赤阪 仁 議員
06年10月 6日(金)
2005年度公営企業等決算に対する討論 06年9月定例市会 閉会本会議討論
日本共産党議員団は報第10号京都市自動車運送事業特別会計決算については「認定せず」、他の決算議案7件については「認定する」との態度を表明しています。私は議員団を代表してその理由と、その他の議案についていくつかの問題点を指摘するものであります。
最初に、報第10号の京都市自動車運送事業特別会計決算を認定しない理由をのべます。
その第一の理由は、3年連続、黒字となった背景に、市バスの民営化をすすめる、職員のリストラ・人件費削減があり、不安定雇用の労働者を増加させ、乗客の安全を脅かす事態を広げているからです。京都市は、市バス車両の半分まで管理の受委託を前倒しですすめ、民間バス会社間の受託競争を激化させ、同じ市バス運転手であるにもかかわらず大きな賃金格差を生じさせており、運転手の一日13時間に及ぶ長時間拘束が続く中での、極度の精神的疲労によって、バス事故が増える傾向を示しています。
「経営健全化」という名で、市バスの民間委託が進み、低賃金と劣悪な労働条件ではたらく民間労働者が、始発バスの乗車に間に合わせるために、自宅にも帰らず自家用車内で睡眠をとったり、たとえ自宅に戻っても四~五時間しか睡眠時間が取れない深刻な実態が明らかになりました。桝本市長は「びっくりした、至急改善を指示した」と回答されたほどでした。市民の命を運ぶ市バスの安全確保がおろそかになる実態を見過ごすことはできません。あらためて公営交通の役割を後退させる、市バスの民営化を促進する「管理の受委託」に強く反対するものです。
当面、市の直営、民間への委託バスを問わず、京都市の責任で、同じ市バスの安全運行をはかるために、労働者の勤務管理と労働条件の改善、労働安全衛生の推進をはかることを求めます。
第二の理由は、営業収益を増やすためには、市バスの乗客を増やし、本来の営業実績での改善・努力が必要ですが、決算は不十分であることを示しているからです。 前年度比、市バス乗客数が年間266万人以上減少し、旅客収入は前年度比2億8千9百万円も減少しています。マスコミでも「敬老乗車証有料化の影響で利用客が減少し、営業収益が減る」と報道されています。全庁上げて市バスの乗客増に努力すべきときに、市民の反対を押し切って敬老乗車証の有料化を導入し、営業収益の足を引っ張った桝本市長の責任は重大です。
財政収入から見ても、敬老乗車証、福祉乗車証の保健福祉局からの繰り入れ金は約40億円、市バス総収入の20%を占める、交通局の重要な財源です。高齢化する市民の足を守り、社会参加と交通権の保障のためにも、市バスの利便性を高め、地域のコミュニティバスの運行をはかるなど乗客を増やす対策を充実すべきことを指摘しておきます。
委員会審議で、市バス営業所の運行管理者が勤務時間内に自家用車で買い物に出かける途中、自損事故を起こし負傷していたことを組織的に隠ぺいしていた事実が明らかになりました。管理者は、早急に市民の命を運ぶ安全、安心な市バスの運行を図る、公平・公正な職場規律を確立することを求めます。
続いて、その他の議案について意見を申し上げます。
報第11号の市営地下鉄の特別会計決算は、認定します。通学定期券の値上げを押さえ、六地蔵駅までの年度途中の延伸実現で、前年度比一日4千人の旅客を増加させるなどのとりくみは評価できます。地下鉄東西線の六地蔵駅、天神川駅までの延伸事業の事業費の縮小努力もされております。しかし今年、初乗り運賃を引き上げ、市民負担を増やしたことは問題であることを厳しく指摘しておきます。
膨大な地下鉄決算の赤字原因は、国の補助制度が劣悪なためであり、地下鉄建設を保障する補助金制度を国に強く求めることを要望します。引き続き、天神川駅以西への延伸計画は、LRTを含めて具体化をはかるよう求めます。
報第7号の病院事業特別会計決算は、京都市と京北町合併後初めての京北病院と市立病院の決算でした。国の医療制度改悪の影響は大でありますが、病院の公的役割の確保について真剣な努力をする旨の答弁もされており、認定いたします。
しかし市立病院も、京北病院も、外来患者数は減少しています。医師と看護師の人員不足による長時間労働の深刻な事態が慢性化し、市民のいのちと安全をどのように守るのかが問われています。どちらの病院も、常勤の医師と看護師確保は喫緊の課題であり、特に京北病院は、整形外科の常勤医師が不在のため、地域の拠点病院で、救急病院でありながら、手術もできないほど病院機能が果たせていません。京北病院長は委員会で「京北病院は京北住民にとって、なくてはならない病院で、このままでは危うい。」と切々と語られましたが、全庁上げての支援の取り組みを求めます。計画より2年遅れるという市立病院の北館整備計画は、具体化を早急に行うとともに、企業の採算ベースを前提にすすめるPFI方式の建設手法は見直すことを求めます。
報第8乃至9号の上下水道の特別会計決算は、5年連続の黒字決算であり、いのちの水を守る努力がなされる一方、集中豪雨による内水型氾濫を防止する排水管理の努力がなされています。特に、命の水を供給する鉛製の水道管取替え事業が計画的に取り組まれ、私有地内の鉛管取替え補助制度の新設も予定されており評価できます。一日も早い実施と拡充を求めるものです。
しかし、上下水道料金の両方とも福祉減免制度を実施していないのは、政令市では、札幌市と私たちの京都市だけです。当局は、実態にあわせて給水停止措置をとっていると言いますが、いのちの水を守るべき担当局であり、市民の福祉向上を第一の目的とする公営企業の立場からも、直ちに福祉減免制度の具体化をはかるよう求めます。
上下水道局審議では、所属長が職場規律の乱れを隠蔽するために、特定の職員の出勤簿を改ざん、つまり公文書を偽造していた実態が明らかになりました。また、部落解放同盟の役員で同和団体補助金不正受給者であった職員に対して、管理者の処分も軽く、さらに昇進までさせている事実も発覚しました。管理者は特定団体・職員への特別扱いを直ちにやめるべきです。厳しく指摘しておきます。
市長は、業務の民間委託化が職員不祥事根絶の対策になるかのように「大綱」で発表しました。しかし、民間業者への業務委託がすすむ現場では「競争入札」を原則としながら、病院の清掃業務でも5年間同じ民間警備会社が請負っており、100%に近い落札率であることが判明しました。また、交通局の清掃業務の民間委託入札状況を見ると、14社中4社も100%の落札率であり、落札した民間業者が長年同じ業務を請け負っている事実が判明しました。上下水道局の民間業者への業務委託も100%に近い高落札率で特定の業者によって、業務の山分けを長年行われていた事実は、談合の疑惑があると言われても仕方がないことではありませんか。民間委託の経済性・効率性を言いながら、市民の税金が無駄遣いされることは許されません。「透明性、競争性、客観性、公平・公正」の入札制度への改革を早急に取り組むことを強く求めるものです。
最後に、公営企業の経営をこれほど困難にしているのは、国の独立採算制のおしつけにあります。わが党は一貫してその撤廃を求めてきました。更に、一般会計からの必要な繰入をしっかり確保し、公営企業の目的である、市民の福祉向上に全力をあげることを求め討論を終わります。