山中 渡 議員
07年2月26日(月)
山中渡議員の代表質問と答弁の大要 07年2月定例市会 本会議代表質問
市民負担増、市民生活にかかわって市長の基本認識を問う
私は日本共産党京都市会議員団を代表して、二〇〇七年度京都市予算案について市長に質問いたします。
全国の地方自治体は国の「構造改革」のもとで来年度も地方交付税が大幅に削減されるなどいっそう厳しい予算編成を余儀なくされました。本市においても巨額の財源不足が生じるなど国の政治の影響にまともにさらされた予算となっています。
今開かれている国会で安倍首相は大企業の儲けを基調にした成長政策を強調する一方、格差と貧困の問題についてまったく触れない施政方針演説を行いました。その流れのもとで憲法を変えることを公言、憲法を変えるための手続法についても成立の決意を表明しました。
さらに昨年、ワーキングプアが大きな社会問題になりましたが、非正規の社員が増えていることや働いても働いても暮らしをよくする収入をえられない実態が今も社会全体に広がっています。政府の資料でも昨年の労働者の実質賃金は前年よりも減少し、中小企業の分野でも下請け単価の引き下げや大型店出店野放しのもとで中小零細企業や商店街がさらに打撃を受ける事態が広がっています。こうしたもとで住民の暮らしを向上させるという地方自治体本来の役割をいかに果すのかが本市にも強く問われています。
そこでまず、最初に予算案と暮らし、福祉、社会保障の市民負担増の問題について市長の基本認識をいくつかお伺い致します。
今予算案には子どもの医療費支給事業の拡充、中学校三年生の三〇人学級、在宅自立支援給付費の拡充などが組み込まれましたが、市民の強い要望や運動が反映されたものであり、今後も更なる拡充の取り組みをすすめられるよう強く求めるものです。
さて予算全体です。市長は来年度予算案について三期目の最終年度であり、総仕上げ予算と位置付け、留意点の第一の柱に全国トップ水準の「行革」の断行と継続をあげています。
市長がこの間、すすめてきた全国トップ水準の「行革」とはどんな内容であったのでしょうか。国の構造改革をそのまま推進、市民の負担増と補助金削減の連続で市民のくらしや社会保障を大きく切り捨て、公共サービスの民間委託・民営化を大きくすすめた三年間ではなかったでしょうか。
二〇〇四年度は保育所など福祉施設の補助金削減、学校運営費の削減などを断行。二〇〇五年度には国民健康保険料の総額八億円の大幅値上げと算定方式の変更で低所得者の負担をふやしました。さらに敬老乗車証の有料化で六億円の負担増などをおしつけました。二〇〇六年度では、国の税制改悪のもとで住民税の大幅値上げ、連動して介護保険料の大幅値上げと国保料の連続値上げが行われました。いずれも「受益者負担の適正化」「公平性の確保」などと称して低所得者や弱者への負担のおしつけを強行したものです。年度途中からは家庭ごみ有料化も加わり、市民負担増はいっそう厳しいものになりました。市長の与党会派、自民党・公明党・民主党および無所属議員はこうした負担増にすべて賛成してきました。
〇七年度予算案ではどうでしょう。予算編成にあたって国は地方交付税などの大幅削減を強行、本市の財政をいっそう厳しい事態に追いやりました。地方財源拡充の要望を強化すると言っていますが、実際の予算案には市民負担増の「行革」が基調となっているのであります。また、貧困と格差の拡大を誰もが認める状況にもかかわらす、教育扶助制度である高校生奨学金制度を段階的に廃止することを打ち出すなど許されない内容を含んでいます。今、市民生活はどういう実態にあるのか。
