とがし豊 議員
07年9月11日(火)
とがし豊議員の代表質問と答弁の大要 07年9月定例市会 本会議代表質問
地球温暖化防止対策について
政府に対する働きかけを
左京区から選出されました日本共産党の冨樫豊です。私は、京都市ごみ減量推進委員として環境問題に取り組んできました。ごみの有料化ではなく、分別リサイクルの徹底とともに、商品の設計・生産の段階から根本的にごみを減らそうと訴えてきました。また、若者に安定した雇用を確保する、人間らしく働くルールを確立してほしいという、若者の叫びを議会へと届けたいという強い決意を訴え、市会議員となりました。その立場から、市長に質問いたします。
まず、はじめに地球温暖化防止の取り組みです。
「環境白書」でも、温暖化による気候変動が異常高温という形で私たちの暮らしに影響をあたえ、1994年以降、熱中症患者が急増している点が指摘されています。この京都市でも、2001年に熱中症により倒れて救急車で搬送される市民が100人を突破し、今年はすでに350人を越える方が搬送されています。もちろん、地球温暖化がすべての原因とはいいませんが、政府の予測でも真夏日や猛暑日が増加すると警告されている以上、まさに目に見え始めた温暖化の脅威に立ち向かわなければなりません。そこで市長にお伺いいたします。
日本政府は、特に産業部門では、経済界の「自主行動計画」に温室効果ガス削減を丸投げしています。その結果、90年比で6%削減という国際公約を守るどころか、逆に7.8%も排出量を増やして目標達成が危ぶまれているという有様です。経済界のこの不十分な「自主行動計画」の水準を根本的に引き上げさせ、その上で、政府に経済界との間で協定を結ばせ、拘束力をもたせる必要があるのではないでしょうか。COP3開催地として、政府に真剣な働きかけをもとめるべきです。いかがでしょうか。
〈市長〉排出量取引を活用した経済的手法、国際的連携を推進するための誘導策や支援の充実など提案や要望を国に行っている。今後も議定書誕生の地の市長として国に温暖化対策の充実強化を求める。
温室効果ガス削減の特定事業者の削減計画書
政府に対して、京都議定書の目標達成を迫っていく上でも本市自身の取り組みは重要です。京都市の温室効果ガス削減目標は、2010年までに10%の削減ですが、最新の数値である2003年の到達は、削減どころか2.9%の増加となっております。目標達成の見通しは非常にきびしいといわざるをえません。
本市では、90年当時203万トンの二酸化炭素を排出していた産業部門の排出量を136万トンにまで削減するという計画をたてています。しかし、2001年に133万トンまで削減をすすめながらも、その後増加に転じて2003年には158万トンへと増加を続けています。なぜ、温室効果ガスの削減がすすまないのか。たとえば、京都市内で事業活動を行っている大規模事業所から提出されている温室効果ガス削減報告書によると、西日本電信電話株式会社は「光IPサービス化による通信設備の高密度・高発熱化、需要増により電力使用量は増加傾向」「通信サービスの性格上、省エネは困難」として、排出量を6.6%増加させています。任天堂は「常に省エネにつとめているものの、業容拡大」で二酸化炭素の排出を6.15%も増やしています。セブンイレブンは店舗を増やしたことによって7.2%も増やしています。NTTドコモは通信方法の世代交代期にともなう設備の増加を理由に8.57%増加させています。地球温暖化対策条例にもとづき大規模事業所の排出削減計画及び報告書をださせる仕組みがつくられたわけですが、平成 17年度に報告書を提出した149社のうち実に75社までが温室効果ガスの排出量を増加させています。また、24社は、平成19年度の目標として二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を増加させる計画であります。これでは、せっかくの削減計画書が増加計画書になってしまっているではありませんか。市長はこの現状をどう認識されていますか。
