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市会報告

さとう和夫 議員

04年9月14日(火)

佐藤和夫議員の代表質問と答弁の大要 04年9月定例市会 本会議代表質問

京都高速道路建設は凍結・中止を

阪神道路公団民営化での本市の負担について

 日本共産党京都市会議員団を代表して、市長並びに関係理事者に質問します。

 まず、第一に、京都高速道路建設について質問します。

 京都高速道路の新十条通と油小路線が着工中ですが、高速道路計画全体を考えるにあたり、この間に大きな変化が起きています。一つは、地球温暖化防止会議の京都議定書が採択され、且つ本市でも地球温暖化防止条例を制定しようとしていること。もう一つは、事業主体の阪神高速道路公団が来年秋に民営化されることです。民営化を前にして、阪神高速道路公団の「平成十七年度事業の概算要求の基本方針」がこのほど明らかになりました。その内容は、第一に、阪神公団に対する国と自治体の出資比率を現行の二十五%から来年度は三十五%に引き上げる。すなわち、本市負担は現行六.二五%から八.七五%に四割引上げられること。第二に、来年度から、阪神公団が新十条通りと油小路線の一部区間の工事から撤退して、かわって本市を事業主体とする「事業区分の見直し」をすること。これを国が正式に決めれば、本市が事業主体となって、新十条通りと油小路線の一部区間を街路建設事業としてすすめなければなりません。通常、街路建設事業の場合、国の補助を差し引いた自治体の負担は四十%から四十五%です。一部区間を街路建設事業で建設するよう国から求められた先行事例の大阪府の大和川線では、大阪府は当初「通行無料」の府道として建設し自治体負担を四十%と見込んでいました。現段階では、「公共事業と有料道路事業を組み合わせる合併施工方式案」なども浮上しているようですが、本市も当初の大阪府と同様の負担を求められると、本市の負担がどれだけ増えることになるのか、私も試算してみました。先行事例の大和川線では、大阪府が肩代わりを求められたのは、総事業費の四割の区間でしたから、これを新十条通と油小路線にあてはめると、本市の負担は新たになんと約二百七十億円も増えることになります。京都市は、これまで建設中の二路線本体の本市負担は、出資金の百二億円だけですむと言ってきましたから、京都市民は、新たに大変な負担を背負わされることになります。

 そこで質問しますが、本市が新十条通りと油小路線との一部区間の事業主体となることに関し阪神高速道路公団と協議をするとのことですが、阪神公団の基本方針どおりであれば本市としてどれだけの負担増となるとなるのか、また、油小路線と第二京阪道路をつなぐ洛南連絡道路建設については、阪神公団と日本道路公団との事業主体の押し付け合いの結果、国の直轄事業となる見通しとのことです。それにより京都市域の区間については、建設費の三分の一の本市負担が発生しますが、いくらかかると見込まれるのか、お答えください。

(中島建設局長)公団は民営化後45年で償還するという仕組みの中で採算性を確保するため、更なる事業区分の見直しについて、国及び地方公共団体と協議・調整を進めていくとしている。今後、公団に出資している他の関係地方公共団体と連携し、財政負担が増大しないよう国や公団と協議・調整していく。 洛南連絡道路については、まだ事業主体は決まっていない。

残りの久世橋線、堀川線、西大路線の計画は中止を

 今回、阪神公団は、「民営化するにあたって四十五年間で借金を返すには事業中の不採算路線の建設を続けると期限内の償還は困難」として、事業の肩代わりをもとめたわけであります。今後、民営化会社は不採算を見込まれる路線から手を引き、京都市が事業主体になることになります。京都高速道路計画の残りの久世橋線や堀川線、西大路線などの総事業費は、阪神公団の試算では二千九百億円とされています。全て本市が肩代わりすれば、本市の負担は、総事業費の四十パーセントとしても、千百六十億円プラス用地費やランプ建設費ということになります。その上、不採算路線の維持管理費がついてまわれば、本市の財政負担は予測もつきません。このまま強行すれば、本市の財政破綻を更に進めることになります。本市は、これまで我が党議員団の質問に対して、「残る三路線は、国の動向等を見極めながら、事業化に向けて取り組む」としてきましたが、阪神公団がこの時点で事業主体から降りると判断を下したことこそが、国の動向に沿ったものではありませんか。かねてから、我が党議員団は「京都高速道路計画」が、本市の財政を破たんさせ、京都の景観や環境を破壊し、交通渋滞の解消どころか市内に交通渋滞を引き込むものと指摘し、建設の凍結・中止と計画の撤回を求めてきました。京都高速道路計画は、供用開始まえにまさに破綻したのではありませんか。