昨年から日本共産党は地域ごとに市民アンケートにとり組んできました。返信されてくる用紙にはぎっしりと切実な声が書かれていました。下京区に住むある女性の方は「最近何かと生活が苦しく困っています。消費税が高いし、ごみまで有料袋に入れて捨てなければなりません.私だけのぐちかも知れませんが二か月に一回の年金から介護保険料を一万二五〇円も引かれとても困ります。」また、別の方は「日本の秩序は貧富の格差が少なかったことで保たれてきた。格差社会の是正を望みます。」と述べた上で医療の負担がふえたことに対し、「病院に行くのを控えています」と回答されていました。生活そのものがぎりぎりの状態になっていること。事態の改善を望む切実な声がびっしりと綴られていたのが大きな特徴でした。
昨年の六月、七月の住民税の大幅値上げや国民健康保険料、介護保険料の値上げに「計算間違いではないか」「値下げができないのか」と四万人の市民の皆さんが市の窓口で直接意見を伝えられました。これだけの市民が負担に耐えかねて声をあげたにもかかわらず、十月から年間総額二十億円の家庭ごみ有料化で負担の追い討ちをかけました。
この四万人という市民の直接行動は一昨年も二万六千人という市民が国民健康保険料の大幅値上げに怒りの行動を起こされましたが、昨年は怒りの規模はさらに広がりました。四万人もの市民が負担増に耐えかね、住民税、国保、介護保険料の「引き下げ」を直接訴えられたことを市長はどう受け止められましたか。
(毛利副市長) 市民の問い合わせや意見については丁寧に説明し、理解を求めた。本市は厳しい財政状況の中、65歳以上の低所得者に住民税を半額減免、障害者自立支援法施行に伴う負担軽減策など市民生活に可能な限りの配慮をしている。今後も市民に直接影響するような制度改正はあらゆる機会で丁寧に説明を尽くす。
先ほど、「病院にいくのを控えている」という方の声を紹介しましたが、事態は本当に深刻です。これまで国民健康保険料などの引き下げを求めると京都市は「適正な負担は避けて通れず、厳しい財政事情を勘案すれば、やむを得ない」と市民負担増を当然とし、引き下げを拒んできました。問題はこうしたもとで資格証明証と短期保険証の発行が年々増えつづけていることです。加えて、この二月の朝日新聞の調査によると、国保料滞納世帯に対する本市の差し押さえは一八三世帯と横浜市に次いで全国で二番目、国保加入者が本市よりはるかに多い大阪市を大きく上まわっています。
昨年の資格証明書と短期保険証の発行ですが、市長に就任された一九九六年当時と比べると、今日の資格証明書の発行世帯は実に十倍、短期保険証の発行世帯は五・五倍です。昨年三月時点で三九六七世帯に資格証明書が発行されていますが、京都府全体の八四%を京都市が占めています。資格証明書で病院にかかった市民はわずか七%です。命と健康にかかわる資格証明書の発行が増加の一途をたどっている。命と健康の危機にさらされる人が年々増えていることではありませんか。こうした資格証明書の発行世帯が増加の一途をたどっていることを市長はどのようにお考えですか。また、多くの市民が事実上、保険証がないという状態はまともではありません。発行を直ちにやめようとなぜ、お考えにならないのですか。また、滞納を理由とした差し押さえはやめるべきと考えますが、市長いかがですか。
(保健福祉局長) 本市では従来から資格証明書の機械的交付はしていない。被保険者間の公平性を確保するため、特別な理由もないのに保険料を滞納している人に、資格証明書交付、差し押さえなどの滞納処分はやむをえない。
さらに市民負担増に関って、家庭ごみ有料化の問題についてお伺いします。予算案でも年間22億円の収入見込みがされていますがすべて市民の新たな負担です。
問題は大きく二つあります。第一はすべての市民に一律の負担を強いたことによって高齢者、年金生活をされている市民の暮らしを直撃していることです。
日本共産党議員団は負担増に加え職員不祥事の解決が先と自民、公明、民主都みらいの各会派と無所属議員の方に十月の「有料化中止」の申し入れを行いましたが、決まったこととしてそのまま実施されました。負担の実態は深刻です。
