河合ようこ 議員
08年9月 9日(火)
河合ようこ議員の代表質問と答弁の大要 08年9月定例市会 本会議代表質問
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介護保険制度の改善、福祉現場の人材確保について
最初に、介護保険制度の問題、福祉現場の人材確保について質問します。
①「介護とりあげ」をやめ、利用者の実態に合ったサービスの充実を
介護保険は3年ごとに見直されることになっており、来年4月は事業計画、介護報酬、介護保険料が見直される時期となります。今までの見直しでは、保険料・利用料値上げ、介護報酬引き下げ、必要な介護の取り上げなどが行われてきました。「要介護」と認定されていた人が、判定基準の見直しで「要支援」になり、今まで受けていたサービスが受けられなくなる、介護ベッドや車イスがとりあげられ、生活援助の回数や時間が減らされる、施設入居者の居住費・食費が自己負担となり、払えない人は施設利用をあきらめざるを得ないなどの状況が広がりました。介護保険制度の目的は「介護される人やその家族が快適な状況になること」「そのためにお金を使いましょうということ」だと厚生労働大臣は言われていますが、実態はどうでしょう。同居家族が日中仕事のため家に一人でいる介護が必要な高齢者でも掃除や食事づくりなどの生活援助は制限される、通院の介助は、病院までの往復のみで、病院内での介助が受けられないなど、快適どころか不安だらけです。「私が倒れたら、この人はどうなるのか」と毎日不安と抱き合わせで介護生活されている年老いたご夫婦の姿には、「介護の社会化」には程遠いと憤りを感じずにはいられません。同居家族がいる場合の生活援助については、国からも重ねて、一律機械的な決定とならないよう「通知」が出され、本市でも「通知」が出されていますが、必要な人が支援を受けられない事例があります。市民の実態に合わせ必要な介護や支援が受けやすいようにすることが自治体の役割ではないですか。
東京都渋谷区ではデイサービス利用を週1回に減らされた人に区が支援し、それまで必要とされていた週2回利用できるようにする、老老世帯には同居者の食事準備や共用スペースの掃除にもホームヘルプサービスが利用できる、通院の付き添いや病院での待ち時間中の介助など、自治体独自の施策を行っています。国の介護とりあげによる利用者の厳しい生活実態に自治体が腰を上げざるを得ない状況があるからです。
国は来年度の介護保険の見直しでもまた給付削減と利用者負担増をねらっていますが、やるべきではありません。今回こそ利用者も介護を提供する側も安心できる制度に見直すことが必要です。
市長、「介護とりあげ」の撤回を国に求めるともに、本市として実態にあった支援ができるよう最大限努力すべきです。また、本市独自の施策を拡充すべきです。いかがですか。
(保健福祉局長)軽度者への福祉用具貸与について19年度から利用対象者の判断方法が見直された。本市では、的確なケアマネジメントを行うよう事業所に周知を行っており、必要な方に引き続き利用して頂いている。本市独自の施策の拡大は、厳しい財政状況や介護保険料への影響から困難である。
②介護・福祉現場の人材確保をはかれ
さらに、介護施設の経営危機・人材不足も問題です。市内のある施設では、介護報酬の引き下げで、年間約4000万円も収入が減ったと言われていました。4000万円というのは単純に計算すると常勤職員の給与10人分に値するほどの金額です。収入が減らされた中でも利用者の処遇をどう守るのか施設事業者は苦慮され、職員給与を下げ、職員に過密労働を強いるなど、身を切るような思いで事業をされています。こうした中で、「責任は重いのに、給料が見合わない」「仕事がきつくて続かない」と毎年20人もの職員がやめていく。男性職員は「この給料では結婚してやっていけません」と退職し、転職するケースが2割もあると言われていました。その上深刻なのは「求人募集しても人が来ない」ことです。大学で福祉の勉強をして資格は取っても、一般企業へ就職する学生が増えているそうです。最も大きな要因は、仕事はきついのに低賃金だということ、社会的評価が低いということにあります。