では、この京都でどういう取り組みが必要でしょうか。たとえば、東京都では、削減計画の策定を義務づけ公表するだけでなく、5ランクに評価した結果も公表し、ランクの低い事業者には都の職員が立ち入り調査し、計画を改善させるなどしています。京都市でもそこまで踏み込んだ取り組みを行ってはどうでしょうか。
〈地球環境政策監〉自主的な目標であり、8割の事業者は削減の計画。事業拡大で増加を見込む場合でも単位面積当たりでの削減に努め、特定事業者全体では12万トンの削減計画。17年度、特定事業者全体では横ばいであったが、年度途中の制度開始であったことや、景気の上向き傾向によるもの。削減のすすまない事業者には現地調査や面談で削減の具体策の提案や助言をする。
自転車を交通手段として位置づける
また、輸送部門では二酸化炭素の排出量が90年比で8.9%の増加となっています。このもとで自動車交通をさらに増やす京都市内高速道路の建設などはもってのほかです。今必要なことは、車中心の交通から、公共交通や自転車など環境にやさしい乗り物を中心にすえた交通体系への根本的な転換です。とりわけ、京都市中心部周辺では、自転車の違法な駐輪と強制撤去がいたちごっことなっています。自転車を収容するスペースが圧倒的に不足しているもとで、自転車撤去は根本解決になりません。たとえば、御池通りには今でも大量の自転車が駐輪されていますが、むしろ、この一部を京都市中心部へ流入する自転車を駐輪する公設駐輪場にしてはどうでしょうか。市役所の東玄関前のスペースなどを市役所がしまっている土曜日、日曜日だけでも臨時駐輪場として活用できないものでしょうか。巨額のお金を投じた駐輪場をつくらなくても工夫次第で駐輪場は確保できます。ある20代のフリーターの若者は、「経済的に220円のバス代を出すのも非常にきびしい、自転車にのって安心して中心部に出ていける環境をつくってほしい」という声を寄せられています。自転車利用者のマナー向上などに取り組むとともに、自転車利用者の流れをしっかりと踏まえた常設駐輪場と臨時駐輪場の増設をもとめますが、いかがでしょうか。
〈建設局長〉都心部の放置状況の実態調査をふまえ「都心部放置自転車等対策アクションプログラム」を策定。道路や公園などの公共空間活用も検討し、2500台分の駐輪場整備、事業者への付置義務強化や整備助成金などをすすめる。四条通の地下通路活用等放置自転車対策に努める。
真のゴミ減量策、拡大生産者責任を言明せよ
京都市では、「廃棄物の減量などによる二酸化炭素排出」を減らすとして、昨年、家庭ごみ有料化が強行されました。しかし、有料化から一年が経過した今、真剣にごみ減量を願う市民の間からは「ゴミを減らせといわれても、結局、商品と抱き合わせてゴミになるものが買わされているのが実態」「商品を選ぼうにも選びようがない」と有料化はごみ減量の抜本策にならないという批判の声が渦巻いているのを市長はご存知でしょうか。私は、この批判は、ゴミ問題の本質をとらえたもっともな主張だと考えます。京都市は、口を開けば負担の公平性といいますが、負担の公平性というのであれば、立場の弱い市民にすべてのしわ寄せを行うのではなく、ごみの大元をつくった企業の負担こそ真剣に追及すべきではないでしょうか。その点で、京都市の企業に対する取り組みは不十分だといわざるをえません。
この10月から廃プラスチック容器包装の分別収集が全市で実施されます。分別収集は資源の有効活用という観点から大切なことでありますが、より根本的にはそもそもこうした容器包装のゴミになるものをなるべく売らない、生産の段階からゴミを減らすという取り組みであります。隣国の韓国などでは、使い捨て用品を規制し、容器包装の方法や容器の材質そのものに規制をするなどし、包装廃棄物の発生を大元から減らす施策が推進されています。ごみの多くの部分をしめる容器包装ゴミを発生源から減らしていくこうした規制を国の制度として確立を求めていくとともに、本市としても京都市消費生活条例に基づく基準を強化し、小売店に限らず業界や企業に対して積極的に働きかけていくことが、 COP3開催地である京都市の責務ではないでしょうか。答弁を求めます。
