山中 渡 議員
03年5月28日(水)
山中渡議員の代表質問(大要) 03年5月定例市会 本会議代表質問
下京区から選出されています山中渡でございます。私は日本共産党京都市会議員団を代表して市長、理事者に質問いたします。
先の市会議員選挙では市民の皆さんの大きなお力添えで20名の日本共産党議員を送り出していただきました。議員定数3名削減という大激戦のもとで改選時の議席を維持することができました。ご支援をいただいた市民の皆さんに心から感謝を申し上げます。
今度のいっせい地方選挙ではくらし応援の政治実現、ムダを削って、住民の福祉の増進をはかるという自治体本来の仕事をすすめるかどうかが大きく問われました。
来年2月はいよいよ京都市長選挙です。地方の切り捨て、中小企業の切り捨て、市民の消費の力がますます落ちこむという国の政治のもとで、どう京都の経済を立て直すのか。市民の暮らしをどう守るかがいっそう厳しく問われることになります。日本共産党市会議員団は市民の皆さんの期待に応え、暮らしと健康、福祉優先の政治の実現にいっそう力を尽くす決意でございます。
さて本市会では焦点となっている地域経済再生問題、医療福祉問題、高速道路計画など大型開発とむだをめぐる問題、有事法制問題などについて3名の議員が分担をして質問します。
私は、京都の地域経済再生問題を中心に同和問題、有事法制問題の3点について質問致します。
京都経済立て直しと中小企業・地域金融対策について
第一は京都経済の立て直しと中小企業・地域金融対策です。
私自身、昨年から今年にかけて市内のいくつかの中小企業、中小企業団体を訪ね現状をお聞きしをいたしました。どこでも長引く不況のもとでの景気対策、金融対策、下請け単価の切り下げ対策が問題になっていました。ある企業の方は、「約束をしていた融資が突然キャンセルされ重大な経営危機にたたされた。」「大企業による単価切り下げが日常的になってきた。」また別の企業では「今は我慢の時と製造原価割れを承知で出荷を続けている。」「景気回復が先か会社の破たんが先か毎日祈るような気持ち」との訴えもありました。
最近の新聞報道でも広がる悲観論、あいつぐ経営破綻、将来性見えずなどの見出しが目立っていますが、京都経済の様々な指標も落ち込みを裏付けるものばかりです。
最近公表された京都市の商業統計調査でも事業所数はすべての行政区で減少するなど過去最低の状況となっています。従業員数、年間商品販売額についてもそれぞれ1割、2割規模で減少しています。商業集積の力もどんどん失われています。私の住んでいる下京区でも大型店と専門店進出の前に商店街の活気が目に見えて失われています。日用雑貨や生鮮食料品店など地域の方が足を運んでいた店舗が姿を消すなどの事態がすすんでいます。ミニスーパーやチェーン店が採算性の悪い店舗を閉鎖する動きも激しくなってきました。地域の消費者の方もこうした動きに振り回されています。このまま景気の低迷が続けば本市の中小企業はますます重大な危機にさらされ、地域商業の崩壊もおこりかねません。地域社会、まちづくりに与える影響は大きく地域経済再生と中小企業への本格的対策は急務と考えます。
そこで市長にお伺い致します。京都市は「景況把握や中小企業の的確な実態把握に努めている」としていますがその実態はサンプル調査にすぎません。いま、地方自治体の中小企業対策として全事業所調査の取り組みが注目を集めています。全国最悪クラスの経済の落ち込みとなっている大阪市は昨年、政令指定都市としてはじめて2万件を越える全製造業者を対象にした実態調査を行いました。「大阪市ものづくり再生プラン」にまとめられ、経済再生の基盤が作られつつあります。東京墨田区は全国に先駆けて全事業所実態調査を行い企業データーベースを出発にした異業種交流や専門相談員の体制を全国でいち早く築きました。東大阪市は全事業所調査結果にもとづき技術交流プラザを開設しました。墨田区でもそして東大阪市も全事業所調査によって企業データーベースができ。そのことが情報発信の大きな力となっていることです。