社会福祉施設職員やホームヘルパーの平均賃金は年間300万円以下で、全産業平均より男性で100万円以上、女性で30万円以上も低いのです。「こうした現実を見れば、介護職のなり手が減っても不思議ではない」「介護保険制度の維持発展のためにも放置できない課題だ」と新聞の社説でも取り上げられ、先の通常国会では「介護従事者等処遇改善法」が成立しました。京都市を含め、多くの自治体から国への要望書も提出されています。介護施設の経営困難と職員の低賃金を解決するには、介護報酬単価の引き上げが必要です。このことは政府も認めています。しかし、問題なのは、介護労働者の待遇改善に必要な介護報酬を上げるには「介護保険料の引き上げが必要だ」といっていることです。介護労働者の処遇改善と保険料を天秤にするのは間違っています。介護保険料は全国平均で月4090円、京都市では4760円、と今でも高齢者の家計を圧迫しています。これ以上の保険料引き上げに市民は耐えられません。
介護報酬の引き上げを早急に行い、介護労働者の処遇を改善し、介護施設の運営を守ること、介護報酬の引き上げが保険料の値上げにつながらないように、現在25%と少ない国庫負担を引き上げることを国に求めるべきです。また、本市独自で介護保険料や利用料の引き下げなど利用者の負担軽減をすすめるべきです。いかがですか。
(保健福祉局長)介護報酬の改善等を国に要望し、21年度以降の見直しの方向が示されたが、引続き改善を国に求めていく。
本市では低所得者の保険料負担を軽減するため、独自に保険料段階の多段階化による保険料率の細かな設定、保険料の独自減額等を実施し、きめ細かに対応している。
③福祉現場の労働条件を改善できるように市の助成を増やせ
いまや介護職場のみならず、福祉・保育職場はどこも経営難、職員の非正規化や低賃金が深刻です。「正職と同じように保育しているのに、時給800円台。休日が多い月は、10万円以下の収入。以前貯めたお金もなくなってきて、現在、日中は保育園、夜中まで居酒屋で仕事をする日々です。2つの仕事をこなしても、月18万円程度の収入です」「やりがいはあるけど、続けていけるか不安」。これは、非正規の保育士さんの声です。本来、福祉や保育の仕事は利用者にていねいに関わり心通わせる仕事、そして利用者の日々の変化や笑顔に喜びを感じられる働きがいのある仕事です。人のいのちと向き合う仕事です。働いている人が不安なのに利用者が安心できるでしょうか。職員が安心して働き続けられてこそ、利用者のニーズに応え、利用者の処遇をよくすることができます。希望に燃え福祉の職に就いた人が、泣く泣くやめて行かざるをえない事態の大本には国の福祉予算削減政策があります。障害児者施設や利用者には障害者自立支援法の応益負担が重くのしかかっています。これらを改善することは国や自治体の責任です。今年2月市会では「『福祉・介護の人材確保と待遇改善を求める』国への意見書」が全会一致で採択されました。
国に対し、障害者自立支援法の応益負担撤回を求めるとともに、福祉現場の実効ある人材確保と処遇改善を強く要望すること。本市が関わっている学童保育・児童館職員や保育所職員の給与・職員配置の充実、養護施設・障害児者施設や利用者への助成の拡充など、市として労働条件を改善できるように助成を増やすことを求めます。いかがですか。
(保健福祉局長)障害者自立支援法は7月に利用者負担の更なる軽減措置が講じられ、国において制度全般の抜本的見直しに向けた論議が進められている。
政令指定都市が連携して人材確保策の充実を要望する中、5月に「介護従事者等処遇改善法」が施行された。本市の福祉職員の給与水準の向上は厳しい財政状況をふまえると極めて困難。
配偶者暴力相談支援センターの早期設置を
続いて、配偶者暴力防止相談支援センターの設置について質問します。
本市が昨年実施した『配偶者等からの暴力に関する調査』では、配偶者または交際相手から暴力を受けたことがあるという人は女性で3割、男性で2割を占めています。子どもがいる夫婦の場合、暴力の現場を「子どもが見ていた、知っていた」という人が6割近くもあります。DVが子どもへの暴力や虐待も伴い、子どもの心や身体まで傷つけることにもなりかねません。暴力によって被害者の命が奪われる危険性もあります。
DV被害防止と救済は待ったなしです。DV被害を防止する法律があることを知らない人も多く、法の周知も求められていますが、本市の調査でも「被害者に必要な支援施策」として「暴力をふるう相手から一時的に逃れる場所の提供」が必要だという意見が男女ともに5割を超えています。いま、市内で被害者の保護命令の権限がある施設は、京都府が設置している婦人相談所だけです。被害者を迅速に保護し、支援できる新たな施設の整備を求める声が上がっています。改正『DV法』が今年1月に施行され、市町村での配偶者暴力防止相談支援センターの設置が努力義務となりました。北九州市や名古屋市などでは以前から配偶者暴力相談支援センターを設置し、被害者の保護や支援をすすめています。