〈上原副市長〉簡易包装やリターナブル容器の普及など法整備を国に要望している。全国で初めてレジ袋削減協定を結び、拡大に取り組んでいる。消費生活条例に基づき適正な包装の指導や要請を行っている。今後容器包装ごみ抑制の促進、国への要望を行う。
災害時の避難困難者、要配慮者への対応について
次に、災害時の避難困難者への支援の問題を質問します。
本市においても、花折断層など活断層を震源とする大規模地震が心配されています。消防団の一員として、防火パトロールや消火実験、避難訓練などに取り組みながら、一番の心配事が大震災への対応であります。そこでお聞きします。
京都市の防災計画の中では、大規模災害が発生した直後に、避難場所に逃げてこられた避難者の皆さんの名簿を作成し、保健福祉局のもつ名簿との照合を行って、まだ避難されていない可能性のある方を特定し「緊急安全調査」を行うことになっています。しかし、これでは、地震発生直後避難が困難になっている方、とりわけ自力で歩くのが困難な方などへの対応が後手に回る危険があるのではないでしょうか。
避難困難になる可能性のある方々をあらかじめリストアップしておき、本人の同意・要望を踏まえて、その情報を大地震発生直後に、地域自主防災組織にたいして提供する仕組みを作り上げることが必要です。京都市においては、消防署による全戸への防火訪問が取り組まれており、その中で避難困難者の把握の取り組みが行われてきました。しかし、障害者の皆さんを含めた対応という点では不十分です。消防局と保健福祉局が行政機関として連携し、災害時の支援を必要とされる方の名簿を整理し、避難困難者が放置されることのないように、各地域の防災計画や日常の取り組みの上にさらに、災害時における名簿提供の仕組みを整える必要があると考えますがいかがでしょうか。
現在、町内会を基盤として作られている自主防災会で防災計画の策定が進んでいます。しかし、近年増加しているマンション、特に中小規模のマンションや賃貸マンションなどの場合、その多くが地域の町内会と疎遠になっている実態があります。したがって、そのすべてを地域まかせにするわけにはいきません。行政として、直接、マンション住人の実態把握につとめ、防災情報の提供とともに、避難困難者への支援のあり方について対策を急いで具体化する必要があるのではないでしょうか、市長の答弁を求めます。
〈上原副市長〉国が災害時要援護者の情報収集管理のガイドラインを示している。市での要援護者名簿作成に向け、対象の特定や自主防災組織への提供のあり方について個人情報をふまえ保健福祉局と消防局が共同して検討している。マンション住民に対しては消防職員や消防団員による実態把握、防火防災指導やパンフレット配布に取り組んでいる。マンション住民も交えた防災訓練など実施している。今後も避難困難者の安全確保をすすめる。
雇用問題について
パート・派遣労働者の正社員化を企業に求めよ
次に、雇用の問題です。
京都府のパート労働者の実態調査が3月に明らかにされました。この調査で、5割を占める方が「賃金が低い」とお答えになっています。そのうち14.8%の方が「低賃金に納得できない」と答え、主な理由として「正社員と同じ仕事なのに賃金の格差が広すぎる」と回答しています。事業所へのアンケート調査の結果でもそれを裏付ける結果がでており、2割の方が正社員として働きたいと回答されています。とりわけ、20代のみなさんは「求人を開拓すること」を行政に強く要望され、アンケートの自由記入欄には、「パートの中で意欲があって正社員を希望する人には登用の機会を与えるべき。今のままずっとパートでは仕事も覚えられないし、賃金が安く結婚すらできない」「解雇の不安から、交通費や賃金、時間外賃金など交渉がしにくい」「一年契約であり更新されるか心配」こんな切実な声が寄せられています。パート労働者・派遣労働者の正社員化を企業にたいして、京都府とも協力をして強く要望していく必要があると考えますが、どうでしょうか。答弁をもとめます。
最低賃金1000円以上への引き上げを求めよ