いずれの自治体においても調査を経験した自治体職員から「中小企業に対する認識が深まり中小企業の本音がわかるようになった。」との声が出され、中小企業者の方からは「課題であった情報発信や営業問題の解決がはかれた」と高く評価されるなど抜群の効果が出ています。本市において本気で中小企業支援をやる気があるならこうした施策にしっかり学ぶことが必要と考えます。昨年11月京都中小企業団体中央会は京都市の法人市民税の軽減措置の廃止に際し「中小企業は極めて厳しい状況におかれています。このままの状況を放置すれば、さらに多くの中小企業が悲惨な状況に追い込まれ、我が国経済は壊滅的な打撃を受けることになります。」とその窮状を訴えられ景気回復のための経済運営を強く要望されました。全事業所を対象とした実態調査に直ちに取り組むこと。また、地域経済中小企業振興条例の策定作業に直ちに入り中小企業対策を総合的取り組むことは急務と考えます。市長の見解をお示し下さい。
〈市長〉(1)中小企業の実態把握が極めて重要であると認識し、今年度はものづくり産業の技術やニーズに関する調査をおこなうなど、必要なとりくみを進める。スーパーテクノシティ構想、商業・観光・農林など各分野の振興計画を策定しており、条例を制定するまでもなく、中小企業対策にとり組む。
つぎに中小企業に対する金融対策についてお伺い致します。
今年2月、日本共産党京都府委員会は中小企業家、経済ジャーナリスト、金融機関、経済学者の皆さんなど幅広い方をパネラーに迎え地域経済活性化と金融機関の役割を考えるシンポジウムをおこないました。ここでも長引く不況のもとで中小企業の体力が日々奪われ競争力が著しく失われている厳しい実態がこもごも語られました。また金融再生プログラムなど国のすすめる金融政策に対する強い批判も相次ぎました。
今回のりそなホールディングスへの公的資金の導入は貸しはがしや金利引き上げを求める竹中金融プログラムと中小企業対策の失敗を改めて裏付けたといえます。
先日、京都市は制度融資実績を公表しましたがあんしん借換融資や緊急経済対策特別融資に利用が集中するなど不況型の融資実態が明らかになりました。そこには不況もとで中小企業が必死に耐えぬいている厳しい現実が示されています。厳しい経済の実態と中小企業の現状を考えるなら借り換え融資制度に対する中小企業関係者の強い期待に応えるべきです。6月末以降についてもあんしん借換融資制度を延長すべきと考えますがいかがですか。
〈高木副市長〉1月の創設以来、京都市内で2,597件・560億円の融資実績。さらに多くの利用が見込まれ延長が必要。国へ要望し、府・関係機関と協議する。
第二に本市の中小企業といっても規模、業種、分野など企業能力はまちまちです。中小企業の専門家の方も「中小企業対策は現場重視で長期にわたる対策しかない」と指摘されています。本当に中小企業の力を引き出そうとすれば個別の継続した相談体制や金融対策が必要です。昨年、京都府中小企業団体中央会は「気軽に相談できる金融機関を失いつつある」と現状の改善を要望されました。
私自身も幾人かの中小企業家の方から「金融機関に苦情が言えない」の声をお聞きしましたが中小企業の皆さんがかかえる金融機関の金利引き上げや貸しはがしの実態がどうなっているか。金融問題を広く把握し苦情受け付けや苦情処理にあたること。また、中小企業と金融機関の橋渡し役を果たすことが必要だと考えます。金融問題を国の問題にするのではなく自治体としても責任をもって対策にあたることを明言した「貸し渋り貸しはがし防止条例」を制定しすべきと考えます。いかがですか。
〈産業観光局長〉近畿財務局、京都銀行協会も出席する会合等で連携し、融資推進も金融機関に要請している。条例制定の考えない。
第三に商業対策として大型店規制の対策強化が急務と考えます。京都市は商業集積ガイドプランとまちづくり条例で大型店対策に取り組んでいるとしていますが、大型店出店の前に商店街の深刻な事態が日々進行しています。規制緩和を前提にした商業政策ではますます既存の商業集積の力を失うだけです。これ以上の大型店はいらないという立場をまず明確に打ち出し、同時に商店街など既存の商業集積の力をどう生かすかなど具体的プランを示すべきです。市長の見解をお示し下さい。
