西野さち子 議員
07年11月21日(水)
西野さち子議員の代表質問と答弁の大要 07年11月定例市会 本会議代表質問
国民健康保険について
○資格証明書・短期保険証の発行をやめよ
まず、国民健康保険について質問します。市長は今、市民の願いの中で最も多いものは何かご存知でしょうか?昨年行われた市職員労働組合の調査によると、前回の2001年の調査でも第1位で、今回もまた第1位になっているのが国民健康保険料・介護保険料の軽減です。147万市民のうち約50万人、世帯にして約28万世帯が京都市国民健康保険に加入しておられます。その内約52,400世帯が保険料滞納となっています。滞納をすればどうなりますか?資格証明書や短期証の発行です。今年3月1日時点で、3,080世帯に資格証明書が、16,315世帯に短期証が発行されています。更に、郵便発送したけれど市民の手に届かず帰ってきたものが3,478件あります。未更新も含めればなんと国保加入世帯の9・27%、1割近い世帯に正規の国保証が届いていないことになります。9月市会の代表質問で倉林議員の質問に上原副市長は「過去最高の繰り入れをしている。保険料の引き下げは無理だ」といつもの答弁を繰り返され、「減免制度などきめ細かな相談を行っており、特別な理由も無く滞納している人には資格証明書や短期証の発行はやむを得ない」とまでおっしゃいました。きめ細かな相談の結果、滞納は減っているのでしょうか。払える限度を超えて保険料の請求が来るため、払いたくても払えないのが現状です。相談と言うのは払えるところまで保険料を引き下げるのではなく、いつまでにいくら払うのかの相談で、いくらかでも現金を持っていかないと相談にはならないと言う事を市長はご存じないのでしょうか。ある、小さな子どもさんを抱えた方は「毎月毎月保険証をもらうために長い時間同じ話しを聞かなければならないので、苦痛です。保育料を滞納して保険料を払ったけれど滞納はなくなりません。」と肩を落としておられました。この世帯はご主人は仕事の関係で腰痛に苦しんでおられ、毎日仕事ができないため、収入は生活保護基準以下です。ところがこの方は通勤にどうしても必要なのに車があることを理由に生活保護の申請を断られたそうです。市長は「大変な人は生活保護で対応している」とおっしゃいますが、実はそうはなっていないのが現状です。また、お一人で美容師をされている方は、「今は一か月分の保険料を2回に分けて集金に来てもらったりして、何とか滞納をせずに済んでいるけれど、銀行振込では一回で引き落としになるので払いにくい」と言っておられました。こんなに苦しんでいる市民にたいして、市長、あなたはそれでもまだ保険証の取り上げはやむをえないとおっしゃるのですか。京都府内には資格証明書の発行が徴収率の向上に繋がらないとして、発行していない自治体が多くあります。ところが京都市では、来年の四月からは保険料の徴収員を廃止し、分割しながらも何とか保険料を納めていた市民へのサービスを後退させるなど、きめ細かい対応を切り捨てているのが現状です。昨年、保険証が無いために命を落とした人が全国で29人出たという調査がありました。行政による犠牲者を生まない対策が早急に求められています。また、苦しんでいるのは市民だけではありません。資格証明書の発行を担当する職員は「市の要綱に基づくとやむをえないが、資格証明書を交付する時に、病気になったらこの人はどうするんだろうと思うと心が痛む」と、苦しんでいるのです。資格証明書、短期証の発行をやめない限り市民や職員の苦しみはなくなりません。市長は桝本市政の継承を期待しておられますが、こんな冷たい市政も継承をせよとおっしゃるのでしょうか。市民のいのちを守るために資格証明書や短期証の発行をまずやめるべきです。いかがですか。
(上原副市長)保険料は被保険者に公平に負担していただくことが前提。支払い能力に応じて前年の所得で決定している。納付に困っている方には相談に応じ、滞納者に対しては区役所支所に来てもらって接触を図り、十分に状況を聞いて減免制度などきめ細かな納付相談を行っている。納付意思を全く示さず特別な理由もなく長期に滞納している方への資格証明書や短期証の交付はやむを得ない。
○一部負担金減免申請時の資産調査を撤回せよ
