、国会において、日雇派遣の原則禁止や登録型派遣労働者の常用化を努力義務とすることなどを盛り込んだ改正法案が審議されているが、派遣労働者をはじめとする非正規労働者の増加は、我が国の未来を支える人材の育成や安定した産業基盤の構築にも関わる重大な問題であり、十分な国会審議を経て早期に必要な改正が図られることを期待している。

 最後は市民のくらしの支援策についてであります。今回、生活保護扶助費が拡充され、小・中学生、高校生の子どもがいる世帯に対して加算が行われる事は、母子加算が廃止されたことと比べたらきわめて不十分ではあるものの、一定の評価が出来るものです。こうした支援を福祉の分野で大きく進めることが求められています。ところが、今回の補正には、小中学校にデジタルテレビや電子黒板を整備するために20億9千万円もの予算が組まれています。「学校教育を充実する」というのであれば、就学援助制度の充実こそ、今、切実に求められているのではないでしょうか。市民のくらしが厳しいときの緊急対策として補正予算を組むわけですから、大幅に値上げをした国民健康保険料の値下げや保育のプール制への5億円削減分の復活をすること、さらには国民健康保険証の取り上げ中止など、市民のくらしと命を守る市政を推し進めることを強く求めまして私の質問を終わります。