昨年放映されたNHKの「ワーキングプア2」では様々な事情の下で八〇歳になっても空き缶を集めて生計をたてなくてはならない市民の方が紹介されましたが、私も地域を訪問した際に、ある高齢者の方から「住民税あがった上にさらに追い討ちをかけるもの」「数百円でも気になる生活をしているのに」の声がだされました。また、別のところでは「頼るべき収入は国民年金だけ」と毎日の食事代すら切り詰めてぎりぎりの生活をされている方にも出会いました。こうした生活をされている市民にとって、ごみ袋の三〇〇円、四五〇円の新たな出費がいかに大変かということを認識されているのでしょうか。市長お答えください。
(上原副市長) 市民の高い環境意識とごみ減量のとりくみに支えられ、家庭ごみ量は1月末までに約16%減少した。指定袋の使用率はほぼ100%と制度は定着してきた。今後ともごみ減量のとりくみをすすめ環境共生型都市・京都の実現めざす。
第四に市民には負担増を強いておきながら本当のムダにメスをいれていないという問題です。ムダを削り市民生活を本気で守る気があるなら、京都高速道路計画を見直すべきではないでしょうか。現在工事中の油小路線、新十条通で市の財政負担はどれだけになっていますか。二〇〇〇年の市長選挙であなたの陣営は、この二路線の負担は九十億円ですむ」と宣伝しました。ところが実際はどうか、今わかっているだけでもこの二路線だけで、市の持ち出し総額は六〇〇億円規模に膨れあがっています。実に六倍以上です。洛南連絡道路が国の直轄事業となるなど、予定になかった市の負担がいきなり百九十億円も増えましたが、工事の進行の中で市の負担が増え続けてきました。こうした負担増の事実を認め、市の財政を圧迫していることを市民に説明すべきではありませんか。お答えください。今予算でも九〇億円の高速道路関連費が計上されています。残る西大路、堀川、久世橋線の三路線の総事業費は二〇〇〇億円以上と試算されています。二路線に加えて未着工の三路線を続けたらどうなるか。財政破綻は明白ではありませんか。人口増や地域経済の右肩上がりを前提にした当初計画から今や社会、経済状況は大きく変わりました。見直しをするのは当然です。財政危機といって市民に負担増をおしつける一方で市内高速道路計画最優先では納得できません。全体計画を一旦凍結・撤回して、計画そのものを見直をすべきです。市長いかがですか。
(建設局長) 現在事業中の油小路線はH20年1月、新十条通はH20年5月、斜久世橋工区はH23年3月完成予定。今後とも、国・府、阪神高速道路㈱等と連携を図りながら一刻も早い完成をめざす。また、残る3路線は本市の財政状況や社会経済情勢などを検討する中で事業化にむけて推進する。
市民生活にかかわっての最後に憲法と平和問題について市長に伺います。安倍首相は「自衛隊が海外で活動をおこなうことをためらいません」と集団的自衛権の方向を公然としめし、任期中に憲法を変えることを公言しました。さらに五月三日を期日に憲法を変えるための手続法である国民投票法を成立させることを打ち出しています。アメリカのマスコミ取材に対し「憲法九条は時代にそぐわないもの」と述べ、イラク戦争支持は正しかったとも強弁しています。憲法を変えるねらいがはっきりしたもとで、憲法を守り、市民の安全を守る本市の最高責任者としての市長がどういう態度をとるのかが問われます。これまで市長は憲法改定問題について聞かれると「憲法改正の議論は国民全体で深められるべき。」と応えておられますがいます今やこういう事態でないことははっきりしているのではないでしょうか。また、これまで自民党、公明党、民主党は手続法と憲法改定とは別のものとしてきましたが、安倍首相は、憲法を変える手続法成立の期日を示し、また任期中に憲法を変えたいと公言したことで、手続き法と改憲が一体であることは今や明白です。そこで市長に伺います。二〇〇四年十月の京都新聞に本市の名誉市民に内定された瀬戸内寂聴さんが、「憲法九条がなくなりそう」と質問した少年に対して、「まだ日本の憲法は生きています。九条は生きています。でもあなたの不安は正しいのです。今、日本の政治の方向は、今の戦争放棄の憲法をすて、戦争のできる憲法に変えようとしています。」と応えられた記事が掲載されています。瀬戸内寂聴さんのこうした発言について市長はどう思われますか。ご意見をお聞かせください。
