加藤あい 議員
03年9月 9日(火)
加藤あい議員の代表質問(大要) 03年9月定例市会 本会議代表質問
「働きたくても働けない」青年に京都市の取組を
左京区から選出されました日本共産党の加藤あいです。市長に質問いたします。
働きたくても仕事がない、不安定な派遣やアルバイトで自立できるだけの賃金がない、結婚もできない、子どもも生めない。子どもをつくったとしても仕事に追われて子育てに参加できない。京都の次代の担い手たちは、未来に希望をもてない状況にあります。私は、同世代の仲間と一緒に、「就職難に泣き寝入りしない女子学生の会」の運動や青年労働相談などに取り組み、そのなかで聞いてきた若い世代の声を市政にとどけたい、解決したい、という思いを強くしてきました。
私が、先日、お話をうかがったある私立大学の学生さんは、「何社も就職試験を受けて落とされるたびに自分の全人格を否定されたように感じて、自分は社会に出るのが向いていないのではないかという気持ちになった」とおっしゃっていました。彼は、がんばって、何とか内定をもらいましたが、知りあいの中には、精神的につらくなって、就職活動をやめてしまった人もいるとのことでした。
雇用の枠が極めてせまくなっている状況は、就職活動を大変熾烈なものにしています。大学生の就職率は、七〇年代の石油ショックの時代よりも下回り、五十五%にまで低下しています。もう、「個人の実力」にとどまらない問題になっています。若者の雇用枠そのものを増やすことがどうしても必要です。「大学のまち京都」というならその主人公である学生が就職し、未来に希望をもてるようにすることこそ必要ではないでしょうか。
京都市立高校の求人件数も昨年度に比べて減っています。そのもとで、就職希望者があきらめることを強いられている現状は深刻です。また、正規雇用の枠がせまくなっているもとで、正社員となることをのぞみながらも、フリーターになる若者も増えています。若者の五人に一人がフリーターという現状です。しかも、彼らの収入はきわめて低く、年収二百万円未満がほとんどです。このような低賃金では、そもそも、自立することがたいへん難しく、結婚も子育ても困難です。納税して社会を支えることもままなりません。国民生活白書でも、フリーターの七割に当たる人々が正規雇用を望んでいることにふれ、若者を雇用しない「企業側の要因が大きい」ことを指摘しています。そして、「若年に職業能力がひきつがれず生産性が低下し経済成長の制約になる」「犯罪の増加などの社会不安が生じる」と対策の必要性を説いています。
日本共産党は、これまでから、若者の雇用・就職問題を日本の将来に関わる問題として位置づけ、政府に対策を求めてきました。この問題は、日本の将来に関わることであると同時に京都市にとっても、税収を含めた財政、経済、まちづくりや少子化にも直結し、重大です。市長がこの事態をどう認識し、どう打開しようとされているのか、まずお聞かせください
市長を本部長とした雇用対策本部を
具体的な対策としては、第一に、本格的にこの問題に取り組む本部の設置が必要です。
これまで、京都市は、「雇用労働行政は国及び京都府が所管していることから本市独自の対策は困難である」という態度にとどまってきました。現在、実施されている京都市青少年育成計画の就業支援プランも、ごくかぎられた分野になっており、各局の知恵をくみつくし、厳しい雇用情勢に挑むしくみがありません。
しかし、国や府任せにしておけない深刻な実態があります。本市の市民満足度調査では「労働についての情報が提供され、生きいきと働ける場を得ていると思うか」という問いに、「そう思う」と答えた方はたった、一・五%でした。「そう思わない」と答えた方、二十六・三%と、「どちらかというとそう思わない」と答えた方の二十八・一%をあわせると、半数以上が不満を表明しています。また先日には、京都の青年のみなさん十七人が、深刻な雇用の実態を直接、省庁にぶつけようと、厚生労働省に要請に行かれました。この切実な声にこたえるべきではありませんか。
