西野さち子 議員
08年6月 5日(木)
2008年度一般会計肉付け補正予算等に対する反対討論 08年5月定例市会 閉会本会議討論
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今議会に提案されています議案のうち、議第46号および議第71号平成20年度一般会計補正予算案、議第50号平成20年度基金特別会計補正予算案に日本共産党市会議員団は反対の立場を表明していますので、その理由を述べて討論いたします。
今議会に提案されました補正予算は、門川市長がマニフェストに基づいて編成される実質上最初の予算です。無駄のない筋肉質の予算だと言う事ですが、実際には必要なものまで削っているのが現状です。
4月から後期高齢者医療制度が始まり、75歳と言う年齢で医療に格差をつける制度に対して高齢者を中心に、多くの国民のみなさんの怒りが渦巻いています。国会では、野党4党が共同で後期高齢者医療制度の廃止法案を提出しました。また、投機マネーによる原油や小麦などの異常な高騰が、食品や生活必需品の値上げを引き起こし、市民の暮らしは本当に大変です。今こそ市民生活をしっかりと応援する予算編成が求められています。
予算に盛り込まれた妊婦健診5回の援助や、保育料3人目の無料化は拡充が望まれていた施策ですから、評価します。しかし、実際には、14回の検診で10万円近く必要ですから、妊婦健診は5回で18000円の補助では、全く足りません。「もっと援助を」と求める声が出るのも当たり前です。また、国も14回が望ましいと言うのなら、それにふさわしい地方への財政支援をすべきです。国への財政支援を求めると共に、本市としてのさらなる拡充を求めます。
また、3人目の保育料無料化は市民に大きな期待で受け止められました。ところが3人が同時に保育所に入所していなければ対象にならず、全市で350人しか対象になりません。期待が大きかっただけに拡充を求める声は与党議員からも出されました。こうした声に応えさらなる拡充を求めます。
15館の児童館建設の具体化、第二児童福祉センター構想や発達障害児支援など、市民の願いが一歩前進した点で評価します。しかし、すでに骨格予算で決まってはいますが、1人暮らしの高齢者にとっては安否確認もかねての命綱である、配食サービスの補助金切り下げや緊急通報システム電話料金、身体障害者福祉電話の公費負担を7月から廃止し7300万円の削減など、暮らしの切り捨てを進めていくことは許せません。配食サービスの補助金切り下げによる弁当代の値上げは「1食分を2回に分けて食べている」きびしい状況にある高齢者の暮らしをさらに悪くすることになります。「安心して暮らせる福祉と健康のまちづくり」とのマニフェストから見ても、していることが全く逆では有りませんか。雪だるま式に膨れ上がっている高齢者の負担をさらに重くするもので、許せるものではありません。
切捨ては暮らしだけではありません。効率化による見直しと称して予算が削られたのは255件で、そのうち77件が文化市民局関連です。さらに縮小による見直しは5件です。たとえば、文化芸術顕彰制度やコンサートホールの運営費削減など、文化面が軒並み犠牲になっています。行政改革の名のもとに市民サービス切捨てをしようとしていることは重大です。切り捨てをやめるよう求めます。
ところがその一方で市内高速道路については、今議会に建設局関連で斜久世橋区間の鴨川西ランプ整備として14億円が提案され、斜久世橋区間に関連しては、市民の財産である一等地を計3カ所もワシ興産株式会社という一民間企業に62億円で売却し、そのうえ、補償金まで渡している事が明らかになりました。ところが、予定価格は8000万円以上、土地の場合は1万㎡以上が議決案件となりますが、3カ所ともそれ以下だとして、補償金の金額だけでなく旧浜口染工跡地をいくらで買収したのか、その金額を未だに議会にも市民にも明らかにしていません。にもかかわらず山崎副市長は「法令の範囲内で適正に行った」と開き直るばかりでした。
二条駅前の用地は、区画整理事業の結果市有地となった、市民の大切な財産です。「京都市の説得で提供したのに、民間に売り渡すとは約束が違う」と市民の怒りの声があがっていますが、これでは市民の納得は得られません。その会計処理である議第50号基金特別会計補正予算案には、公債償還基金に積み立てるために43億2100万円の補正が計上されています。これは京都高速道路斜久世橋区間の関連で、旧浜口染工所有地の代替地として売却した市有地のうち、二条駅前の一等地分を一般会計から積み立てるものであり、反対です。
車の総量規制が地球温暖化防止には避けて通れない施策だといわれている中、ごり押しで高速道路建設にまい進する京都市の姿勢は、さらに車を呼び込むことにもなり、地球温暖化防止条例にも背くものです。旧浜口染工跡地買収に関する詳しい経過と金額を明らかにすべきです。市長は、その上で、未着工の3路線については、はっきりと中止を表明すべきです。
次に環境問題です。地球温暖化対策室を設置し、各局を横断する全庁的取り組みが始まりました。「環境モデル都市」に応募し、2030年までに1990年レベルから50%削減、2050年までに「カーボン・ゼロ都市」を目指すと提案されました。この提案は必ず達成しなければならない課題です。ところが、地球温暖化防止条例で2010年までに10%削減を掲げた京都市が、脱焼却をいいながら47000トンもの温室効果ガスを排出する焼却灰溶融炉の建設を進めていることは、地球温暖化防止の点からも、脱焼却の点からも大きな矛盾となっています。脱焼却を目指すのなら、焼却灰ゼロを目指すと言うことですから、焼却灰溶融炉の必要性はなくなります。溶融炉の建設は、ゴミ減量や地球温暖化防止に向けての、市民の地道な日々の努力を台無しにする行為です。
副市長は市長総括質疑で「10%削減目標達成は厳しい」と答弁されましたが、10%目標が達成できなくては、50%目標の達成もありえません。京都議定書発効の地である本市が実効性ある具体策を示すべきです。そして、国に対して、産業界が要望している「セクター別アプローチ」に固執するのではなく、洞爺湖サミットまでに2020年までの中期目標を示し、議長国としての責任を果たすことを強く求めるべきです。
今回の補正予算では新規の耐震関連が1億1750万円です。そのうち特定建築物の耐震対策は1850万円になっています。民間福祉施設耐震診断助成の対象になる84棟のうち、75棟が保育所ですが、旧耐震基準でも面積要件から対象にならない保育所が71棟もあります。そのほか、学童や障害者施設、高齢者施設も含めると133棟が対象外になります。「優先順位ですすめる」と副市長は答弁されましたが、耐震が必要な217棟のうち4割の84棟しか対象にならず、しかも、7年間で診断するというもので、耐震改修ではありません。自己資金に余裕のない民間の福祉施設に、2015年までに90%の耐震化は大変です。国に補助率の増額を求めると共に、京都市としての耐震改修促進へのさらなる独自努力を求めます。
「すでに市政の様々な活動に参加されている市民には、さらに汗をかくことをお願いするが、京都市はどれだけ汗をかくのか」と与党議員の発言がありましたが、「市民共汗サポーター」制度に象徴されるように、京都市の責任が曖昧にされているのが今回の補正予算の特徴の一つです。かけ声だけでなく、まず、京都市が市民の暮らしを応援する立場に立った予算編成が必要だと言うことを申し上げて、私の討論とします。