佐野春枝 議員
09年3月19日(木)
「後期高齢者医療制度に関する意見書」の提案説明 09年2月定例市会 閉会本会議討論
日本共産党市会議員団を代表して、「後期高齢者医療制度における資格証明書運用に関する意見書」の提案説明を行います。
この意見書は、京都府保険医協会の要請によるものです。保険医協会は、府内で診療に従事する医師の団体で、現在、会員数は2,700名余り、開業医のほとんどの方が加入しておられます。日々、患者と向き合い、医療現場の実態について、もっともよく知っておられる方々の団体です。
意見書は、原則として資格証明書の発行はしないこと、いわゆる「悪質滞納者」への対応が必要とされる場合には外部委員も含めた「資格証明書交付審査会」等を設置し、資格証明書発行の判断の厳格化を広域連合に求めるものです。
資格証明書の発行が事実上医療を受ける権利を被保険者から奪うことになるのは明らかです。全国保険医団体連合会の調査でも、2005年の京都府における資格証明書を発行された被保険者の受診率は、一般被保険者の200分の1に過ぎません。
「保険証一枚で安心して医療にかかれるようにしてほしい」との運動が大きく広がる中、国民健康保険における資格証明書の発行については、この間大きく変化しています。広島市では、「悪質な滞納者のみに、極めて限定的に発行する」と考えを改めて、発行数を0にし、合併で誕生したさいたま市もほとんど資格証明書を発行しないなど、地方自治体が市民の医療を受ける権利を保障する立場に向かうという貴重な流れが生み出されました。
国においては、保険証の取り上げのもっとも深刻な矛盾として、「子どもの無保険」問題が大きな問題となりました。厚生労働省は初めて全国調査を実施し、昨年10月、「無保険」の子どもが3万3千人にのぼることが判明しました。そして、保険証が取り上げられた世帯のうち、中学生以下の子どもを救済する改正国保法が昨年12月に全会一致で可決・成立し、今年4月から施行されます。滞納世帯であっても、中学生以下の子どもには6カ月間有効な短期保険証を一律に交付するというものです。また、国民健康保険料が払えず保険証を取り上げられた世帯について、医療の必要が生じ、世帯主が市町村の窓口で医療機関への医療費の一時支払いが困難だと申し出た場合は短期保険証を発行することが決まりました。これは、日本共産党の小池晃参院議員が1月8日に提出した質問主意書に対する答弁書が1月20日に閣議決定されたものです。
これら一連の変化は、資格証明書の発行は、事実上、医療を受ける権利を奪うことになるとの認識が、地方においても国においても広がっていることの現れであり、医療を受ける権利を保障する貴重な流れが広がっていることを示しています。
昨年4月以前の老人保健では、資格証明書の発行という仕組み自体がなかったものを、新たな後期高齢者医療制度でその仕組みを導入したというのは、明らかに逆行であり、この制度の持つもっとも大きな害悪であると言わなければなりません。
全国保険医団体連合会のアンケート調査では、昨年9月分の保険料滞納者は全国27都府県587自治体で、およそ17万人に上り、普通徴収者の約1割に及ぶことが明らかになりました。京都市では昨年7月、8月、9月の平均で約2500人が毎月の保険料を支払うことができない深刻な状況にあります。
滞納者は収入低い人たちです。そういう方に対して資格証明書を発行したらどうなるでしょうか。医療にかかれなくなることは明らかです。
広域連合は、「1年間滞納していることをもって機械的に一律に発行するのではなく、できる限り保険料滞納者との接触を図り、制度の趣旨を十分に説明するとともに、事情を十分聴取し、被保険者の状況に応じたきめ細かな相談を行う等、適切に対応していきたい」としていますが、どのように保険料を滞納している被保険者の実態を把握し、資格証明書の交付の可否をどう客観的に判断するのかなど、「機械的な発行」にならないための慎重な対応が望まれます。
後期高齢者医療は、昨年の7月から保険料の徴収がはじまり、今年の6月でちょうど1年です。7月時点でどういう措置がとられるのかが、注目されています。2月の広域連合議会では、同じ内容での決議の採択を求める請願書の紹介議員に、民主党のみなさんも名を連ね、請願の採択にも決議にも賛成されました。京都市会として、関係者の願いにしっかりと応え、広域連合に対して意見書を提出すべきであることを申し上げ、提案説明とします。