本市でも設置を急ぐべきです。『きょうと男女共同参画推進プラン』には「ドメスティック・バイオレンスを受けた女性の保護と自立支援」は重点推進事業と位置付けられており、市長のマニフェストでは「ドメスティック・バイオレンス相談支援センター設置」を明確に掲げておられますが、いつ設置されますか。お答えください。
(市長)被害者の一時保護や自立支援に取り組み、民間の緊急一時保護施設への補助も行ってきた。DV相談支援センターの設置は市民に身近な窓口として必要。府の配偶者暴力相談支援センターとの役割分担等に十分留意し、被害者支援の現状と課題を点検しながら、新プラン策定にあわせ検討していきたい。
自営業の家族従事者、女性従業者の地位向上と支援を
次に、自営業の家族従事者、とりわけ女性従業者(いわゆる業者婦人)の地位向上と支援について質問します。
京都市には従業員5人以下の事業所や家族で自営業をされている方がたくさんおられます。収入が
減っている上に、様々な控除が廃止され、国保料や介護保険料の値上げで負担が増える。おまけに、今年は原油高騰、生活物資の値上がりが、中小業者のくらし・経営を脅かしています。全国商工団体連合会婦人部協議会が行った『全国業者婦人の実態調査』では、営業だけで生活できない人は60%を超え、「貯金の取り崩し」「パート・アルバイト」「他の家族の収入援助」「借金」で補っているという実態が示されました。営業に携わっている時間は「8時間以上」が約34%、「12時間以上」が5.6%あり、「家業は4時間未満」でも家業以外で4時間以上働く人が12%もあります。本業とパートでギリギリまで働き、睡眠や休暇も取れず、身体を壊して入院する、という状況も広がっています。自民・公明政権の『構造改革』による社会保障の切り捨て・負担増などが根本の要因ですが、自営業に携わっている家族従業者の労働は給料が認められないことも、大きな要因となっています。
家族で自営業をされている女性従業者は共同経営者であり、営業になくてはならない働き手です。しかし、国の所得税法第56条では「配偶者とその親族が事業に従事したとき、対価の支払いは必要経費に参入しない」とされており、配偶者には年間86万円、家族従業者には50万円を専従者控除という形でしか認めていません。所得税法56条の規定によって、家族従業者は営業するための融資や保障、資格取得など様々な分野でも不利益を受けておられます。例えば、夫婦で自営業をされている妻が交通事故にあった場合、損害保険の保障は86万円が算定基準となり、保障日額は約2300円で、専業主婦の場合の保障日額・約5700円の半分以下という事例も起こっています。
このような格差があることを市長はどう思われますか。また、働いていても正当な評価が得られていないことをどうお感じですか。お答えください。
同じ労働をしても賃金が認められない状況は女性の自立という点でも、女性の人権を保障し男女共同参画をすすめるという点からも問題です。女性・家族従業者の労働を正当に評価し、働き分(自家労賃)を認めることは当然ではないでしょうか。所得税法第56条の規定をなくすよう国に求めるべきです。いかがですか。
(細見副市長)女性の家族従業者がその活動に見合う正当な評価をうけ、対等なパートナーとして経営に参画することは重要。昨年度から自営業で活躍する女性等を広報誌で紹介し、応援している。
損害保険の保障日額の格差の事例は本市になく、家族従業者の給与は青色申告を行うことにより必要経費として認められる。
安心して出産する、家族の病気や介護が必要なときでも商売が続けられるという当たり前の願いですら、自営業者にはままなりません。家族が出産すると働き手が一人減る、一人が病気や介護で働けなくなると営業そのものが立ち行かなくなる、代わりの人を雇うお金はない。自営業の女性は、お産の直前まで働き、出産後もゆっくりする間もなく働いておられます。商工団体連合会の全国調査でも京都の調査でも「身体の具合が悪くても病院に行けない」という人が多いです。それは「病気になっても休めない」「入院と言われるのがこわい」「医療費のことを思うと不安」などが理由で、自分の身体のことより家計を心配されていることが表れています。最近では入院されてから亡くなられるまでの期間が短くなっているというお話も伺いました。自営業者の命を脅かす深刻な事態です。自営業者の多くが加入されている国民健康保険に「出産手当があれば」「傷病手当があれば」との声は切実です。市長はご存知でしょうか。