 今後五年間の市政運営の基本方針として、「市基本計画第二次推進プラン」、「財政健全化プラン」、「市政改革実行プラン」などを三位一体で取り組むという前に、まず無駄な大型公共事業の典型、京都高速道路計画の着工中の二路線は、凍結・中止こそが必要ですが、いかがですか。お答えください。また、事、ここに及べば、本市は京都高速道路計画の残り三路線を建設する計画も、中止を決断すべきですが、いかがですか。

〈建設局長〉京都高速道路は、市内の慢性的な交通渋滞を緩和するとともに、都市活動の活性化に資する必要不可欠な都市基盤施設。大変厳しい財政状況だが、事業中の新十条通及び油小路線は、公団とも連携し、早期完成に向け取り組む。残る3路線についても、今後、事業効果、本市の財政状況、道路関係4公団の民営化に向けた国の動向や社会情勢等様々な要因を検討する中で、事業化に向けた取組を推進する。

 新十条通りの伏見工区の、トンネルの上の地域で「区分地上権設定」のために、三十二物件が土地収用審査会への申請対象にされていますが、民営化される阪神公団が「公共の福祉」の名のもとに、私有財産を取り上げるなど許せないとの声もあります。土地収用申請を取り下げ、地元説明を一からやり直すべきと思いますが、いかがですか。

〈建設局長〉これまでから地元の皆様に事業説明会等を重ねてきたが、一部の事業用地で権利取得が難航している。これ以上、事業の遅延が許されない状況から、公団は、任意交渉を継続しつつ、順次採決申請の手続きを進めている。

LRTの導入など環境にやさしい交通政策への転換を

 さて、地球温暖化防止京都会議で「京都議定書」が採択された開催都市として、本市は区域内における二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を二〇一〇年までに一九九〇年レベルから一〇%削減を目指す目標を掲げてきました。ところが、「京都市環境審議会」答申では、二〇一〇年には十八%増が予想されると指摘しています。とくに、運輸部門の排出量の九十四%が自動車であることから、自動車の総量規制、交通需要管理が緊急の課題といえます。際限なく自動車依存を続ければ、都市機能そのものが阻害されることは今や自明であります。だからこそ、総合交通体系による輸送効率の高い公共交通を中心とした交通需要管理が求められています。まさに、地球温暖化防止のための温室効果ガス排出抑制目標の達成が困難視されている今日だからこそ、都市高速道路の整備をやめて新型路面電車・LRTの導入やバスを中心としたオムニバスタウン構想や小型循環バスのネットワーク、市内中心部への自家用車の乗り入れを規制するトランジットモールなど公共交通を中心とした総合的な交通体系づくりをすすめるべきです。

 コップ・スリーの開催都市として「脱高速道路宣言」など抜本的な取り組みを求める市民の声が高まるのは当たり前であります。いまこそ、LRTすなわち新型路面電車など歴史都市京都にふさわしい、歩いて楽しく、環境にやさしい交通政策に転換することが必要です。本市はLRTの導入を検討していますが、路線を含め具体的に足を踏み出すべきです。いかがですか、答弁を求めます。

〈毛利副市長〉平成15年度に、具体的な7路線を抽出し、各路線について自動車交通など他の交通手段や沿線住民に与える影響を整理するとともに、需要予測や整備費用、採算性などの検討を進めている。京都にふさわしい総合的な交通体系の確立を目指す。

積極的な営業政策で、市民の足市バスを守れ

 次に、交通事業アクションプランで市バスにおける民間委託の拡大に係わって質問します。

 前年度の市バス事業の単年度決算では十一年ぶりの経常損益八億円の黒字となりました。ただし、この黒字の原因は、主として人件費削減につきます。「職員の削減」や「全車両の二分の一の民間委託」などが、不採算路線を切り詰める「路線の縮小」となり、市民にいっそうの不便を強い、「乗客の減少」を招くという悪循環に陥っています。

 先だって、「京都の市民の足を守る連絡会」が、交通局に「要望の強いところに小型循環バスを走らせること」、「乗り継ぎ料金の大幅割引で乗り継ぎを便利にすること」、「調整区間の地域格差を解消すること」などを要望をいたしました。もっともなことです。

