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市会報告

北山ただお 議員

09年3月19日(木)

2009年度公営企業等特別会計予算案に対する討論 09年2月定例市会 閉会本会議討論

 

 ただいま山中公営企業等予算特別委員長からご報告がありましたように、日本共産党市会議員団は、議第19号病院事業予算及び議第22号自動車運送事業予算、議第59号京北特定環境保全下水道条例の3件につきましては「反対」し、残余の9件については「賛成」しています。私は党議員団を代表いたしまして、その理由を申し述べます。

 まず病院事業についてです。市立病院及び京北病院は、政策医療、感染症医療、僻地医療、救急医療など市民のいのちと健康を守ってきたことは誰しもが認めるところです。これらの医療は、採算性が低いため民間病院では担えないものであり、公的病院の果たすべき役割なのです。

 今の京都市は、補助金や一般会計からの繰り入れを大幅に減額した上に、患者窓口負担を引き上げ、医師体制も確保もできていないのに、ベッド稼働率の引き上げで増収を図る計画となっています。今回の病院予算では、国の「自治体病院改革ガイドプラン」にそって、独立行政法人化への移行をめざすことを前提にしています。独立行政法人とは何か。これは「自治体リストラの究極の手段」といわれる地方独立行政法人法に基づくものであり、その特徴は、行政から切り離し、別組織にすることによって、経常収支面での「独立」性を強調し、効率性の追求や人件費の切り下げをやろうとすることにあります。「京都市病院事業改革プラン」では、「地方独立行政法人への移行による、より自立的・弾力的な病院経営の実現」を掲げています。市長は「政策医療と独立行政法人化は矛盾しない、経営安定の選択肢」と答弁されましたが、果たしてそうでしょうか。独立行政法人は、政策医療の財源に充てられる運営交付金が減らされ、安定して政策医療を行うことが困難になります。市長は「政策医療の予算は減らさない」と強弁されましたが、この間補助金はどんどん削られており、「効率化」や「経済性」を求める独法化の下では更なる予算削減を招くことになりかねません。更に、地方独立行政法人の理事長は市長が任命することになり、議会の同意を必要とせず、予算決算などについても議会は審議ができないことになります。その上、今回は「非公務員型」と言われてますから、法人の職員となれば公務員でなくなります。公務員の身分喪失は、懲戒・分限処分に限るとしている地方公務員法の規定にも反するものであります。結局市立病院の公的な役割を放棄することになり、市民のいのちと健康を守れないことになるではありませんか。

 さらに、北館整備事業や長期の運営で総額906億円かけて民間企業と契約を結ぶ「PFI」手法は、時々の診療報酬制度の改訂も度外視して、特定目的会社の利益を優先的に確保するものであります。理事者は、PFIで46億円の財政効果があることを最大のメリットとして説明されてきました。しかし、昨年11月議会でもその算定根拠がいっさい示されず、今議会においても、「類推した数字」というきわめて恣意的な説明でしかありませんでした。市民の大切な税金を900億円以上も使う事業に、科学的な算定数値も示さず、類推などという事で強行されるのでは、再び高知市や滋賀県・近江八幡市での失敗を、京都市立病院においても繰り返すことになるのではありませんか。市長は、総括質疑で「近江八幡病院長から十分聞いている」といわれましたが、どのような問題点がありどう解決していくのか具体的な明示はなく、「しっかりやる」というきわめて曖昧な決意でしかなかったことは、PFIと言う制度そのものがきわめて不透明で曖昧なものだといわざるを得ません。

 近江八幡市立総合医療センターの槙系先生は、自らの総括論文で「PFIには、構造的欠陥ともいえる問題点が内包されている可能性が見えてきた。」「将来に発生する想定外の支出に関して、そのリスク負担が見えないのが実情」と述べておられます。

 市民のいのちと健康を守る自治体病院の公的責任を果たすことのできない予算には賛成できません。尚、京北病院につきましては、医師や看護師の確保を行って地域に密着した医療機関として発展させていくよう強く求めるものです。

