せのお直樹 議員
06年2月23日(木)
せのお直樹議員の代表質疑の大要と答弁 06年2月定例市会 本会議代表質問
「構造改革」に反対し、市民への負担の押しつけをやめよ
西京区選出の妹尾直樹です。私は日本共産党京都市会議員団を代表して2006年度予算案について質問いたします。
最初に予算案に対する市長の基本姿勢についてうかがいます。
小泉「構造改革」の一環である「官から民へ」「小さな政府」の掛け声で進められた規制緩和万能路線の害悪がいま次々に明らかになっています。
マンション建設の耐震強度偽装事件は国民に大きな衝撃を与えました。この事件の根本は1998年の建築基準法改悪で、建築確認を「官から民へ」といって民間検査機関に「丸投げ」できるようにした規制緩和にあります。わが党は法改悪の際、「民間任せでは検査の公正・中立性の確保は困難になる」「安かろう悪かろうという検査になる」と警告し、法改悪に厳しく反対しましたが、この警告は現実のものとなりました。法改悪に賛成した自民、公明、民主党などの責任は重大です。
京都市でも、「建築確認審査」が民間まかせとなり、行政のチェック体制が不十分になっています。法改定までは100%行政の審査で実施していたものが、5年後の2004年度には8,012件のうち228件、2.8%にまで減少しました。建築確認を行う職員数は33名から17名まで減っています。民間機関が建築確認したのちに条例違反がわかった「下鴨セレマ」の件では、葬儀場建設反対の住民運動がおこったため、市が再調査して条例違反が判明しましたが、運動がなければそのままになっていたでしょう。まさに規制緩和万能路線の弊害です。東横インの違反改築事件は、あらためて行政によるチェック体制の充実が必要であることを示しました。
ライブドア事件もその根本にあるのは規制緩和万能路線です。株式交換、株式分割、投資事業組合という三つの手法を組み合わせて「錬金術」を行うというものであり、株式交換は99年の商法改正で導入され、株式分割は2001年施行の改正商法で自由勝手にできるようになったものです。
規制緩和万能路線は格差社会と貧困の広がりをすすめています。生活保護世帯は1997年と比較して全国で60万から100万世帯に増えました。教育扶助・就学援助を受けている児童・生徒は6・6%から12・8%になっています。貯蓄ゼロの世帯は10%から23・8%に、どれも激増しています。京都市においても、この5年間で生活保護世帯は18,700世帯から24,300世帯に増え、就学援助を受けている児童・生徒数は5,000人増えて全体の2割近くになっています。市民生活はますます厳しさを増しています。
大企業・財界は正社員を減らし、派遣・パートなど非正社員への置き換えをすすめ、労働者の三人に一人、若者の二人に一人は不安定雇用のもとにおかれています。その8割は月収20万円未満という極端な低賃金です。格差社会と貧困の広がりの根本に派遣労働の自由化など小泉政権のすすめた規制緩和万能路線があります。
市長は今の市民の厳しい暮らしの実態をどのように認識されていますか。小泉政権のすすめる「構造改革路線」とその一環である「規制緩和万能路線」をどのように評価されていますか。お答え下さい。
〈市長〉わが国の経済は長い停滞から脱しつつあり、京都の景気動向も明るい兆しが見えてきた。乗合バス事業など規制緩和はすべての分野に効果を発揮するものではないが、わが国の発展には構造改革と規制緩和が必要。その際は、公民の役割分担を十分吟味し、セーフティネットにもきめ細かく配慮しながら進めていくことが重要。
市による市民への負担の押しつけはやめるべき
地方自治体の責務は「住民の福祉の増進を図る」ことです。来年度予算案が京都市が本来の役割を発揮し、市民の暮らしを守る内容になっているのか。その点が大きく問われています。