 この間、長野市の交通政策について調査にゆきました。長野市には公営バスがありませんが、民間バス路線が市内中心部から放射状にのびています。横のネットワークがなく不便ということで、市が補助をするコミュニティバスを新たに走らすとか、市内中心部には百円の「ぐるりん号」という小型循環バスを走らせていました。しかも、小型循環バスの走行する区間は、他のバスも百円区間として協力していました。いま、なぜ全国的にコミュニティ・バスや小型循環バスなどが次々につくられるのか。なぜ、本市でも小型循環バスが八つの行政区版の基本計画にとりいれられているのか。まさに、「交通過疎地域」や「高齢化の進む地域」などに公共交通を求める住民の切実な願いが反映しているからではないでしょうか。

 八月に市長の諮問機関として「京都のバス事業を考える会」が発足しましたが、この「京都のバス事業を考える会」がMKのバス事業参入問題の「調停の場」であることは衆目の一致するところです。そもそも、MKのバス事業参入そのものが政府の交通事業の規制緩和政策を礼賛してきた市長の政策の帰結といえます。公営交通をしっかりまもり、都市周辺部の市民の足となっている「生活支援路線」を確保する責務を果たすことが、とりわけ強く求められています。

 市バスを縮小して、不採算路線を効率化や合理化の名で切り捨てるのをやめ、市民の足である公営交通を、積極的な営業政策で守るために、どう具体的に進めていくのか、市長の答弁を求めます。

〈答弁→島田公営企業管理者〉全国一厳しい改革を断行し、経営健全化を図ることにより、不採算路線を切り捨てることなく、市バスのネットワークを確保してきた。生活支援路線のより効率的・効果的な確保策などの提言を、今後の市バス改革に活かし、責務を果たす。

 今後、総合交通体系づくりの上からも、市民・交通労働者・学者・研究者・行政などからなる「交通問題懇談会」を恒常的に設置し、公営交通の活性化に役立てるべきですが、いかがですか、お答え下さい。

(毛利副市長)8月に「京都のバス事業を考える会」を設置し、年度末までに提言をいただくこととしている。今後とも、協議の場を活用するとともに、関係行政機関などと連携し、公営交通の活性化と安全で利用しやすい交通体系の確立を目指す。

キリンビール工場跡地開発はいったん白紙に戻せ

 次に、キリンビール工場跡地開発について質問します。

 昨年、「都市再生緊急整備地域」に指定された南区と向日市にまたがるキリンビール工場跡地の二十四ヘクタールもある広大な用地に、二〇〇七年の春には高さ九十メートルのノッポビルが五本も建つ計画が進んでいます。延べ床面積は約五十万平方メートルにも上り、そのうち約八万平方メートルもある売り場面積は向日市の全売り場面積の二倍近くにもなります。しかも、商業利用者は休日には四万五千人、年間一千万人以上の来場者を見込んでいます。商圏は乙訓二市一町と京都市南西部まで含む広さを想定しています。その結果、本市の「歩いて楽しいまちづくり」とは反対に、高齢者はもとより市民は、その商圏にとりこまれる広い地域で、歩いて日常品を買いそろえる身近な商店街を奪われることになります。

 地元説明会でも「なぜ、こんな大きなビルがここにいるのか」「年間来場者数が一千万人と想定する計画通りなら交通渋滞が心配だ」などなど住民に不安が広がり、先だっての都市計画審議会にも京都市、向日市併あわせて約四百件の意見が寄せられました。都計審では、本市とキリンビールとが七年間も協議をしてきたという地区計画の企画評価書がはじめてだされましたが、大観覧車もあるのっぽビル計画が市域南部の盆地のスカイラインを破壊することになるのではとの指摘もあり、この企画評価書そのものが都計審の付帯資料から除外して、やっと採決されるという異例な事態となりました。

 そもそも、国による「都市再生」事業の狙いは、大企業の遊休地や都市銀行の不良債権処理のため、税制上の優遇や融資の斡旋や行政による容積率の緩和など都市計画法上の特権を付与するものです。キリンビール工場跡地の開発計画は、都市計画審議会委員からも京都の魅力をどう高める視点があるのかと疑問を呈されたほどであります。

 そこで質問しますが、大規模小売店舗立地法の付帯決議でも「中心市街地活性化等のため郊外開発の規制は行われ得る」とされています。来年三月にその大規模小売店舗立地法の「指針見直し」があるといわれていますが、その前に、キリンビールという私企業の不動産開発事業計画をまちづくりから住民を排除して駆け込みで決めることは許せません。この際、地区整備事業計画の企画評価書を取りはずした、いわば「欠陥商品」の計画は白紙に戻すべきですが、いかがですか。