先月八日、桝本市長をはじめ政令市の市長が連名で「雇用対策に関する要望書」を国へ提出し、財政措置などを求められました。要望書では「雇用の安定・確保は市民生活に直接結びつく大きな問題であり、実効性のある雇用対策の充実を望む市民の声はますます高まってきている」とのべられています。その十三政令市のうち七市では、雇用対策本部の設置や、雇用対策プランを策定するなどの努力がすでに始まっています。本市でも、要望書で述べておられる認識にもとづき、一歩踏み込んだ施策を行うことが求められています。
仙台市では、「今後は自治体が産業政策を含めて有効な施策を主体的に束ねていく『地域雇用政策』の視点が必要」という立場に立って、市長を本部長に「経済活性化・雇用対策本部」を設置。雇用対策推進室を立ち上げて、3名の職員も配置して総合的な対策を実施しています。高校新卒者の特例採用、若者むけの技能研修など若者の雇用対策もすすめています。本市でも、市長を本部長とした雇用対策本部をつくり、若者の雇用対策にもとりくむべきです。いかがですか。
〈市長〉青年を取り巻く環境は長引く不況の影響で非常に厳しい。本来雇用労働行政は、国、府が所管すべきだが、雇用を取り巻く状況をふまえ、市としても緊急雇用創出事業の実施、幅広い産業振興策で景気の回復と雇用確保に努めている。ユースアクションプランに基づき、フリーターの増加や職業意識の希薄化などの課題に対処するため、中学・高校の職業体験学習や大学生のインターンシップなど、職業意識やキャリヤ形成支援に取り組んでいる。
安定した雇用の創出に努めるべき
第二に、雇用拡大についてです。
保育所の増設、特別養護老人ホームの建設など市民生活に必要な分野の施策充実、四割もの本市職員が行っているサービス残業を根絶すること、そして教員の定数内講師を正職員として雇用することなどで、安定した雇用の創出に努めるべきです。
第三に、京都ならではの伝統産業技術後継者育成制度の規模も不十分です。伝統工芸にかかわる職人はどんどん減少しています。西陣織の職人さんは、九〇年の一万二千七六〇人から、九九年には八千四五四人へと、十年で六割へ激減しました。技術を引き継いでも生計を立てていくのが困難という現状です。当面、育成資金の増額と対象の拡大をすべきだと思いますが、いかがですか。
〈松井副市長〉区役所フロアサービス員の採用、特区による教員任用など雇用につながるものもあるが、厳しい財政下、事務事業の見直しや職員定数適正化に取り組まなければならない。雇用創出に着目した採用は難しい。
〈産業観光局長〉伝統産業の担い手、若い職人さんの育成は大切。今年度から育成資金の対象を緩和して実施している。若手の職人が活躍できるよう支援策を積極的に実施する。
青年に労働基準法普及・相談窓口の設置を
次に働く青年を応援する施策について質問します。
就職活動にたえぬいて、何とか、就職できた若者たちの多くも、低賃金で長時間労働、無法な働かされ方をしています。雇用枠をひろげるともに、職場でルールが守られるようにして、誰もが、生き生きと働ける状況をつくり出すことが重要です。
京都総評が設立した京都労働相談センターには、働いている青年から労働相談が次々よせられています。毎月三十件よせられる相談の半数以上が二十・三十代の若者となっており、若い世代での悩みの深刻さを示しています。
ある商品販売会社勤務の二十代の男性は、規定では勤務時間が午前九時から五時までとなっているのに、仕事が終わるのが夜十時、十一時になり、最終電車で帰宅しています。一ヶ月に一日も休めなかった月もあり、残業も休日出勤もすべてただ働きということでした。そうした「過酷な長時間労働」と「ただ働き」のなかで、同期入社の仲間が二人過労で倒れ、どうにもならなくなって労働相談に訪れたそうです。残業・深夜労働・休日出勤の割増賃金を払わない、四週に四日以上の休暇を与えない、これは明らかに労働基準法違反です。こういう無法なことが職場で堂々とまかり通っています。
しかし、ほとんどの青年は、自分が未権利な状況にあることすらわからず、相談することもできないのが現状です。「自分の能力がないから劣悪な職場環境や労働条件についていけないんだ」と苦しんでいるのです。その背景には、労働者として当然の権利や制度について学ぶ機会が極めて少なく、「権利」が知らされていないという問題があります。