17年度の予算では、保育料の値上げ、敬老乗車証の有料化、公共施設の使用料など31項目で総額14億円、国民健康保険料で8億円、障害者医療の有料化で2億円などの市民負担増が強行され、市営葬儀の廃止等、56億円もの市民サービスがカットされました。保育料では国基準を超える負担の世帯も出ました。国保料が2倍3倍に跳ね上がったと、通知を持った市民ら26,000人が区役所に殺到しました。敬老乗車証の有料化によって、交付率は有料化する前の年の71%から58%にまで落ち込みました。前年比で2万5千人以上のお年寄りが敬老乗車証を諦めたことは重大です。小児慢性特定疾患無料制度廃止では、一ヶ月以上入院の対象者は市の現行制度を継続するとされましたが、市の予想を大幅に下回わり、助成利用はたった7件となりました。助成を受けられなくなった喘息の子どもさんの重症化が心配されます。学校運営費の削減で授業になくてはならない実習教材費を半分に減らさざるをえなくなった学校も生じています。市民、関係者の反対の声に冷たく背を向けて強行された市民サービスの切捨てによる影響は、私たちが指摘したとおりになっています。これらの実態を見れば、これ以上の市民負担増や市民サービスのカットが許されるものでないことは明らかです。
ところが来年度予算案では、一般家庭ごみの有料化半年分で10億円、学童保育所の利用料の値上げで5,600万円、芸術大学の授業料値上げで1,500万円の市民負担増をはじめ、民間保育所等維持補修費の前年比3,500万円の削減、障害者自立支援法施行にともない本市独自の事業予算を削減するなど、市民負担増と市民サービスのカットが目白押しです。京都会館をはじめとする各種の施設の利用料は今年度値上げされましたが、値上げ分は施設改善に使うと説明していたのに多くの施設で運営費がカットされており、市民を騙すものです。事務事業の見直しでサービスカットも含め、43億円も縮小されています。
この予算案は耐えがたい痛みを市民に押しつけ、市民生活に重大な影響を与えます。
小泉内閣の2006年度予算案では、定率減税の半減に続く全廃で働き盛りの世代に総額3・3兆円の増税を背負わせ、医療制度を改悪して高齢者の医療費自己負担を現行の1、2割から2、3割への引き上げを計画しています。定率減税の廃止で、平均収入(年収600万円程度)の世帯の増税率は2割を超え、4人家族で6万円弱の増税になります。また、消費税率引き上げも取りざたされています。
すでに実施された税制改正により来年度は増税が市民生活に大きくのしかかります。市民税への影響は定率減税の半減で26億円、老年者控除で11億円、年金本体の控除の縮小で4億円。総額41億円を超える規模の庶民増税であり、保険料などへの影響も出ます。
市長、あなたは国による市民負担増の計画を知りながらも、新たな負担を市民に押しつけるつもりなのですか。市民の暮らしを守る立場で、国の増税路線に明確に反対の意志を示し、市による市民への負担の押しつけはやめるべきではありませんか。ご答弁下さい。
〈市長〉サービスに応じた適正な市民負担は避けて通れない。福祉・教育は後退させないとの決意のもと、国保料や地下鉄運賃のなど可能な限りの配慮を尽くしてきた。国の税制・社会保障制度改革は持続可能な社会の構築へやむを得ない。
一昨年、京都市は市政改革実行プラン、財政健全化プランなど3プランを公表し、職員削減、民間活力導入の推進、4年間で総額400億円の市民サービス予算削減、都市再生法の活用などの方向がしめされました。日本共産党議員団は、これらは、行政の仕事の民間開放を促進し、市民に自立、自助を強要して公的役割の後退と公共サービスを削減し、市民負担増を推し進め、民間投資の呼び込みによる開発をすすめるものであると指摘してきましたが、この2年間でその指摘の正しさが証明されました。
予算案には御池地下街株式会社に対する94億円の損失補償と店舗改装のために新たに5億円を投入する救済策を打ち出していますが、民間活力導入のうたい文句ですすめられた開発型の第三セクターの破たんがいっそう明らかになったものです。失政のツケを市民に押し付けることは許されません。
