[提案]賃金条項を設定した実効ある「公契約条例」の制定を - 見解・声明

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日本共産党京都市会議員団

 京都市は「公契約基本条例の基本的な考え方及び条例案の概要について」を発表し、7月2日までパブリックコメントを行い、9月議会には条例提案するとしています。
 公契約条例が求められる背景には、公の発注する工事や物品調達、業務委託において、ダンピング受注の横行などにより官製ワーキングプアを生み出し、公共サービスの質の低下すら招く事態が広がっていることがあります。
 公共工事費の積算に用いられている「公共工事設計労務単価」(労働者の賃金単価)が、3年連続で引き上げられ、同時に、国交相が建設業団体に対して、労働者への適切な水準の賃金の支払いなどを求める要請を行いました。これは、建設労働者の賃金が他産業と比べて極めて低い水準にあるため、若年労働者の減少を招き技術が継承されず、産業の存続すら危惧される事態となっているからです。
 京都市は全国でも、雇用・経済が大きく落ち込んでいる自治体となっています。雇用者報酬の下落率は全国平均を大きく上回り、事業所の減少率は政令市ワースト2位、非正規雇用率は政令市ワースト1位という状況です。
 日本共産党京都市会議員団は2005年11月議会で初めて公契約条例に言及して以降、繰り返し議会で取り上げ、公契約条例の制定を求める論戦を行ってきました。
 2008年の市長選挙では公契約条例が大きな争点の一つとなり、市民に共感が広まりました。2009年に、千葉県野田市で全国初の公契約条例が制定されて以降、条例を制定する自治体が次々と誕生する中で、前回(2012年)の市長選挙では、現市長も「公契約基本条例」を公約に掲げざるを得なくなりました。その後、市役所内での検討が続けられてきました。
 党議員団は、賃金条項を定め、適正な労働環境確保と中小企業の受注機会拡大に向けた実効ある条例とする為に、以下の提案を行うものです。

1.理念条例でなく実効ある条例の制定が必要
 今、京都市に求められているのは、労働者の賃金・労働条件の確保、市の発注する事業についての質の確保、市内中小企業の受注機会の確保など、地域内循環型経済の仕組みをつくることです。その大きな契機となり得るのが公契約条例の制定です。
 ところが、今回の「基本的な考え方」では、「市内中小企業の受注機会の増大」「公契約に従事する労働者の適正な労働環境を確保」「公契約の適正な履行及びその質の確保」などが掲げられる一方で、「目的」には「基本理念その他の基本となる事項を定め」るとしており、いわば理念条例というべきものです。今、求められているのは理念条例ではなく、実効性を伴った条例です。

2.賃金条項が公契約条例の核心
 実効性を伴った公契約条例の核心は、労働者の報酬額の最低限度額を定める賃金条項を設定するところにあります。
 全京都建築労働組合(京建労)の調査によると、設計労務単価の引き上げ後でも、公共工事の現場労働者の賃金は「変わらない」と答えた方が74%にも達する事態となっており、この点の改善を条例で担保する必要があります。しかし、今回の「基本的な考え方」では、「賃金に関する独自の規定を設け」ないとしており、これでは「労働者の適正な労働環境を確保」できないことは明らかです。
 賃金条項を取り入れない理由として、事業主に過度の負担をかけたくないということが挙げられていますが、そもそも落札価格には事業者の利益も反映していることが前提です。さらに、若年労働者の確保、技術の継承、建設産業の存続などに向けて、国が設計労務単価を3年連続で引き上げたことを市が真摯に受けとめるならば、条例に賃金条項を定めることは欠かせません。
 同時に、中小零細企業の経営が苦しい実態にあることは確かであり、地域内循環型経済をつくるための様々な施策を講じながら、市が全庁を挙げて中小零細企業の育成・支援をしっかりと行なう必要があります。

3.「労働関係法令遵守報告書」は賃上げや法定福利費確保につなげるべき
 労働関係法令遵守を徹底させるために、一定額以上の契約については下請け事業者も含めて「労働関係法令遵守報告書」の提出を義務付けるとしています。この「報告書」に国交省の推奨する「標準見積書」の提出や法定福利費の別枠支給の状況も記載させるなど、法令の遵守だけでなく、賃金の引き上げや法定福利費別枠支給につなげていくことも重要です。

4.市内中小企業の受注機会の拡大にも実効性を
 市内中小企業の受注機会を拡大させるために、元請だけでなく下請けも市内業者との契約を促し、調達も市内産の材料の使用を掲げています。しかし、いずれも努力義務にとどまっており、実効性については何の担保もありません。現在も入札公告や工事請負契約約款に、下請けも含めて市内業者に発注するよう「努める」と書かれており、市外業者に発注する場合は、「理由書」を提出させています。しかし、京建労の現場調査によると、74%が府外業者という現場もあり、努力義務が果たされていません。
 こうした実態を改善するためにも、局別や行政区別の市内発注率や、下請け事業者も含めた市内発注率を把握するなど実態をつかみ、地元発注に全庁挙げて取り組むことが求められています。

5.公契約の適用範囲の拡大を
 公契約の範囲については、市が直接契約する案件と指定管理者の範囲にとどまっているのは不十分です。独立行政法人や公社なども条例の適用範囲に含ませること、さらに労働者の定義も広くとらえ、一人親方等も含まれたものとすることが必要です。

 以上、公契約条例は、賃金条項を定めることが欠かせない要件であるとともに、地域内循環型経済をつくり、暮らしと雇用の安定と地域経済の活性化を図るための条例とし、条例制定後も、実効性を確保するための調査や指導をしっかりと取り組むことが必要です。


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