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市会報告

くらた共子 議員

07年10月 5日(金)

2006年度公営企業等決算に対する討論 07年9月定例市会 閉会本会議討論

 日本共産党市会議員団は、報第8号平成18年度京都市自動車運送事業特別会計決算については「認定せず」、その他の決算議案7件については「認定する」との態度を表明しています。わたくしは議員団を代表しその理由といくつかの問題点を指摘いたします。

 まずはじめに、報第8号の京都市自動車運送事業特別会計決算を認定しない理由を述べます。その第一の理由は、4年連続しての黒字決算の背景には前年度につづく職員のリストラや、市バス運転手の嘱託職員への置き換えなど、不安定雇用を拡大させているからです。とりわけ採用から5年間の乗務実績が評価されなければ正規職員の採用試験を受けることもできない、同じ仕事でありながら、賃金格差や精神的圧迫をもたらす若年嘱託職員の雇用形態は廃止し、乗客の安全を守るためにもただちに正規職員に採用すべきです。
 つぎに、市バスの管理の受委託が国の認める2分の1まですすめられましたが、市民の目には交通局の制服を着て市バスを運転している運転手が、交通局の職員ではないという矛盾があります。とりわけ安全運転の責務が求められる運転手の労働条件や安全確保のための対策がどのようにとられているのか、市民に知らされる必要がありますが、委員会質疑のなかで理事者からは「民間事業者の理解が得られるものについては公開する」との答弁で、市民への説明責任を果たす立場に立ちきらない姿勢でありました。あらためて、市バス事業の受委託の内容、事故の実態や解明の過程など市民への全面的な情報公開を求めます。
 第二の理由は、市民サービスの充実による乗客増など、福祉の向上に寄与する積極的な経営姿勢がみられないことです。バス路線の充実や調整区間の見直しなど市民の求める利便性向上の取り組みが不充分なうえ、バス停の環境改善も計画的な取り組みとはなっていません。合わせて回送バスの問題についても対処が求められます。市民が要望している循環バスが走らないのに、空の回送バスはどんどん走っているというのでは納得できません。回送バスが多発する路線管理の在り方を見直し乗客増を図るよう改善することを求めます。 

 つぎに、報第5号の平成18年度京都市病院事業特別会計決算についてです。国の医療制度改革のもとで、市民の命と健康を守るための努力がなされており認定いたします。しかし、市立病院と市立京北病院における医師の不足問題は解決されておらず、事態は深刻です。とくに市立京北病院は、医師とともに看護師も不足しており、地域住民の医療要求に応える病院機能の存続にかかわる事態となっていることは極めて重大です。10月1日からの内科常勤医師の配置は地域住民の切実な願いに応えるものであり努力の成果として評価いたしますが、同時に整形外科医と看護師を早急に必要数配置できるよう京都市の全力をあげた更なる取り組みが必要です。
委員会質疑で議論となった医師不足の原因は、1980年代以降の政府による医師数抑制政策に起因しています。国は、1969年医師養成方針を策定しましたが、その当時のOECD平均との比較で、すでに日本の医師数が少ない状況であったにもかかわらず、「医療費亡国論」を喧伝し大学医学部の定員を削減してきました。ところが、2006年の政府の「医師の需給に関する検討会」報告では、過去の失政の反省は一切なく、それどころか「マクロ的に日本の医師は足りている」という見解に立ち、全国で発生している医師不足状況の原因は「偏在」だと決め付けています。しかし、人口千人あたりでみますと、0ECD加盟国の平均が3・1人に対し日本は2人、病床100床あたりの日本の医師数はドイツの3分の1、アメリカの5分の1、日本をOECD水準にするためには12万~14万人の医師を生み出す必要があると言われており、日本の医師不足が絶対数の不足であることは明らかです。このように、医師、看護師の確保問題は国の政策によるところにありますから、国の責任を明らかにし抜本的な対策を求めるべきです。
 合わせて、国による医療制度の改革は、総医療費抑制政策のなかで病床数の縮小や、医療費窓口負担の引き上げ、混合診療の拡大など国民が願う「安心してかかれる医療」とかけ離れたものです。来年4月実施予定の後期高齢者医療制度についても、75歳以上の高齢者に新たな保険料を課し、保険料が収められなければ保険証を取り上げ、しかも受けられる医療の中身を限定縮小しようとするなど、とんでもない高齢者への差別医療です。京都市は市民のいのちに責任をもつ立場で国に対し、後期高齢者医療制度を撤回する意見をあげるよう強く求めておきます。

