井上けんじ 議員
06年12月15日(金)
後期高齢者医療広域連合の設置に関する議案に対する反対討論 06年11月定例市会 閉会本会議討論
私は、今議会に提案されております議第180号「京都府後期高齢者医療広域連合規約の設定、及び、同広域連合の設置の協議について」に対し、日本共産党市会議員団を代表して、反対の立場から討論します。
今年6月の一連の医療「改革」関連法の一環として、「高齢者の医療の確保に関する法律」がつくられました。本議案は、この法律に基づいて、75歳以上の高齢者だけを対象とする新たな医療保険をつくり、都道府県単位の広域連合をつくって再来年春からその運営にあたろうという、国の方針がそのまま具体化されているものであります。
反対の理由は、第一に、そもそも高齢者医療保険をつくるのは、政府が医療給付費のいっそうの抑制を目的にしているからであります。従来の老人保健法で謳われていた「健康の保持」が削除され、新たに「医療費の適正化、国民共同連帯の理念」が追加されました。医療給付費が増えれば保険料も値上げになるしくみとなっており、現行の職域保険の被扶養者もこの保険に移されて保険料を払わなければなりません。すでに先行して実施されつつありますが一部負担金の値上げも含め、高齢者へのいっそうの負担増が押し付けられることになります。年金月額15,000円以上の高齢者からは保険料が天引きされ、納付相談の機会が事実上奪われてしまいます。更に普通徴収の滞納に対しては資格証明書の発行すら予定されています。加えて、診療報酬も別立てにすると言われておりますから、徹底的な高齢者いじめというほかありません。賛成できないのは当然ではありませんか。
第二に、広域連合の発足によって、市民の身近にあって健康を守るべき地方自治体が住民から遠のき、議会の関与も薄くなることや、国保のような一般会計繰り入れ財源の裏付けがないなど、自治体の責任も役割もあいまいにされていく恐れが多分にあるからであります。運営協議会の設置をはじめ住民の声を反映させる制度的保障等についても何も触れられていません。法律でも規約案でも保険者が誰であるかが明記されず、広域連合が事務を処理すると書かれているだけで、高齢者の医療と健康を守る責任が誰にあるのか、はなはだ不明確であります。結局は、健康の自己責任、国民共同の連帯で、という方向だけが強調されていくばかりではありませんか。
また関連して、今回の広域連合の発足は、今後、国民健康保険全体の都府県単位での運営、さらには職域健康保険との統合、一元化への第一歩として位置付けられています。しかしこの動きの根本は、ひとつには財界が職域保険への事業主負担分、ひいては職域保険者から高齢者保険への拠出を減らしたい、二つには、政府が政府管掌健康保険から撤退したいなどの動機から生まれており、結局は京都市も含め地方自治体と労働者を含む国民全体、被保険者へのしわ寄せの方向に他なりません。
最後に、本議案は政府の方針をそのまま無批判的に横滑りさせただけの提案になっています。国民の健康に責任を持つべき政府がどんどんその責任を後退させ、一方で口ばかり挟んでくる現状のもとで、地方自治体も多くの制約を受け、運営が大変なのも事実であります。しかし、だからといって何でも国のいう通りでは地方自治体の存在意義が問われるではありませんか。市民の健康と医療を守るため、市長も、もっと政府に声を挙げ、自治体として可能な努力を追求されますよう強く求め、また私どもも、その立場で引き続き頑張る決意も申し上げて、討論とします。