井上けんじ 議員
04年3月29日(月)
「生活保護費の削減と負担割合変更の撤回を求める意見書」の提案説明 04年2月定例市会 閉会本会議討論
日本共産党から、「生活保護費の削減と負担割合変更の撤回を求める意見書案」の提案をさせていただいておりますので、私は、議員団を代表して、提案の説明をいたします。
周知の通り、政府は来年度予算の中で、生活保護のうち生活扶助費を0. 2%削減、即ち家族3人の標準世帯で年間3,840円のカット、老齢加算も三年間の段階的廃止で、当面来年度は、本市など大都市部では現行一人月額17,930円から8,260円も削って9,670円にする、さらには母子加算の見直しも検討中、加えて、国の負担割合を減らそうとする方針も、自治体からの強い反対で来年度は見送られたものの、再来年度からの導入が計画されています。これは、自治体の負担割合を現行4分の1から3分の1へ増やそうとするもので、本市について言えば、ざっと600億円の予算規模のうち市負担150億円が200億円に増えることになってしまうという代物であります。
意見書案は、これらの撤回を求めるものであります。
生活保護法では、「憲法25条の理念に基づき、生活に困窮するすべての国民に対し、中略、最低限度の生活を保障するとともに、その自立助長を目的とする」、「最低限度の生活」とは、「健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」などと書かれています。即ち、それ以下では健康で文化的な生活が困難となってしまう基準として設定されているものであって、したがってその基準は社会の発展に応じて高くなっていくことはあっても、これが下がることは、保護世帯に、最低限度以下の生活を押し付けようとするものであります。まして今回の措置により対象からはずれる世帯が生まれてしまうことは重大であり、自立助長の精神にも真っ向から反するものであります。
また、生活保護基準は、いわば国民生活全体の水準を規定する指標ともいうべきもので、基準切り下げの影響は、ひとり生活保護受給世帯のみにとどまるものではありません。年金給付額の値下げや人事院のマイナス勧告の動きなどとも相まって、広く国民全体の生活水準を引き下げることに通じるものであります。
さらに、老人や母子家庭への加算は、障害者加算や妊産婦加算など各種加算とともに、それぞれ独自の役割をはたしているものであります。
生活保護基準の引き上げなどを求めた、有名な朝日訴訟の一審判決では「もし国が生存権の実現に努力すべき責務に違反して生存権の実現に障害となるような行為をするときは、かかる行為は無効と解しなければならない」「最低限度の生活水準を判定するについては」「時々の国の予算の配分によって左右さるべきものではない」「その水準は決して予算の有無によって決定されるものではなく、むしろこれを指導支配すべきもの」との判決理由が高らかにうたわれています。今こそ、この精神に立ち返るべきではないでしょうか。
最後に、国が負担割合を減らそうとしていることについてですが、生活保護は国の制度であり、憲法に基づく国民のナショナルミニマムを規定するものであります。国の負担割合を減らし、本市に50億円もの負担を新たに押し付けるような動きは断じて認められません。地方自治・地方財政を守る立場から、抗議の声をあげるべきであると考えます。
以上、先輩同僚議員の皆様のご賛同をいただきますよう心から呼びかけまして、提案説明といたします。