(上原副市長) 瀬戸内寂聴氏の発言は平和を希求するご自身のお考えを率直に述べられたもの。憲法改正問題は今後ひきつづき広く国民全体で議論が進められるべきもの。本市は今後とも平和の理念をしっかり守り、世界文化自由都市の実現をめざす。
職員の犯罪・不祥事、同和問題について
次に職員の犯罪不祥事問題と同和特別扱い問題です。
今月、また職員の懲戒免職処分が行われました。昨年来明らかになった職員の犯罪・不祥事についてその多さとその内容のひどさに市民は驚きました。京都市に対する強い不信感が広がるとともに根絶を求める声が沸き起こりました。犯罪・不祥事の背景と真相を明らかにしないまま幕を引くことは絶対に許されません。
現在も「市民の信頼回復と服務規律に関する調査特別委員会」は継続されています。十三日の調査特別委員会では公金着服と市立保育所給食の食材購入の不正という四人の職員の新たな犯罪・不祥事の報告がありました。また、昨年、市民ウォチャー京都の代表が職員・市民の告発一一〇番の活動に取り組み、六〇件余の告発があったとして具体的事例を示して市長に調査と報告を求める申し入れをされています。職員からの通報もあったとされています。本市の公益通報制度でも二七件の通報があったように犯罪・不祥事はまったく収まっていません。市長は職員の意識改革が大きくすすんだ。また、昨年には年度内の終息宣言ができるように取り組むとも公言されました。しかし、実態はどうか市民ウォッチャーなどに通報せざるをえない職場実態が今も存在する。新たな懲戒免職が発生するなどとても終息などといえる事態ではありません。市長いかがですか。今も収まらない職員の犯罪・不祥事に市民は大変な苛立ちを感じています。隠蔽体質との市民の批判も根強くあります。すでに膿は出し切ったとでもお考えでしょうか。合わせてお答えください。
(桝本市長) 「大綱」の58の改革策すべてを着実に遂行するなどこの間のとりくみで不祥事を抑止する仕組みは着実に構築されつつあり、職員にも公務員としての自覚が醸成されてきている。しかし、現時点では不祥事続発の要因となってきた膿のすべてを出し切ったと言える状態にはない。
この問題の第二は部落解放同盟との特別の関係についてです。
昨年九月議会で「運動団体との関係で新たに問題を生み出すような不正常な状況は、現在一切ない」という市の答弁がありました。ところが十一月議会で党議員が東山区の公の施設であるコミュニテイセンターが事実上の「東三条部落解放センター」扱いにされていたことや交通局職員を関連行事に動員していたことを具体的に指摘するとはじめて「個々の問題として、一部現場に残っていたのも事実。」と認めるに至りました。常任委員会の集中審議や、調査特別委員会でもこうした場面がたびたびありました。
また、同和特別扱いとの指摘にも「特定の個人・団体の特別扱いを容認する習慣・組織風土があれば、この際一掃するよう強い指示を市長が出した」と京都市トップはやっているとばかりの答弁がされていますが、事態が大きくなるまでは「解同」の大会に幹部職員を出席させ、年頭には市のトップ勢ぞろいで表敬訪問を受けていました。こうした市長の特別扱いが現場でまともに注意できない実態を作り出してきたのではありませんか。市長は犯罪不祥事関連して同和選考採用に問題があったとされましたが、覚せい剤事件など犯罪・不祥事のほとんどが市長在任の十一年間に集中しています。本当に市民の信頼を得ようとするなら市長と「解同」の長年の関係についてどういう問題があったのか、明らかにすべきではありませんか。また、部落解放基本法制定実行委員会に代わるものしてつくられ、「解同」の方針に沿う部落解放・人権政策確立要求京都市実行委員会に京都市の幹部が出席し挨拶するなど従来と変わらない関係も続いています。なぜ断ち切らないのですか。市長お答えください。