〈市長〉まち作り条例やガイドプランにもとづき商業集積の形成を推進している。今年度から開業支援にとり組んでいるし、新たな商業振興ビジョンのなかで、さらに具体的な支援策を策定していく。
部落解放同盟に対する公金不正支出事件について
第2点目 解放同盟に対する公金不正支出事件についてお伺いいたします。
京都市は今年3月、解放同盟各支部が1997年から1999年の3年間に実施した学習会事業61件すべてが「から事業」、「水増し請求」、「補助金の対象外事業」にあたるとして5422万円の補助金の内、3748万円の返還を求める中間報告を行いました。
この報告を読みました。その内容は、同和対策助成要綱に照らし合わせ、その是非を検討し「不適正」とした部分だけの補助金返還を求めたものにすぎません。これでは返還が行われたらことが済むとばかりに収拾を図ろうとする方向でしかありません。
中間報告にある61件の事件は解放同盟支部が架空の事業をでっち上げたり、水増しの報告をして助成金を不正に得た公金詐取事件です。さらに解放同盟支部長をかねる課長級職員を含む本市11人の職員がかかわった公金詐取事件です。
そのうえで4点質問いたします。まず第一は市長の責任問題です。
市長はあなたが市長に就任された直後の1996年3月、京都市会は同和行政の終結を目指す計画を確立することを求める全会一致の決議を採択しました。当時市長は「凛として改革に当たる」と発言されていますが、中間報告では「今度の事件の背景に本市の組織的な問題がある」と書かざるを得なかったような状態が続いていたのです。市長就任以降、何ら実効ある対策がとられていなかったのであります。今回の京都市の調査も自発的なものではなく住民訴訟や裁判所の動きがあってからのものです。今年の予算議会で市長は今事件について「申し訳ない」と答弁されましたが長期にわたって組織的な問題を放置していたあなたの責任は極めて重大です。最高責任者である市長自身の責任をどうとるおつもりですか。見解をお示し下さい。
〈市長〉極めて不適切な事態が生じ、市政にたいする信頼を大きく裏切ることになったのは痛恨の極み。市政の最高責任者として、その責任を非常に重く受けとめている。早急に全容を解明したうえで最終報告をとりまとめ、私を含め厳正な処分をおこなう。
第二に事件にかかわった解放同盟支部長を兼任する本市職員の問題です。助成事業に対する京都市補助事業検査規程がありますがここでは関係者に「出頭もしくは文書帳簿その他必要な書類の提出」をもとめることができるとしています。11人もの本市職員がかかわった事件である以上、総務局も加わり全庁上げて問題解明に取り組む事件ではありませんか。今回の事件に関わって解放同盟支部長をかねる京都市職員に対し出頭をもとめるなどの対応をとられましたか。これらの職員に対し、補助事業検査規程にもとづく聴取、本市の服務規程に基づく処分など厳正な対処が当然必要です。どうされるのか。また、今回の事件にかかわった元課長級職員はすでに退職し通常通り退職金を受け取っていますがこのまま不問にするおつもりですか市長の見解をお示し下さい。
〈高木副市長〉住民訴訟対象外の71件について、関係者からの聴取や関係資料の確認など、調査している。全容解明したうえで最終報告をおこない、処分等必要な措置をおこなう。
第三にこの4月に解放同盟京都市協議会は利息を含め4590万円を返還していますが全額の返還ではありません。いわゆる水増し等で補助金を不正に請求したものが61件中39件ありますが一部を適正として全額の返還を求めていません。今回の事件は参加人数を水増し、でたらめな旅館やホテルを記載するなど不正な補助金請求そのものです。どんな理由を付けても容認できるものではありません。社会福祉施設や各種団体に対する補助金については購入物品を確認するなど厳しい監理を求めています。解放同盟の不正請求について全額返還を求めないのは納得できません。