プランでは、今後2008年度まで毎年80億円、120億円、160億円と削減額を拡大することになっています。さらに先だって発表された「集中改革プラン」では計画年度を上積みし、さらに市民サービスの切り捨てと職員リストラをすすめるものとなっています。これ以上の市民への痛みの押しつけは絶対に認められません。
これら市民サービス切捨てのプランは撤回すべきです。あわせてお答え下さい。
〈市長〉本市の改革は他都市から高い評価を得ている。市民の意見を採り入れながら施策の選択と集中の徹底に努める。
家庭ごみ有料化方針は撤回せよ、焼却灰溶融炉建設はやめよ
今回、家庭ごみの有料化が提案されています。しかし、これは二重三重に市民を欺くものです。
その第一は、市民の意見を聞くという点で極めて不十分であり、しかも当局による意見の集計結果は有料化ありきで意図的に歪められています。
市の集計結果でも、市内212会場で行われた意見交換会での発言では、「否定的な意見」が1,324件、「肯定的な意見」が554件と圧倒的に反対意見のほうが多くなっています。また、意見募集、パブリックコメントでの意見件数でも「否定的」が2,342件で「肯定的」が2,244件と「否定的」が上まわっています。意見数では「肯定的」が「否定的」を上回っているというのが当局の言い分ですが、市の集計結果は有料化に導くため事実を捻じ曲げた作為的なものです。ある主婦の方は、不法投棄が増えることや経済的な負担などを理由に、「有料指定袋については結局反対です」と書いておられます。それなのに、市の集計結果ではこの意見が「賛成」に入れられています。また、「分類できない意見」として集約されている中にも、反対の意見が多くありました。これでは結果の偽装、粉飾結果ではありませんか。有料化ありきで、事実を捻じ曲げての提案は絶対に認められません。
二点目は、有料化ではごみは減らないということです。当局は「有料化でごみが減ることは他都市の例で証明されている」と言いますが、他都市でごみが減らせているのは分別やリサイクルを進めているからです。また、行政が住民との対話をすすめ、ごみ減量への意識改革をすすめているからです。有料化だけでごみを減らしたところなどありません。逆に、横浜市や名古屋市で分別・リサイクルをすすめて焼却するごみを減らしている実践は、有料化しなくてもごみを減らせることを雄弁に物語っています。やるべきことをやらずに有料化だけを押しつけることは絶対に許せません。
三つ目は、厳しい市民生活を省みない負担の押しつけだという点です。45リットルのごみ袋を1回につき2袋、週2回出しているご家庭では、年間1万円もの負担になります。国が負担増路線を突き進んでいる時こそ、市民の暮らしを守る立場でがんばるのが地方自治体の役割ではないでしょうか。
市長は常に市民とのパートナーシップを言われますが、提案までの経過のどこにパートナーシップがあるのですか。家庭ごみの有料化提案は撤回し、市民との徹底した対話と分別・リサイクルをすすめるべきです。ご答弁下さい。
〈松井副市長〉ごみ減量に極めて効果的な有料指定袋制を自信を持って提案した。審議会答申を尊重し、本市では前例のない市内各学区等における意見交換会の開催等し市民意見を採り入れ最終方針とした。また、他都市と遜色のない分別・リサイクルを進めている。市民意見集計のねじ曲げは全くしていない。
市民に負担を押しつける一方で、ムダづかいがすすめられています。