また、個人タクシーで頑張っておられる方の奥さんがガンで手術が必要になり一部負担金の減免申請に行かれました。この制度は医療費の支払いが困難な方で、3ヶ月以内に治る見込みがあれば、減免や徴収の猶予ができる制度です。この方は早期ガンなので切除すれば3ヶ月で完治できると診断書も出ています。ところが保険料の滞納があるからダメだと言われました。何とか工面して滞納分を払ったら、今度は車があるからダメだと受け付けてもらえなかったそうです。この方の場合は、結果的には何度も交渉をしてようやく何とか認められましたが、タクシーの運転手から車を取り上げて仕事ができますか?保険料の滞納どころか生活さえできなくなります。市長、国民皆保険とは何ですか?こういうときにこそ手を差し伸べて、困っている市民の応援をするのが国保の役割ではありませんか。ところが8月に出された資産調査を指示する通知が市民を冷たく切り捨てています。車を使用する仕事についている人は、保険料の滞納が無くても一部負担金の減免はできないとは、あまりに冷たい切捨てではありませんか。資産があることを理由に切り捨てることは許されません。やめるべきです。そして資産調査の通知を撤回すべきです。いかがですか。
しかも、この方が最初に相談にいかれた時は、高額療養費の説明しかされず、一部負担金の減免制度の説明は全く無かったそうです。一部負担金減免の件数がこの8年間で年々減り、昨年度は360件と約540件も減少しています。この件数を見れば市民への周知を徹底せず申請を受け付けにくくしているといわざるを得ません。市民にわかりやすく制度を周知するように通知を出し、徹底すべきです。いかがですか。
(保健福祉局長)申請により生活保護基準の1.3倍以下の世帯に適用。他の被保険者との公平の観点から適正に行っていく。従来から収入、資産含めて総合的に判断しており、支払いが可能な預貯金等の資産の活用もお願いすべきもの。全国的に一部負担金減免件数が減少傾向であり本市でも減少しているが、政令市の中では適用は多い。適切な広報を行いきめ細かな窓口相談に努める。
○国保料値下げを求める
いま、高すぎる保険料を引き下げてほしいと署名運動が始まっています。40代の若いご夫婦で2人の子どもさんがおられる4人家族の花屋さんは年間所得が172万円で国保料は29万8690円他に介護保険料、所得税、住民税を払わなければならないので差し引き4人家族が133万円での生活で、生活保護基準より低くなります。また、ある医療機関では、資格証明書、短期証で3人続けて末期がんの受診者が有ったということです。市民生活に危機的な状況が広がっています。市長はこの事態を放置するつもりですか。今こそ市民のいのちを守る為に払える保険料に引き下げることを決断すべき時です。いかがですか。
(市長)平成19年度も一般会計からの繰入は過去最高額の154億円、一人当たり保険料は据え置いた。政令指定市の中でも保険料は低額、累積赤字が85億円もあり保険料の引き下げを実施する状況にない。
生活保護行政の改善を
次に生活保護についてお聞きします。「生活保護の門前払い」「半数は受給資格」と言う見出しで新聞報道がありました。司法書士や弁護士が7月に全国一斉相談を行った結果、993件の相談があり、そのうち福祉事務所に行ったが保護は受けられなかった289件について分析をした結果、 143件が生活保護を受ける資格があった可能性が高いと判定されたと言う事です。そして、98%に当たる284件は保護申請さえ受け付けられていなかったそうです。京都市ではどうでしょうか。保護の申請書はどこに置かれているのでしょうか。市民の手が届くように全ての福祉事務所のカウンターに置くべきではありませんか。「相談を受け、保護が可能だと思われる人にしか申請書は渡さない」とはっきり言う相談員もいます。相談員の個人的判断に左右され、申請書を市民が自由に手にできないのはおかしいのではありませんか。生活保護法では申請拒否は禁じられています。9月6日の「生活保護関係全国係長会議」で厚生労働省から保護の相談における適切な窓口対応等について指導があったと言う事です。それによると、「保護の申請権を侵害しないことは言うまでも無く、申請権を侵害していると疑われるような行為自体も厳に慎むべき」とされています。これを受けて京都府は各福祉事務所長宛に通達を出しました。京都市においては厚労省の指導を受けて、改善された点はあるでしょうか。申請書を窓口に置かないと言う事は、申請権を侵害していると疑われる事になるのではありませんか。なぜ、改善されないのでしょうか。早急に市民の手が届く所に申請書を置くべきです。いかがですか。