自営業者が安心して働き、出産でき、病気の時には安心して病院にかかれる対策を国に求めつつ、市として休業補償としての出産手当や傷病手当を検討すべきです。傷病手当や出産手当を保障した場合の試算を行っている自治体もあります。まずは試算することを求めるものです。いかがですか。
(細見副市長)国民健康保険における傷病手当・出産手当は任意給付と規定されている。手当の給付費は国庫補助の対象外で、保険料にも影響を及ぼす。給付の公平さを欠くおそれもあって、市町村国保では実施しておらず、本市でも実施は困難である。
中小企業庁は2001年に「自営中小企業に携わる女性の労働と健康に関する実態調査」を実施し、高知県、大阪府など7つの府県や札幌市、仙台市など政令市でも実態調査が行われています。『きょうと男女共同参画推進プラン』にも「労働に関する調査」の推進があげられています。中小業者が多い本市において自営業の女性従業者の実態や要望を調査し、つかむことがまず必要と考えます。いかがですか。
(細見副市長)概ね5年ごとに「男女共同参画に関するアンケート」を実施し、その中で女性従事者の就業環境の把握に努めている。
自動二輪の駐車対策を早急に
次に、自動二輪の駐車対策について質問します。
放置自転車がまちの美観を損ね、歩行者の通行障害になる等の問題を生じるとして、本市では、駐輪場の整備や啓発指導員の配置などを行っていますが、駅やバス停付近には自転車や原付・自動二輪などが未だ放置され、高齢者や障害がある人をはじめ歩行者の歩く環境を阻害しています。『歩くまち・京都』の実現めざす本市において、この事態は放置できないことです。さらに、ガソリン値上げの影響もありますが、環境に配慮し、移動手段を自動車から公共交通や自転車・バイクに替える人たちがもっと増えることが予想されます。「脱クルマ」は本市がよびかけていることでもあり、今後増えると考えられる自転車や原付に加え、自動二輪の駐車対策はますます求められているのではないでしょうか。新たに開業するJR桂川駅には駐輪場が設置されますが、自動二輪の駐車スペースはなく、「自動二輪も駐車できるように」との要望がよせられています。2006年の道路法改正により、路上駐車場の設置も可能になるなど設置の条件は広がっており、担当部局では「自動二輪の駐車対策の必要性は認める」という立場で、国にも申し入れておられますが、仙台市のように、条例で自転車、原付、自動二輪の駐車対策を総合的にすすめている所もあります。
国への要望と合わせ、本市としても自動二輪が駐車できる駐車場の整備や民間駐車場施設整備への助成制度の実施を急ぐべきです。いかがですか。
(建設局長)本市では可能な限り自動二輪車を受け入れているが、自動二輪の駐車ニーズが増大している。駐輪場の整備にあわせた自動二輪の駐車スペースの設置や既存駐輪場への自動二輪の収容が行えるよう国に対し法整備や補助制度の拡大などを働きかけている。
現在、京都市自転車等駐車対策協議会で審議中の「民間自転車等駐車場整備助成金制度」において、自転車・原付に加え自動二輪についても助成を行う。
地元・樫原の葬儀場建設問題について(要望)
最後に、地元・樫原の葬儀場建設問題についてです。
葬儀場建設計画がある川島調子町は、静かな住宅地で、近くに樫原小学校があり、南側の新山陰街道には、阪急桂駅と洛西ニュータウンを結ぶバスが多数走っているところです。地元町内会と自治会では子どもたちの安全と住環境を守るためにと、葬儀場建設反対運動を3年近く続けておられます。
住民に対して数々の不誠実な態度をとってきた日本セレモニーが、「建設計画は法にかなっているから」と住民説明会もしないまま強行するのではないかという住民の不安は大きくなっています。この間京都市では「中高層条例」の改正や「葬儀場の建築に関する指導要綱」作成などにより住民と業者の間の調整・建築指導をすすめておられますが、地元住民から提出された葬儀場の「建設反対」「建築の指導」を求める二度の市会請願が全会一致で採択されていることを重く受け止め、業者への指導を強めていただくよう要望し、私の質問を終わります。