〈文化市民局長〉不適切な補助の交付があったことが明らかな事業を調査して額を算定し返還を求めた。
第四に同和対策事業助成要綱が制定された1983年から2002年に廃止されるまでの助成要綱をめぐる実態がどのようになっていたのかその全容解明が必要という点です。
中間報告以外の1997年以前の実態がどうであったか。2002年に助成要綱を廃止するまでの実態についても当然調査が必要です。また、この助成要綱に基づき解放同盟京都市協議会にたいし助成が行われていますが事業の水増しやでっち上げがなかったのか実態調査と報告が必要です。最終報告では助成要綱をめぐるすべての実態を明らかにするよう求めるものですがいかがですか。また、その最終報告をいつ行うのか合わせてお示し下さい。
〈文化市民局長〉同和対策事業助成要綱にもとづき補助を受け事業について、調査をおこなっている。
有事法制と京都市行政について
最後に有事法制と京都市行政についてお伺いいたします。
有事法制案は参議院で審議中です。政府は有事法制は「日本を守るときの備え」としてきました。しかし国会の論戦を通じて「攻めるときの備え」という危険な本質を持つ法律だということが明らかになりました。第一に自衛隊の海外での武力行使に道を開くこと。第二にアメリカの先制攻撃への参戦法であること。第三にこうした戦争に自治体や国民を罰則つきで動員するというものです。海外の自衛艦が攻撃を受けた場合や攻撃が予測された場合にも発動される法律で憲法違反は明白です。石波防衛庁長官はアメリカの先制攻撃に際しても発動されるとの答弁をしましたが、イラク戦争のようにアメリカが国連決議もなく先制攻撃を始めた場合も相手国が米軍基地のある日本にむけて対抗措置をとれば日本は参戦にむけ動き出すことになります。こうした戦争に国民や地方自治体は協力を強制されることになります。拒否をすれば犯罪者扱いされるなど基本的人権と自治体の活動が大きく制限されるという明白な憲法違反の法律です。
民主党はこの有事法に賛成しました。もともと民主党は有事法は「専守防衛」の点からみても問題がある「出直し」という態度でした。イラクへの先制攻撃についても反対の立場をとっていました。ところが今回は態度を一変。「攻めるときに備えた法」の本質がまったく変わらないのに、この法に賛成したことはまったく説明のつかないことです。歴史的な悪法に加担した民主党の責任は重大と考えます。
市民の暮らしを守る自治体がこの問題にどう対処するかが問われます。市長あなたには市民と自治体の強制動員に対して市民の基本的人権を擁護する責任があります。また、京都市会は1983年3月に非核・平和都市宣言を採択し「戦争に協力する事務は行わない」と宣言しましたが市長にはこの決議を尊重する責任があると考えます。以上の点について市長の見解を求めまして私の第一質問を終わります。
〈高木副市長〉わが国に対する武力攻撃事態への対処を定め、わが国の平和・国民の安全を確保するためのもの。基本的人権の尊重も明文化される。さらに十分な審議が尽くされるべき。今後とも平和を機軸とする市政の推進に努める。
第2質問
答弁をいただきました中小企業対策ですが実態把握は重要との認識を示されました。全国でも全事業所調査が効果を生み出しています。先に述べました大阪市以外にも、昨年に兵庫県が神戸市域を含め全商店街と加盟店22000軒にに及ぶ聞き取り方式で実態調査をおこなうなど、このとりくみはさらにひろがっております。これらの経験に積極的に学ばれるよう強く求めます。条例については今後も議論をしたいと思います。
同和問題です。今回の事件について解放同盟支部幹部である課長級市職員な11人が関わった公金詐取事件であるという認識は示されませんでした。これで市民の納得のいく最終報告、そして全容解明できるのかという疑問が残ります。解放同盟との関係についてきっぱりとけじめをつける市長の姿勢が必要だということを強く指摘いたしまして、私の質問を終わります。