現在、本市では「さわやかワーク」という勤労者向けハンドブックを配布されていますがそこにとどめず、学校教育のなかで労働関係法を学ぶ機会を保障することや独自に若者向けの講座を開くなど、権利や制度などを学ぶ場を市がつくるべきです。
二つ目に、青年が困ったときに相談する窓口の設置も必要です。横浜市では、市の労働相談センターに専門員を配置し労働相談をおこない、弁護士等による土曜相談も実施しています。本市には市民生活センターの窓口相談や先日開設された「ヤングジョブスポット」などもありますが、専門的な労使関係や労働条件などを相談できる窓口がありません。設置すべきです。二点についてお答えください。
国に対して、大企業と政府の責任で若者の雇用拡大を進めるよう求めるべき
小泉内閣になって、二年。雇用者所得は9兆円も減少しています。これまで、「不良債権早期処理」の名のもとに、失業率が5%を突破しても「やむをえない」と大企業のリストラを応援してきた自民党政府の責任は重大です。「若者自立・挑戦プラン」も発表しましたが、「企業側の要因が大きい」という国民生活白書の認識にそった、大企業に社会的責任をはたさせるプランがありません。
日本共産党は、先日、「安定した雇用を増やし、雇用危機を打開するための四つの緊急提案」を発表いたしました。第一に、長時間労働・サービス残業をなくし、雇用を増やこと、第二に、大企業と政府の責任で、正規雇用を拡大すること、第三に、国民のくらしに必要な分野での人手不足を解消して、雇用を増やすこと、第四に、国が自治体の雇用対策に財政支援をおこなう枠組みをつくることなど、政府が大企業に社会的責任を果たさせるよう提案しています。本市としても国に対して、大企業と政府の責任で若者の雇用拡大を進めるよう求めるべきです。強く要望しておきます。
〈高木副市長〉学校教育では社会科の授業などで適切に指導している。16歳以上の市民には、労働学校で労働関係法等の講座を開設して、学習の機会を提供。労働相談については、厚生労働省の委託で「ヤングジョブスポット」開所し情報提供や職業についての相談をしている。市民生活センターの中で労働に関する相談を実施。
子育て支援-子どもを生み育てられる条件づくりを
全小学校区への学童保育建設
次に、学童保育・児童館の建設問題を中心に子育て支援についてうかがいます。
働きながら子どもを育てる上で学童保育・児童館の整備は不可欠です。本市は、平成十八年度までに一二〇館を建設する目標をたて、中学校区ごとの建設としてきました。一二〇館建設目標を達成するとともに、全小学校区への学童保育建設が必要です。
厚生委員会に請願が出されている左京区の北白川校区の子どもたちは、学童・児童館がないために、校区外に通っています。小学校に一番近い「しらかわ児童館」でも四〇分ほどかかります。バスを利用してかよっている子どもたちもいます。また、複数の子どもが、きちんと通うようにいい聞かせても、学童保育所へまっすぐ向かわず、寄り道をしたり、家に帰っていたりするという事件がおきています。保護者の方のお話によると、「他の小学校の生徒がほとんどで友達になりにくい」ということが理由になっているとのことでした。子どもたちが巻きこまれる事件が多発しているもとで、保護者の方から心配の声が出ています。
左京区には登録児童数が三桁を超える学童保育所が二つもあり、明徳学童保育所、高野児童館はそれぞれ一一二名、一〇三名もの子どもたちがひしめいています。このような状況を一刻も早く解決すべきではありませんか。全小学校区ごとに学童保育所をつくることを求めます。
市は、下鴨北 野々神町の住宅展示場「りぶら北山」の土地利用について、七月に「複合的な社会福祉施設の整備」という方針を明らかにした後、「整備までの三年間は引き続き住宅展示場として継続」と打ち出しました。この地域は、これまでから、地元の方々より、デイサービスか託児所、児童館など社会福祉施設を建設してほしいとの要望が出されていたところです。この下鴨地域にも、長時間かけてすしづめの高野児童館に通っている子どもたちがいます。この現状を打開するためにも、住宅展示場から一日も早く福祉施設建設へとすすむことを要望しておきます。