〈桝本市長〉キリンビール株式会社の開発構想は、商業集積ガイドプランのまちづくりの方向性にも適合したもの。この度、必要な公共施設や開発に関しての配慮事項等について都市計画審議会の承認をいただいた。今後、JR新駅等の整備と併せ、京都市南西部の新しい拠点となる「にぎわいと潤いのあるまちづくり」の実現にむけ、京都府や向日市とも連携しながら取り組んでいく。

下水道料金の料金値上げはしないことを約束すべき

 次に、下水道事業にかかわり汚水資本費補助金について質問します。

 もともと、下水道の汚水処理部分に要する汚水資本費補助金は、一般会計から二十六%の繰り入れをしていたものであります。ところが、一九九三年にはこの補助金を十三%に半減させ、三年間で累計九十九億円も減らしました。その結果、下水道会計を赤字にして、九六年には料金値上げを市民に押しつけたのです。同様に、二〇〇〇年度の当初予算では汚水資本費補助金をゼロにして、その翌年度、料金の値上げを強行したのであります。二〇〇一年度に一部を復活したものの、財政非常事態宣言を受けて二〇〇二年、二〇〇三年の二カ年はゼロとなりました。今回、新たな「中期経営プラン」によって本年度以降は休止期間の二カ年分の三十五億円を五カ年分割の繰り入れにしつつ、一応現行の下水道料金については平成二十年度末まで維持するとしています。

 ところが、このたびの「財政健全化プラン」では、「公営企業の効率的運営」として、繰り出し金の縮減につとめるとしているのであります。

 そこで質問しますが、中期経営プランでは、今後五カ年間は、下水道料金の値上げはしないとしていますが、改めて、はっきりと値上げしないと市民に約束すべきであります。いかがですか。また、汚水資本費補助金は財政健全化プランによる、繰り出し金の縮減対象と絶対にすべきではありません。逆に、この間減少した分の回復こそすべきであります。いかがですか。お答え下さい。

〈松井副市長〉「上下水道事業中期経営プラン」では、汚水資本費補助金について、緊急対策による休止分を含め、平成14年度から16年度までの35億円を、16年度以降5年分割で繰り出すことを決定している。この取組に併せ、局統合により、大胆な企業改革を断行し、平成20年度まで、水道料金、下水道使用料ともに現行水準に据え置くことを既にお約束している。

向島ニュータウン住民の声に答えよ

 最後に、地元問題について要望します。

 戦後の住宅政策の画期となったニュータウン建設は、東京の多摩ニュータウンも大阪の千里ニュータウンも、少子高齢化の進行で新たな問題を抱えています。京都市の向島ニュータウンも例外ではありません。向島ニュータウンでは、高齢化による自治機能の維持の困難、外国籍の住民との言葉や習慣の違いによるコミュニティーづくりの困難、低所得者の生活の困難などなど、地域社会のさまざまな困難が集中しています。そうした中で、二十四号線に面する向島交番の管内では、犯罪件数も多く、高齢者や女性、子供たちが被害に遭っています。そのため、近鉄向島駅の駅前に交番を設置してほしいという声が高まっています。また、学童保育のある児童館が地域的に偏ったところにあるため不審者から子供を守れるよう各小学校の空き教室をつかった学童保育をしてほしいと、小さな子供を持つ人々から、切実な声も上がっています。あるいはまた、病院や区役所や買い物にいくための向島全域をカバーする小型循環バスを走らせてほしい、向島には民間バスしか走っていませんが、敬老乗車証を、市バス・地下鉄と民間バスのどちらにも使えるものにして、京都市域の近鉄と地下鉄の相互乗り入れ区間は敬老乗車証を利用できるようにしてほしい、近商ストアー前の商店街の空き店舗や閉鎖している学生センターや物置代わりにしている図書館の二階を、お年寄りの憩いの場として「託老所」など、地元利便のための施設に再生してほしい、向島ニュータウンの中央公園の水路を掃除してほしいなどなどの声が高まっています。こうした住民の声は、向島ニュータウンを住みよくするための自治機能を高めるコミュニティーづくりの意欲そのものといえます。

 今回の「市政改革実行プラン」では、外郭団体改革もとりあげ、住宅供給公社と住宅サービス公社の統廃合なども遡上にのせていますが、改革の名で住民サービスの低下があってはなりません。住民の声に充分答えるよう要望して、私の質問を終わります。御静聴ありがとうございました。

第2質問

 京都高速道路建設について第二質問をします。京都高速道路の工事費用の膨張は、まるで地下鉄東西線の悪夢の再現です。今後、委員会で追及していくことを表明して、第二質問とします。