井坂博文 議員
05年10月13日(木)
地下鉄運賃値上げ条例についての反対討論 05年9月定例市会 閉会本会議討論
日本共産党京都市会議員団は、ただいま上程されています議第220号京都市高速鉄道旅客運賃条例の一部を改正する条例、すなわち日本一高い地下鉄運賃値上げ議案に対して断固反対する態度を表明しておりますので、代表しまして私が討論いたします。
反対する第一の理由は、今回の値上げが市民生活を直撃するものであるからです。
京都市民は今年の春から、国民健康保険料値上げで8億円、保育料値上げで2億円、敬老乗車証有料化で6億円、障害者医療の有料化で2億円などの大幅市民負担増が押しつけられました。さらに加えて小泉構造改革による、定率減税の縮小、年金支給額の削減などによって市民は耐え難い負担増に苦しんでいます。この時に、総額15億円もの運賃値上げは市民の負担の限界を越える、とんでもない痛みの押しつけであります。
それに対して、市長や交通局は審議を通じて「初乗り運賃の値上げ幅を10円に抑えた。二区間以降も他都市の地下鉄より低く抑えた」と開き直り、「安定して持続可能な地下鉄経営のために避けられない」と値上げを合理化する説明と答弁を繰り返すだけでした。市長には、日々の買い物で10円・20円の節約にも苦労している市民の苦しみがわからないのですか。この値上げが実行されれば地下鉄経営の安定をうんぬんする前に値上げによって市民生活のほうが持続不可能になってしまうではありませんか。さらに見過ごすことができないのは、地下鉄利用者の三分の一をしめる通勤通学定期利用者への影響です。定期券利用者とって値上げは、通勤や通学の足を他の交通手段に替えることができない、まさに「避けられない」値上げとなって利用者を直撃するではありませんか。
反対する第二の理由は、市長の政治姿勢が厳しく問われるものであるからです。
今回の値上げについて、昨年2月の市長選挙の際の市長公約には一言もありませんでした。それどころか市長は「どんなに市財政が苦しくても、福祉と教育は後退させない」と言っていたではありませんか。市民に耐え難い負担増を押しつける今回の運賃値上げは、まさしく市長の公約違反であります。
あわせて値上げ提案についての市民や地下鉄利用者に対する説明責任がまったく果たされておりません。わが党議員団による、総務省への調査団の派遣・聞き取りと議会追及によって、1. 総務省は経営健全化計画における出資債の発行許可や起債額減額の決定、および健全化団体指定の取り消しの条件として、値上げ計画策定や実行の有無は求めていないこと。にもかかわらず、そのことが国との約束であるかのような議案資料の説明は事実に反することが判明し、2. 8月の市民しんぶん折り込みチラシにおいて地下鉄経営赤字の最大の要因であるゼネコンいいなりに80回以上もの契約変更による2000億円の東西線建設費大膨張の経過にまったく触れず、しかも全国平均キロ単価を大幅に上回る事実を記載してないこと、が明らかとなりました。説明責任をはたすというのであればあらゆる情報と事実を市民に伝えるべきであり、誤った情報で「値上げも仕方がない」という世論操作するなど言語道断であります。
さらにあたり前の市民に対する説明や意見聞き取りも全くありませんでした。そのことを指摘すると「議会で議決をいただいたら市民にお知らせする」との答弁でした。そんなことだから、過日発表された市民生活実感評価(1500人アンケート)において「市の計画や条例に対する意見募集や意見公募など、企画段階から市民が意見を言う機会が十分にあると思えない」と答えた市民が実に25.4%にものぼっているではありませんか。
同時に、委員会審議におけるわが党の提案の公聴会の開催や直接傍聴、さらに請願主旨説明の申し入れやを否決した与党会派の責任も重大であることを強く指摘しておきます。
反対する第三の理由は、公営企業としての地下鉄責務の放棄であり、失政のつけを市民に転嫁するものであるからです。
交通弱者と言われる障害のあるかたやお年寄りは自ら車を運転して移動することは困難であります。また環境への影響を考え、車から市バス・地下鉄へと利用を換える市民の方が増えています。いまこそ公共交通機関の果たす役割、とりわけ「公共の福祉に寄与する」ことを理念とする公営企業の責務は重大になっています。このような時に、運賃値上げは市民から移動する権利=交通権を奪うものにほかなりません。
交通局は「観光客が増えたのになぜ市バスや地下鉄のお客が増えないのか」と指摘されても「他の民間会社も旅客数は減少している」と開き直りの答弁でした。旅客を増やすための積極的な営業努力がされないまま、運賃値上げだけは計画通り実行するというのでは市民は納得できません。このままいけば、ますます地下鉄離れが進行し、公営企業のはたすべき役割が後退するだけではありませんか。
また、ゼネコン言いなりの東西線建設費の大膨張という失政による経営赤字をまともに総括できない体質が、道路公団民営化にともなう新たな京都市負担の押しつけに何百億円ポンと出す一方で、市民には値上げという負担を平気で押しつけるという今日の京都市政につながっていることがはっきりしました。市政の失敗のツケをこれ以上市民に押しつけることはやめていただきたい。
反対する第四の理由は、5年ごとに5%の定期的運賃値上げを盛り込んだ経営健全化計画を前提にしていることであります
審議を通じて、地下鉄経営健全化計画策定にあたって値上げを持ちこんだのは本市であること、同様の健全化計画を策定している政令市のなかで値上げ計画を盛り込んでいるのは本市だけであることが明らかとなり、それについて副市長も認められました。
また総務省による出資債発行許可にかかわる健全化団体指定の取り消しの条件は、運輸収益と営業費用のバランスによる計画目標達成率だけであることも明らかとなりました。しかも運輸収益の中味は運賃改定だけではなく乗客数による収入増減も含まれており、旅客増による収入を増やせば値上げは回避できることも判明しました。「運賃改定しなければ団体指定が取り消され大変なことになる」との局説明は完全に破綻しているのです。
市長、他の政令市が値上げを回避しながら経営健全化の努力をしているときに、なぜ京都市だけが市民負担増の値上げに頼らないと健全化ができないのですか。そして、いつまで破綻した値上げ理由にしがみついて市民を欺き、負担を押しつけるのですか。
結局、定期的運賃値上げを盛り込んだこの健全化計画そのものを見直すことが値上げを回避する前提であり、不可欠であることがはっきりしました。そのことを潔く認めて、健全化計画の見直しをおこなうよう強く求めるものであります。
最後に、審議の中で与党会派から値上げ容認を前提にした「負担軽減と利便性向上」を求める質問があり、昨日交通局から発表がありました。しかし、いくら部分的に負担軽減(総額6000万円)、したとしても15億円の市民負担増を承認した事実を覆い隠すことはできません。そのことを強く指摘しておきます。
あらためて、今回の値上げは市民生活を直撃するものであります。値上げ議案を撤回し、市民の足を守ることを強く求めまして私の反対討論といたします。