予算案では焼却灰溶融炉施設建設費で昨年の34億8千万円に続いて37億3千万円計上されていますが、この施設は全国でも爆発事故などが頻発しており安全性すら確立していないものです。専門家からは溶解時にダイオキシン類が再合成される危険性も指摘されています。焼却灰溶融炉は、北部クリーンセンター建設を国が認めるにあたって抱き合わせに押しつけてきたものです。総額230億円、ランニングコストだけで年間18億円で市財政を大きく圧迫します。この施設をつくれば最終処分場が長持ちすると言いますが、安全面でもコスト面でも建設に踏み切れる前提を満たしていません。しかも昨年5月に京都市が国に提出した「循環型社会形成推進地域計画」には、溶融炉建設と同時に家庭ごみの有料化がすでに明記されています。この両者はいずれも国が全国の自治体に働きかけて誘導しているものです。クリーンセンターの建設費を獲得せんがために溶融炉建設を引き受ける。今度は溶融炉建設費を要求する傍らで一般家庭ごみの有料化を国に約束する。ここには住民不在で国いいなり、平気で市民に負担を押しつける無責任な国と京都市の姿がはっきり示されています。分別・リサイクルなどやるべきことはやらずに家庭ごみの有料化を押しつけ、その上不要不急のムダな施設建設することは認められません。こんな施設をつくらなくても分別・リサイクル等の徹底でごみを減らせば、最終処分場の延命も充分に可能です。
安全性も確立しておらず膨大な建設費とランニングコストで市財政を圧迫する焼却灰溶融炉建設はやめるべきです。答弁を求めます。
〈環境局長〉安全性は十分に確保されており必要不可欠な施設。建設費とランニングコストは一層の経費節減に取り組む。
京都高速道路建設は凍結・見直しをおこない、残る3路線も白紙に戻せ
市民負担増、サービス切捨ての一方で、京都市と国・京都府一体ですすめている京都高速道路建設に、予算案で89億円も盛り込まれていることは重大です。
五つの路線の内、油小路線の斜久世橋区間は京都市が街路建設事業として引き受けることになり、事業費270億円の内約56億円が市の負担になるとの事です。京都府も12億円負担するとしています。この斜久世橋区間の整備費として、来年度予算案には62億7千万円も計上されています。ランプつまり進入路の工事も京都市がすることになっており、工事費320億円の内、来年度予算案で6億3千万円計上されています。建設中の新十条通と油小路線だけで、京都市はすでに出資金として93億円も負担をしていますが、予算案ではさらに17億円を計上し出資総額は110億円になります。出資金の負担率は引き上げられており、市の負担は膨張する一方です。
まだ着手していない三路線は本体工事だけで2,900億円必要だということですが、久世橋通の全長3キロメートルを超える膨大な用地買収費は別に必要ですし、名神高速道路とのジャンクションまで考え合わせたら市の財政がどんなことになってしまうのか、想像に難くありません。
京都高速道路建設が市の財政を圧迫し、市民の暮らしに重大な影響を与えていることは明らかです。
阪神高速道路株式会社も「新規三路線はやらない」といっています。現在建設中の2路線については凍結、見直しを行い、残る3路線については早急に計画を白紙にもどして市民の暮らし優先の税金の使い方に転換すべきです。明確なご答弁を求めます。
〈建設局長〉京阪神を結ぶとともに京都の発展に必要不可欠な都市基盤施設。災害発生時の緊急輸送道路としても機能。一刻も早い完成をめざす。残る3路線も様々な要因を検討し事業化に向けた取組を推進する。
「府民アンケート」を真摯に受け止め、くらしと営業・福祉を守れ
乳幼児医療費助成制度の充実・拡充を、国保料を払える額に
京都市と国・京都府が一体となってすすめているのは公共事業のムダづかいだけではありません。市民の願いに背を向けるという点でも三者一体の姿が明確になっています。
「府民本位の新しい民主府政をつくる会」は、昨年、府内全域対象の府民アンケートを行いました。今日までによせられた回答は3万1千通を超えます。