(文化市民局長) H8年に交渉を全廃。カンパ、職免、優先雇用、補助金等を順次廃止するなど関係見直しをすすめてきた。現時点では特別な関係はない。「部落解放・人権政策確立要求京都市実行委員会」は経済、社会福祉、市民団体など51団体から構成され、あらゆる人権問題解決めざして取り組んでいる団体。
第三は、同和特別扱いを含む予算案であるという問題です。今予算案には貸与した奨学金とその返済を免除する自立促進援助金が合わせて四億四千万円計上されています。同和奨学金問題の裁判の過程で受給者の世帯の年収が七〇〇万円以上の世帯が二〇〇一年で四八・八%。二〇〇二年で五一%あったことが明らかになっています。財政危機を強調し市民には低所得であっても負担を強いる一方でこうした特別扱いを公然と残すことは市民にとって絶対に納得できないことです。自立促進援助金の仕組みを続けるなら今後も総額で四〇億円をこえる税金の予算計上をつづけることになります。市民の信頼回復を言うのならこういう特別扱いの仕組みを直ちに廃止し、予算案からも削除すべきです。市長の見解を求めます。
(文化市民局長) 自立促進援助金はH16年に見直した要綱にもとづき基準を満たさない者からは奨学金の返還を受けており、今後とも適正、厳格に運用していく。
京都市の景観政策、まちづくりについて
次に京都のまちづくりと景観対策についてお伺いいたします。
京都市のまちづくりと景観対策は重要な局面を迎えています。十四の世界遺産を抱え、世界に誇る歴史都市京都において、これらを構成するまち並や景観の保全と再生は京都市にとって特段の努力を求められる課題です。
一九八〇年代後半のバブル期以降、国の民間活力路線のもとで京都のまちこわしが大きくすすみました。こうした現状について、日本建築学会が二度にわたって京都の都市景観の再生の提言をおこなったのをはじめ、京都弁護士会やまちづくりに関する様々な住民運動団体が京都の景観破壊を告発し、再生のための提言を行ってきました。日本共産党京都市会議員団も一九九一年に「市民の暮らしが息づく歴史都市京都の町並と景観、緑と自然を守るために」を発表。また、同年、「安心してすみつづけられるために」とした住宅政策を発表。京都の景観保全とそのための国の特別立法の制定、住民参加のまちづくりの提言を行ってきました。
京都の良さが大きく失われたもとで、高さ規制など景観対策の取り組みは急務と考えます。同時に新景観政策はいくつかの問題点も内包しています。
その第一はこれまでの高さ規制緩和とまちこわしについての反省がない問題です。もともと本市では全市に高さ制限がありました。ところが一九八〇年代後半のバブル期以降、国の民間活力路線に沿って総合設計制度の導入で六〇メートルの当時の京都ホテルを出現させ、その後も六〇メートルの京都駅ビルを認めるなど市が率先して高さ規制を破ってきました。その後も、伏見区の高度集積地域では高さ制限を全部取り払うなど京都のまちと景観破壊の推進役になってきた歴史があります。
こうした流れのもとでマンションの高層化も大きくすすみました。住民運動団体が田の字型の地域を調査された資料では一九九九年以前は十二階建て以上の共同住宅はゼロであったのが二〇〇〇年以降に建設中のものを含めると四一棟にもなったことが報告されています。
