井上けんじ 議員
06年5月30日(火)
医療制度改革案撤回を求める意見書討論 06年5月定例市会 閉会本会議討論
医療制度改革関連法案成立を求める自・公の意見書には反対
日本共産党は、現在、国会で審議中の「医療制度改革関連法案」の撤回を求めておりますので、同法案を取り下げるべきとする民主・都みらい提案の意見書案には賛成、一方、この法案の成立を求める趣旨の自民党・公明党提出の案には反対との態度を明らかにしています。したがって、この立場から、党議員団を代表して討論をおこないます。
国民皆保険制度を覆すもの
今回の法案は、後期高齢者医療制度の創設、老人の窓口負担の値上げ、長期入院患者の食費等自己負担、療養病床の削減など、様々な問題点をもつものであります。
なかでも最大の問題といわれているのは、「保険外併用療養費」の新設など、混合診療即ち自由診療と保険診療との組み合わせ、別の表現でいえば保険外部分のいっそうの拡大に道をひらくことであります。これはお金のあるなしによって、受けられる医療に差別を持ち込もうとするもので、「皆保険制度維持のための改革」などと言いながら、こんな動きはもはや保険でも何でもなく、すでに保険は崩壊しつつあるといっても過言ではありません。この混合診療はとにかく保険証一枚あればいつでもどこでも必要な医療にかかれるという、1960年の皆保険発足以来、日本の医療制度が守ってきた医療保障のしくみを根底から脅かし覆そうとするもので、あれこれの値上げや改悪、勿論それらのひとつひとつ自体もそれぞれが大問題ですが、これらにとどまらない、質的な大改悪ともいうべきものです。
さらに今回の医療「改革」案では、市町村国保や政府管掌健康保険、高齢者医療制度など、都道府県単位への保険者の再編、更に保険者による健診の義務化なども合わせて提案されていますが、これらはいずれも政府や事業主の負担を減らそうとの動機から出発しているもので、結局は、被保険者と患者、自治体に負担を押し付けようとするものに他なりません。また、健診の保険者の義務化による公衆衛生や老人保健の後退は、窓口負担の値上げによる受診抑制とともに、早期発見・早期治療や予防充実にも逆行するものであります。
現在、老人は資格証明書の発行が除外されていますが、高齢者医療では、老人にも資格証明書が発行できることになっています。現在の市の国保でいえば滞納世帯18.7%、階層によっては所得の14%以上、介護保険料を合わせると18%以上をも占める保険料で、これでは払いたくても払えない、どうしても滞納がちになる、じゃあ保険証を取り上げる、資格証明書だと、老人に対してもこんなことになるのでしょうか。また、国保も含め、65歳以上の老人からは、保険料を年金から天引きしようという方向も打ち出されています。現在は、払うのが困難な世帯への納付相談が行われていますが、天引きで否応なしに保険料がもっていかれたのでは、相談も何もあったものではありません。
老人が病気がちなのは本人の責任ではありません。だからこそ歴史的に老人は無料化、定額負担、一割負担と、改悪され続けてきたとはいえ、独自の軽減措置がとられてきたのではありませんか。それを2割・3割もの負担を求めるなどというのは、この老人の特性を全く無視するものです。また長期入院患者の大幅負担増や病院や施設からの追い出しの動きは、すでに診療報酬の値下げによって先行的に具体化されています。今でも私たちのもとにも病院から退院を迫られているご家庭からの相談が相次いでいるのに、このご苦労がますます深刻になること、医療難民・介護難民と言われる老人が増えていくことは火を見るより明らかではありませんか。
少子高齢化社会論や低成長論は、社会保障に対する政府や大企業の負担割合が減らされ続けていることや、「改革案」のルーツがアメリカや日本の財界の要求にあることなどから目をそらせ、国と大企業の財政負担を免罪するものです。小泉首相も、国民に愛国心を押しつけたりしないで、せめてご自身がもっとアメリカにもものを言い、国民を愛する気持ちを持ってもらいたいものであります。世界に冠たる日本の経済力をもってすれば、国民と地方自治体に負担を押し付けなくても、医療制度の充実改善は充分に可能です。
自民・公明案は、「政府案の成立を期す」と直接表現していませんが、今、国民から医療が奪われようとする大改悪が国会で問題になり、この成立を許すのかどうかが最大の焦点になっている時に、制度の詳細を明らかにせよとか、結局高い保険料と低い給付に合わせることになる制度の一本化を求めるなどというのは、大改悪の成立を後押ししようとするものに他なりません。こんな提案には反対して当然ではありませんか。
以上、理由を申し述べ、民主・都みらい案に賛成、自民党・公明党案に反対の討論とします。