回答では、今の府政について「大いに不満」が30%、「少し不満」が30%で、合わせて60%、「大いに満足」「ある程度満足」の合計18%をはるかに上まわっています。今の府政に対して圧倒的多数の府民のみなさんが不満を持っていることが示されています。しかし、これは京都府の問題としてのみとらえることはできません。何故ならば、アンケートに回答した内の6割以上が京都市民だからです。京都府政への不満は、同時に京都市政への不満として現れているといえます。
「子どもたちの成長や教育に関する施策」の評価でも「大いに不満」と「少し不満」で50%を越え、「大いに満足」「ある程度満足」はわずか17%です。特に、子育て世代では「大いに不満」が第1位でした。「子どもたちの成長や教育に望むこと」の第1位は「医療費無料化の充実、拡大」で、市民の切実な願いであることが改めて浮き彫りになりました。しかし、国はどうでしょう。少子化対策を叫ぶも国民の願いにまともに答えてはいません。また、京都府の自治体への援助も極めて不十分です。京都市は通院についても就学前まで拡充したとしていますが、月8千円を超える分だけで、府に習えです。「財政が厳しい」「国、府の動向を見て」と言われても市民は納得しません。国と京都府、京都市が一体となって市民の願いに背を向けていることは大問題です。
「高齢者が安心して暮らせるための京都府の施策について」の結果では、この問題に直面してくる40、50、60歳代では「大いに不満」が第1位で、「安心して暮らせるために何を望まれますか」の問いに対しては、第1位が「医療制度の充実」で48%、続いて「在宅介護サービスの充実」が33%となっています。「京都府政に優先的に取り組んでほしいもの」では、第1位が「国民健康保険、介護保険の負担を軽くする」で61%、第2位は「医療・福祉・保健のサービスなどの充実」で56%と、暮らしの中の問題でもとりわけ「命」に直接関わる項目に府民の要求が集中しています。この間、小泉構造改革による「痛み」の押し付けで、市民負担は増大しており、市民負担の軽減、暮らしの応援は待ったなしであることがよくわかります。
ところがこの間、京都府は生活保護世帯への夏季・歳末見舞金の廃止、老人福祉対策事業費の44%カットなどを行い、住民の反対を押し切って洛東病院を廃止しました。京都市も生活保護の見舞金を廃止し、低所得者を直撃する国保料の引き上げを行いました。国民健康保険証の事実上の取り上げである資格証明書の発行は、2000年の2,262世帯から2005年は3,640世帯、この5年でなんと1・5倍以上に増えています。敬老乗車証有料化による影響は先ほど述べたとおりです。この点でも、国と府、市による負担増と福祉の切り捨てがすすめられています。
市長は「民主府政の会」のアンケートによせられた住民の願いを真摯に受け止めるべきです。具体的な要望としていっそう明らかになった子どもの医療費助成制度の充実・拡充をすすめ、国民健康保険料を払える額にして短期証、資格証明書の発行をやめ、正規の保険証を市民に渡し、医療を受ける権利をみんなに等しく保障すべきです。ご答弁願います。
〈保健福祉局長〉国保料の滞納には個々の事情を十分に聞いて対応しており、特別な理由のない方に資格証・短期証の交付はやむを得ない。乳幼児医療費助成は、受診動向等を見守りながら府と協議を行っていく。
伝統産業活性化推進条例を実効あるものに
府民アンケートでは民間企業(従業員5人以上)の経営者のところで「中小商工業者の支援、青年などの雇用対策をはじめとした経済対策」が要望の第1位になっています。自由記入欄には、「友禅関係の仕事をしているが景気が悪く昇給はもちろん賞与もない。後継者はここ15年ほど入社していない。なんとかならないか」「京都には誇れる産業が多くあるが、安価な労働力で国内より安価な製品がつくられ、技術を子どもに託すのも無理。伝統産業、地域の業者を守ってほしい」など切実な声が多く寄せられています。