市長就任の間に都心の高層化が大きくすすんだことになります。市の景観政策には京都市が率先して高さ制限を破りまちこわしと景観破壊をすすめて来たこと。また、市長が就任した後も都心部において高層化が大きくすすんだことの反省の記述が一言もありません。まちこわしをすすめてきた原因をはっきりさせてこそ景観政策が今後に生きると考えますが市長いかがですか。
(毛利副市長) 本市は他都市とは異なる独自の工夫をこらし、活力と景観保全の調和に腐心してきた。しかし、開発圧力を受け止める南部地域の整備が計画通り進まず、都心部への集中を招いた原因の一つ。市長先頭に景観保全にとりくんできたが、忍び寄る破壊を食い止めるには至らなかった。
第二は、景観政策の市民への周知徹底と住民参加の問題です。詳細な計画を決めるには住民参加や専門家の提案を受け入れる手続きが必要です。景観政策の周知徹底や具体的な計画詳細について住民参加を保障したうえですすめることは不可欠です。職住一体のまちという他都市にない特性をもつ京都にとっていっそう重要です。地域住民や専門化集団の様々な知恵をつくすことが必要と考えます。
京都市が示した景観政策について、素案が発表された直後から様々な意見がだされました。「景観対策は遅きに失した」という意見をはじめ、「デザイン基準など詳細な内容について行政が決め、押し付けることは問題」「市民や専門家の意見を反映させるべき」との意見です。条件によっては町家の中庭にまったく光が入らない。路地の奥では日照が大きく奪われるケースも考えられます。こうした問題を解決するには景観政策の周知と住民参加の手続きを確立することが必要です。また、地区ごとの詳細な計画については住民の提案をはじめ、まちづくり団体の提案や意見を受け入れる仕組みをつくり、一旦決めた計画であっても住民にとって改善が必要な場合は計画変更の手続きとることなどを明確にすべきと考えますが市長いかがですか。
(毛利副市長) ホームページ、市民しんぶん、各区役所での説明会など市民への周知に努めてきた。パブリックコメント等の意見を踏まえ原案に柔軟な修正をおこない、「進化するデザイン基準」の性格を与えた。見直しが行えるよう「検討条項」も盛り込んだ。
第三は、景観政策によって既存不適格となる建物や住宅の対策です。現在、マンションにお住まいの方からは住み続けることなどの心配の声が出されています。そうした市民の声の応える対策が必要です。
京都市は築三〇年以上の分譲マンションの実態調査をおこないましたが、建て替え資金の準備されているマンションがないことや、賃貸化率が七〇%となっている分譲マンションがあるなど、建て替えには大きな問題があり、合意形成にも相当なエネルギーを要することが明らかになりました。管理組合の皆さんの声をお聞きしましたが、耐震補強対策が問題になっているところ、バリアフリー対策が当面の重点になるところ、大規模リフォームが課題となっているところなど、マンションよって必要な対応は異なっていました。いずれも大きな問題であり、住民の力だけで解決することは困難です。建て替え問題も課題ですが、それとともにマンション住民の方が住み続けられるための耐震対策やバリアフリー、大規模リフォームなどマンションの長寿命化ための情報提供やアドバイスなどの支援策が必要と考えます。そうした対策をどのようにすすめるのか。市長の見解をお示しください。
(毛利副市長) 予算案にも、円滑な建て替えをはかる上で必要な専門家の派遣や工事費への低利融資制度の創設を盛り込んだ。分譲マンションが、景観の向上に寄与しつつ良好なストックとなるよう支援する。
京都の地域経済対策について
最後に地域経済対策についてお伺いいたします。
貧困と格差拡大は地域経済の分野でも深刻な事態となっています。とりわけ中小零細業や商店街の多くは切捨ての影響にまともにさらされています。地域経済再生においてもまちづくりのおいても中小零細企業や商店街支援を強化することがどうしても必要です。