学童保育の利用料が十月から全額徴収となり、最高額で、3900円から6000円になる予定です。不況の折、親御さんの負担は大変です。特に一人親家庭の負担は大きいものとなります。子育て支援に逆行するのではありませんか。十月からの利用料全額徴収は凍結し、負担の軽減こそすすめるべきです。
また、障害児の学童受け入れをとの保護者の皆さんや関係者のみなさんの熱心な運動が実って、四年生まで受け入れが実施され、大変喜ばれています。四年生にとどめず、小学校卒業までの受け入れを行うべきだと考えます。いかがですか
〈子育て支援政策監〉「こどもいきいきプラン」で平成18年度までに120館整備としている。こどもの生活圏や児童数を考慮して整備。目標の達成に最大限努力する。利用料については、実施時間の延長とあわせ、受益者負担の適正化、国の取り扱い、他都市の状況をふまえ導入。段階的料金の設定や減免も実施している。最低限の負担をお願いするもの。ご理解を。対象学年以外は児童館での自由来館で利用頂きたい。
養護学校給食民間委託は見直し、自校方式での充実を
最後に、養護学校給食の民間委託・クックチル方式の導入について質問いたします。
教育委員会が、来年四月から、養護学校の給食を民間委託し、クックチル調理法を導入すると発表しました。実施されると、「いやだ」と口では表明できない子どもたちが、一日もしくは二日前に調理し、温めなおした冷蔵食を十二年間も食べ続けなければならなくなります。
昨日、教育長はわが党の井坂議員の質問にたいし、「大きな期待とご理解にもとづき進めていく」と答弁されましたが、期待どころか保護者や学校関係者からは不安と怒りの声が出されています。「養護学校給食の民間委託をやめ自校方式での更なる充実を求める」署名は一万9千筆をこえ、著名な方々からもメッセージが次々ととどいています。映画監督の山田洋次さんは「障害をもつ子どもたちにとって、食事がどんなに大切なことかということを少しでもわかっていたら『クックチル方式』などという発想がうかぶはずがありません」という言葉をよせられました。全国ではじめて学校給食にクックチル方式を導入するのが、障害をもった子どもたちに対してであることに心から怒りを感じます。
これまで実施されてきた自校方式では、栄養士さん・調理員さん・担任の先生が連携して、日常的に子どもたちの状況を交流してこられました。それによって、食べ物を口からまったく食べられなかった障害をもった子どもたちが少しづつ食べるおいしさを知っていくというドラマが生まれてきました。食べ物の「におい」をかいで、給食をつくっている人と知りあいになって、話すことができない子供たちの思いを先生たちがくみとってかたさや大きさを調節しながら、食べられるようになっていく子どもたち。民間委託されれば、こういう学校教育としての「給食」が台無しになってしまいます。
文教委員会に教育委員会が提出した資料でも、自校方式で当日調理されたものと比べて、クックチル方式では、ビタミン類が減少することが示されました。保護者のみなさんや学校関係者、そして、全国の著名人の方々が自校方式の下での「養護学校給食の充実」を求めておられるのにどうしても、民間委託・クックチル方式を導入するのですか。学校給食の民間委託・クックチル方式導入を撤回し、自校方式のもとでの学校給食の充実をすすめるべきです。切実な保護者や関係者の要望に耳をかたむけ、自校方式のもとでの充実をかさねて求めて、私の質問を終わります。
〈教育長〉子どもたちの障害に応じて流動食・刻み食・軟らか煮・普通食・アレルギー食、年齢に応じた栄養や品数などきめ細かい給食の要望に応え、最善の方法として安全で多様な調理が可能な最新のクックチルを導入する。試食会では、積極的評価。栄養価は十分確保。担任、栄養職員が子どもたちの状態を的確に把握し、いっそうの充実に努める。