(保健福祉局長)相談に来られても、預貯金や他の制度の活用で保護適用に至らない方も少なくない。面接相談員が状況を詳しく聞いて他制度の案内や、申請意思のある方には申請書を渡している。申請権の侵害を疑われることはない。
福祉労働者の実態調査を行え
次に福祉労働者が不足している問題について質問します。利用者の1割が単純知的障害で、あとは重複障害者というある知的障害者授産施設では、「障害者自立支援法以後は給与は減額の上賞与は出なくなったが頑張っている。やりがいはあるが低賃金で働き続けることができない。」「少しの正規職員とあとは非正規職員で施設をまわさなくてはならない。優秀な職員は他の施設から引き抜きがある」「定員2割増まで利用者を増やせるがサービスの質を下げることになるので、施設経営のために利用者を犠牲にはできない」とおっしゃっていました。昨年十一月に京都労働局長から社会福祉施設関係団体の長あてに労働災害の発生が昨年は平成十三年度の1・7倍になっており、極めて憂慮すべき状況にあると文章が出されました。民間社会福祉施設職員の特殊検診の結果でも、治療を要する人が増えています。この調査結果は福祉の職場において、労働強化が進んでいる事を示しているのではないでしょうか。早急に改善が必要です。また、今年5月から6月にかけて全国の「福祉保育労働者の労働と生活の実態調査」が行われました。調査結果は正規職員の55%常勤パートの90%が勤続10年未満となっています。他の調査でも特に介護の職場では離職者の中で勤続3年未満の人が8割以上になっています。そして、やめたいと思う理由は「忙しすぎて肉体的に無理かなと思うときや、チームワークが取れなくてそれが仕事への自信を無くす事につながる」「忙しくてもそれなりの賃金がもらえればいいが、賃金が低く将来への希望がもてない」ことにあるとのアンケート結果が出ています。賃金についてみてみると、「正規職員」の「15万円~20万円未満」が異常に多く、特に若い職員に多い「10万円~15万円未満」の賃金は税金などを引けば実質的に生活保護基準に満たないのですから、福祉の職場がワーキングプアを生み出しているのです。「介護の職場で夜勤や早出もしている。介護福祉士の資格が有り7年働いているが手取りが月14万くらい。毎月3万円奨学金の返済をしているので、親と同居でないと生活できない」また、「施設に勤務して3年目で手取り13万4000円。正規職員なのにワーキングプア。結婚なんて考えられない」、どちらも二十代の青年です。市長は低賃金のうえ労働強化となっている福祉施設の労働実態をどこまで把握しておられるのでしょうか。いま、福祉の職場で何が起こっているのか具体的な調査が必要です。京都市として早急に実態調査をすべきです。いかがですか。
また、厚生労働省は人材確保のために「他の分野とも比較して適切な給与水準が確保されるなど、労働環境を整備する必要がある」職員配置については「労働者の負担を考慮し、一定のサービスを確保する観点から、職員配置のあり方の基準の検討を行うこと」とした「福祉の人材確保指針」を新たに出しました。この指針を京都市内の全ての施設に周知する必要があります。そして、この指針に基づいた施策を実行するための財源を利用者負担にせず、必要な財政援助を国に強く求めるべきです。いかがですか。
関連して醍醐和光寮について要望します。「醍醐和光寮再整備基本構想」が先日発表されました。人権問題だとして改築はわが党が求め続けてきたものですから、一歩前進は歓迎します。しかし、再整備計画では京都市直営の施設を民設民営にして全国から募集するとされています。民間では非常勤や嘱託を増やすと言う事ですから、低賃金、重労働という労働者の犠牲無しには成り立たない事は先に述べたとおりです。何よりも利用者へのサービスの質がまもれなくなります。早急に建替えをすすめ、公設公営を堅持するように強く求めます。