小泉内閣の「構造改革」路線は、中小零細企業と地域経済に深刻な打撃をあたえています。「不良債権処理」の号令での貸し渋り・貸しはがしの横行、「規制緩和」による大型店の野放図な出店、大企業による下請け切り捨て、消費落ち込みによる経営への圧迫などで、年間4千人をこえる中小零細企業の経営者が、経済苦などから自殺に追い込まれていることは、痛ましい異常な事態です。一方で、国の中小企業予算は、今年度わずか1,730億円。米軍への思いやり予算に満たないものです。大企業への手厚い補助金や開発支援に比べても微々たるものでしかありません。
京都府はどうでしょうか。企業誘致補助金が1社あたり5億円から20億円と4倍に引き上げ、実行しながら、京都で3万人が働く和装・伝統産業の予算は前年の半分2億2千万円に引き下げて雇用対策予算を大幅に削減しています。
京都市の伝統産業予算も、その位置づけや役割からいえば極めて不十分であり、国の緊急雇用対策事業が始まる前の99年度で3億2220万円あったのが今年度は1億7,638万円と半減しています。来年度予算案でも「京ものファン創出事業」など新規事業はあるものの、「伝統産業技術の保存・育成」の予算が減額されているなど、市民、関係者の要望に応えるものとはなっていません。その傍らで南部開発、キリンビール跡地開発など呼び込み型の開発には熱心です。経済対策でも、国と京都府、京都市の三者による地元業者いじめがすすんでいます。大企業優遇、開発優先ではなく中小零細、伝統地場産業を振興するために抜本的な対策の強化が必要です。
京都市が実施した市政総合アンケートでも9割以上が伝統産業に「魅力を感じている」と答え、市が取り組むべき対策では「後継者育成」が63%に及びました。
来年度予算は伝統産業活性化推進条例制定後はじめての予算であり、関係者も市民も注目しています。条例を実効あるものにするため、伝統的工芸品72品目について、就業状況等を含む実態調査を行い関係者の声を十分に聞いて実効ある振興計画指針を策定すべきです。また、技術の継承・後継者育成をすすめるため、適正な工賃など経営や労働環境を整えるための施策を講じること。伝統・地場産業産業製品の海外生産・逆輸入の実態把握を行い、規制・原産国表示義務づけを国に求め、同時に本市独自の行政指導を行うこと。そして、振興策をすすめるため、伝統産業予算を大幅に増額すべきです。いかがですか。
〈産業観光局長〉伝統産業活性化推進計画を審議会で協議いただいており、本年秋に策定し、19年度予算に反映させる。それに先駆けて「京ものファン創出事業」「京もの履歴表示」を実施する。労働環境や輸入規制、原産国表示については国等に要望していく。
昨年の9月議会でわが党は、緊急に求められる伝統地場産業支援策として、大量の重油を使用する友禅の蒸し水洗、黒染めの業界などにたいして都市ガスへの転換をするにあたって国の天然ガス化推進補助事業も活用した新たな助成制度の創設を提案しました。また11月議会では、「京都議定書発祥の本市こそ国の補助事業に上乗せして効果的な支援策を実施すべき」と求めました。1月28日のサンケイ新聞夕刊でも、「昨年13社あった蒸し水洗業者が昨年末に1社廃業し、今月更に2社が廃業に追い込まれる見込み」と報道しています。深刻な実態として、南区の業者の実例が出されていました。年間売り上げが700万円で160万円ほどだった重油が廃業前には300万円にもなったとのことでした。ガスへ転換していれば、200万円程度の燃料費になったはずです。もっと早い段階で市としての対応がなされていれば、と悔やまれます。
一刻の猶予も許されません。市として早急に対策を講じるべきです。あわせてお答えください。
〈産業観光局長〉原油価格高騰はいち早く中小企業支援センターに相談窓口を設置等した。国に要望し「あんしん借換融資」の利用が可能になり天然ガス化推進補助事業の補助枠も55億円に拡大された。
「まちづくり3法」見直しにあたって
京都府内での大型店出店ラッシュの商店・商店街への影響はますます深刻になっています。