同時にこの調査の中でも、賃上げや待遇の改善が求められています。京都の最低賃金は現在686円です。京都地方最低賃金審議会が8月に京都労働局に対して時給700円への引き上げが妥当とする答申を出しました。しかし、たとえ700円にあがったとしても、とても生活できません。毎日八時間、週5日間、働くと考えても、一年間で年収146万円にも届きません。特に独身の若者の場合にはなんの税金の控除もありません。この中から、国民健康保険料約10万円、国民年金保険料約17万円、住民税約8万などが引かれていき、手もとに残るのはわずか110万円。月に10万円にも届きません。実際にどれだけの賃金が妥当か、京都総評の試算では若者単身世帯の場合、手取りで月16万4895円は必要という計算になりました。それでも昼の外食は一日300円、友達と夜に会食をしたくとも月の予算は1万円程度、こんなぎりぎりに切り詰めた生活がやっとできる金額です。時給に換算して1141円です。「時給1000円への引き上げ」ができれば、700万人の労働者の賃金を押し上げ、2兆6千424億円の国内生産を生み出すとの試算もだされております。イギリスの最低賃金は2000年に852円だったものが、昨年の段階で1232円にも引き上げられました。フランスは1295円です。国内経済が語られるとき、個人消費の引き上げが大きな焦点となりますが、まさに、ここに直接影響をあたえる最大の景気対策でもあります。憲法25条で保障された健康で文化的な最低限の生活を営む権利を保障するためにも、そしてまた若者の自立を経済的にも実現できるようにしていくためにも、ぜひ、時給1000円以上への最低賃金引き上げを府とも連携しつつ、国に対して訴えていただきたいとおもいますが、いかがでしょうか。お答えください。
〈文化市民局長〉パート労働法が改正された。「若者サポートステーション」推進のネットワークに経済4団体の参画を得、パート労働者等の雇用環境整備を含めた情報交換を行っている。最低賃金は生計費や事業者の支払い能力を考慮し、国の審議会の目安を受けて都道府県で決定されるもの。雇用労働行政は国と府の所管だが、関係機関と連携し雇用環境改善に努める。
憲法・平和について
平和憲法遵守の表明を
最後に平和憲法についてお聞きします。
8月6日、被爆地広島の秋葉市長は、平和宣言において「時代に遅れた少数の指導者たちが、いまだに力の支配を奉ずる20世紀前半の世界観にしがみつ」いていると今なお大量の核兵器を保有する核大国を批判しました。そして、「国際法により核兵器廃絶のために誠実に努力する義務を負う日本政府は、世界に誇るべき平和憲法をあるがままに遵守し、米国の時代遅れで誤った政策にははっきりノーというべきです」と高らかに宣言されました。あらためて、平和憲法を遵守する市長の決意を明確に示していただきたいと考えますが、いかがですか。
テロ特措法延長にきっぱり反対表明を
この秋、国会ではテロ特別措置法を延長するかどうかが焦点となります。
9・11テロ事件の報復戦争として始められたアフガニスタンにおける無法な戦争は、事態をますます悪化させ、アフガニスタン南部などでは、タリバンが復活しています。それに対し、アメリカ軍などが軍事掃討作戦を展開し、民間人の死者がますます増える。そこでさらにタリバンが影響力を増すという悪循環が広がっています。しかも、海上自衛隊はこの戦争に協力するにとどまらずに、イラクやソマリアで軍事作戦をすすめているアメリカ軍を支援しているとの疑惑も指摘されています。テロをなくすには、国際的な司法と警察の力により犯人を捕捉、逮捕することが必要であり、テロの温床である貧困をなくす国際貢献こそ必要です。
日本はこんな戦争に協力すべきではありません。市長が憲法の平和理念を守るというのであれば、いまこそ、アメリカの起こしたこの無法な戦争への協力を拒否する姿勢を市民の代表としてきっぱりとしめすときです。政府にテロ特別措置法の延長中止を申し入れるべきだと考えますが、いかがですか。市長に答弁をもとめて私の質問を終わります。
〈上原副市長〉日本国憲法の平和の理念は人類共通の願い。今後も平和の理念をしっかり守り、市民とともに世界文化自由都市の実現を目指す。テロ特措法は、テロ防止と根絶のための国際社会の取り組みに積極的・主体的に寄与し、国際社会の平和と安全確保に資する目的で制定された。延長問題は国政上の重要課題、臨時国会で十分審議されるもの。