「住宅宿泊事業条例(民泊条例)」案と「旅館業条例」改正案とその修正案についての討論 - 市会報告

「住宅宿泊事業条例(民泊条例)」案と「旅館業条例」改正案とその修正案についての討論

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本会議討論
やまね智史議員
◆日本共産党議員団は、議第169号「京都市住宅宿泊事業の適正な運営を確保するための措置に関する条例」の委員会修正案、及び、議第170号「京都市旅館業法に基づく衛生に必要な措置及び構造設備の基準等に関する条例の改正」案、また、議第169号に対する日本維新の会議員団と京都党議員団による修正案に、いずれも反対し、わが党が提案する議第169号と議第170号の修正案について賛成の態度を表明していますので、以下その理由を述べます。

◆今回の条例制定・条例改正にあたって重要なのは、すでに京都市では、現行の旅館業法下でも「民泊」をめぐって市民生活に重大な影響が出ていることではないでしょうか。そのことは、京都市自身が昨年夏の国への要望で「市民の悲鳴のような苦情が押し寄せ」と訴えていること、この間、様々な市民・町内会から提出されている市議会への陳情によっても明らかです。
 また、12月から1月にかけて行われたパブリックコメントには、民泊施設の近隣住民のみなさんから多数の意見が寄せられ、その内容も数も「生活環境悪化への不安」が圧倒的で、その多くが「規制強化」を求めるものでした。ならば、市民の「生活環境」「生存権」を守ることを市条例の根本にすえるべきであります。
わが党の対案・条例修正案については井上けんじ議員から提案説明があった通りです。私からは、今回の議第169号・議第170号について、どこに問題があるか三つの角度から指摘したいと思います。

◆第一に、京都市の提案では「市民と旅行者の命・安全を守る」という点で大変不十分だということです。
 1月20日、東山区で発生した管理者不在型の簡易宿所での火災は、周辺の生活環境悪化というだけでなく、近隣住民の命に直結する問題です。近隣住民のみなさんは「火災の恐怖がトラウマになっている」と、今も精神的苦痛を語られています。事業者に提出された要求書には「ゲストハウス開始以降、今までの平穏な生活は消え、さらにこの度のことで安全も失われた」とあります。人を泊めて儲けをあげている事業者が火災発生時に何も対応せず、生活環境を破壊された近隣住民が緊急対応までさせられる、これでは「周辺の生活環境との調和」どころか、市民や旅行者の安全を守ることもできません。
 東山区の事例が示す最大の教訓は、たとえ京都市の許可施設であっても、ハウスルールがあっても、営業する施設に管理者がいなければ、緊急時には近隣住民が対応せざるをえないということです。「対面での面接が行われていない」「定員オーバー」など条例違反の実態、また、「火災や病気など緊急時の対応」「近隣住民からの苦情対応」「犯罪の防止」など、これらの課題に対応するためにも、住宅宿泊事業も旅館業も、例外規定を設けず、少なくとも「宿泊客の滞在中は管理者常駐を義務付ける」ことが、適正な運営の何よりの担保となるのではないでしょうか。今でも「違法民泊の実態」「条例違反や要綱違反をくり返す簡易宿所の実態」を京都市がつかめないもとで、管理者を常駐させずに、届出制で住宅宿泊事業が実施されれば、市民の不安と不信はさらに増大し、日常生活への混乱を生むことは明らかです。

◆第二に、住宅宿泊事業について、京都市の提案する規制内容は、「他都市の条例や政府のガイドラインと比べても大変弱い」ということです。
 東京の目黒区・荒川区・中央区・台東区は「区内全域で平日の営業を制限」しています。目黒区の条例骨子案・資料では「商業地域及び近隣商業地域においても、住宅が混在している」「準工業地域についても住宅地としての土地利用が進んでおり、これらの地域特性を踏まえた対応が必要」と説明されています。
 神戸市や兵庫県は「住居専用地域」「学校や児童福祉施設の周辺100m以内の区域」を「全ての期間実施できないこととする」としており、その合理的理由として「住居専用地域の良好な住居の環境を維持保全」「子どもの静穏な教育環境、登下校時の安全確保」と説明しています。学校や保育所周辺の規制については、他にも京都府、奈良県をはじめ、東京の千代田区や港区、札幌市や北海道、長野県など、多数の自治体で採用されており、政府のガイドラインにも例示されています。子育て先進都市をかかげる京都市がなぜこのような方向を打ち出さないのでしょうか。
 また、神戸市は「北区有馬町」、兵庫県は「城崎」「竹野浜」「神鍋」「湯村」という地域を設定し規制しています。和歌山県の条例案では、届出時に「近隣住宅に居住する世帯の世帯主又は世帯の代表者に、(中略)反対する意思がないことを確認しなければならない」とするなど、地域の実情に応じた規制や近隣住民の意思を反映するための工夫が見られます。
 京都市の都市特性を見れば、細街路や住宅密集地における騒音被害、火災の危険、地域コミュニティ破壊など、住環境への重大な影響が考えられるにもかかわらず、「住居専用地域以外の営業制限」は考えられず、「細街路での規制」も十分でなく、「協定書締結」も義務付けられず、近隣住民の意思・意見を反映する保障がないことは重大です。
 すでに生活環境の悪化が重要な市政課題となり、住宅宿泊事業法の施行によってさらなる影響拡大が予想される時に、それを防止する努力を行わないとすれば、市の責任は免れないのではないでしょうか。

◆第三に、京都市の姿勢は「法の限界に挑戦する」どころか、完全な「自粛路線」にとどまり、地方自治体の役割を果たしているとは言えません。
 地方自治法は、地方公共団体の役割について、「住民の福祉の増進を図ること」と規定しています。また、国については「住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねる」「地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」としています。そして「法令の規定は地方自治法の本旨に基づいて(中略)解釈し運用するようにしなければならない」「自治事務の場合、国は地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理できるように特に配慮しなければならない」ともうたわれています。
 これに照らせば、国が京都市の条例制定を制限したり、京都市の問題を京都市に決めさせないようにするなら、「国のやり方こそ地方自治法に反する」「住宅宿泊事業法こそ不適切だ」と言わなければなりません。京都市は、地方自治法で規定された地方公共団体の役割「住民の福祉の増進」にこそ力を尽くすべきです。憲法で示されている「生存権」を守るために働くべきです。
 
◆それではなぜ、市民のくらしを守る立場に立ちきれないのか。その根底には、宿泊施設を誘致・拡充し、呼び込み型観光政策ありきの姿勢があるのではありませんか。
 我が党議員団は、あらためて京都市が、市民と旅行者の命・安全、住環境を守る立場に立ち、「学校や保育所周辺、細街路や木造住宅密集地、マンションなど集合住宅での規制を行うこと」「旅行者の滞在中は管理者常駐を義務付けること」「法令違反や指導要綱違反を行う施設の根絶へ向けた取り組みと体制強化」を強く求めます。

◆最後に、今回、他の会派のみなさんからも条例修正案や、付帯決議が出されている背景には、「このままでは不十分だ」ということを、多くのみなさんが感じているからではないでしょうか。あらためて現状を肌身で感じている市民の声に沿った条例制定・条例改正をすべきであることを呼びかけまして、私の討論と致します。

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