 自動車運送事業につきましては、17年ぶりに黒字予算を組み、1日6千人の乗客増を見込む予算となっています。本来市バスは、乗客サービスの向上やバス待ち環境の充実などを徹底して行い、乗客を増やして事業の安定をはかること、市民の移動を保障する自治体の役割を果たすことが求められます。

 ところが、周辺部住民の皆さんを中心にして、循環バスの実現やダイヤの改善、乗り継ぎの改善、均一区間の拡大でサービスの向上、ベンチや上屋などのバス待ち環境の充実、敬老乗車証の適用拡大などを求める声など、多くの要望が寄せられているにもかかわらず、「財政困難」を口実にして期待に応えようとしていません。走行環境の改善や違法駐停車の排除など交通局だけで解決できない課題については、積極的に京都府警や関係機関に働きかけて改善するよう求めるものです。

 更に交通局は、生活支援路線補助金について2割を縮減する予算となっています。民間でも赤字である路線ということで、一般会計から「生活支援路線」として補助金が出されているのに、交通局の現状で補助金縮減できるような現状にあるのでしょうか。規制緩和で民間バスの参入や、マイカーの増大などで苦戦している市バス事業は、もっと財政的支援を行って利用者の期待に応えるべきであります。更に、現在バス事業に国の補助制度がないことが、もっとも大きな困難です。補助制度の実現に向けていっそうの努力を重ねることを強く求めておきます。

 現在、市バスの民営化に道を開く「管理の受委託」は市バス車両の半分に広げられてきました。民間バス会社における乗務員の賃金格差や処遇の改善は、乗客の安全を守る上でも重要な課題です。かつてはあこがれの運転手が、今では長時間労働と低賃金により、募集してもすぐ退職が相次ぎ、更に募集という構造になり、そのことが運転の質を落としています。交通局は市民の足を守る公共交通の中軸として、民間委託に偏る事業方針と若年嘱託制は撤回して、安心・安全の事業とするよう強く求めるものです。今月の13日、歩くまち京都・総合交通戦略策定審議会/第6回公共交通ネットワーク検討部会では、突然「京都市交通局・退場勧告」が読み上げられましたが、これは乗客増対策などに積極的な対応をしない事に対する警告というべきものでしょう。日本共産党は、市民や利用者の声を聞く懇談会などを開いて要望や意見を良く聞くこと、積極的なサービスの向上を求めてきましたが、今こそその姿勢に徹して退場勧告を退場させる積極的な取組を求めるものです。

 次に地下鉄会計についてです。

 政府は地方財政健全化法を強行し、今年度決算を連結決算にして、赤字率が20%を越えると再生団体にして国の統制をかけることにしていますが、京都市の地下鉄会計はその標的ともなりました。そもそも国は勝手に20%と言うラインを引いて、無理矢理に経済性ということで市民や利用者に負担を押しつけようとしています。地下鉄財政健全化計画では、「5年ごとに5%の運賃値上げ」を盛り込み、これが健全化のカギようになっていますが、市民生活の実態からいって、又初乗り運賃が日本一高い現状から見て、運賃の値上げなど到底できるものではないことは明らかです。

 なぜ地下鉄はこんなに大きな赤字を生んだのでしょうか。前市長がいみじくも「地下鉄は1都市で建設することは難しい、国家的プロジェクトとしてやって欲しい。」と述べられたように、建設費に対する国の補助制度はきわめて劣悪であり、運営費補助については起債を認めるだけで独自の補助制度はなく、安全対策における補助制度も確立されていないのですから、赤字は国の制度が生み出したものです。貴重な市民の交通手段を守るために、全市あげて乗客増加対策を講じることは当然ですが、国補助制度の抜本的な改善に全力をあげるべきであります。

 最後に、公営企業全般の財政を困難にしているもう一つの大きな原因は消費税であります。京都市公営企業全部で、約50億円もの消費税負担となっており、市民と事業者に多大な負担となっています。自民・公明の政権は3年後に消費税の引き上げをやろうとしていますが、増税になれば事業そのものの存続が危うくなることは必至です。事業に責任を持つ京都市が、消費税の引き上げに反対すること、少なくとも公営事業については適用除外とすることを国に対して働きかけることを強く求めまして討論といたします。