山本正志 議員
04年12月16日(木)
地球温暖化対策条例についての賛成討論 04年11月定例市会 閉会本会議討論
05年2月京都議定書が発効
私は日本共産党市会議員団を代表して、今回提案されております地球温暖化対策条例についての討論をいたします。
地球温暖化問題は,その原因の大半が現在までの先進国の社会生活や事業活動に起因するにもかかわらず,開発途上国の人々や将来世代にも深刻な打撃を与えることが特徴です。そこで,この問題に対し,国際的に取り組むため,1992年に気候変動に関する国際連合枠組条約が締結され,1997年12月に京都市で開催された第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議・COP3)において,温室効果ガス削減目標を先進国に課した「京都議定書」が合意されたことはご承知のとおりであります。
京都議定書はその後アメリカの離脱表明など曲折はありましたが、ロシアの批准によっていよいよ来年2月16日には発効となります。
現在12月6日から17日にかけ、アルゼンチン・ブエノスアイレスで気候変動枠組条約第10回締約国会議(COP10)が開かれていますが、いよいよ各国の温室効果ガス削減の具体的取り組みが現実の課題となってきます。
わが国においても,2002年6月に京都議定書を批准したことによって、2008年から2012年までの平均値で,1990年に比べ温室効果ガスの排出量を6%削減する国際的義務が生じます。そのため、地球温暖化対策推進法や省エネ法の改正、新エネルギー特別措置法(いわゆるRPS法)の制定などの法整備も進められてきました。現在も中央環境審議会を中心に政府としての対応について、いわゆる炭素税の創設や京都メカニズム、CO2排出量の国際的取り引きのあり方などについて審議中であり、これらの課題は国ならびに地方自治体の推進計画として今後具体化が迫られるものであります。
市民の期待にこたえる真に実効ある制度を
さて、今回提案されております条例案でありますが、市長の諮問によって京都市環境審議会に温暖化対策条例検討部会が設置され、10回に渡る論議と市民意見の聴取などの結果が今年2月に「条例の基本的考え方について」いわゆる8号答申としてだされました。
本会議や厚生委員会審議の中でも明らかになりましたが、提案されている条例案にはいくつかの新しい課題として新規の項目が盛り込まれております。京都市の当面の目標として、温室効果ガスを2010年までに1990年基準で10%削減する目標が掲げられました。また、具体的取り組みとして市役所総体としての率先した計画推進を始め、電気製品などの省エネラベルの普及啓発、特定事業者にたいして排出量削減計画書の作成、提出、報告とその公表、特定建築物を対象とした排出量削減計画書の作成、提出と公表、自動販売機やチェーン店を総体として把握し削減計画の対象範囲にふくめることなどは検討部会でも大いに議論となった点であります。
また、今回の条例案の検討に対しては気候ネットワークをはじめ、多くの環境問題に取り組む団体や市民から多様な意見表明や提案が出されたことも注目されるところです。
私は条例案審議の中でも、検討部会の委員や意見を出された多くの市民の期待にこたえる真に実効ある制度を確立する上で、いくつかの質問と意見表明をいたしました。以下それらの諸点について申しあげ、市長ならびに同僚議員の方々にもお考えいただきたいと思うのであります。
まず、今回の条例案に京都市の温室効果ガス削減目標として「2010年に1990年基準で-10%にする」ことが掲げられましたが、現在の「京都市地球温暖化対策地域推進計画」では「2010年には、京都市として対策を講じた場合97.6%になるが、対策を講じなかった場合135%に増加する」とありますが、これでは-2.4%しか削減のメドがありません。-10%を達成するにはどうするか。推進計画では「これらの対策に加えて今後の国における各種の抑制・誘導方策、新技術を取り入れて、達成をめざす」とされていますが、これでは国だのみ、産業界だのみではないか、という問題です。
現在、京都議定書発効後の取り組みの具体化のために、国の温暖化対策推進大綱の見直しが進められていますが、現在の大綱では「国内削減分は0.5%、あとの5.5%は森林吸収と京都メカニズムで帳尻を合わせる」ことになっています。
問題はこの削減量の内容ですが、1990年基準で産業界は-7%、民生部門は家庭系・業務系あわせて-2%、運輸部門は17%増はやむなしとなっているのであります。ところが日本経団連が作成している「環境自主行動計画」では「産業界-7%。これは目安であり、受け入れた覚えはない」と主張しており、さらに「法的規制については経済の発展の立場から明確に拒否する」と書いてあります。日本経団連の90年比での目標は±0%。つまり「増減なし」というものです。
そうすると-10%やりますという条例案に掲げる目標実現の根拠は裏づけの無いものということになります。京都市の責任を越える問題であり、社会・経済体制の根本的変革もふくむ重大課題でありますが、ヨーロッパ諸国では、イギリス・フランス・ドイツをはじめ、京都議定書の目標達成を射程距離に収め、国家と自治体、市民をあげての本格的取り組みが進行中であることと比較して立ちおくれた状況は明らかです。
次に、たとえば現実の問題として新エネルギー措置法(RPS法)による電力業界の自然エネルギー購入義務はどうなっているのでしょうか。電力会社の2010年までの自然エネルギー購入義務は1.35%。ヨーロッパでは、イギリスは10%の購入義務、ドイツは12.5%の購入義務で、しかも買い入れ価格は火力・水力などの2倍の価格が義務付けられています。
日本の現実では2003年電力会社の33万キロワットの買い入れ枠に対して、風力など204万キロワットの応募があった。04年九州電力の5万キロワットの買い入れ枠に対しての応募は70万キロワットであった、とのことであります。各地の大型風車が廻ってはいるが送電できないで空回りしている無残な事態になっているのであります。
次に、今回はチェーン店や自動販売機の総体としての届け出が条例に入りましたが、あくまで自主削減計画を提出していただく、そしてその計画の達成・到達を報告いただくというものであります。この点については検討部会でも委員から「東京や長野など相当踏み込んだ自治体もある」という議論もだされています。
東京都が「地球温暖化阻止! 東京作戦」を展開しており、この5月の東京都環境審議会答申では「新たな制度の基本的考え方」として「制度の強化、新設その1で、既存の大規模な工場・事業所等のCO2排出削減を都のガイドラインに基づき削減目標を設定する」としています。
また、長野県では温暖化防止県民計画で、「県内の自動販売機設置台数を半減する」「24時間営業のコンビニの営業時間を2/3にする」というプロジェクトを打ちだしています。チェーン店や自販機の総体としての届出となったことは評価をしつつも、さらに踏みこんでいる自治体があることを紹介し、今後の具体化にむけてさらに検討を進めていただくことを願うものであります。
最後に推進体制の問題についても、検討部会で委員から「今回やるならば、庁内体制がどうなっているかをオープンにして、チェックするシステムをつくることが一つの課題だ」「課題の設定や評価を庁内だけでやり、市民にはパブリック・コメントで意見を聞くだけではだめ」とも指摘されています。「進化する条例」として3年ごとに見直しも提案されていますが、市長を先頭にとりくむことは本会議でも答弁がありました。
以上、温暖化防止という人類存亡の重大課題に取り組むにあたっての条例提案にたいする賛成討論といたします。ご清聴ありがとうございました。