ここでは中小小売店、商店街と大型店対策について質問します。市内中心部の大型店出店計画が次々と実行に移されようとしています。京都駅周辺では東京の大型家電量販店二店が進出を決定、京都駅南側では京都市で最大規模の大型店が出店準備をしています。そうしたもとで中小零細商店、商店街はいっそう重大な危機にさらされています。ある商店では、後継ぎとして商店経営を引き継いだ息子さんがそれだけでは生計が維持できず、高齢の母親を店に残し働きに出る、また別の店では、午前は営業準備、午後は別のアルバイトを続け、また店にもどるという繰り返し、まさに身を切られるような生活をされています。
京都市の資料によっても小規模の小売店が厳しい実態が裏付けられています。小規模の小売業商の年間商品販売額は一九九一年から二〇〇二年の十二年間で一二〇〇億円減少しています。一方売り場面積は二割増加となっているなど、大型店やスーパーの占有率が年々高まっています。また、売り場面積が増えても雇用は見合って増えないなど大型店拡大一途のまちづくりは雇用も深刻にしています。さらに規模小売店の減少に比例して卸売業の商店数、年間販売額も年々減少するなど卸売業の分野でも深刻な影響が広がっています。国は大型店の進出が中心市街地を大きく疲弊させたとして郊外型を規制する方針に転換しました。しかし市街地は引き続き出店自由です。こうした仕組みが本市でも小規模小売店と商店街をますます厳しい状態に追いやっています。商業集積ガイドプランとまちづくり条例がまともに機能していません。
京都市はこの間、がんばる商店街の応援を方針としてきましたが、これでは市場原理で生き残ったところだけの支援策です。大型店出店自由をそのままにしていおいて、がんばる商店街といってもその対象は限られます。商店街のいたるところで見受けられるシャッターがおりたまま、街頭の灯が消えたままの現状を商店主の努力が足りないかのような扱いですますおつもりですか。地域の様々なボランティア団体や様々な伝統行事や年間行事の下支えを中小零細業者の方が担われてきました。地域経済の疲弊のもとでこういう人材すら大きく失われているのが現状です。こうした事態を市長はどのような認識をされていますか。市街地においても大型店を規制するルールが必要です。まちづくり条例の撤回し、商業集積ガイドプランを見直すべきと考えますが見解をお示しください。
以上で私の第一質問を終わります。
(桝本市長) 地域の商店街はまちづくりの中心的役割を担っているが、多様な業態の増加等で苦戦を強いられている。「地域商業ビジョン」策定をすすめてきたが、H19年度からは新たに「元気店舗創出プロジェクト」を実施し、地域商業の活性化、機能充実をはかる。「まちづくり条例」と「商業集積ガイドプラン」はひきつづき運用していく。
第二質問
資格証明書の発行問題です。差し押さえや資格証明書の発行が滞納世帯の解決につながっているでしょうか。滞納世帯も資格証明書の発行世帯も増えつづけています。いっそう深刻になっているのではないでしょうか。
負担の公平性からやむを得ないとしていますが、ことは命と健康にかかわる問題です。払いたくても払えない世帯に資格証明書を渡すことは、命や健康と引き換えに毎日の生活をせよとの通告です。資格書証明書の発行はやめるべきです。
犯罪不祥事です。今年の懲戒免職処分者の中に、市職員として過去に免職処分をうけ、その後、経歴を偽り再雇用されていた人物がいます。
なぜ、こんなことが今のいままで、まかり通っているのか。市民の一番の疑問はここにあります。膿を出しきったとは認識していないとの答弁があった。そうであるならば、①肝心の同和選考採用問題の全容など大事な問題を公開しない、②事件が発覚すれば職員個別の問題にする、こうした問題を改めるよう強く求め、予算委員会で引き続き審議することを申し上げ質問を終わります。