私の地元西京区、洛西ニュータウンは中央にラクセーヌ、高島屋があり、学区ごとにある4箇所のサブセンターが身近に買い物ができる場所として位置づけられています。ところが周辺での大型店出店の影響も受け、4箇所の内3箇所でスーパーが廃業し買い物ができなくなっています。急速に高齢化する洛西にあって極めて深刻な事態です。その近隣に8万平米もの大型商業施設がキリンビール跡地につくられたらどうなるでしょうか。ラクセーヌの存在すら危うくなるのではないでしょうか。
個人商店、商店街はいくら消費者の二-ズに応える努力をしても、大きな資本力をもつ大型店に太刀打ちできません。中京区にある西新道錦会商店街と壬生京極会商店街は、高齢者への給食サービス、ファックスやインターネットを利用した宅配サービスなど活性化に努力し、地域にも貢献している商店街ですが、この10年間に周辺500から700メートル以内に大型店7店舗が出店し大苦戦を余儀なくされています。
2000年に中心市街地活性化法・改正都市計画法・大店立地法のまちづくり三法が施行されましたが、大店法の廃止で需給調整ができなくなりました。その結果、大型店の出店は野放しで増え続けています。内閣府の世論調査でも6割の人が大型店への規制が「必要」とこたえています。2004年7月には、日本商工会議所など中小企業4団体が、まちづくり三法の抜本的見直しの「要望」をまとめ、「市場主義の行き過ぎにより、コミュニティーの衰退、伝統・文化の継承の困難、治安や青少年問題の深刻化、高齢者の生活の不便など社会問題が増大している」と告発しました。
政府は今国会に都市計画法の改定案を提出し、同法にもとづき出店規制を厳しくする方向で検討をすすめていますが、需給調整は含まれていません。
「まちづくり3法」の見直しにあたっては京都市内においても実効あるものとなるよう、地域的な需給調整を可能とするよう国に求めるべきです。また、事実上の大型店誘致策である「商業集積ガイドプラン」「京都市まちづくり条例」を大型店出店を規制するものに見直し、大型店撤退についてもルール化をはかるべきです。ご答弁ください。
〈星川副市長〉改正法案に商業調整は含まれない。本市に置いては引き続き望ましい商業集積の実現に努め、商業者を積極的に支援する。撤退については、基本的に企業の社会的責任の一貫として自主的に対応されるものと認識している。
8万平米もの大型商業施設計画を含むキリンビール跡地開発は中心市街地の空洞化、荒廃を招くものであり、西京区、洛西も含めた商店、商店街に大きな打撃を与えてまち壊しをすすめるものです。今回の3法見直しにも逆行する計画ではありませんか。計画を白紙に戻し、跡地開発にストップをかけるべきです。お答えください。
〈毛利副市長〉京都市南西部の活性化に資する優良なプロジェクト。今後ともJR新駅や必要な都市基盤の整備を進める。
同和施策の終結を
次に同和問題です。繰り返し特別扱いをやめるように市会決議をあげているにもかかわらず依然として継続していることは、まさに議会軽視、市民無視と言わざるを得ません。昨年の11月議会であげた「同和行政の完全終結を求める決議」を正面から受け止め、即刻改善し廃止すべきです。
同和奨学金は来年度廃止としていますが、今、受給している生徒が卒業する2009年まで続きます。奨学金返済の肩代わりである自立促進援助金は2029年まで続き、京都市の支出は48億5千万円。来年度予算案では5億円が準備されています。こんなひどい特別扱いがあるでしょうか。
さらに、昨年の11月議会では改良住宅に住む65歳以上の高齢者・身体障害者に対する「無料の住宅改修制度」が2000年に新設され、現在も続いていることが明らかになりました。「所得制限」もなく、昨年で160件、約2千万円支出されていました。こともあろうに同和施策の終結が宣言される直前にこの制度はつくられているのです。「終結」とは名ばかりであったことがいっそう明らかになりました。
保健所分室の問題では、養正分室では一部初期医療として、医師が診察し、薬まで無料でだしています。