(上原副市長)福祉施設の人材確保はサービスの維持向上の観点から重要な課題。指導監査や日常的な運営指導、関係団体との情報交換を通じて実態を把握している。国の指針は、施設職員のキャリアアップや人材確保についてこれまで福祉関係団体や社会保障審議会で議論されてきたことを具体化したもの。主旨をふまえ取り組んでいく。労働環境改善は、措置費単価や介護報酬など国の適切な対応が必要。他都市とも連携し、国に要望する。
市営住宅の入居基準引き下げはやめるべき
次に市営住宅についてお聞きします。国土交通省住宅局は昨年8月に「公営住宅法施行令等の一部改正について」の通知を出しました。2008年4月から入居基準をこれまでの月収20万円から、15万8000円に引き下げると言うものです。収入がこれを超えれば明け渡しの対象者になり、近傍の民間並み家賃が請求されます。国が行ったパブリックコメントに対し、出された意見の圧倒的多数が批判的であったことを受けて、国は1年間の実施見送りを決めました。しかし、今年度からすでに月収が20万円を超える世帯への家賃の値上げが始まっています。低所得世帯への国による家賃のる引き上げは、入居者に深刻な影響を与えます。収入の15万8000円から近傍同種の家賃を引くと、2人以上の家族なら生活保護基準をも下回る事になります。国がすぐに実施できない理由もここに有ります。公営住宅の果たす役割を再認識していただいて、収入基準の引き下げをしないよう国に強く求めるとともに、京都市独自の減免制度を拡充していただきたい。いかがですか。
(都市計画局長)入居基準は10年以上前から変わっておらず、公営住宅入居者と非入居者の公平性を欠く状況。より困窮度の高い世帯に的確に供給する観点から入居基準・家賃見直しがされた。国の動向を十分注視する。独自の減免の拡充は、入居者と入居していない人との格差を一層拡大することになり、慎重に対応が必要。
醍醐コミュニティバスへの支援を
次に暮らしの足について質問します。醍醐コミュニティバスは住民の力で走るバスとして全国でも有名になりました。その影には、住民の皆さんの大変な努力と苦労があります。このバスはバス停から遠く離れたところや山の上の団地の住民から「地下鉄ができて却って不便になった」「狭い道も走るバスが欲しい」と言う声に答えて走り出しました。昨年10月からは福祉・敬老乗車証が使えるようになり、前年と比べても毎月7割から8割りの乗客増となっており、コミバスなくしての醍醐地域のくらしの足は考えられない状況になっており、地域住民の皆さんに非常に喜ばれています。しかし、その反面乗客の約6割が敬老乗車証です。昨年の同じ月と比べると運賃を払っての乗客は約3割の減少です。京都市からの敬老乗車証に関する交付金は今年度2000万円の予算ですから運営は大変です。住民が頑張っているから任せておけばいいというのでは公的責任の放棄ではありませんか。さいたま市では「コミュニティバスは民間の走らないところに走っているので、赤字は当たり前。動く公共施設として市民の足を守る」と胸を張って説明されていました。京都市においても、醍醐コミュニティバスが安心して走り続けることができるように財政援助をし、公の責任を果たすべきです。いかがですか。
(山崎副市長)地域住民や地元企業に支えられた、地域のために地域で運行する全国的にも先駆的取り組み。都市計画学会から「計画設計賞」受賞、本年5月には利用者100万人を突破。市民の手で実現したコミュニティバスとして今後も運営できるよう、交通局が所管する醍醐自動車ターミナルの無償貸与の支援を続ける。
最後に、伏見区深草藤の森地域のみなさんから、これまでも児童館や地域のふれあい交流センターが欲しいと言う声が多く出されていました。しかし、適当な土地が無くなかなか実現しませんでしたが、昨年4月に伏見消防署が竹田七瀬川に移転し、更にその西隣の消防学校が来年度移転することが決まっています。これらの土地などをを活用し、子どもから高齢者まで気軽に交流できる施設の建設を求める請願署名が約1ヶ月の間に、3300筆も集まったことからも、住民の願いの大きさをみることができます。公共施設の少ない深草藤の森地域に地域交流センターの建設を強く要望しまして、私の質問を終わります。