 また、京北病院の在り方については市長からも、「アンケートをもとに地域住民の要求を把握し、可能な限り要望に応えたい」との答弁がありました。ぜひとも、地域住民の願いを尊重し対応されますよう求めます。また、市立病院の再整備計画については副市長から「PFI手法で効率化を図る」との答弁でありましたが、すでにPFI手法で運営されている高知医療センターでは一部の医師と業者による汚職事件がありました。また近江八幡総合医療センターでは「遺体用冷蔵庫や分娩室の必要性は理解しない」と経営コンサルタントが設置を拒否した為、後に公費で設置したなどの事例もあり、PFIに関係して様々な矛盾が生じていることの指摘がされています。京都市は市民のいのちの拠りどころとしての市立病院の公的責任を果たすために、あらためてPFI手法の導入については見直すことを求めます。

 つぎに、報第6号乃至報第7号の上下水道の特別会計決算についてです。まず中期経営プランの3年目となる平成16年度水道事業の決算は前年度比で1億7千7百53万2千円の減で6年ぶりの赤字決算となりました。しかしこれは会計決算上の赤字であり、市民の願いである敷地内鉛管給水管取替の工事費など4・2億円の敷設事業分が加わっていることによるもので、実質は約2億円の黒字となることが明らかになりました。事業の内容では老朽管取り替え事業の促進をはじめ鉛管取り替えの補助事業などがすすめられており評価できます。下水会計の汚水資本費補助金等を増額し一層の事業の推進を図るよう求めておきます。また、市長総括質疑では「平成24年まで上下水道料金の値上げはしない」との市長の言明もありました。しかしわが党委員が、市民の生活実態が一層厳しくなっている状況からも水道料金の福祉減免制度の創設をつよく求めたのに対し、副市長は「生活保護制度と二重の制度は必要ない」と答弁されましたが、2年前に老齢加算が廃止され保護費が削減されたなかでの市民の苦しい生活実態を全く顧みようとしない冷たい姿勢であることを厳しく指摘しておきます。

 つづいて、報第9号の市営地下鉄の特別会計決算は認定いたします。乗客数が前年度に比べ約千人増え、事業も順調にすすめられています。乗客の安全確保の対策では車両間の転落防止策もとられました。万全なものとなるようホームの可動柵設置に全力で取り組むことを求めます。市営地下鉄事業収支については、支出を上回る収益をあげながら、膨大な建設工事費に伴う借金の返済に追われ、その累積赤字が京都市の能力を超える負担となっています。負担の軽減を図るため国に対して補助制度の一層の改善を求めるべきです。また、交通局より提出された資料から地下鉄駅構内の清掃業務の入札に談合の疑いが色濃くあることを指摘しました。京都市は徹底した調査を行い、事実関係を明らかにすること、市民に理解される公正で透明な制度となるよう努め、情報を公開するべきであることを指摘いたします。

 最後に、今決算議会においても市民の生活基盤である公営企業の重要性があらためて問われました。民営化で市民の安心と安全を守ることはできません。京都市は市民の命と暮らしを守るために公的責任をしっかりと発揮すべきです。公営企業の安定化を図るために一般会計からの必要な繰り入れを行い市民サービスの質を低下させないこと、自治体に公営企業の独立採算を押し付ける国に対し、公営企業を圧迫する消費税の引き上げを許さない立場で強く意見を述べることを求めわたくしの討論といたします。