市立浴場の入浴料金は見直しているというものの、民間の370円に対して260円。高齢者には無料の入浴券がいまだに配布されています。
コミュニティーセンターは一般開放されたというものの、旧同和地区優先の差別的使用条件が温存されています。
このような特別扱いは即刻止めるべきです。それぞれについて、はっきりとお答え下さい。
〈星川副市長〉市会決議は重く受けとめている。改良住宅の住戸改善は今年度末で廃止して一般事業化する。一保健所分室の夜間健康相談事業は廃止・見直しに向け取り組んでいる。市立浴場入浴料金は格差解消を進める。コミュニティセンターは一般施策として一層の利用拡大をはかる。自立促進援助金はそのまま市に返還されるものであり財政負担とはならない。
平和施策について
最後に平和の施策について質問します。
京都市無防備・平和都市条例の制定を求める41,125筆の署名を受けて臨時議会が開かれました。この運動は、市民の平和への願いがいかに強いか示したものでした。政府が憲法9条を変えて日本を戦争に参加できる国につくり変えようとし、アメリカと一体となっての軍事機能の強化を進める米軍再編の動きも強まる中でのこの運動は、憲法9条を守りたいと願う広範な人々と結ぶ貴重な取り組みだったと思います。
残念ながら我が党だけの賛成で否決されましたが、市長も議会も市民の平和への願いを真摯に受け止めるべきです。
市長意見では、条例案に賛同できない理由として、平和、文化財保護の取り組みはすでに実施していると言うことが挙げられていました。ところが実際には、戦後60年の節目の取り組みはいっさい行われておらず、中央図書館の平和関連図書コーナーも期間限定で常設されておらず被爆者団体への補助金がこの間削減されているなど、平和への取り組みは他都市と比べても不十分であることが明らかになりました。
平和への取り組みはすでに行っていると言うなら市民が納得できるものにしなくてはなりません。平和の取り組みは来年度予算案でどのようにすすめられるのですか。また、被爆者団体などに対する補助金を復活すべきですがいかがですか。お答え下さい。
今年は憲法が公布されて60年、来年は施行されて60年の節目が続きます。改めて市長が憲法改悪反対の姿勢をはっきりと示されることを求めて、私の質問を終わります。
〈星川副市長〉市民の皆さまとともに努力していく。補助金の復活は困難。
第二質問
松井副市長は家庭ごみ有料化にかかわり意見集約結果での事実の捻じ曲げはないと声を荒げて言われましたが、市民意見で主婦の方が「有料指定袋については結局反対です」で書いているのに「肯定的」になっているものを私は見ているのです。松井副市長は確認して答弁されたのでしょうか。
市長は、市民負担増とサービス切捨ての予算をあくまでも押しすすめる旨、答弁され、家庭ごみ有料化に至っては「不退転の決意」とまで言われました。市民の厳しい暮らしの実態を直視するならば、負担の押し付けに「不退転の決意」などと何故言えるのでしょうか。
先ほども申し上げましたが、予算案には高速道路に89億円、焼却灰溶融炉に37億円計上され、焼却灰溶融炉は建設後、ランニングコストで毎年18億円もかかります。市民の切実な願いである子どもの医療費助成制度を小学校に上がるまで充実、拡充しても、年12億円です。公共事業のムダ遣い止めれば、市民の暮らしを守りながら、財政再建を進めることは可能です。市長は「聖域なき行財政改革を断行する」と言われますが、改革の対象とすべきところを見間違えておられるのではありませんか。予算特別委員会で引き続き議論いたします。
京都市と国・京都府が一体となってすすめるムダ遣いと市民負担増、サービス切捨てにストップをかけて市民の暮らしをよくするために、4月の京都府知事選挙で府政の転換が求められます。日本共産党市会議員団は、市民の暮らしを守るため、全力で取り組む決意を申し上げ、質問を終わります。